街中や自然の中を歩いている時、耳を澄ませばさまざまな音が聴こえてきます。音楽は人間の感情をさまざまな方向へ導く作用があります。癒しを感じたり、テンションが上がったりなど、知らず知らずのうちに音楽の影響を受けながら生きているのです。
テレビや映画、ゲームなどに流れるBGMは物語を盛り上げる、彩るために欠かせないものです。ここぞという時にお気に入りの音楽を聴けば、感傷に心ゆくまで浸ることができ、自身の人生を見つめ直したり、愛したりするきっかけになるでしょう。音楽の持つさまざまな素晴らしい効果を知り、ご自身の人生に彩りを与えていきましょう。
1.音楽の持つ力と効果について
みなさんそれぞれ好きな音楽やお気に入りの音楽がありますか?音楽は何となく気が向いた時やヒマつぶしのためだけに聴いている方が多いかもしれません。音楽の持つ力を知り、作詞や作曲者の思いや意図をもって聴けば、ストレス解消ややる気アップにつながり、毎日の生活がより充実したものになるでしょう。
ここからは、音楽の持つ力と効果について紹介しましょう。
1-1.音楽のテンポが人に与える効果は
「メロディー」「リズム」「ハーモニー」「テンポ」「音の高低」「歌詞のメッセージ」など、音楽はさまざまな要素が絡み合い、形作られています。この中で特に注目したいのが、音楽のテンポです。曲のテンポは「BPM」で表され、この数値は「1分間の拍数」を示しています。
例えば120BPMの場合は、「1分間で120回リズムを刻む」という意味です。一般的に、BPMの数値が高くなるにつれ、気持ちが盛り上がったり、高揚感が増したりし、交感神経が優位の状態になります。一方、BPMの数値が低いものには鎮静効果があり、副交感神経を優位にさせ、リラックスにつながるのです。人の精神が音楽のテンポと同調することで、やる気が高まったり、癒しを感じたりします。音楽で気分を変えたい時は、曲のBPMに注目してみましょう。
1-2.音楽は心と体を癒したりするヒーリング効果や気分を変えてくれる効果がある
音楽には「ヒーリングミュージック」というジャンルもあります。ヒーリングミュージックにはα波を放つ音が使われており、心の疲れを癒し、身体の疲労をほぐす効果があります。そして、ヒーリングミュージックには「1/fゆらぎ(エフぶんのいちゆらぎ)」が意図的に含まれています。「1/fゆらぎ」は自然界の音などに含まれるリズムのことで、「1/fゆらぎ」を感じると、リラックス効果や集中力がアップする効果などがあるといわれています。慢性的な疲労を抱えていたり、休み明けでだるさを感じていたりする場合は、ヒーリングミュージックを聴いてみましょう。
音楽には、歌詞のある曲とない曲があります。ファイトソングのように心に訴えかける歌詞は、言葉が心に残り、勇気付けられたり、自信が高まったりすることもあります。心に刺さる歌詞が印象的な泣ける曲を聴けば、心が落ち着いたり、優しい気持ちになったりもするでしょう。楽しい音楽を聴けば元気が出てきますし、ノリノリなアップテンポの曲を聴けば、自然とテンションもアップするでしょう。音楽は気分を変えたい時に、力を貸してくれます。
1-3.運動効果を上げる
スポーツジムなどに行くと音楽が流れていたり、音楽を聴きながらトレーニングをしていたりしている方がいますが、それは音楽の運動アップ効果を期待してのことかもしれません。例えば、好きな音楽を聴くと、脳内からドーパミンが分泌され、ランナーズハイのような状態になります。高揚感や満足感により、精神的な疲れを感じにくくなり、楽しみながらトレーニングに取り組むことができるでしょう。また、心拍、呼吸、運動、この3つが上手く調和することをカップリングといい、テンポの良い音楽はこのカップリングを誘発させるのに役立ちます。3つのリズムがシンクロすることで、動きに無駄がなくなり、運動効果を高めてくれます。
1-4.音楽は気分に合ったものを聴く
憂鬱な気持ちに元気を注入できるよう、気分が落ち込んでいる時は、どうしても明るめの音楽、ノリノリの曲を聴きがちです。しかし、心理学的には、気分と反対のものよりも、その時の気持ちと合うような曲を聴いた方が、精神が安定するといわれています。これは「同質効果」といわれ、音楽療法の現場などで使われているようです。イライラしている時は激しめの曲、気分が落ち込んでいる時は静かでゆったりしている曲、せかせかしている時はスピード感がある曲などがおすすめです。歌詞があると色んな感情が湧いてくるので、歌詞がないインストゥルメンタルや外国語の曲などを聴くと、同質効果の影響を高めることができます。
2.こんな時に音楽を聴こう
普段は何気なく耳にしている音楽。しかし、音楽のひらめきを与えたり、安らぎを与えてくれたりする効果が分かれば、聴くタイミングを意識したいもの。ここからは、どんな時にどんな音楽を聴けば良いのか、具体的に紹介します。
