生命保険を検討する際、掛け捨て型と貯蓄型のどちらを選ぶべきか迷うという方も多いのではないでしょうか?
掛け捨て保険は保険料が安く、必要な期間に大きな保障を確保できる一方で、支払った保険料が返ってこないという特徴があります。本記事では、掛け捨て保険の仕組みやメリット・デメリット、貯蓄型との違い、自分に合った保険の選び方まで詳しく解説します。
- 掛け捨て保険の基本的な仕組みと貯蓄型保険との違い
- 掛け捨て保険の3つの大きなメリットと注意すべきデメリット
- 自分のライフステージに最適な保険を見極めるための選定基準
- 必要保障額の計算方法と保険料のバランスの取り方
- 保険選びで迷った際の専門家への相談方法


「掛け捨て」とは?保険の基本的な仕組み

保険の「掛け捨て」とは、支払った保険料が貯蓄ではなく、全額「保障」に回る仕組みの保険を指します。満期保険金や解約返戻金がない、またはごくわずかなため、掛け捨ての保険と言われます。
掛け捨て型に分類される主な保険には、定期保険、収入保障保険、医療保険、がん保険などがあります。それぞれの特徴を以下の表にまとめました。
| 種類 | 主な保障内容 | 概要 |
|---|---|---|
| 定期保険 | 死亡・高度障害 | ・10年、60歳までなど、保険期間に定めがある ・解約返戻金や満期保険金がない ・保険料が安め |
| 収入保障保険 | 死亡時に指定された時期まで毎月給付 | ・指定された時期まで年金形式で支給(一括受取も可能) ・子育て・ローン返済期間中に適している ・経過年数に応じて保険金額が減少する |
| 医療保険 | 入院・手術費用 | ・終身型が主流 ・掛け捨て型が多い |
| がん保険 | がんの診断・治療費用 | ・がん治療に特化 ・掛け捨て型が多い |
- 定期保険
「10年や20年」あるいは「60歳や65歳まで」など、保険期間に定めがある保険です。保険期間中に被保険者が死亡または高度障害状態になった場合に、保険金が支払われます。満期保険金がなく、保険料が安いため、必要な期間だけ大きな保障を確保したい方に適しています。 - 収入保障保険
被保険者が死亡した際に、保険期間満了まで毎月一定額の保険金が、給与のように年金形式で支払われる保険です。子育て期間中や住宅ローン返済期など、長期的に安定した収入の確保が必要な時期に適しています。時間の経過とともに受取総額が減少するため、保険料が割安に設定されているのが特徴です。 - 医療保険
病気やケガで入院・手術をした際に給付金が支払われる保険です。保障期間が一生涯の終身型で、掛け捨て型が主流です。入院日額や手術給付金など、公的医療保険だけでは不足する医療費の自己負担をカバーする目的で加入されます。 - がん保険
がんと診断された場合やがん治療を受けた際に給付金が支払われる保険です。診断給付金、入院給付金、手術給付金、通院給付金など、がん治療に特化した保障内容となっています。がん保険も医療保険と同様、掛け捨てが主流です。
掛け捨て型保険と貯蓄型保険の明確な違い

掛け捨て型保険と貯蓄型保険の違いを理解するために、「保険料」「解約返戻金」「満期保険金」「加入の主な目的」の4つの観点から比較してみましょう。
| 項目 | 掛け捨て型 | 貯蓄型 |
|---|---|---|
| 保険料 | 安い | 高い |
| 解約返戻金 | なし/ごくわずか | あり |
| 満期保険金 | なし | あり(商品による) |
| 主な目的 | 保障を大きく確保 | 保障+資産形成 |
| 向いている人 | コスト重視/短期保障重視 | 教育資金や老後資金準備 |
貯蓄型保険は保障と貯蓄を兼ね備えている一方、掛け捨て型は保障機能に特化しているという大きな違いがあります。貯蓄型保険では、支払った保険料の一部が積み立てられ、解約時や満期時に戻ってくる仕組みになっています。
貯蓄型保険の代表例として、以下の3つが挙げられます。
- 終身保険:一生涯の死亡保障を提供しながら、解約返戻金が貯まっていく保険。老後資金の準備や相続対策として活用されます。
- 個人年金保険:老後の生活資金を計画的に準備するための保険。一定期間保険料を払い込み、契約時に定めた年齢から年金を受け取れます。
- 学資保険:子どもの教育資金を準備するための保険。進学時期に合わせて祝金や満期保険金を受け取れる設計になっています。
掛け捨て保険が持つ3つの大きなメリット

