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親と同居のきょうだいと揉める…「二世帯住宅」の相続で起きがちなトラブルと法的解決策【弁護士が解説】

親と同居のきょうだいと揉める…「二世帯住宅」の相続で起きがちなトラブルと法的解決策【弁護士が解説】
山村 暢彦(山村法律事務所 代表弁護士)

執筆者

山村法律事務所 代表弁護士

山村 暢彦

実家の不動産・相続トラブルをきっかけに弁護士を志し、現在も不動産法務に注力。税理士・司法書士等の他士業や不動産会社からの複雑な相続業務の依頼が多数。遺産分割調停・審判に加え、遺言書無効確認訴訟、遺産確認の訴え、財産使い込みの不当利得返還請求訴訟など、相続関連の特殊訴訟の対応件数も豊富。

二世帯住宅の相続は、複雑な問題を生む火種になりがちです。登記方法によって財産の分け方がまったく異なるほか、同居していなかった相続人とのあいだで感情的な対立も起こり得ます。

本記事では、二世帯住宅における典型的なトラブル事例を紐解きながら、ケース別に法的な問題点、トラブルを未然に防ぐ方法について、不動産相続に精通する山村暢彦弁護士が解説していきます。

単独、共有、区分…登記の仕方によって「二世帯住宅」の相続は変わる

単独、共有、区分…登記の仕方によって「二世帯住宅」の相続は変わる

二世帯住宅の相続を考えるうえで、まず整理しておきたいのが「登記の方法」です。

一見同じようにみえる二世帯住宅でも、登記の仕方によって法的な所有関係がまったく異なり、結果として相続時の扱いや分割方法にも大きな差が生じます。

単独登記

まず最も多いのが、親の名義だけで登記しているケースです。この場合、親が亡くなればその不動産は親の遺産として全相続人の共有になります。

たとえ長男夫婦が長年同居していても、自動的に自分の所有になるわけではありません。遺言書などで明確な指定がなければ、他の兄弟と遺産分割協議を行う必要があります。

共有登記

次に多いのが、親と子の名義を一定の持分割合で登記しているケースです。この場合、それぞれの持分が独立して相続対象となるため、親の死亡後に相続対象となるのは、親が保有していた持分のみです。

もっとも、持分割合が不明確なまま実際の費用負担が偏っていると、「誰がどの程度の権利を有しているのか」といった点で紛争になることが少なくありません。

区分登記

これは、上下階を別々の住宅として物理的に分離し、各部分を独立した不動産として登記する方法です。マンションのように完全分離型の二世帯住宅であれば可能ですが、構造上の条件が厳しく、実務上は少数派です。

ただし区分登記されていれば、親の区分と子の区分がそれぞれ独立した資産として扱われ、権利関係は明確になります。

このように、二世帯住宅の相続では、登記の仕方が「誰の財産か」を決める出発点になります。まずは現状の登記内容を確認し、「誰がどの部分を法的に所有しているのか」を明確にしておくことが、相続トラブルを防ぐ第一歩といえるでしょう。

同居していても法的には“居住権ナシ”…トラブルの種になりやすい「長男の嫁」

同居していても法的には“居住権ナシ”…トラブルの種になりやすい「長男の嫁」

二世帯住宅の相続トラブルで非常に多いのが、「同居していた長男の妻は住み続けられるのか?」という問題です。

長男の妻は親族ではあるものの、法律上の「相続人」には該当しません。そのため、義理の親である被相続人(親世帯)が亡くなった場合、原則としてその家に対する法的な権利を一切持っていません。

よくある誤解が、「親世帯と同居していたのだから、住む権利がある」「長年介護してきたのだから、当然住み続けられる」という主張です。

もちろん、道義的には理解できる面もありますが、法的には別問題です。住宅が相続人(たとえば長男・次男・長女など)全員の共有財産となる以上、他の相続人が売却や明け渡しを求めれば、長男の妻が単独で住み続けることはできません。

もっとも、状況によっては一定の保護が認められることもあります。

たとえば、親が生前に「長男夫婦に住み続けてほしい」と明確に意思表示していた場合や、長男の妻自身がリフォーム費用を出していたような場合では、「使用貸借」の関係が成立していたと評価され、一定期間の明け渡し猶予が認められた裁判例もあります。

また、相続人である長男が亡くなったあとに、妻がそのまま居住を続ける場合には、「配偶者居住権」が問題となることもあります。

一方で、ほかの相続人から「家を売って現金で分けたい」と求められた場合、法的にそれを拒むことは難しいのが実情です。感情的な対立に発展しやすく、相続協議が長期化する典型的なパターンといえます。