2-1.頭を使う仕事中や勉強中に聴きたい!「バロック音楽」を聴くと集中力・記憶力がアップ
集中力や記憶力を高めたいならば、「バロック音楽」が最適です。バロック音楽とは、17世紀から18世紀半ばまで、ヨーロッパ中心に栄えた音楽のことをいいます。バロック音楽は、「超記憶音楽」と呼ばれており、記憶力アップにつながることが知られています。BPM60~64程度のテンポの曲は、集中するのに適した雰囲気を作り出し、深い集中状態へと導いてくれます。
ヴィヴァルディ【Antonio Vivaldi】、バッハ【Johann Sebastian Bach】、スカルラッティ【(Giuseppe Domenico Scarlatti】、クープラン【François Couperin】、ヘンデル【Georg Friedrich Händel】、テレマン【Georg Philipp Telemann】など、これらの方の作品を聴いてみましょう。バロック音楽の名曲を集めたCDなどを買ってみて、作業がはかどる音楽を探すのも良いでしょう。
モーツァルトの曲は、クラシック音楽の中でもリラックス、癒し効果が高いともいわれます。集中して作業をし、脳が疲れたならば、モーツァルトの曲を聴いてみましょう。
2-2.食事の時に音楽を流そう!優雅な気分にさせたり食欲を促進させたりする効果も
クラッシック音楽には、食欲を増進させる効果があるといわれています。ヴァイオリン、チェロ、フルート、ハープなど、華やかな音色を聴いたりすれば、優雅なひと時を楽しむことができるでしょう。ただ、料理やその場の雰囲気にあまり合わない音楽を流すと、気分は乗ってこないものです。
日本料理を食べる時は和楽器が主体の曲、中華料理を食べる時は中華風メロディーの曲、イタリア料理を食べる時はクラッシック、ファーストフードを食べる時は親しみやすいポップス、コーヒーを楽しみたい時はジャズやボサノバなど、色々雰囲気を合わせていくことが大切です。
また、音楽のテンポと食事には、意外な関係性もあります。ゆっくりしたテンポの曲を聴くと、リラックスできて食事をゆっくり楽しむことができます。一方、テンポが速い曲は食欲を増進させたり、食事のスピードを高めたりする効果があるようです。食事の時に音楽を取り入れたい時は、状況に合わせて流すBGMを考えていきましょう。
2-3.なかなか寝付けない時に!毎日の快眠をサポート
睡眠中などの休養モードへ導くためには、心拍数を下げるため、スローテンポの曲を聴くのがおすすめです。BPM60~80のクラッシック音楽などが良いでしょう。ドヴォルザーフの交響曲第9番「新世界より」、バッハの「管弦楽組曲第3番 ニ長調 BWV 1068」、ベートーヴェンのピアノソナタ第8番ハ短調作品13「悲愴」などがおすすめです。
また、小川の流れる音、波の音、森の木の葉が揺れる音、小鳥のさえずりなど、アンビエントと呼ばれる環境音楽もリラックス効果があり、快眠に導いてくれます。音数が多かったり、歌詞があったりする曲は聴き入ってしまうため、睡眠時のBGMとして適さない可能性があります。睡眠中に音楽を聴くと、睡眠の質を下げる原因になることもあるので、10分後、15分後など、自動的に切れるように調整しましょう。
2-4.健康をサポート!音楽を聴きながらトレーニング
トレーニングやワークアウトにピッタリなのは、BPM120~140程度のアップテンポの曲です。運動中の心拍数と同程度のテンポの曲を聴くことで、ノリノリに体を動かせるようになり、運動効率がアップします。曲のジャンルとしては、ハードロック、ヒップホップ、EDM(エレクトロダンスミュージック)などがおすすめです。
トレーニング中のやる気を高めるためには、歌詞にもこだわるようにしてみましょう。熱いメッセージが込められた歌や、「せいや」「はっ」「おす」「うーはー」など、掛け声が入っている曲を聴けば、自身を鼓舞したり、元気が湧いてきたりして、楽しみながらトレーニングに臨めるはずです。
3.音楽の楽しみを広げるコツ
音楽はいつでもどこでも楽しめるものですし、老若男女問わず、誰でも気軽に生活の中に取り組むことができます。ただ、音楽をより深く楽しむためには、ちょっとしたコツが必要です。ここからは、音楽の楽しみを広げるコツを紹介します。
3-1.いつでも音楽を楽しめる機器を準備
音楽を聴く時に、いちいち聴きたいCDをプレイヤーに入れるのは大変です。音楽を気軽に楽しむために、「スマートフォン」「iPad」「MP3プレイヤー」などを準備しましょう。これらのものがあれば、家にいるときだけでなく、外出する時や、運動する時、勉強する時や雑用をする時など、気軽に音楽を楽しめるようになります。音楽を聴く時に必要になるイヤホンは、用途や目的に合わせて選ぶことが大事です。