掛け捨て保険には、以下の3つの大きなメリットがあります。
- 手頃な保険料で充実した保障を確保できる点
- ライフステージの変化に応じた見直しの容易さ
- 他の資産形成手段との併用のしやすさ
それぞれ詳しく見ていきましょう。
手頃な保険料で充実した保障を確保できる点
掛け捨て保険の最大のメリットは、保険料の安さです。貯蓄に回す部分がないため、保険金額や加入年齢など条件が同じであれば、貯蓄型保険と比較して保険料が安い傾向があります。
そのため、少ない保険料負担で、万一の際に家族が必要とする大きな死亡保障などを確保できるのが掛け捨て保険の強みです。子育て期間中など、一定期間だけ大きな保障が必要なときに適しているといえるでしょう。
例えば、30歳男性が死亡保障2,000万円の10年定期の掛け捨て保険に加入した場合、月々の保険料は2,000円程度と手頃です。同じ保障内容で貯蓄型保険に加入した場合、月々の保険料は数万円になることもあります。
この保険料の差は、子育て世帯にとって家計への負担を大きく軽減する要素となります。
参考:公益財団法人 生命保険文化センター|生活基盤の安定を図る生活設計
住宅ローン完済・子の独立時に「解約や減額」が容易
掛け捨て保険は、保障が不要になった場合に、解約や減額といった見直しがしやすいのも大きなメリットです。
子どもの独立や住宅ローン完済といったライフステージの変化に合わせて、保障額を柔軟に調整できます。例えば、住宅購入時に団体信用生命保険へ加入した後など、必要な保障額が変動した際に、既存の死亡保険を減額することで保険料負担を軽減できます。
特に住宅ローン完済時や子どもの独立時には、それまで必要だった大きな死亡保障が不要になるケースが多く、解約や減額がしやすい点は大きな利点です。
なお、より良い条件の保険への乗り換えを検討する場合は、新たな保険への加入となるため健康告知や医師診査が必要になります。そのため、乗り換えを検討する際は、健康状態が良好なうちに行うことが重要です。
他の資産形成手段との併用のしやすさ
掛け捨て保険のもう一つの大きなメリットは、「保障は保険、資産形成はNISA/iDeCo」という役割分担がしやすい点です。
掛け捨て保険は保険料が安いため、その分の余剰資金をNISAやiDeCoといった税制優遇のある金融商品での資産運用に回せます。例えば、貯蓄型保険で月3万円の保険料を払う代わりに、掛け捨て保険で月2,000円の保障を確保し、残りの約2万8,000円をNISAやiDeCoで運用するといった選択が可能です。
このように「保障は保険」「貯蓄や資産形成は他の金融商品」と目的を明確に分けて資金計画を立てることで、それぞれの金融商品の特性を効果的に活かせます。
また、近年はインフレによる資産価値の目減りリスクもあります。貯蓄型保険は契約時に利率が固定されるものが多く、インフレが進むと実質的な価値が目減りする可能性があります。一方、掛け捨て保険と株式や投資信託などを組み合わせることで、インフレに強い資産も保有でき、リスク分散を図ることができます。
掛け捨て保険で必要な保障を確保しつつ、余剰資金を税制優遇のある金融商品で運用することで、保障と資産形成の両面で効率的な資金計画を実現できます。
加入前に知るべき掛け捨て保険のデメリット

