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住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を受けている自宅、賃貸に出してもいい?…「マイホーム」で不動産投資を始める際の注意点【弁護士が解説】

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を受けている自宅、賃貸に出してもいい?…「マイホーム」で不動産投資を始める際の注意点【弁護士が解説】
山村 暢彦(山村法律事務所 代表弁護士)

執筆者

山村法律事務所 代表弁護士

山村 暢彦

実家の不動産・相続トラブルをきっかけに弁護士を志し、現在も不動産法務に注力。税理士・司法書士等の他士業や不動産会社からの複雑な相続業務の依頼が多数。遺産分割調停・審判に加え、遺言書無効確認訴訟、遺産確認の訴え、財産使い込みの不当利得返還請求訴訟など、相続関連の特殊訴訟の対応件数も豊富。

住宅ローン控除を受けている自宅について、賃貸物件として運用することは原則して認められていません。一方、条件さえ満たせば「例外」として認められるケースもあるのだとか。

住宅ローン物件を用いた賃貸業のリスクとペナルティ、そして例外として認められるケースについて、大家経験のある弁護士の山村暢彦氏が解説します。

住宅ローン控除を受けている自宅、賃貸に出してもいい?

住宅ローン控除を受けている自宅、賃貸に出してもいい?

結論から言うと、原則として認められていません。

自宅を賃貸に出した時点で、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は打ち切られます。さらに注意すべきなのは、税金の問題にとどまらず、住宅ローン契約そのものに違反するリスクがあるという点です。

ひと昔前までは、「短期間なら大丈夫」「住民票を残していれば問題ない」「グレーだけど黙認されている」といった説明がされることもありました。

しかし、現在の実務ではこのような認識は通用しません。金融機関のチェック体制は年々厳格化しており、住宅ローンを利用したまま賃貸に出していたことが発覚すれば、一括返済を求められるケースも、実務上報告されています。なかには、違法なスキームを積極的に紹介していた業者が摘発・逮捕されている事例もあります。

一方、「転勤」を理由とする場合など、例外的に賃貸が認められるケースがあるのも事実です。ただし、それはあくまで限定的な例外にすぎません。

住宅ローン控除と「自宅の賃貸化」の原則

住宅ローン控除と「自宅の賃貸化」の原則

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、あくまで「自ら居住する住宅」を取得するために住宅ローンを利用した場合に認められる制度です。言い換えれば、マイホームとして住むことが前提条件であり、投資用不動産を想定した制度ではありません。

そのため、住宅ローンを利用して購入した自宅を第三者に貸し出した場合、その時点で「自己居住用」という前提が崩れ、住宅ローン控除は原則として適用できなくなります。

これは短期間であっても、あるいは一部のみを貸し出す場合であっても、基本的な考え方は同じです。

さらに重要なのは、問題が税務だけにとどまらない点です。

住宅ローンは、金融機関との契約に基づいて提供されるものであり、その多くは「自己の居住用であること」を融資条件としています。にもかかわらず、実態として賃貸に出している場合、それは住宅ローン契約違反に該当する可能性があります。

近年では、金融機関側も登記情報や住民票、賃貸情報などを多角的に確認するようになっており、「発覚しなければ大丈夫」という発想自体が、非常に危険です。

インターネットやSNSでは、「住宅ローンを使って不動産投資を始める方法」といった情報も見受けられます。しかし、少なくとも現在の実務において、住宅ローンを利用した賃貸経営は、原則として認められないと考えるべきです。

安易に始めてしまうと、控除の打ち切りだけでなく、思わぬ金銭的・法的リスクを背負うことになりかねません。

住宅ローン控除を受けながら賃貸に出せる「例外」とは

住宅ローン控除を受けながら賃貸に出せる「例外」とは

住宅ローンを利用して取得した自宅を賃貸に出すことは原則として認められませんが、例外的に合法とされているのが「転勤特例」です。

これは、本人の意思とは無関係に、勤務先の命令等によって転居せざるを得なくなった場合にまで、一律に住宅ローン控除や住宅ローン契約上の不利益を課すのは妥当ではない、という考え方に基づきます。

