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どうやって使い分ける? つみたて投資枠と成長投資枠の活用方法

どうやって使い分ける? つみたて投資枠と成長投資枠の活用方法
【監修者】頼藤 太希 (経済評論家・マネーコンサルタント)

監修者

経済評論家・マネーコンサルタント

頼藤 太希

株式会社Money&You代表取締役。
中央大学商学部客員講師。早稲田大学オープンカレッジ講師。ファイナンシャルプランナー三田会代表。
慶應義塾大学経済学部卒業後、アフラックにて資産運用リスク管理業務に6年間従事。2015年に現会社を創業し現職へ。
日テレ「カズレーザーと学ぶ。」、フジテレビ「サン!シャイン」、BSテレ東「NIKKEI NEWS NEXT」などテレビ・ラジオ出演多数。
ニュースメディア「Mocha」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。
「はじめての新NISA&iDeCo」(成美堂出版)、「定年後ずっと困らないお金の話」(大和書房)など書籍110冊超、累計200万部。
日本年金学会会員。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。宅地建物取引士。日本アクチュアリー会研究会員。

投資で得た利益を非課税で受け取れる、人気の制度「NISA」。これまで投資経験がなくても、NISAで投資を始めることを検討されている方も多くいらっしゃるでしょう。

NISA制度の特徴に、2つの投資枠が存在することが挙げられます。それぞれの投資枠をどのように使い分けるべきかについて、学んでいきましょう。

NISAには2つの投資枠がある

NISAには2つの投資枠がある

NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2種類の投資枠が用意されています。それぞれ異なる機能を持つので、NISAで投資する際には、投資枠の特徴を理解しておくことが大切です。

[図解]つみたて投資枠と成長投資枠の違い
[図解]つみたて投資枠と成長投資枠の違い

つみたて投資枠は、長期積立投資に適した枠となっています

購入できるのは「信託報酬が0.5%以下(投資対象が国内資産のインデックス型の場合)」などの金融庁が定めた基準をすべてクリアした投資信託とETFのみです。年間で投資できる上限額は120万円で、枠全体の上限額は1,800万円となっています。

一方の成長投資枠は投資信託とETFに加えて、株式やREIT(不動産投資信託)が購入可能となっており、つみたて投資枠よりも商品選びの自由度が高い枠といえるでしょう

つみたて投資枠では購入できない投資信託やETFも選ぶことができます。年間の投資上限額は240万円で、枠自体の投資上限額は1,200万円となっています。

2つの枠を合計した上限は1,800万円です。成長投資枠だけでは1,200万円までしか投資できないので、満額使い切るためにはつみたて投資枠との併用が必須です。つみたて投資枠だけを利用する場合は、成長投資枠と併用せずとも1,800万円まで使い切ることができます。

元本割れリスクの可能性を下げながら堅実に資産を増やしていきたい方は、つみたて投資枠を利用して長期・積立・分散積立投資を実践するのがおすすめです。成長投資枠は、つみたて投資枠よりも購入できる商品の選択肢が広い点が魅力。

ただし、つみたて投資枠で選べる商品と比較して、値動きが大きい商品が多いので、投資先選びに注意が必要です。

ライフステージ別シミュレーション

ライフステージ別シミュレーション

NISAを有効に活用していくためには、自分に合った投資戦略を練ることが必要です。その1つの指標となるのが年齢。ここでは、各年代に向いている投資方法の例を紹介します。

投資を開始してしばらくの間は、焦らず着実に資産を増やすことに注力しましょう。20〜30代は、つみたて投資枠での積み立てに力を入れて資産を大きくしていきます

40〜50代になって老後資産の目処が立ったら、成長投資枠で株式投資に挑戦してみるのもいいでしょう。あくまでもつみたて投資枠をメインに考えて、成長投資枠は資産の一部で運用していくことが肝要です

退職前後になって、NISAの投資可能上限額に達していなければ、退職金を投資資金に加えて老後資産を増やすのも一つの手です。

ただし、多くの方の場合はリタイア後は収入が基本的に年金に限られてしまうので、資産の取り崩しを見越して資産全体に占める低リスク資産の比重を高めるようにしましょう

資産形成期は株式型インデックス投資信託をメインに購入していくことがおすすめですが、売却しようとしたタイミングで値下がりしている可能性はあるでしょう。リスクの高い株式の比率が高い資産配分では売却タイミングを計ることが難しい側面があります。

