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【2025年最新版】還元率だけで選ぶのはNG!ふるさと納税の失敗例と改正ポイント

【2025年最新版】還元率だけで選ぶのはNG!ふるさと納税の失敗例と改正ポイント
篠田 尚子 (ファンドアナリスト/CFP®/1級FP技能士)

監修者

ファンドアナリスト/CFP®/1級FP技能士

篠田 尚子

国内銀行、投資信託評価会社を経て2013年に楽天証券経済研究所入所。
現在は株式会社モニクルに参画する傍ら、日本では数少ないファンドアナリストとして、投資信託・資産形成に関する情報発信や講演などの啓蒙活動を行っている。
楽天証券経済研究所 客員研究員。ピクテ・ジャパン客員フェロー。
慶應義塾大学卒。早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。

ご自身のふるさとや応援したい自治体に寄附ができる制度がふるさと納税です。2025年10月1日からは仲介サイトのポイント還元が全面禁止され、改めて同制度の魅力と活用方法を見直すきっかけが生まれたともいえます。

寄附に対する自治体からのお礼として、地域特産品やサービスなどが受け取れることが魅力のふるさと納税。この記事では、ふるさと納税の上手な活用方法や気になる節税効果についても解説します。

ふるさと納税とは?仕組みと控除のしくみをやさしく解説

ふるさと納税とは?仕組みと控除のしくみをやさしく解説

ふるさと納税制度は、「生まれ育ったふるさとに貢献できる制度」「自分の意思で応援したい自治体を選ぶことができる制度」として2008年に創設されました。

各自治体は寄附に対するお礼として、さまざまなサービスや商品を寄附者に返します。

さらに寄附者は、選んだ自治体に寄附を行った場合に、寄附額のうち2,000円を超える部分については、所得税と住民税から原則として全額が控除されます(一定の上限はあり)。

ふるさと納税とは?仕組みと控除のしくみをやさしく解説
[図表]ふるさと納税の仕組み

返礼品は各自治体がさまざまな魅力ある特典を用意し、2015年は726万件だったふるさと納税の全国受入件数は、2024年には5,879万件と、利用規模は大幅に増加しています(総務省「ふるさと納税の受入額及び受入件数」より)。

ふるさと納税は税収偏在への対策として、文字通り出身地の自治体を応援するという趣旨もあります。
一方で、ふるさと納税の返礼品である特産品や工芸品を通じて、その地域を初めて知ることができるのも大きな特徴です
例えば、イクラやサーモンなどの返礼品が人気の北海道の白糠町は、人口7,000人ほど。こうした地域や該当地域の特産品などを、制度によって初めて知った方も少なくないでしょう。
またふるさと納税で地域特産品を知り、気に入ったらその後観光で現地に足を運んでみる
そのように制度を活用すれば、寄附者にとって体験価値はさらに高まりますし、自治体にとっても税収増加につながる有意義な取り組みといえます。

【2025年改正対応】ふるさと納税でやりがちな失敗と注意点

【2025年改正対応】ふるさと納税でやりがちな失敗と注意点

寄附金に応じて地域特産品などの返礼品がもらえるふるさと納税ですが、いくつか注意点もあります。失敗なく制度を活用するために次の点をおさえておきましょう。

ポイント目当てでの利用はNG

冒頭で説明したとおり、2025年10月1日よりポータルサイトでのポイント還元は禁止されました。

ポータルサイトを通じた寄附では自治体によってポイント還元率が異なり、返礼品とあわせて、利用者にとっては大きな比較材料となっていました。

今後はポイントやマイルなどの付与は禁止され、返礼品の魅力や該当する自治体へ応援したいという気持ちが、制度利用や自治体選びの動機と深く結びつきそうです

ふるさと納税の上限額を超えてしまう

ふるさと納税の控除額には上限があります

控除上限額は、年収や家族構成、お住いの地域などによって異なります。

たとえばふるさと納税を行う方本人の年間給与収入が500万円で共働きの場合、控除額の目安は61,000円となります(総務省「ふるさと納税ポータルサイト」より)。

ご自身の控除上限額はポータルサイトのシミュレーションか、以下の総務省のサイトで一度チェックしておきましょう。

全額控除されるふるさと納税額(年間上限)の目安(総務省)

そもそも節税効果はない

ふるさと納税は2000円の自己負担額以外は所得税や住民税の全額控除対象となりますが、所得税や住民税を前払いするかたちであり、負担する税金の総額自体は原則変わりません。

