相続はいつか誰しもに発生する問題です。相続した財産について相続人間で協議がすぐまとまれば良いですが、なかなか順調に進まない方も多いようです。特に土地を相続する場合、相続税についてトラブルに発展するケースもあります。
この記事では、相続税の概要や各種控除、相続税が払えない主なケースや払えない場合の対処法について解説します。相続が発生して相続財産のうちに土地が含まれる方、財産に土地が多い方はぜひ参考にしてください。
(本記事は2024年2月1日時点の情報です)
- 相続税は基礎控除以下であれば納付しなくてよい
- 土地の相続税は一括納付が原則だが、払えない場合は分割納付の延納や物で納める物納が利用できる
- 現金の納税資金がない場合には、土地を売却して充当する方法もある
- どうしても納付できない場合は相続放棄や資金の借入など検討できる方法がある
土地の相続税について
土地を相続したら気になるのが税金に関することではないでしょうか。まずは、土地の相続税が発生するケースと、不要なケースとの違いを解説します。
【土地の相続税について】
- 基礎控除以下の場合は相続税がかからない
- 控除や特例によっては納税が不要になるケースも
- 土地は相続人でも分割できる
基礎控除以下の場合は相続税はかからない
相続が発生した場合、その相続財産すべてに対して相続税がかかるわけではありません。相続税には基礎控除があるからです。基礎控除を超えた場合は、相続税の課税対象となります。逆にいえば、基礎控除以下の場合には、相続税は発生しません。
相続税の基礎控除額は以下の式で求められます。
3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
例えば、法定相続人が3人である場合、基礎控除額は4,800万円です。この場合、4,800万円以下であれば相続税はかからず、超えた分に対して相続税がかかります。
控除や特例によっては納税が不要になるケースも
相続は、誰かが逝去することにより発生することが避けられない税金です。あまりにも相続税が高すぎると、遺族に遺産が残らない事態になりかねません。
そこで、相続税については、配偶者控除などの控除や特例が設けられています。これらの適用を受けることにより、相続税全体が非課税になるケースもあるので把握しておきましょう。知っておきたい控除や特例は、以下の通りです。
- 配偶者控除
- 贈与税額控除
- 未成年者控除
- 小規模宅地等の特例
配偶者控除
配偶者控除とは、被相続人(亡くなった人)の配偶者だけに適用される控除です。1億6,000万円または法定相続分のどちらか多い金額まで非課税となります。
どちらか多い金額までを上限として非課税となるため、基本的に、被相続人死亡時に配偶者がいる場合には、配偶者に対する財産は守られることになります。
贈与税額控除
贈与税額控除は、被相続人が死亡する前の7年間に財産を贈与し、贈与税をすでに支払っている場合に対象となります。相続税と贈与税が重複して課税されないように、既に贈与税として支払っている税額を控除する仕組みです。
なお、令和5年度税制改正により、相続などにより取得した財産に加算する贈与財産の範囲が相続開始前3年以内から相続開始前7年以内に延長されました。
参照元:国税庁|No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)
未成年者控除
未成年者控除とは、相続人が未成年の時に相続税額から一定の金額を控除する仕組みです。控除額は\「(18歳-相続発生時の年齢)×10万円」の式で求めます。
小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例とは、宅地の評価額が80%減額される制度です。この場合の宅地とは、被相続人の家が建っている土地のことなので、家が建っていない単なる空き地や更地は対象となりません。
宅地の要件として、330平方メートルまでの土地について、その評価額が80%減額されます。
土地は相続人で分割もできる
相続財産に土地が含まれる場合、土地は相続人1人だけに割り当てなければいけないわけではなく、複数の相続人で分割することも可能です。土地を物理的に分割して分ける方法(現物分割)や、分割せずに共有名義として相続する方法(共有分割)のほか、金銭として分割する代償分割や換価分割があります。
土地の相続税が払えないのはなぜ?
