フリーランスや個人事業主として働く場合、病気やケガで働けなくなったときの収入減少は深刻な問題です。
会社員と異なり、フリーランスは労働基準法などの労働者保護制度の対象外であり、傷病手当金などの公的保障も手薄です。そのため、自助努力による備えが欠かせないといえるでしょう。
本記事では、フリーランスが抱える公的保障の穴と、就業不能保険で備えるメリット、保険選びのポイントを解説します。
- フリーランスは傷病手当金や障害厚生年金がなく会社員より公的保障が手薄な構造
- 就業不能保険と所得補償保険の保障期間・免責期間・精神疾患の扱いなど主な相違点
- 必要な保障額を算出するための不足額計算式と給付月額設定の具体的な考え方
- 免責期間60日と180日の選択基準や保険期間をライフイベントに合わせて設定する方法
フリーランス・個人事業主が抱える公的保障の穴

フリーランスや個人事業主は、会社員と比較して休業時の公的保障が手薄であることをご存じでしょうか。
会社員であれば利用できる「傷病手当金」や「障害厚生年金」「雇用保険」といった制度が、国民健康保険・国民年金に加入するフリーランスにはないか、内容が大きく異なります。以下の表で会社員との制度格差を確認してみましょう。
| 制度 | 会社員 | フリーランス |
|---|---|---|
| 傷病手当金 | 標準報酬月額の2/3を最長1年6か月支給 | 原則なし(一部の国保組合・自治体で独自給付あり) |
| 障害年金 | 障害基礎年金+障害厚生年金(1〜3級) | 障害基礎年金のみ(1・2級のみ) |
| 雇用保険 | 失業給付・育児休業給付等あり | 加入不可 |
このように公的保障が手薄なため、民間の就業不能保険などで自助努力する必要性が高いといえます。
会社員と異なる「傷病手当金」の有無
会社員が加入する健康保険には、病気やケガで連続4日以上働けない場合に「傷病手当金」が支給される制度があります。支給額は標準報酬月額の3分の2相当で、支給期間は通算1年6か月です。
一方、フリーランス・個人事業主が加入する市区町村の国民健康保険には、原則としてこの傷病手当金制度がありません。ただし、一部の国民健康保険組合や自治体では独自の傷病手当金制度を設けている場合もあるため、加入先に確認することをおすすめします。
傷病手当金がない場合、フリーランスは働けない期間の生活費を補う仕組みを自身で用意しなければなりません。
年金制度における「障害年金」の受給範囲
障害年金は、病気やケガで一定の障害状態になった場合に支給される公的年金制度です。
受給には「初診日」の時点で年金制度に加入していること、保険料の納付要件を満たしていることが必要となります。
フリーランス(国民年金第1号被保険者)が受給できるのは「障害基礎年金」のみで、障害等級1級・2級に該当した場合のみ支給されます。令和7年度の障害基礎年金は1級で約104万円、2級で約83万円となっています。
これに対し、会社員(厚生年金第2号被保険者)は障害基礎年金に加えて「障害厚生年金」も受給可能です。障害厚生年金は3級でも支給対象となるため、フリーランスよりも手厚い保障を受けられます。
フリーランスが就業不能保険で備えるメリット