こうしたトラブルを避けるには、親が生前に「誰が、どのように住み続けるのか」を明確にしておくことが重要です。

遺言書で長男の嫁の居住を認める内容を定めたり、使用貸借契約を文書で残しておいたりすることで、将来的なトラブルを大幅に減らすことができる可能性もあります。

住宅ローンが残っている場合、「団信」の有無で相続内容は大きく変わる

住宅ローンが残っている場合、「団信」の有無で相続内容は大きく変わる

二世帯住宅では、親が住宅ローンを組んで家を建てているケースも多くみられます。このとき注意しなければならないのが、親が亡くなった時点でローンが残っている場合の扱いです。

ローンの残債有無や「団体信用生命保険(以下「団信」)」への加入状況によって、相続財産の評価や相続人間の公平性が大きく変わってきます。

まず、親が団信に加入していた場合、親の死亡によってローン残高は保険金で完済されるのが一般的です。この時点で債務は消滅し、抵当権も抹消されます。

つまり、「住宅ローンがゼロになった家」がまるごと相続財産として残るため、不動産の価値(評価額)は大きく上がることになります。

特に、同居していた長男夫婦がそのまま住み続ける場合、ほかのきょうだいから「ローンがなくなって得をしている」と不公平感を抱かれるケースが少なくありません。

一方で、親が団信に加入していなかった場合、ローンの残債はそのまま相続財産に含まれます。したがって、相続人は法定相続分に応じて債務も引き継ぐことになるのです。

もっとも、実際には同居している子どもがそのまま返済を続けることが多く、「誰がどの負担をするのか」で揉めることがしばしばあります。

仮に長男がローンの返済を続けたとしても、その返済分が自動的に「長男の持分になる」わけではありません。

返済分を「特別受益」や「寄与分」として評価できるかが問題になりますが、住宅ローンの返済は日常の生活費と混在しやすく、どの部分が相続財産の形成に直接寄与したのかを明確に示すのが難しいケースが多いのが実情です。

さらに、住宅ローンの名義人と実際の居住者が異なる場合(たとえば親名義の家に子どもが住んでいる場合)は、返済や税務処理の整理も複雑になります。

団信によってローンが完済扱いになったとしても、名義変更や遺産分割協議を放置してしまうと、相続登記の義務化(令和6年4月施行)により、相続発生を知った日から3年以内に登記を済ませない場合、正当な理由がなければ過料の対象となる可能性があります。

このように、二世帯住宅における住宅ローンの扱いは、「団信加入の有無」「返済者と名義人の一致」「負担割合の証拠」の3点が重要なポイントです。遺言書を作成するなど、相続開始前からこれらを明確にしておくことで、のちのトラブルを大きく減らすことができるでしょう。

将来のあらゆる相続トラブルを“沈静化”する「遺言書」作成のコツ

将来のあらゆる相続トラブルを“沈静化”する「遺言書」作成のコツ

二世帯住宅の相続トラブルを防ぐもっとも有効な方法は、「遺言書」によって親の意思を明確にしておくことです。

特に、誰がどの部分を使い続けるのか、将来的に売却するのかといった方針を、生前のうちに家族で共有しておくことが功を奏します。

遺言書を作成する際は、誰がどういう財産を承継するのか、売却するのかなどをできるだけ具体的に書き込むことで、後々の「解釈の余地」をできる限り減らせるため、トラブル防止に効果的です。

また、登記を共有から単独や区分に変更したり、リフォーム費用やローン返済の分担を記録に残しておいたりすることも有効です。

さらに、相続発生前に「家族会議」を設け、相続人全員の合意を文書として共有しておくのも一つの方法です。

ただし、このような合意書は遺言書に優先する法的効力を持つわけではないため、あくまで“補助的な資料”として位置づけ、遺言書と併せて準備しておくことが、二世帯住宅を円満に承継するうえで有効です。

ただし、生前に話し合うことでかえって感情的な対立を深めてしまうような場合には、遺言書のみをしっかりと作成しておき、相続発生後に冷静に対処するしかないケースもあります。状況に応じた柔軟な判断が求められるでしょう。

法と感情が絡み合う「二世帯住宅」こそ、生前対策を

法と感情が絡み合う「二世帯住宅」こそ、生前対策を

今回取り上げた「二世帯住宅」は、弁護士である筆者の経験上、特に相続トラブルが起きやすい印象があります。

住んでいる側からすれば、それが長年続いてきた「当たり前の日常」であったにもかかわらず、相続が発生した途端「代償金を支払え」「家を出ていけ」といわれるのは理不尽に感じられるものです。

一方で、住んでいないきょうだいの側からすると、「家賃分で自分たちより得をしているのに、なぜ法定の相続割合すら公平に分けないのか」と不満を抱くケースが少なくありません。

このように、二世帯住宅の相続は、法的な問題と感情的な対立が絡まりやすいのが特徴です。だからこそ、事前の準備がなにより重要です。生活と財産が密接に絡む二世帯住宅の相続こそ、遺言書による明確な意思表示と、可能な範囲での生前の話し合いが効果的です。

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

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