アスリートが身体づくりのために飲むプロテイン。最近では、健康増進や美容目的のためにプロテインを飲む方も増えています。そもそも、プロテインとはいったい何なのでしょうか。このコラムでは、プロテインの種類や効果を中心に、プロテインを飲むタイミングについてもご紹介しています。「プロテインにはどのような効果があるのか知りたい」「プロテインの効果的な飲み方を知りたい」という方はぜひご一読ください。
プロテインとはいったい何?
アスリートはもちろん健康志向の方を中心に話題になっているプロテインとは、いったいどのような成分なのでしょうか。
プロテインとは?
プロテインとはタンパク質のことで、魚や肉、卵、大豆製品、乳製品などに含まれる栄養素です。タンパク質は筋肉や内臓、皮膚、髪の毛などをつくる成分で、体重の1/5を占めています。また、体内の酵素やホルモンなどをつくり、栄養素の運搬を行うなど健康を維持していくためには欠かせません。
タンパク質が不足すると、筋肉が減ったり、内臓の働きが衰えたりするなど、身体に悪影響が出ます。タンパク質はアミノ酸が結合してできた成分で、数万種類も存在しています。体内で効率良く働けるタンパク質を摂るには、良質なタンパク質を含む食材が必要です。
プロテインの摂取方法
プロテインパウダーをプロテインシェイカーに入れ、水または牛乳、豆乳などに溶かして飲むのが一般的です。プロテインシェイカーを使うのは、プロテインパウダーをしっかり溶かすためですが、最近では、グラスやコップでも溶かしやすい商品も登場しているため、プロテインシェイカーを使うのが面倒な方におすすめ。プロテインの味に飽きてしまったときは、果汁100%のオレンジジュースと混ぜて飲んだり、料理に入れたりする方法もあります。
プロテインの種類と効果
プロテインにはさまざまな種類があり、どれを摂取したら良いか分からないと悩む人もいるでしょう。ここでは、代表的なプロテインを3種類ご紹介します。プロテインは動物性と植物性の2種類に分けられ、牛乳由来のプロテインがカゼインプロテインやホエイプロテイン、大豆由来のプロテインがソイプロテインです。プロテインの種類によって効果や吸収速度が異なるため、ダイエットや筋力アップなどの目的に応じて使い分けることをおすすめします。
カゼインプロテイン
カゼインプロテインは牛乳から作られたプロテインで、牛乳に含まれるタンパク質の80%はカゼインプロテインです。水に溶けにくい性質であるため、7~8時間かけてゆっくり吸収されるという特徴があります。満腹感を与えてくれる特性から、ダイエットしたい方や食事量を減らしたい方、持久力が必要な運動をする方におすすめです。同じ牛乳由来のプロテインであるホエイプロテインと比べて安価で手に入れることができます。また、大豆由来のソイプロテインと比べると、体内利用効率がやや高いです。カゼインプロテインは吸収・分解されると、鉄やカルシウムなどの吸収効率を高める働きをし、身体全体にとって良い働きをします。
ホエイプロテイン
牛乳に含まれるタンパク質の1種であるホエイプロテイン。ホエイは日本語で「乳清」と呼ばれ、ヨーグルトの上にある透明な液体を指します。ホエイプロテインは液体であるホエイに含まれるため、水に溶けやすい点が特徴です。体内への吸収率も良く、2時間程度で体内に吸収されるため、筋力アップを目指す方に向いています。
ホエイプロテインは精製度の違いによってWPC(ホエイプロテインコンセントレート)とWPI(ホエイプロテインアイソレート)の2種類に分かれます。広く流通しているWPCは、タンパク質含有率が約70%と少し低め。一方、精製度の高いWPIのタンパク質含有率は約90%と高く、脂質や糖質などの含有率は低いです。WPCと比べると値段は高めですが、乳糖を除去する製法のため、乳糖アレルギーの人でも安心して飲めるプロテインとなっています。
ソイプロテイン
ソイプロテインとは、大豆に含まれるタンパク質の1種です。食物繊維が多く含まれているので吸収速度は5~6時間と遅め。お腹に溜まるため、ダイエット中の方におすすめです。また、植物由来のプロテインであるため、牛乳アレルギーの方でも気軽に飲める点も魅力のひとつです。
ソイプロテインには大豆イソフラボンと呼ばれる成分も含まれており、新陳代謝を促したり、肌に潤いを与えたりするなどの役割があります。国立がん研究センターの「多目的コホート研究」により、大豆イソフラボンを多く摂取した男性は限局性前立腺がん、女性は乳がんの発症リスクが減少すると明らかになりました。美容や健康維持を目的とする方は、ぜひソイプロテインを飲んでみてください。
プロテインの選び方のポイントは?