定年後は、株式の比率を減らして、リスクの小さい債券やREIT、株式と異なる値動きをする金(ゴールド)などに投資をする投資信託を組み入れるのもいいでしょう。

長期積立投資をするなら両方の投資枠で同じ商品を買うのでもOK

長期積立投資をするなら両方の投資枠で同じ商品を買うのでもOK

つみたて投資枠で購入できる商品は、成長投資枠でも購入可能です。そのため、両方の枠を併用して同じ商品に投資することもできます

例えば、大人気のeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)【略称:オルカン】のような、低コストで分散効果があり、安定的に成長している商品を両方の枠で購入していけば、初心者であっても有効な投資ができるでしょう。

両方の投資枠を併用する場合は、年間の上限額である360万円まで購入可能です。

また、商品を変更したい場合、NISAは商品を売却すれば、その商品の購入時の金額分投資枠が復活する仕組みとなっているので、枠の投資上限額に達しても商品の変更が可能です。ただし、投資枠の復活は「売却後すぐ」ではなく「売却した翌年」となる点には注意しましょう

つみたて投資枠投資上限額は月10万円です。投資資金に余裕があり、毎月10万円以上同じ商品を購入したい場合、つみたて投資枠と成長投資枠を併用することで可能です。

ただし、取り崩すときのことやリスク(値動き)を抑えるなら、同じ商品を買うよりも複数の商品に投資するほうがベターです。。例えば、株式と逆の値動きをする傾向にある債券や金(ゴールド)に投資する商品を同時に保有していれば、暴落した際のリスクヘッジになるでしょう。

両方の投資枠の特徴を活かしてコア・サテライト戦略も狙える

両方の投資枠の特徴を活かしてコア・サテライト戦略も狙える

NISAの2つの枠の併用はコア・サテライト戦略に非常に適しています。コア・サテライト戦略とは、値動きが小さい、守りの「コア」資産と、リスクは大きいがリターンも大きい「サテライト」資産に分けて運用する投資スタイルです。

つみたて投資枠では、インデックス型投資信託やバランス型投資信託などの「コア」資産を積み立てて堅実な運用を行い、成長投資枠では、プラスアルファのリターンを狙うために株式や米国ETFなどを購入するといった使い分けが考えられます。

年代別シミュレーションで紹介したように、20〜30代はコア資産だけを運用し、余裕が出てきた40代以降にサテライト資産への投資をスタートさせるといった順番が望ましいでしょう。

リスクが大きいサテライト資産が全体に占める割合が大きくなると、資産の値動きが不安定になるので、コア資産は資産全体の7〜9割、サテライト資産は1〜3割の割合が適切です

[図解]コア・サテライト戦略のイメージ図
[図解]コア・サテライト戦略のイメージ図

積立投資はシンプルでやることが少ないので、楽しいものではないかもしれません。日々の値動きを楽しみたい、選んだ企業の成長を応援したいと思う方は、コア・サテライト戦略で運用するのもいいでしょう。

もちろん、無理にコア・サテライトで運用する必要はなく、コア資産の積立投資だけでも問題ありません。

成長投資枠で高配当銘柄に投資する選択肢も

成長投資枠で高配当銘柄に投資する選択肢も

成長投資枠で選べる商品には、配当をもらえる株式やETFもあります。配当は老後生活における貴重な収入源となるので、老後を見越して定期収入を得られる商品に投資するのもいいでしょう。例えば、500万円を配当利回り3%の商品に投資すれば、毎年15万円の配当を受け取れます。

ただし、減配や株価変動、為替による影響も考えられるので、商品選びには注意しましょう。また、NISAでは国内株の配当は非課税となりますが、海外ETFは現地課税があり、控除不可の場合があります。

50代の方がサテライト資産として個別株を検討するなら、高配当株がひとつの候補です。時間を味方につけて値上がり益も狙えるし、配当金ももらえる戦略です。

米国高配当株の人気が高いですが、日本にも高配当株で長年連続増配している銘柄も多くあり、為替リスクもありませんので、日本高配当株もおすすめです。

おわりに

NISAで投資する際は、2つの投資枠の違いを意識して活用しましょう。これから投資を始める方は、まずはつみたて投資枠で資産を大きくするのがセオリーです。

資産に余裕ができたころに、積立以外の投資にも興味が出てきたのであれば、成長投資枠で個別株投資などに挑戦するのもいいでしょう。ただし、値動きが大きい投資は最大でも資産全体の3割までの金額にとどめることが一つの目安となります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の推奨や投資勧誘を行うものではありません。投資にあたっては、ご自身の判断と責任において行ってください。制度や商品内容は将来的に変更される可能性があります。

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

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