公的保障が手薄なフリーランス・個人事業主にとって、就業不能保険は「収入の代替」という役割を果たします。たとえば、ケガによる長期入院やがん治療で数か月間働けなくなった場合でも、経済的不安を軽減できます。
主なメリットは以下の3点です。
- 働けない間の収入源の確保
- 貯蓄切り崩しリスクの軽減
- 公的年金(障害基礎年金)の不足分補填
傷病手当金がないフリーランスにとって、就業不能保険は重要な備えとなります。経済的な不安を軽減することで、安心して療養に専念できる心理的な支えになる点もメリットといえるでしょう。
働けない間の収入源の確保
フリーランスは自身が働かなければ収入が得られず、働けなくなると収入が途絶えるリスクを常に抱えています。フリーランスは、会社員のように有給休暇や傷病手当金がありません。そのため、就業不能保険は働けない間の生活費(家賃、ローン、教育費など)を補う「給与」のような役割を果たすことになります。
なお、医療保険が治療費や入院費をカバーするのに対し、就業不能保険は生活費を補填する点が異なります。保険期間中は保険金が支払われることで、収入が途絶えない仕組みを自ら構築できる点が、就業不能保険を活用するメリットです。
貯蓄切り崩しリスクの軽減
働けない間は収入が減少する一方で、治療費の支出が増加します。貯蓄を切り崩しながら生活を続けると、将来の資金計画にも影響を及ぼしかねません。
就業不能保険に加入していれば、免責期間(60日・180日など商品により異なる)経過後は保険金を受け取れます。収入減と治療費支出が重なる状況でも、貯蓄の目減りを抑えることができるでしょう。
収入が不安定になりがちなフリーランスにとって、万一の際に貯蓄を守れるメリットは大きいといえます。
公的年金(障害基礎年金)の不足分補填
前述のとおり、障害基礎年金は受給条件(障害等級1・2級)が厳しく、受給額も会社員の障害厚生年金に比べて少ない傾向にあります。
令和7年度の障害基礎年金は1級で約104万円(月額約8.7万円)、2級で約83万円(月額約6.9万円)です。また、障害認定日(通常、初診から1年6か月経過後)まで時間がかかる場合もあるでしょう。
就業不能保険は、障害基礎年金だけでは足りない生活費の不足分を、保険期間中(たとえば65歳までなど)長期的にカバーできます。公的年金の受給開始を待つ間の収入を補い、受給後も不足分を補填できる点もメリットです。
就業不能保険と所得補償保険の主な相違点

フリーランスの休業に備える保険として「就業不能保険」と「所得補償保険」が混同されがちですが、両者には明確な違いがあります。
どちらも「働けない状態」に備える保険ですが、取り扱う保険会社や保険区分、保障期間、税制上の扱いなどが異なります。以下の表で特徴を比較してみましょう。
| 比較項目 | 就業不能保険 | 所得補償保険 |
|---|---|---|
| 取扱い保険会社 | 生命保険会社 | 損害保険会社 |
| 給付方法 | 定額給付 | 定額給付 |
| 保険期間 | 長期(例:60歳、65歳満了など) | 短期(例:1年更新など) |
| 保障(補償)期間(給付を受けられる期間) | 保険期間満了まで(長期) | 一定期間(例:1〜2年程度) |
| 免責期間(支払対象外期間) | 長め(例:60日、180日) | 短め(例:7日など) |
| 精神疾患の扱い | 商品により異なる(対象外、一時金、給付制限など) | 条件を満たす場合に、一部対象となる商品もあり |
| 給付金の課税 | 非課税 | 非課税 |
保障(補償)期間(長期・短期)の違い
就業不能保険は生命保険会社が取り扱い、保険期間が「60歳まで」や「65歳まで」など長期にわたる商品が一般的です。所得補償保険は損害保険会社が取り扱い、保険期間は1年更新、保障期間も1〜2年程度が主流となっています。
所得補償保険は更新制のため、がんなどの慢性疾患や長期療養が必要なケースには対応しにくい面があります。一方、就業不能保険は長期型で老後までの備えに適しており、長期の療養リスクに備えたい場合に向いているでしょう。
免責期間(支払対象外期間)の違い
就業不能保険の免責期間(給付金が支払われない期間)は「60日」や「180日」と比較的長く設定されている商品が多いのに対し、所得補償保険は「7日」程度と短い傾向にあります。
フリーランスは傷病手当金がないため、免責期間が短い60日タイプの方が現実的といえるでしょう。ただし、免責期間が短いほど保険料は高くなるため、貯蓄額とのバランスで判断することが大切です。
精神疾患の保障範囲の違い
所得補償保険では、うつ病などの精神疾患が「保障対象外」となる商品が多い傾向にあります。就業不能保険も精神疾患を保障対象外とする商品や、給付期間が制限される場合がありますが、商品によっては精神疾患も保障対象に含むものも存在します。
ただし、精神疾患が対象となる場合でも、給付回数や給付期間に制限が設けられているケースが一般的です。精神疾患への備えを重視する場合は、各商品の保障内容を十分に確認してから加入することをおすすめします。
フリーランス・個人事業主のための保険の選び方