自宅で聴く機会が多いならば、高音質が楽しめるハイレゾ対応モデル、立体感や臨場感たっぷりのサウンドを楽しむことができるサラウンド機能付きのものが適しています。外出先や少し騒がしい場所で作業することが多いならば、周囲の騒音を低減できるノイズキャンセリング機能が搭載されたイヤホンがおすすめです。運動する時に音楽を聴きたいならば、汗で濡れてもいいように防水機能や、激しい運動をしてもイヤホンが落ちないよう、外れにくいカナル型や耳かけタイプなどが適しています。
自動車や自転車に乗りながらイヤホンを使用すると、 危険に気付くのが遅くなったり、音楽に気を取られたりして事故のリスクが高まるので、使わないように注意しなければなりません。周りが危なくならないように、音楽を楽しむことが大切です。
3-2.音楽で感情を自由自在!状況に応じて聴くプレイリストを作成
音楽は聴いているだけでやる気がみなぎったり、暗い気分を吹き飛ばしてくれたり、明るい気分にさせてくれたりなど、私たちの心を照らしてくれる存在です。好きな曲や話題の曲を集めるのも良いですが、シチューシチュエーションごとに音楽を分けた方が、より効果的に音楽の力を活用することができます。「仕事用」「睡眠用」「食事用」「雑用用」「運動用」「気分転換用」というように、分かりやすいタイトルをつけることで、どんな時に聴けばいいのか一目瞭然になります。状況に合わせた音楽のプレイリストを作るコツは、テンポの速いモノや遅いものをゴチャゴチャにするのではなく、均等にすることです。テンポによって脳に与える影響が変わってくるので、なるべく似たような速度の曲を入れていきましょう。
また、同じ曲を聴いていると飽きてしまうので、定期的に新しい曲を追加したり、聴く場面としてマッチしていないという曲は排除したりしましょう。もちろん、自分の好きなアーティスト、ジャンルの曲を集めたプレイリストを作り、気分を上げたい時に聴くのも構いません。
3-3.好きな音楽のジャンルを広げる
私たちは、17歳の頃に慣れ親しんだ音楽を聴き続けるともいわれています。つまり、歳を重ねると新しいものには手を出さず、聴いている音楽が偏りやすいということを指しています。
例えば、一つのジャンルしか聴かないと、一定の感情や反応しか得られなくなり、音楽の持つ素晴らしい力を活かしづらくなります。ロック、ジャズ、オーケストラ、ダンスミュージック、和風の曲など、さまざまなジャンルの曲に興味を持ちましょう。聴くジャンルを新しく開拓する方法に、毎週違うアルバムを買ってみるという方法があります。
フラッと音楽ショップに立ち寄り、レコードのジャケットを見たり、視聴したりして、ピンと来たものを買ってみる。そうすることで色々なジャンルの音楽に興味を持つきっかけとなり、これまで聴いたことがない音楽が、あなたの楽しみや魅力を広げてくれるはずです。
3-4.自身の人生のテーマソングを決めてみよう
映画のインディージョーンズや、ジュラシック・パーク、スターウォーズ、ジョーズなどでは、主人公が活躍したり、重要なシーンだったりする時に壮大なテーマ曲が流れますよね。このように映画のBGMは、映画の雰囲気をそのままに伝えてくれ、ムードを一気に盛り上げてくれます。もし、主人公が活躍するシーンや、重要なシーンでやる気のないBGMが流れてきたら、カッコいいシーンも台無しになってしまうでしょう。音楽には、映画の映像と物語をつなげる役目があるようです。
人生をより良くするために、自身の人生のテーマソングを決めてみてはいかがでしょうか。自身の性格や雰囲気に合った曲や、クールになりたい、カッコよく生きたい、穏やかでありたいなど、「こういう風になりたい」というイメージを持ち、それに合った曲を選んでいきます。人生の岐路を迎えるような大事な場面で聴くことで、自信ややる気がみなぎったり、冷静さを取り戻して正しい判断をしたりすることができるはずです。
おわりに
同じ音楽だったとしても、聴く人によって脳に与える影響が変わってきます。人間の心身に良い影響を与えてくれるかは、その曲を愛しているか、好きかどうかが重要になります。好きな音楽を聴けば、ドーパミンが出てやる気がアップしたり、嬉しい気持ちになったりしますが、あまり好きではない曲の場合、退屈に感じたり、イライラを招いたりする場合もあります。
星の数ほどある音楽の中から、新しく自分好みのものを探し出し、オリジナルのプレイリストを作成してみましょう。場面に適した音楽を聴けば、楽しい気持ちになったり、やる気を引き出したり、心が動いたり、癒されたりなど、あなたの人生をサポートしてくれるはずです。