私たちの健康を脅かす可能性のあるPM2.5。その正体は一体どのようなものなのでしょうか。ここでは、PM2.5の正体や発生する原因の他、PM2.5の影響をできる限り抑えるための対策を屋外編と屋内編に分けて解説していきます。環境基準やおすすめアイテムもご紹介しているので、PM2.5の原因が気になる方、PM2.5の影響をできるだけ抑えたい方は、ご一読ください。
PM2.5って一体どんなもの?
PM2.5は、それ自体が何かしらの物質を指していると思われがちですが、そういうわけではありません。ここでは、PM2.5の特徴や成分などについてご説明していきます。
「微小粒子状物質」という細かな粒子
PM2.5とは、大気中に浮遊するきわめて小さな粒子のことです。「particulate(微粒子) matter(物質)」の頭文字をとったPMのあとに、粒子のサイズである2.5を表記しています。サイズの単位はμm(マイクロメートル)。つまり、直径2.5μm以下の粒子をPM2.5(微小粒子状物質)と呼んでいます。
ちなみに、サイズを比較してみると、人の髪の毛が直径70μm程度、スギ花粉が直径30μm程度。PM2.5は肉眼では見ることができないほど小さいことが分かります。
成分にはさまざまなものがある
PM2.5は、ある特定の物質だけをそう呼んでいるわけではありません。大気中にある2.5μm以下の粒子であれば、すべてPM2.5ということになります。PM2.5を構成しているのは、炭素成分、硝酸塩・硫酸塩、金属類、ナトリウム、ケイ素などの多種多様な化学成分。それらが混合された状態で大気中に浮遊しています。
健康被害を引き起こす可能性も
PM2.5は、粒子がきわめて小さいため、人が吸いこんでしまうと肺の奥深くに入り込みやすいという特徴があります。呼吸器疾患をはじめ、身体に良くない影響を及ぼす可能性が指摘されており、大気汚染物質のひとつとして調査や研究が行われています。
PM2.5が発生する原因は?
PM2.5の成分については前述のとおりですが、それらの成分はどのように発生するのでしょうか。PM2.5には、人為起源のものの他に自然起源のものがあります。人為起源のPM2.5は、ものを燃やすことによるものです。PM2.5が人為起源で発生するのは、工場や焼却炉、自動車、船舶、火力発電所などです。また、一般家庭においても、料理や庭先での落ち葉焼きなどによって排出されています。このように、最初から大気中に粒子の状態で排出されるものを、一次粒子と呼びます。
他には、大気中に気体として存在している硫黄酸化物・窒素酸化物・揮発性有機化合物などが、化学反応を起こすことでPM2.5に変化する場合も。こうしてできるPM2.5を、二次生成粒子と呼んでいます。これらの気体は、ものを燃やすことや、工場で使用される塗料・溶剤などから発生するのが特徴です。
自然起源のPM2.5には火山や土壌、黄砂などがあり、これにも一次粒子と二次生成粒子が存在します。黄砂とは、強風により東アジアの砂漠から飛来する砂のこと。主なものは4μm程度のサイズですが、なかには2.5μm以下のものが含まれています。そのため、黄砂の一部は、PM2.5としてカウントされています。最初から粒子の状態である黄砂は、一次粒子です。自然起源の二次生成粒子としては、植物が多く出している揮発性有機化合物などがあります。
PM2.5との関係が指摘されている疾患
大気汚染物質のひとつであるPM2.5は、呼吸器疾患や循環器疾患などさまざまな疾患の要因となるとされています。もともとそれらの臓器に持病がある方や、子ども・年配の方は、特に影響を受けやすいため注意が必要です。では、身体にどのような影響を及ぼす可能性があるのか、具体的にみていきましょう。
呼吸器疾患
PM2.5は、気管支炎や喘息、肺炎、肺がんなどのリスクを高めるといわれています。気管支炎は、気管支に炎症が起こり、咳や痰などの症状が見られる疾患のこと。喘息は、気管支が狭くなることで呼吸が苦しくなる発作を繰り返す疾患です。また、肺がんは、肺胞や気管支の細胞ががん化した状態を指します。肺がんの症状は、咳、痰、血痰(痰に血液が混じる)、発熱、胸痛、呼吸困難などですが、これらの症状がないままに進行している場合もあります。
普段意識することなく行っている呼吸ですが、苦しいと感じる呼吸はとても辛いものです。このように、PM2.5はQOL(生活の質)を大幅に下げるような疾患を引き起こす可能性があります。
循環器疾患
PM2.5が引き起こす可能性があるといわれている循環器疾患には、不整脈があります。不整脈は、脈がゆっくりになる、速くなる、不規則になるなどの症状が現れます。自覚症状は、胸の不快感や痛み、動悸などです。
また、PM2.5は心筋梗塞や心不全などと関連しているともいわれています。これらは、PM2.5が動脈硬化(血管が硬くなること)を促進するからであると考えられています。
アレルギー性疾患