掛け捨て保険には多くのメリットがある一方で、加入前に知っておくべきデメリットもあります。主なデメリットは以下の3点です。
- 支払った保険料が原則返ってこないこと
- 保険期間満了による保障終了のリスク
- 更新に伴う保険料上昇の可能性
各デメリットについても、詳しく紹介します。
支払った保険料が原則返ってこないこと
掛け捨て保険のデメリットは、満期保険金や解約返戻金がない、もしくはごくわずかであるため、保障の対象となる事態が発生しなければ支払った保険料は戻ってこない点です。
また、貯蓄型保険では、解約返戻金を担保にお金を借りられる「契約者貸付制度」が利用できますが、掛け捨て保険ではこの制度が使えません。急な資金需要が生じた際に、保険を解約せずに資金を調達する手段がないことは、デメリットの一つです。
掛け捨て保険の保険料は、万一の事態に備えるための「保障を買うコスト」であると考えることが重要です。
一般的な自動車保険や火災保険と同様、何も起こらなければ保険料は戻ってきませんが、万一の際には大きな保障を受けられるという安心を得るための費用といえるでしょう。
「保険料が戻ってこないのは損」と感じる方もいるかもしれませんが、それは保険本来の目的である「リスクへの備え」という観点から考えれば、合理的な支出です。
満期後は「更新 or 新規加入」が必須
定期保険のように保険期間が定められている商品の場合、満期を迎えると保障がなくなります。満期後も保障を継続するためには、契約の更新や新たな保険への加入が必要になります。
ここで注意すべきは、新たな保険に加入する場合、その時点での健康状態によっては新規加入の審査に通らない可能性があるというリスクです。
特に、保険期間中に大きな病気を経験した場合や、慢性疾患を発症した場合などは、更新時の健康告知で引っかかり、同じ条件での継続が難しくなるケースがあります。
多くの定期保険では、更新時の健康状態の告知は不要で自動更新される仕組みになっていますが、新たな保険会社の商品への乗り換えを検討する場合は、告知が必要です。
将来的にも保障が必要になる可能性が高い場合や、健康状態に不安がある場合は、終身保険の検討も視野に入れるべきでしょう。
更新に伴う保険料上昇の可能性
保険契約を更新する際には、更新時の年齢に基づいて保険料が再計算されるため、一般的に保険料が上昇します。同じ保障内容を継続しようとしても、年齢が上がるにつれて月々の保険料負担が大きくなる可能性があることを理解しておく必要があります。
例えば、死亡保障2,000万円の10年定期保険の場合、30歳で加入時の月額保険料が約2,000円だったとしても、40歳での更新時には約3,500円、50歳での更新時には約7,000円と、大幅に上昇するケースも珍しくありません。
このように、短期的には保険料が安く魅力的に見えても、長期的な視点で総支払額がどの程度になるかを考慮する必要があります。保険金額などにもよりますが、30歳から60歳まで30年間継続した場合の総支払額を計算すると、更新型の定期保険で100~200万円を超えることもあります。
掛け捨て保険を選ぶ際は、短期的なコストだけでなく長期の総支払額も考慮し、自分のライフプランに合っているかを慎重に判断することが大切です。特に、長期間にわたって保障が必要な場合は、保険料が変わらない全期型や終身保険との比較検討も重要です。
自分に最適な生命保険を見極めるためのポイント