相続税は納付期限があり、それまでに納付できない事態に陥ることもあり得ます。ここでは、相続税が払えなくなるパターンについて見ていきましょう。
【土地の相続税が払えなくなるパターン】
- 遺産分割協議がまとまらない
- 相続財産が不動産ばかりで現金がない
- 相続した不動産はすぐに売却することが難しい
遺産分割協議がまとまらない
遺産分割協議とは、相続人間で協議(話し合い)の上で遺産分割について取り決めることです。
この話し合いがまとまらなければ、被相続人の資産は凍結された状態のままです。例えば、被相続人の死亡に関連する支払いが生じた場合でも、資産のうち預金口座では現金の引き出しが出せない状態が続きます。結果として、相続税の納付期限に間に合わない事態に陥りかねません。
相続財産が不動産ばかりで現金がない
相続税は、原則として一括で納付しなければなりません。
一般的に、相続財産のうち不動産の割合が多いと相続税は高額になり、納税額が資産を上回ることもあります。そうなった場合には、手元に現金がないと相続税納付が難しくなるでしょう。
相続した不動産はすぐに売却することが難しい
相続した不動産の売却を希望する場合、なかなか売れずに時間がかかることが多いです。売却できなければ、納税資金が手元にない状態であり、結果的に相続税の納付期限に間に合わないこともあるかもしれません。
相続だけでなく、土地も含めた不動産の売却に関しては立地条件や家の状態によって売却までの時間や、売却金額には差があります。
例えば、人気のエリアに所在している不動産などであれば、すぐ買い手がつくかもしれません。しかし、すぐに売れるケースは少なく、思ったようなスケジュールで不動産を現金化できないこともあると想定しておいたほうが良いでしょう。
土地の相続税が払えない場合の対処法5選
相続税には納付期限があり、それまでに払えないとペナルティを受けることや、最悪の場合は差し押さえとなることもあります。払えない場合でも、早めに以下のような対策を取ることで対処できるかもしれません。
【土地の相続税が払えない場合の対処法5選】
- 延納制度を利用する
- 物納制度を利用する
- 売却益を現金化して納める
- 相続放棄をする
- 資金を借りる
延納制度を利用する
相続税の納付には期限があり、原則として一括納付しなければなりません。期日までに払えない場合や、納税資金が足りない場合に利用できる制度として「延納」と「物納」があります。物納については後述しますが、ここではまず延納について見ていきましょう。
延納とは、本来は一括納付すべき税金を分割で払える制度です。ただし、次の要件を満たしている場合に利用できます。なお、分割で払える期間は5年から最長20年までです。
- 相続税の納税額が10万円を超えている
- 金銭による一括納付が困難な理由がある
- 延納申請期限までに延納申請書・担保提供関係書類を税務署に提出している
- 延納税の額に相当する担保を提供している
物納制度を利用する
物納制度は、どうしても納税資金として現金が準備できない場合に利用できます。物納とは、資産で納付することです。物納を希望する場合には次の要件を満たさなければなりません。
- 延納制度を利用しても現金で支払うことが困難であること
- 物納申請財産は決められた種類・順位で、かつ日本国内にあること
- 物納申請期限までに物納手続関係書類を税務署に提出すること
延納と物納は、いずれも相続税が払えない時に検討できる制度です。相続税が払えない場合には、まず延納を検討し、それでも納税資金がない場合には物納を検討することになります。つまり、相続税が払えないからといって、いきなり物納を利用することはできません。
売却益を現金化して納める
相続する土地を売却し、それを資金として納税する方法があります。ただし、土地の売却にあたっては、売却する相続人が土地所有者として名義変更をする必要があり、時間がかかる場合があるため注意しましょう。
相続放棄をする
どうしても土地の相続税が納付できない場合、相続があったことを知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所で相続放棄の手続きができます。
相続放棄をすることで、財産を受け取る権利がなくなるため、相続税の納税義務も発生しません。しかし、単に相続税を納税できないという理由のみで安易に放棄を選択するよりも、司法書士や弁護士に相談の上で進めていくことをおすすめします。
資金を借りる
さまざまな方法を検討したものの、どうしても解決できず、特に相続税の納付期限が迫っている場合には、資金を借りることも選択肢のひとつです。
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相続税が払えないと「差し押さえ」の可能性あり
相続税の納付期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヵ月以内です。相続税の納付期限内に支払えない場合、対処せずに放置していると、相続財産が差し押さえされる可能性があります。
差し押さえされた土地は競売にかけられ、売れた金額は納付すべき相続税額に充当されます。
土地の相続税は結局どうすればいい?
相続税を払えないからといって自己破産しても支払いは免れません。延納制度や物納制度などの利用もできますが、いずれ納税しなければいけない相続税はできるだけ一括納付できる手段を選ぶのがおすすめです。
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おわりに
土地を相続すると、相続税が発生する可能性があります。納税資金をあらかじめ準備できていれば良いですが、そうでない場合でも原則として一括納付しなければなりません。どうしても相続税が払えない場合は、分割で納付できる延納と、物で納める物納という方法がありますが、それぞれ要件を満たす必要があります。土地の相続や相続税についてご不安がありましたら、専門家への相談やカードローンなどの資金調達方法も検討してみてください。