鉄分は、エネルギー不足を感じやすい方や、健康な成長に必要な栄養素を補いたい子どもにも大切な栄養素です。そのため、普段の生活から鉄分は意識的に摂取することが大切です。
このコラムでは鉄分についての詳細と、鉄分を多く含む食材についてご紹介します。日頃から鉄分が不足していると感じている方はぜひこのコラムを参考にしてください。
鉄分とは
鉄分(鉄)は身体に必要とされる必須ミネラルの一種で、赤血球の一部として血液中の酸素を運搬する重要な役割をもっている成分です。鉄分が不足すると、日常生活における「ハリ」が低下したりする場合があります。
そのため、煮干しや豚レバー、しじみといった鉄分を多く含む食材を日頃から意識的に摂取する必要があります。 体内には3〜4gの鉄分があり、『機能鉄』と『貯蔵鉄』の2種類に分けられます。
全ての鉄分のうち約70〜75%が機能鉄で、残りの25〜30%が貯蔵鉄です。機能鉄は酸素を全身に運ぶ役割を担っており、貯蔵鉄は機能鉄が不足した際に使われます。
「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」
食材から摂取できる鉄分は『ヘム鉄』と『非ヘム鉄』の2種類があります。
【ヘム鉄】
吸収されやすい種類の鉄分で、肉類などの動物性の食品に含まれてます。効率良く鉄分を摂取するならヘム鉄を意識的に料理に組み込むのがおすすめです。
【非ヘム鉄】
吸収されにくい種類の鉄分で、野菜などの植物性の食品に含まれています。非ヘム鉄を効率良く吸収させるには、吸収を促進するビタミンCと一緒に食べると良いです。
日本の食習慣から考えると、日本人が摂取している鉄分のほとんどが非ヘム鉄であるといわれています。そのため、日本人は意識的に鉄分を摂取するようにしていくことが重要になってくるでしょう。
鉄分を効率的に摂取する方法
日本の食習慣には鉄分を効率的に摂取しづらい現状があります。日頃から健康を意識して日本食を食べている方ほど、鉄分が不足しやすいので以下に紹介する効率的な摂取方法を実施しましょう。
【鉄分を効率的に摂取する方法】
- 鉄鍋や鉄球を使って調理する
調理の際に鉄鍋などを使えば、食品に吸収されやすい鉄分が溶け出すので比較的簡単に鉄分が摂取できます。酸性の食材(トマトなど)を調理すればさらに溶けやすくなるので、トマト煮込みなどを鉄鍋で調理すると効率良く鉄分を摂取できます。
- 吸収率を高める栄養素を同時に摂取する
鉄分の吸収率を高める栄養素には『ビタミンC・クエン酸・タンパク質・CCP』などがあります。食後にみかんを食べたり、料理にレモンを使ったりしてビタミンCを摂取するのがおすすめです。他にも肉や魚(タンパク質)を非ヘム鉄の小松菜などと一緒に食べるのもおすすめできます。
- 腸内環境を整える
腸内環境が悪いと、カンジタ菌という悪玉菌が増殖して腸に届いた鉄分を奪ってしまいます。腸内環境を整えるにはペクチンなどを多く含む食材を摂取しましょう。他にも砂糖をオリゴ糖に変えれば腸内への負荷を減らせるので効果的です。
- サプリメントを使う
鉄分を効率的に摂取するために作られたサプリは、吸収率の低い非ヘム鉄であっても、クエン酸とキレートさせてあったりするので効率的に鉄分を摂取できます。ご自身で調理をしたり、ヘム鉄を含む食材を調べるのが面倒だったりする方はサプリを活用しましょう。
鉄分の吸収を妨げる栄養素には注意
鉄分の吸収を促進する栄養素もあれば、逆に吸収を妨げる栄養素もあります。普段から意識的に鉄分を摂取しているにもかかわらず、慢性的に鉄分が不足しがちな方は以下の栄養素が含まれた食材を一緒に食べてしまっているかもしれません。
【鉄分の吸収を妨げる栄養素】
- 食物繊維
野菜に含まれていることが多く、摂取しすぎると腸内に残っている鉄分を絡め取って排出してしまいます。
- フィチン酸
玄米や麦芽に含まれる栄養素で、鉄と結びついて体外へ出す作用があります。
- リン酸塩
鉄吸収阻害物質として作用する栄養素です。
- タンニン
緑茶や紅茶に含まれており、非ヘム鉄の吸収を妨げます。
鉄分(ヘム鉄)を多く摂取できる食材ランキング

鉄分を効率良く摂取するために『ヘム鉄』が多く含まれている食材を知ることから始めましょう。以下にヘム鉄が多く摂取できる食材をランキング方式でまとめました。
【ヘム鉄を多く含む食材ランキング】
順位 | 食品名 | 加工状態 | コンテンツ |
1位 | 煮干し(かたくちいわし) | ─ | 18.0mg |
2位 | 豚レバー | 生 | 13.0mg |
3位 | しじみ | 生 | 8.3mg |
4位 | ビーフジャーキー | ─ | 6.4mg |
5位 | 赤貝 | 生 | 5.0mg |
6位 | ほっき貝 | 生 | 4.4mg |
7位 | 牛レバー | 生 | 4.0mg |
8位 | あさり | 生 | 3.8mg |
9位 | ホタテ | 生 | 2.2mg |