ふるさと納税が通常の所得税や住民税の納税と違うのは、「寄附に対する返礼品」がある点です。

つまり節税効果はなく、返礼品が「負担した2000円より市場価値が高い」場合に得になるといえます。

そもそも節税効果はない
[図表]ふるさと納税のメリット

また専業主婦(主夫)など所得金額が低い、またはない方は、控除限度額も小さくなったりなくなったりします。その場合は2000円より返礼品の価値が大きくても、自己負担で返礼品を購入しているのと同じである点に注意しておきましょう。

確定申告が必要なこともある

ふるさと納税は寄附先が5カ所以下なら、「ワンストップ特例制度」により確定申告は不要です。

ただし、副業などの所得が20万円以上ある方や医療費控除を申請する方などは、確定申告が必要です。その際に、ふるさと納税の寄附金についてもあわせて申請しなければ控除は受けられません

なお、ふるさと納税をした際には、寄附した自治体から寄附金受領証明書が送られてきます。これは確定申告で寄附金控除を受ける際に必要となるので大切に保管しておきましょう(ワンストップ特例制度では不要)。

ふるさと納税の賢い活用方法

ふるさと納税の賢い活用方法

制度改正を踏まえて、ふるさと納税の上手な活用方法をいくつか紹介します。

還元率だけでは選ばない

2019年6月の制度改正により、返礼品の調達額(返礼率)が寄附金額の3割以下となるようルールが設けられました。

そのうえで、一部ポータルサイトでは「(市場価格÷寄附した金額)×100」を実質還元率として返礼品のお得度合いを示したり、ランキング化したりされています。

ただ、いくら実質還元率で選んでも、好みの食べ物やサービス、使用するアイテムでなければ無駄になってしまいます。お得度だけで選ぶのは避けましょう。

実用性で選ぶ

トイレットペーパーやタオルなど、日用品として必ず消費するものを選ぶと、普段の買い物の出費を抑えることにもつながります。

「近々スーパーで購入しようと思っているアイテム」を思い浮かべて探してみるのもひとつの手です。

未知の特産品に触れる

ふるさと納税のポータルサイトの人気ランキングなどをみると、今まで知らなかった自治体や特産品に触れることもあります。

ご自身の出身地だけでなく、「梨が美味しいエリアはどこかな」「海産物で探すならどんな地域があるのかな」など、目当てのジャンルを軸に特産品を探し、寄附先を選んでみるのもいいでしょう。

好みではないものや普段使わないものであったとしても、「興味はあったけどなかなか手が出せなかった」「どうせ買うならふるさと納税で寄附も兼ねて手に入れたい」など、本来ほしかったものやサービスを手に入れる機会として活用するのも選択肢の一つです。

予算で選ぶ

ポータルサイトでは「3,001〜5,000円」など寄附金額別に選べる商品を絞り込みできます。

控除はありますが税金の前払いであり、節税効果はないため、「どうせ課税されるからなるべく高い方がお得」というわけではありません

寄附であるという前提のもと、予算を決めてから返礼品(自治体)を選びましょう。

近年はNISAやiDeCoと並んでふるさと納税がメディアで紹介される機会もありますが、制度の目的や趣旨は全く異なります。
NISAやiDeCoは資産形成という目的があり、そのうえで中長期の取り組みが前提である一方、ふるさと納税は「地域特産品などを通じて今を豊かに過ごすため」の制度ともいえます。
つまり寄附を通じて自治体を応援しながら、どうお金を使って価値のある体験をするか、という観点で利用することをおすすめします。
なかには、通販のように特産品を返礼品として受け取る使い方だけでなく、宿泊施設のクーポンや優待券を返礼品として提供している自治体もあります。個人的には、現地に足を運んで特産品や観光スポットを楽しんでみる活用方法をおすすめしたいですね。

おわりに

ふるさと納税は各自治体を応援するための寄附制度です。ふるさと納税は、ポータルサイトのポイント還元禁止によって、改めて制度本来の趣旨が見直されるきっかけとなりました。

ただお得に返礼品がもらえるだけではなく、返礼品を通じて各地域の特産品や名物を知ることができ、「一度現地に行ってみたいな」と次のニーズや体験価値につながるきっかけにもなります。ぜひ豊かなお金の使い道のひとつとして、制度活用を検討してみましょう。

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

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