転勤特例が問題となるのは、一定期間の転勤により自宅に住めなくなり、その間だけやむを得ず第三者に貸し出すケースです。このような場合には、一定の要件を満たすことで、住宅ローン控除の適用が継続されると解されています。

ただし、ここで注意すべきなのは、「転勤すれば自動的にOK」という制度ではないという点です。

実務上重視されるのは、第一に「転勤等がやむを得ない事情であるか」、第二に「将来的に再びその住宅に居住する意思があるか」という点です。

単に住み替えたい、広い家に移りたいといった個人的な理由では足りず、あくまで一時的・例外的な不在であることが前提となります。

また、賃貸期間が過度に長期化している場合には「もはや自己居住用とはいえない」と評価されるリスクもあります。

よくある誤解として、「住民票を残しておけば大丈夫」「数年以内なら問題ない」といった説ですが、これらはいずれも正確ではありません。

住民票の有無は判断要素の一つにすぎず、それだけで適法・違法が決まるわけではありませんし、「何年までならOK」という明確な線引きが存在するわけでもありません。重要なのは、実態としてどう評価されるかです。

さらに注意が必要なのは、たとえ税務上は転勤特例に該当するとしても、金融機関との住宅ローン契約において賃貸が許されているかどうかは別問題、ということです。

契約内容によっては、事前の届出や承諾が必要とされているケースもあり、これを怠れば契約違反と評価される可能性があります。

このように、転勤特例は“万能の抜け道”ではなく、あくまで“限定的な救済措置”にすぎないのです。

“内緒で賃貸運用”の致命的な契約リスク

“内緒で賃貸運用”の致命的な契約リスク

住宅ローンを利用したまま自宅を賃貸に出す行為が危険なのは、住宅ローン控除が打ち切られるからだけではありません。むしろ、より深刻なのは、金融機関との住宅ローン契約に違反するリスクです。

住宅ローンは、金利が低く設定されている代わりに「自己居住用であること」を前提として融資されます。これは多くの住宅ローン契約書に明記されており、実態として第三者に貸し出している場合、その前提が崩れていると評価されかねません。

このような場合、金融機関は「期限の利益喪失」を理由に、ローン残額の一括返済を求めることができます。

「いきなり全額返せと言われるのか」と疑問に思う人も多いでしょう。しかし、これは決して机上の空論ではありません。近年では、賃貸情報サイトへの掲載や登記・住民票情報、確定申告の内容などから、無断賃貸が発覚するケースも増えています。

一度発覚すれば、「悪質性はない」「知らなかった」といった事情が考慮されるとは限らず、結果として多額の返済義務だけが残ることもあるのです。

また、こうしたスキームを「節税になる」「誰でもやっている」と称して紹介していた不動産業者やコンサルタントが、詐欺的手法として摘発・逮捕されている事例も見受けられます。

違法性の高い手法であるにもかかわらず、「グレーだから問題ない」「自己責任でやればいい」と説明され、結果的に利用者だけが大きなリスクを負う構図です。

注意すべきなのは、税務上の評価と、金融機関との契約上の評価が、必ずしも一致しないという点でしょう。

たとえ転勤特例が認められる可能性がある場合でも、住宅ローン契約に基づく事前承諾や届出を怠っていれば、契約違反と判断される余地は残ります。つまり、「税務的に大丈夫そうだから安心」という判断は、非常に危ういのです。

インターネットやSNSでは、「住宅ローンを活用した不動産投資」という言葉が魅力的に語られることがあります。

しかし、現在の実務に照らせば、住宅ローンを利用して賃貸経営を行う行為は「明確にリスクの高い行為」であり、安易に手を出すべきではないでしょう。

筆者が関与した案件においても、住宅ローンを用いて賃貸運用を試みた結果、金融機関から残債の全額返済と不動産売却を求められた事例がありました。

例外的に認められるのは転勤特例などわずかな例外であり、その要件も厳格です。マイホームを活用した賃貸や住み替えを検討する際は、事前に専門家へ相談することをおすすめします。

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

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