プロテインは定期的に飲み続けることで効果が現れます。プロテインを選ぶうえで気をつけるポイントは、味や値段、タンパク質含有率などが挙げられます。それぞれのポイントを押さえ、ご自身に合ったプロテインを選びましょう。
毎日続けられる味か
プロテインは毎日飲み続けるものなので、好みに合う味を選ぶことが大切です。フレーバー付きのプロテインも開発されており、ココア味やコーヒー味、バニラ味、フルーツミックス味などさまざまな種類があります。目的に合ったプロテインで、自分好みの味の商品を探してみると良いでしょう。それでも味に飽きてしまったときには、牛乳や豆乳、100%のオレンジジュースなどプロテインパウダーを割る材料を変えてみるのもひとつの方法です。
無理しなくても買える値段か
含有率の高いプロテインでも、一時的に飲むだけではあまり効果は得られません。プロテインを摂取し続けていくには、継続購入しても無理のない値段であるかをチェックしましょう。プロテインのおおまかな相場は、ドラッグストアやネット通販で1kg当たり4,000~5,000円程度です。高いものでは1kgで10,000円の商品もあります。最初は手頃な価格のプロテインを購入し、いろいろな商品を試してみるのが良いでしょう。
タンパク質含有率もチェック
タンパク質含有率とは、プロテインの中に含まれるタンパク質の量を表した数字です。タンパク質含有率が高ければ、摂取量が少なくても充分なタンパク質を補給できます。一般的なプロテインのタンパク質含有率は15~20g程度。この数字を目安にプロテインを選ぶと良いでしょう。
目的別に種類を選ぶ
筋力アップや健康維持、美容目的、ダイエットなどプロテインを飲む目的は人それぞれ。筋力アップを目指したい方には、吸収速度の速いホエイプロテインがおすすめです。ダイエットや食事コントロールをしたい方には、腹持ちの良いソイプロテインやカゼインプロテインが向いています。美容目的にプロテインを摂取したい方は、肌に潤いを与えるイソフラボンが入ったソイプロテインを飲むと良いでしょう。より効果的にタンパク質を摂取するためには、飲むタイミングにも気をつけることをおすすめします。
タンパク質以外の栄養素の配合量
プロテインには、タンパク質以外にもビタミンやミネラル、カルシウムなどの栄養素が配合されています。厚生労働省の調査によると、多くの日本人が推奨量の鉄分やカルシウムを摂取できていないことが明らかになりました。プロテインでタンパク質を補給するのはもちろん、普段不足している栄養素も同時に摂取できるようなプロテインを選ぶのがおすすめです。さまざまな栄養素が充分に摂取されていれば、プロテインもより効果的に働きます。
プロテインを飲むタイミングは決まっている?より効果的なのはいつ?
効果的にプロテインを摂取するには、目的や種類ごとに飲むタイミングを意識しましょう。プロテインを飲むおすすめのタイミングは、食事時、間食時、寝る前、運動前後です。なぜ時間帯によって効果的なタイミングが決まっているのか、理由も併せて解説します。
食事のとき
プロテインが食事の代わりにはなりませんが、食事で不足しているタンパク質を補う目的にはプロテインが有効です。1回の食事やプロテイン摂取の際のタンパク質摂取量は20gが目安となります。筋力アップを考えている方は、プロテインだけでなく、適度な糖質を摂ることも忘れないようにしましょう。体内で糖質が不足すると、タンパク質がエネルギーとして消費され、筋肉を作る材料にならないためです。
おやつがわりに
小腹が空いたとき、ついおやつに手が伸びていないでしょうか。食事から数時間経つと消化が進み、血中の血糖値が低下していきます。血糖値が下がっていくと、脳にエネルギーが行き届かないため、筋肉が分解されて糖に変わってしまいます。加齢によって筋肉量が減ると代謝が落ち、太りやすい身体になる危険性があるのです。そのようなときは、吸収速度が遅く腹持ちの良いカゼインプロテインやソイプロテインがおすすめです。コンビニやドラッグストアでは、バータイプのプロテインも売られており、外出時に向いています。
寝る前
寝ている間も身体の中では消化が進み、血糖値が下がっていくため、就寝前にプロテインを飲むのがおすすめです。国際スポーツ栄養学会は、就寝前に30~40gのカゼインタンパク質を摂ると、筋肉のタンパク質合成と代謝が向上すると明らかにしています。子どもの成長を促す成長ホルモンは寝ている間に多く分泌されており、大人になると成長ホルモンは骨や筋肉を発達させるホルモンに変わります。寝る前にプロテインを飲むことで筋肉の分解を防ぎ、身体の発達を促すことができるのです。ただし、飲食後にすぐ寝ると胃腸に負担をかけるので、就寝の数時間前にプロテインを飲むようにしましょう。
運動前・後
筋力アップやウエイトトレーニングをしている方は、吸収速度が速いプロテインを運動前後に摂取しましょう。デリケートな筋繊維は軽い運動でも傷ついてしまう性質を持っています。傷ついた筋繊維はタンパク質などによって補修され、強い筋繊維へと育っていきますが、タンパク質が不足しているとトレーニングの効果が充分に出ないのです。運動前後にプロテインを飲んでいれば、運動で傷付いた筋肉を補修するタンパク質がすぐに行き届き、効果的に働いてくれます。
プロテインを飲む量の目安は?