アレルギー性疾患と聞くと、花粉症をイメージする方も多いと思います。しかし、PM2.5はその粒子の小ささから、花粉以上に注意が必要です。目に入るとかゆみや異物感を生じるなど、アレルギー性結膜炎を発症する可能性があります。また、鼻に入ると、アレルギー性鼻炎を発症し、鼻水やくしゃみなどの症状がみられるでしょう。PM2.5によるアレルギー性疾患は、花粉症と同様の症状が出るため見分けがつきにくいことがあります。
皮膚疾患
PM2.5は、肌荒れやじんましんなどの皮膚疾患を起こす可能性もあります。また、PM2.5が表皮につくことで、かゆみに対する過敏性が引き起こされることも。かゆみを感じかいてしまった場合には、表皮に傷がつきアトピー性皮膚炎が悪化することもあるでしょう。そのため、肌がデリケートな方は要注意です。
PM2.5における環境基準
天気予報などで「環境基準を上回るところはありません」などの説明を、聞いたことはありますか。環境基準とはどのようなもので、PM2.5の環境基準はどうなっているのかをご紹介します。
環境基準とは
環境基準とは、大気汚染・水質汚濁・土壌汚染・騒音などに対して定められている、人の健康の保護・生活環境の保全のために維持することが望ましいとされる基準のこと。最低限度としてではなく、積極的な維持に努めなければならないという旨が環境基本法の第16条に記載されています。この基準は定めたらそのままというものではなく、新しい科学的知見をもとにしながら、科学的判断が加わることで変更となる可能性があります。
PM2.5の環境基準
PM2.5の環境基準について、以下のとおりです。
- 1年平均値15μg/立方メートル以下
- 1日平均値35μg/立方メートル以下
国内外の呼吸器疾患や循環器疾患などに関するさまざまな疫学知見をもとに、専門委員会が検討した結果が、この値です。これらは、どちらか一方を満たせば良いのではなく、両方を同時に満たす必要があります。
PM2.5の濃度で注意が必要なとき
積極的に維持されるべきPM2.5の環境基準に対して、健康被害が出る可能性のあるPM2.5の濃度はどれくらいなのでしょうか。PM2.5の濃度で注意が必要なときについて、ご説明します。
濃度が上昇傾向となる冬から春
PM2.5がピークとなる時期は、3月から梅雨前半にかけてです。その理由の一つは、日本の上空で秋から春にかけて強く吹く偏西風。西側から吹くため、東アジアからの黄砂が日本に飛来しやすくなっています。二つ目は、高気圧の影響です。特に春は晴れの天気をもたらす高気圧の影響で、下降気流が生じてPM2.5が地上に下降しやすくなります。この二つの理由で、PM2.5の濃度は冬から春にかけて上昇するのです。
1日平均値が70μg/立方メートルを超える場合
1日平均値70μg/立方メートルというのは、注意喚起の暫定的な指針となる値。健康被害が出る可能性が高くなる、と考えられる濃度水準です。ただし、これを超えなければ問題ないというわけではありません。呼吸器系・循環器系の基礎疾患がある方や子ども・年配の方は、これより低かったとしても健康を害する可能性は否定できないため、特に注意が必要です。
PM2.5の影響をできる限り抑えるための対策 ~屋外編~
さまざまな健康被害があると考えられているPM2.5。影響をできるだけ抑えて生活するにはどうすれば良いのか、まずは屋外でできる対策についてみていきましょう。
外出時のマスクの着用
PM2.5の濃度が高いシーズン・日であっても、やむを得ず外出しなければならないという方は多いでしょう。そんなときには、マスクの着用がおすすめです。マスクといえば不織布マスクなどが一般的ですが、それらのマスクは必ずしも有効だとはいえない場合も。もし「N95」や「DS1」などの高性能な防じんマスクが手に入るのであれば、それを活用しましょう。微粒子の捕集効率が高いため、不織布マスクよりも確実にPM2.5から身体を守ってくれます。
マスクは、サイズ選びも大切です。大きすぎるマスクでは空気が漏れてしまうため、顔の大きさに合ったものを選ぶようにしましょう。
屋外での長時間の激しい運動を減らす
激しい運動を長時間すると、PM2.5を大量に吸い込む恐れがあるのをご存じですか。運動した時に起こる息切れは、筋肉を動かすために必要なエネルギーを酸素から取り入れるために起こるものです。これはつまり、長時間の激しい運動が、大気中のPM2.5を多く吸い込む原因になり得るということ。そのため、PM2.5を大量に吸い込むのを防ぐためには、屋外での長時間の激しい運動を減らすことも大切なのです。
洗濯物の外干しには便利グッズの利用も有効
PM2.5の濃度が高い日の洗濯物は、室内干しするのがベストです。しかし、PM2.5の濃度をチェックせずに外干しして家を出てしまった、室内干しだとカラッと乾かないからどうしても外干ししたい、など、さまざまな事情があると思います。そのような場合は、普段からPM2.5の付着を防いでくれるグッズを使っておくと便利です。