フリーランスや個人事業主が就業不能保険を選ぶ際には、自身の状況に合わせた設計が重要です。公的保障(傷病手当金)がないことを前提に、「どれだけの期間」「いくら」必要なのかをシミュレーションしてみましょう。
保険選びで注目すべきポイントは以下の3点です。
- 必要な保障額(給付月額)の設定
- 免責期間(60日/180日)の選択
- 保険期間(保障が続く年齢)の設定
保険料と保障内容のバランスを取るために、まず毎月の不足額を把握することが大切です。不足額は以下の式で算出できます。
【不足額 =(月間生活費+固定費)-(配偶者収入+貯蓄取崩し額)】
この不足額を目安に、自分に合った保障内容を検討していきましょう。
必要な保障額(給付月額)の設定基準
給付月額を決めるためには、まず働けなくなった場合に毎月最低限必要な生活費を計算する必要があります。固定費(家賃・ローン・保険料など)と変動費(食費・光熱費など)を洗い出しましょう。
計算の目安として「(毎月の生活費)-(配偶者の収入や不動産収入など)」で不足額を算出する方法があります。なお、年収の60〜70%程度など給付金の上限が設けられているケースもあるため、加入前に確認が必要です。
免責期間(60日/180日)の選択基準
免責期間中は給付金を受け取れないため、その期間を自己資金(貯蓄)で賄えるかどうかが選択基準となります。傷病手当金がないフリーランスは、会社員に比べて早めに給付金が必要となるケースが多いでしょう。
免責期間が短い(60日など)タイプは保険料が高くなる傾向にあるため、現在の貯蓄額と保険料のバランスで判断することが大切です。
また、再発時は再度免責期間が適用される商品もあるため、約款で確認しておきましょう。
保険期間(保障が続く年齢)の設定基準
保険期間は、自身のライフプランに合わせて設定しましょう。たとえば、子どもの教育費がかかる期間(55歳までなど)、住宅ローンの返済が終わるまで(65歳までなど)といった設定が考えられます。
フリーランスは老齢基礎年金のみの場合が多いため、公的年金を受給し始める年齢(65歳や70歳など)までをカバーするなど、長期の保障も検討する必要があります。
フリーランス・個人事業主のニーズに応える「就業不能保険 働く人への保険3」

ライフネット生命の「就業不能保険 働く人への保険3」は、入院や在宅療養(医師の指示による治療専念が要件)、障害等級1級・2級認定など、所定の就業不能状態を保障対象としています。
また、精神疾患については、所定の条件を満たした場合に一時金が支払われる仕組みがあります。
加入を検討する際は、約款や重要事項説明書で保障内容や支払条件を十分に確認してください。
参考:ライフネット生命「就業不能保険 働く人への保険3」
※給付には所定の免責期間・条件があります。詳細は最新の約款をご確認ください。
おわりに
フリーランス・個人事業主は、会社員に比べて公的保障が手薄であり、病気やケガで働けなくなったときのリスクに自身で備える必要があります。
就業不能保険は、傷病手当金のないフリーランスにとって、収入の代替として重要な役割を果たします。
保険選びの際は、必要な保障額・免責期間・保険期間を自身のライフプランに合わせて設定し、精神疾患の保障範囲も確認することが大切です。
まずは毎月の不足額を算出し、自分に必要な保障内容を見える化することから始めてみましょう。保険料のシミュレーションや保障内容の比較を通じて、自分に合った備えを検討してみてはいかがでしょうか。
よくある質問(FAQ)
市区町村の国民健康保険には原則ありませんが、一部の国民健康保険組合や自治体では独自制度を設けている場合があります。加入先に確認してみましょう。
国民健康保険には傷病手当金が原則ないため、公的保障は限定的です。民間の就業不能保険や所得補償保険を活用することで、休業中の生活費を補うことができます。
就業不能保険・所得補償保険ともに、病気やケガで受け取る給付金は非課税です。
就業不能保険では、条件を満たせば一部対象となる商品もあります。ただし、給付回数や給付期間に制限が設けられているケースが一般的です。加入前に各商品の保障内容を確認しましょう。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

