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美意識の底上げは片づけから!

美意識の底上げは片づけから!
中里 ひろこ Graceful Life代表

執筆者

Graceful Life代表

中里 ひろこ

Graceful Life代表。転勤や子育て中の片付かない日々に悩んだ経験から、思考整理から始める整理術ライフオーガナイズを学ぶ。個人宅のサポートを経て、現在は講師として活動。最近は「片付け」を通して自分を大事にする女性の生き方も伝えている。著書『わたしに合った「片づけ」ができる仕組みづくり』(講談社2021/5)

50代女性に住まいに関する理想を聞くと、「そろそろ美しく好きなものに囲まれた暮らしを叶えたい」と言われます。昭和世代の住まいは日本家屋から洋風の家ブームを経験し、和洋折衷のはざまに翻弄されているように感じることが多くあります。歳を重ね、子育て中だからと妥協していた空間やモノとの暮らしから、ようやく自身の理想の暮らしを叶えられるライフステージにたどり着いたのです。最近はアートブームともいわれていますが、日本人はもともと室礼といった、季節の掛軸や花でお客様をお迎えするなど暮らしの美意識は高いのです。現代では、インテリアと称され暮らしを楽しみたい方が増えています。自身の時間や家と向き合える時間が増えてきている今こそ、ご自身の美意識を暮らしに取り入れてみませんか?

1. 日本の暮らし方は多様すぎる

1-1.なぜ日本の住宅は複雑なのか?

世界の中でも日本ほど短期間に暮らし様式が変化した国は少ないといわれますが、なぜそうなったのでしょう?そもそも戦後の住宅不足を解消する取り組みにより、和風の家から洋風の家スタイルに変化したことが大きいのです。それまでは廊下もなく、ひと続きの部屋を食事も寝室も兼ねる部屋であったのを、「LDKスタイル」すなわち、リビング、ダイニング、キッチンスペースなどスペースを分断し、「寝る」「食べる」など機能ごとに部屋を意味づけることになりました。また、日本古来の敷物である畳の床に座る生活から椅子の生活に変わったことや、和服から洋服へと暮らし方、装い方など大きな暮らしの変化があったのです。そのため、これほどまでの変化のない欧米の方の暮らしに比べ、和洋折衷な住宅での暮らし方が定まらないという現象が暮らしにくさにもつながっていると考えられます。

1-2.和洋折衷な住宅と暮らし方ギャップ解消方法

われわれの親世代(昭和初期)の暮らしからくる価値観は、伝統を重んじることや手を掛けることを良しとし、また片づいているというイメージも茶室のような部屋のなかに何もモノがない空間をイメージすることが多いでしょう。けれど、住まい様式が変わり、文化も多様化した現代では住まい方に求める理想と居住空間にギャップがおこり、なんだか暮らしにくい住居空間になっているのです。例えば、押し入れ空間は「布団を押して入れる場所」のため、ベッド生活の方には不必要に奥行きが広すぎる空間となります。また、着物など全く着ていないにもかかわらず婚礼ダンスと共に着物を収納しているスペースが生活場所を圧迫しているなど、何年も「なんとなく大切」という価値観により、過去の価値観と現状の暮らしとにギャップが起こっている家は多々あります。そのため、自身の理想の暮らしと住宅にギャップがあることを理解した上で、「じゃあ、どうする?」と考えていきましょう。大掛かりなリフォームなどは難しくても、押し入れの棚を抜きクローゼットバーを設置してもらうなども可能です。今一度、これからの暮らしに本当に何を必要と思うのか、理想を叶えるために何ができるのか考え、思い込みや古い価値観にしばられ暮らしにくくなっていないか、思考の整理をしてみてください。

1-3. ゴールを先に決めておく

仕事や子育てに忙しかった時期には、家族と日常生活を回すことに必死であり、気を使わない便利なものや扱いが楽なものに頼り過ごしてきた方が多いはずです。ライフステージに合った暮らしの経験を生かして、そろそろ本当にたどりつきたいゴールを決めることができるのではないでしょうか?自身の時間と家族の時間が混ざり合い家時間の多くは作られます。今、あなたが願う理想の暮らしとはどういう状態でしょうか?どんな時間を家の中で叶えたいですか?あなたにとって、好きで美しいモノとはどんなものですか?一時的な流行を取り入れながらも、いつも心地良いと感じられる空間、幸せな気持ちになるモノは何でしょうか。家の中には自身や夫の歴史、子ども達の成長の証がありますが、お互いの思い出もどういう目的で残すのか分量までも決めることをおすすめします。我が家は、5人家族なので思い出ボックスは1人につき2箱と決めています。そのくらいゴールを緻密にしておかないと、本当に望む暮らしを叶えることは感情にながされ難しいのです。