PM2.5は、静電気が起こることで衣類などに付着します。そのため、PM2.5対策には、静電気の発生を減らしてくれるグッズが活躍してくれるでしょう。簡単に取り入れやすい例としては、柔軟剤があります。柔軟剤は、繊維をコーティングして摩擦を減らすことで、静電気の発生を防いでくれます。
また、PM2.5を物理的にシャットアウトするグッズとしては、洗濯カバーがあります。なかでも、袋状になっているものは、全方向から洗濯物を守ってくれるでしょう。洗濯カバーは、急な雨対策や目隠し対策としても利用できます。
便利グッズを利用する他には、宅配クリーニングで対応するという方法もあります。宅配クリーニングは、洗濯物を集荷後、クリーニングして袋や箱に入れて届けてくれるため、PM2.5が付着するのを防げます。衣類はもちろん、室内干ししても乾きにくい布団などにもおすすめです。
「タカノ」は、技術と品質にこだわる老舗クリーニング店です。WEBサイトから24時間いつでも宅配クリーニングの予約ができ、集荷や配達の送料はかかりません。普段の洗濯では落とせないシミもきれいにできるので、ぜひご利用ください。
PM2.5の影響をできる限り抑えるための対策 ~屋内編~
次に、屋内での対策についてご紹介します。
外出をできるだけ控える
PM2.5の濃度が高い日は、外出自体をできるだけ控えることが最も効果のある対策です。屋内で過ごせば、その分PM2.5を吸い込む可能性が低くなります。
窓の開閉を必要最小限にする
現在のところ、窓を開閉した場合の屋内におけるPM2.5の濃度を示した資料はありません。しかし、窓開けたままにしておくと、屋内のPM2.5の濃度は屋外と同等値になると推測されています。そのため、屋内へのPM2.5の侵入を少なくしたい場合は、窓の開閉を必要最小限にすることが大切です。
空気清浄機を使用する
屋内のPM2.5対策として思い浮かべる方が多いのが、空気清浄機だと思います。空気清浄機には、空気をきれいにし、生活臭を軽減したりほこりなどを除去したりする機能があります。近年、ウイルスや病原対策にもなることから、ナノイーやプラズマクラスターなどの機能を持った空気清浄機が人気です。しかし、それらが必ずしもPM2.5対策に効果的であるとは限りません。PM2.5に対応しているもの、あるいはPM2.5レベルの微粒子にも対応したフィルターを使用しているものを選びましょう。0.3μmのサイズの粒子を99.97%以上捕集してくれる機能がある、HEPAフィルター搭載機種などがおすすめです。
こまめに掃除をする
こまめな掃除もPM2.5対策に有効です。ただし、その掃除方法にはポイントがあります。
PM2.5はきわめて微小なサイズであるため、舞い上がりやすいという特徴があります。PM2.5が床に溜まっている屋内における掃除機の使用は、PM2.5を舞い上がらせてしまうでしょう。そのため、掃除をする際には、まず床の拭き掃除によりPM2.5を集めるようにします。他には、粘着クリーナーの使用も有効であると考えられます。掃除機をかける前に、ぜひこれらの掃除方法を取り入れてください。
サイクロン式の掃除機は、ゴミを捨てる際にPM2.5を飛散させてしまう可能性があります。紙パックの交換などがないため便利ですが、PM2.5対策の観点で考えると紙パック式がおすすめです。
PM2.5対策に特化したアイテムを使用する
他には、PM2.5対策に特化したアイテムを使用する方法もあります。
PM2.5を低減させる窓ガラスコーティング
最近では、PM2.5を低減させてくれるものも登場しています。ここでは、窓ガラスにプラチナチタン触媒を塗布する空気浄化特許技術、「AIRPLOT(エアープロット)」をご紹介します。「AIRPLOT」は、太陽光のエネルギーを使用して、空気中のウイルスや細菌、PM2.5などの有害な有機化合物を水と二酸化炭素に分解。室内の窓ガラス掃除に使用すれば、窓ガラスをコーティングして空気を浄化し続けてくれます。ガラス掃除材と掃除道具がセットになったものだけでなく、大容量のガラス掃除材のみのものもあるため、継続して使用する場合に便利です。
商品名:エアープロットGセット
販売元:株式会社ゼンワールド
PM2.5をキャッチするカーテン
PM2.5などの微粒子をキャッチしてくれるカーテンもあります。cecile(セシール)の「PM2.5対応遮熱UVカットミラーレースカーテン」は生地に薬剤が加工されていて、PM2.5をキャッチするだけでなく低減させる機能があります。
販売元:株式会社セシール
おわりに
PM2.5が発生する原因や、影響をできる限り抑えるための対策についてご紹介しました。さまざまな健康被害をもたらす可能性のあるPM2.5ですが、常に発生し続けていることから、呼吸をしている限りは完全に避けるのは難しいです。そのようななかで、ご自身やご家族の健康を守るためには、屋外・屋内両方の対策を行っていくことが大切です。すぐに始められそうな対策は、ぜひ今日から取り入れてみてください。