10位 | 牡蠣 | 生 | 2.1mg |
参照元:日本食品標準成分表
非ヘム鉄が多く含まれる食材ランキング
ヘム鉄が多く含まれている食材を把握したら、非ヘム鉄が多く含まれている食材も把握しておきましょう。普段、鉄分を意識して摂っているにもかかわらず貧血気味な方は、以下のような食材ばかり食べているがために効率的に吸収できていない可能性があります。
【非ヘム鉄を多く含む食材ランキング】
順位 | 食品名 | 加工状態 | コンテンツ |
1位 | 小松菜 | 生 | 2.8mg |
2位 | 枝豆 | 生 | 2.7mg |
3位 | サラダ菜 | 生 | 2.4mg |
4位 | 水菜 | 生 | 2.1mg |
5位 | ほうれん草 | 生 | 2.0mg |
6位 | サニーレタス | 生 | 1.8mg |
7位 | 高菜 | 生 | 1.7mg |
8位 | 春菊 | 生 | 1.7mg |
9位 | ルッコラ | 生 | 1.6mg |
10位 | ブロッコリー | 生 | 1.3mg |
参照元:日本食品標準成分表
鉄分の1日当たりの摂取量目安
鉄分が不足すると、日常生活の「ハリ」が低下したりすることがあるため、意識的に摂取をする必要があります。しかし、実際のところどのくらい摂取するべきなのかわからない方も多いでしょう。上記で示した鉄分含有量と、以下で示す1日当たりの摂取量目安をうまく活用して最低限必要な分だけでも鉄分を摂取できるように意識してみてください。
【年齢別1日あたりの鉄分摂取量目安】
年齢 | 男性 | 女性(月経なし) | 女性(月経あり) |
8〜9歳 | 8.0mg | 8.5mg | ─ |
10〜11歳 | 10.0mg | 10.0mg | 14.0mg |
12〜14歳 | 11.5mg | 10.0mg | 14.0mg |
15〜17歳 | 9.5mg | 7.0mg | 10.5mg |
18〜29歳 | 7.0mg | 6.0mg | 10.5mg |
30〜49歳 | 7.5mg | 6.5mg | 10.5mg |
50〜69歳 | 7.5mg | 6.5mg | 10.5mg |
70歳以上 | 7.0mg | 6.0mg | ─ |
鉄分不足を避けなくてはいけない理由

鉄分が不足すると日常生活における「ハリ」が低下したりする場合があります。また、鉄分は子どもの成長にも必要な栄養素です。健康的な生活を送るためにも鉄分不足は必ず避けるようにしましょう。
【鉄分不足を避ける理由】
- お腹の赤ちゃんに必要な栄養素だから
- 子どもの成長に不可欠な栄養素だから
- エネルギー不足で生活の「ハリ」が低下するから
大人の場合はご自身で気づいて意識的に摂取できますが、子どもの場合はそういうわけにもいきません。大人が子どもに対して鉄分の摂取をサポートすることで、必要な鉄分を摂取できるようにしましょう。子どもの場合、何かが起きてからでは遅いので三食バランスの取れた食事を与えるようにしてください。
妊婦の鉄分不足には要注意
妊婦の方は、妊娠中の鉄分不足に注意する必要があります。その理由は、鉄分はお腹の赤ちゃんにとって必要な栄養素だからです。
また慢性的に鉄分不足が続いた状態だと、出産時の出血でさらに鉄分が不足する可能性が高まります。
鉄分は子どもの成長のために大切な栄養素
子どもは大人と比べて成長のスピードが速いため、成長期には特に栄養バランスが重要です。成長期に鉄分が不足すると、日常生活の「ハリ」が低下することがあります。また、鉄分を含むバランスの取れた食事を心がけることが、子どもの健康的な成長をサポートする上で大切です。子どもの成長を支えるために、煮干しや豚レバーなど、鉄分を含む食材を積極的に取り入れてください。
鉄分を摂りすぎないように注意
『鉄分が不足しないように』という解説をこのコラムではしてきましたが、鉄分を過剰に取りすぎるのも良くありません。過剰に鉄分を摂取しすぎると以下のような症状の出てくる可能性があります。
【鉄分の過剰摂取により発症する症状】
- 便秘
- 吐き気
- 嘔吐
- 胃腸障害
- 鉄沈着症(さまざまな臓器障害を起こす病気)
【鉄の1日当たりの耐容上限量】
年齢 | 男性 | 女性 |
18歳以上 | 50.0mg | 40.0mg |
上記の摂取量をオーバーすると過剰摂取になってしまいます。サプリを摂取する場合は鉄分の量を確認してから摂取するようにしましょう。(基本的には記載の容量を守れば問題はありません。)
おわりに
鉄分は人々が生きていく上で欠かせない栄養素のひとつです。鉄分が不足するとエネルギー不足を感じて、日常生活における「ハリ」が低下する場合があります。また、鉄分は子どもの成長にとって大切な栄養素でもあるため、親がしっかりとサポートしてあげることが重要です。まずは、1日の理想的な摂取量を知り、食材に含まれる鉄分量を把握して効率的に摂取できるように心がけていきましょう。