2.片づけは自分の美意識を確認できる

片づけは自分の美意識を確認できる

2-1. 理想のゴールから逆算していこう

大人になると夢を持っているようで叶うわけがないと思っている方も多く、いつ叶えたいかと尋ねると「いつか」といった曖昧な答えや、そもそも「叶えたいと願うことも恥ずかしい」と返事される方が多いです。50代はまさにご自身の人生に向き合える時期であり、次のステージへの橋渡しになる期間ともいえます。一度きりの人生なのですから、本気で理想のゴールを設定し、それを叶えるために何ができそうか計画をたてれば良いのです。ジグソーパズルも完成図がないと、完成させるのは難しいのと同じです。ゴールのイメージができれば、ゴールを完成させるために必要なピースを選んでいけば良いです。

2-2. 違和感を感じるものを引き算する

理想のゴールを叶えるためにと、ついつい新たにアートやインテリアを先に足してしまう方がいるのですが、成功法則には順番があります。まずは、今あるモノを分析します。「使っていてお気に入りの理由」についてです。使い勝手なのか、ビジュアルなのか、触り心地なのかなど五感を意識してみてください。長年使っていたけれど、実は好きではないものに気付くこともあります。次に、「使っていない理由」を分析します。カテゴリーによりますが、ここが明確に言語化できるようになると、ご自身のモノの選び方に迷いが少なくなります。迷った時には「ずっと見ていても違和感がない」かどうか、また「美しいと感じるかどうか」というワードも意識してみてください。道具であれば、あなたの使いやすさも大切な要素です。これまでの違和感を家から引き算していくと、本当のお気に入りが暮らしの中でも際立ちはじめます。

2-3. 家具をアップデートすると部屋が変わる

片づけを進めてくると、もやもやと気になるといわれるのが家具についてです。部屋の中でも存在感のある家具とは長年のお付き合いというご家庭が多く、またリビングの収納が足りずにありあわせ的に簡易な収納家具を用意して使われていることも多いようです。普段は見慣れた景色のように存在感を感じていなかったものも、片づけながら部屋全体の写真を撮ることで、そこに理想への壁がうきぼりになってきます。家具は定位置が決まっていますが、もっと使いやすい場所に変更してみたり、他の部屋で使ってみたりすることで新鮮な存在に変化することもあります。LDKであれば、お気に入りの椅子を取り入れるだけでもがらりと雰囲気が変わりますし、巨匠といわれるデザイナーの意匠権がきれたリプロダクトを取り入れるなどすることは価格も抑えられながら素敵な空間が叶えられると人気です。最近ではインテリアのプロにオンラインで質問やアドバイスをもらえるサービスも増えているので、ご自身の好きなインテリアを分析してもらい部屋ごとにテイストを統一するアドバイスを受けられると理想の部屋が早く叶います。

3.50代からは片づけのその先へ

家には生き方が表れるともいわれますが、まさに子育ても終わっていく50代には未来への準備も含めて家と向き合うライフステージです。周りをみると夫婦の価値観をすり合わせ、田舎への移住、利便性を優先し戸建てから都会のマンションへの転居や、2階建から平家に建てなおしなど、子ども中心だった家から自分たちを中心に考えた住まいを選ぶ方が増えています。時間に追われていた暮らしから、機嫌よい時間を家で過ごすために何を大切にするかということですね。家事や片づけの目的も、時短で機能性追求よりも、楽しみを優先したい心の余裕を感じるためにと変化していくようです。食器の条件も割れにくい、食洗機に入れられることを前提ではなく、繊細でも口当たりが良いコップや収納はしづらいけれど大好きな食器を大切に使うようになり本来願っていた暮らしを実現できるのです。一つひとつのモノを納得しながら選んでいくことで、あなたの美意識を映し出す環境になるのです。人生後半に向けて、今こそあなたや家族の叶えたい暮らしへの一歩を踏み出しましょう。

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