掛け捨て保険と貯蓄型保険、どちらが自分に適しているのかを判断するためのポイントを解説します。自分のライフステージや資金計画に合わせて、最適な保険を選びましょう。
掛け捨て保険の利用が適している人の特徴
掛け捨ての保険の利用が適している人の特徴は、主に以下の4つです。
- 月々の保険料負担を抑えたい人
家計に余裕がない時期や、他の支出が多い時期には、保険料負担を最小限に抑えながら必要な保障を確保できる掛け捨て保険が有効です。 - 子育て世帯や住宅ローン返済期の人
子育て期間中や住宅ローン返済期など、特定の期間だけ手厚い死亡保障を必要とする人に掛け捨て保険は向いています。子どもが独立するまで、またはローンを完済するまでの期間に限定して大きな保障を確保できます。 - 別枠で投資を行っている人
保険とは別で、NISAやiDeCoなどを活用して計画的に資産形成を行っている人には、保障に特化した掛け捨て保険が適しています。保険と資産形成の役割を明確に分けることで、より効率的な資金管理が可能になります。 - ライフステージの変化に応じて柔軟に見直したい人
将来のライフステージの変化が予想される人や、定期的に保険内容を見直したいと考えている人にも掛け捨て保険が向いています。解約や減額がしやすいため、状況に応じた柔軟な対応が可能です。
貯蓄型保険の利用が適している人の特徴
一方、貯蓄型保険は以下のような人に適しています。
- 貯蓄が苦手で強制的に貯蓄したい人
自分で計画的に貯蓄するのが苦手な人には、保険料の支払いを「先取り貯蓄」の仕組みとして活用できる貯蓄型保険が有効です。
先取り貯蓄とは、給与が入ったら使う前に貯蓄分を先に取り分ける方法です。貯蓄型保険では、毎月自動的に保険料が引き落とされるため、余ったお金を貯蓄するのではなく、先に貯蓄してから残りで生活する習慣が自然と身につきます。この仕組みにより、確実に資金を積み立てられます。 - 教育資金準備や老後資金積立を計画している人
子どもの教育資金や自分の老後資金など、将来の明確なライフイベントに向けて計画的に資金を準備したい人に適しています。学資保険や個人年金保険など、目的に合わせた商品を選ぶことができます。 - 保障と貯蓄を一体化したい人
保障を確保しながら、同時に資産形成も行いたいという人には貯蓄型保険が便利です。ただし、保険料は掛け捨て型よりも高額になることを理解しておく必要があります。
途中解約すると元本割れする可能性があることが、逆に貯蓄を継続する動機付けになるという側面もあります。簡単には解約できない仕組みが、長期的な資産形成に役立ちます。
加入前に確認すべき3つの選定基準
保険選びのステップとして、保険金額、保障期間、保険料の3つの項目を検討することが重要です。一般的に保険は以下のような手順で加入を検討していきます。以下の手順の過程で、保障期間と自身に必要な保険金額が決まり、最終的な保険料を算出できます。
【必要保障額の計算手順】
- 家族の生活費を月額で算出(例:月30万円)
- 必要な期間を計算(例:子どもが独立するまで15年)
- 教育費などの特別支出を算出(例:1,000万円)
- 将来の収入見込みを算出(遺族年金、配偶者収入、貯蓄など)
- 支出総額から収入見込みを引いた金額が必要保障額
例えば、月30万円の生活費が15年間必要な場合、30万円×12カ月×15年=5,400万円となります。これに教育費1,000万円を加えると6,400万円です。ここから遺族年金や配偶者の収入、貯蓄などの見込み額を差し引いた金額が、保険で準備すべき保障額の目安となります。
保障内容の充実度と、無理なく支払い続けられる保険料のバランスを取ることが何より重要です。保障が充実していても、保険料が高すぎて途中解約せざるを得なくなっては、加入した意味がなくなってしまいます。
長期的に無理なく払い続けられる保険料の範囲内で、必要な保障を確保することを最優先に考えましょう。
保険選びの悩みは専門家への相談で解決
保険選びで迷った場合は、専門家への相談を活用するのがおすすめです。
セゾンのマネナビでは、保険見直しに最適な経験豊富なFP(ファイナンシャルプランナー)に相談できます。特定の金融機関に属さない中立的な立場から、複数の保険会社の商品を比較検討し、最適なプランを提案してもらえます。
保険の見直しを専門とする経験豊富なFPが在籍しているため、掛け捨て保険と貯蓄型保険のどちらが適しているか、どのくらいの保障額が必要かなど、具体的なアドバイスを受けられます。
保険の見直しだけでなく、投資信託や住宅ローンなど、家計全体の相談もワンストップで可能です。お金に関する悩みを総合的に解決できます。
オンラインでの無料相談も受け付けており、自宅からでも手軽に専門家のアドバイスを受けられます。忙しい方でも、好きな時間に相談できる利便性があります。


おわりに
掛け捨て保険は、低コストで大きな保障を得られる合理的な手段です。
子育て期間中や住宅ローン返済期など、特定の期間に手厚い保障が必要な人にとって、有効な選択肢となります。一方で、支払った保険料が返ってこないこと、更新時に保険料が上がること、満期後は更新または新規加入が必要になることなどの特徴も理解しておく必要があります。
自分のライフプランや資金計画に合った保険を選ぶためには、掛け捨て保険と貯蓄型保険の特徴を正しく理解し、必要保障額を適切に算出することが大切です。
保険選びで迷った際は、中立的な立場の専門家に相談することをおすすめします。保障は保険、資産形成は他の金融商品という役割分担を意識しながら、最適な保険プランを見つけてください。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