では、プロテインを飲む際の適量はどのくらいでしょうか。
タンパク質を摂取する際の推奨量はどれくらい?
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、1日当たりのタンパク質の推奨量は成人男性で60~65g、成人女性で50gです。しかし、厚生労働省の「国民健康・栄養調査・栄養素摂取量の年次推移(2015年版)」を見ると、1975年から40年間でタンパク質の摂取量は10g以上も減少しています。そのため、食事だけでなくプロテインから推奨量のタンパク質を摂取できるよう気をつけなければなりません。
摂取量の計算方法は
体重1kgにつき1gのタンパク質が必要として、食事とプロテインの摂取量の組み合わせを考えなければなりません。つまり、普段の食事でタンパク質を含む食材を口にする場合は、その食材のタンパク質量を推奨量から引いて、プロテインの摂取量を計算します。
タンパク質が豊富に含まれている鶏ささみ肉には、生の状態で100g当たり23.9gのタンパク質が含まれています。成人男性が食事だけで推奨量のタンパク質を摂取するためには、鶏のささみ肉を270g分食べなければなりません。「タンパク質を豊富に含む鶏ささみでも、たくさんの量を食べないといけないのか」と尻込みしてしまう人もいるかもしれませんね。
プロテインを飲む際の注意点
ダイエットや身体づくりのためにプロテインは有効ですが、身体に必要な成分が入っているからと過剰摂取してしまうのは逆効果です。ここでは、プロテインを飲み過ぎた場合に起こるデメリットについて解説していきます。
臓器に負担がかかる
プロテインの過剰摂取は身体に悪影響を及ぼす可能性があります。タンパク質を排出するには、腎臓や肝臓の働きが必要ですが、過剰摂取すると腎臓や肝臓にかなりの負担をかけてしまい、内臓疲労の原因になるケースがあるのです。
太りやすくなる
タンパク質は1gで約4kcalのエネルギーがあるため、プロテインの過剰摂取はカロリーオーバーによる肥満の原因になります。体内で不要なタンパク質は脂肪として蓄えられるため、必要量を計算して飲むように注意しましょう。
腸内環境が乱れる
プロテインは身体に良い働きをする一方で、摂り過ぎて吸収できなかった分は悪玉菌のエサになってしまう一面もあります。悪玉菌が増えると腸内環境が悪化し、腸の働きを抑えてしまうのです。悪玉菌が増え続けると、糖尿病や動脈硬化症などの原因になる可能性があるため、摂りすぎないよう意識が必要です。
タンパク質の合成には限界がある
プロテインを過剰摂取しても、全てが筋肉や皮膚などの材料になるわけではありません。合成できる量には限界があり、必要以上を摂取しても余るだけです。一度に多くのプロテインを飲むよりも、適切な量を飲むように意識しましょう。
おわりに
今回はプロテインの種類や効果、飲むときのタイミングなどをご紹介しました。牛乳由来成分か大豆由来成分かによって、プロテインの効果が異なります。健康な身体づくりに欠かせないタンパク質は、1日だけたくさん摂取しても効果はありません。食事やプロテインで摂取推奨量を摂り、いつまでも元気な身体を保ちたいですね。