才能というのは生まれつき、その人が持っている能力だと思う人がいるかもしれませんが、それだけではありません。才能には、その方が無意識に取っている行動、考え方、習慣も含まれます。実は、その道の一流といわれる人たちは、自分の「本当の才能」に気付き、活かしています。才能を発揮して生きている人は、努力をしているというより、自然に楽しみながら才能を発揮しています。「私には才能はない」というミドルシニア世代の方が多いようですが、実はどんな方にも、多くの才能があるのです。
例えば、誰かに話しかけられた時に無意識に笑顔を作ることができれば、才能です。また、時間を忘れて漫画を読むことができれば、それも才能です。もしも、自分の才能にあった働き方や生き方をしながら、多くの方の役に立つことができたら、人生は素晴らしいものになると考えます。このコラムでは、「どのようにすれば自分の本当の才能に気付けるのか」のヒントについてご紹介します。
1. 過去の自分を見つめる
才能は、無意識にすぐにできることです。過去を思い出してみてください。もしも、自分の才能に合ったことを行ったときは、すぐにできたりして、楽しかったはずです。才能に合ったことを行って、人生が好転したこともあったと思います。今の自分にはできないけれども、過去には簡単にできていたということはありませんか。なぜ、そのようにできなくなってしまったのかを考えることで、忘れてしまった才能に気付くことができるでしょう。過去の人生と向き合って自分を見つめ直すと、いろいろなことに気が付くはずです。
1-1. 過去の印象に残っている体験をまとめる
倒産や大病などで人生が変わった方の話を聞くことがあるでしょう。自分には関係ないと思っている方でも必ず、自分の人生の方向を変えるような出来事に出会っているはずです。人との出会いや経験で人生は作られています。自分がどのような出来事を覚えているのかを見つめることによって、自分に影響を強く与えた出来事が分かります。影響を強く受けたことは忘れないからです。その出来事がきっかけで、かけがえのない才能を身に付けた可能性があるのです。
あなたがこれまでの人生で強く印象に残っていることは何でしょうか?幼稚園であったことや小学校でのことなど、今までの出来事を順に思い出してください。良い事だけではなくて、いじめられて辛かった事や、親に裏切られたことなど、辛い経験を思い出した方もいるはずです。過去の出来事は確かに今の自分に影響を与えていますが、どんな影響があったのかを考えることによって、マイナスの経験をプラスに変えることができます。過去は変えられませんが、未来のために、受け止め方は変えられます。そのような出来事の中にも才能が見つかるはずです。
1-2. 過去の自分に話しかける
もしもタイムマシーンがあって、過去の自分に会ったらどんなことを話してあげたいと思いますか?最近はデジカメが普及したこともありアルバムに写真を貼ることも少なくなったかもしれませんが、ミドルシニア世代の方の多くはアルバムを持っていると思います。自身が幼かった頃の写真を眺めながら、過去の自分を思い出して感じたことや、その時の自分に伝えたいことを考えてみてください。
赤ちゃんの頃や小中学生、高校生の頃の自分に感じたことや伝えたいことは何でしょうか。また、仕事を始めたばかりの自分に感じたことや言いたいことは何ですか。環境が変わったときや特別の日に戻って考えてみてください。過去の自分と今の自分を比べてみたらどうでしょうか。今のほうが輝いていると感じましたか。この頃の自分の方が幸せだったと思ったでしょうか。過去の自分にも、必ず悩みや辛いことがあったはずです。しかし、今の自分から見たら、当時の悩みごとは小さく感じられると思います。
中学校の試験が悪くて悩んでいた自分に、「そんなことは将来に何の問題も無いから悩むな」 と言いたくなるかもしれません。失恋をして毎日が辛いほど悩んでいる高校生の自分に、「大人になればもっと多くの人と出会えるのだから元気を出して」 と言いたくなると思います。
反対に過去の自分の方が輝いていたことがあったはずです。もしも、今の自分がそのときほど楽しい気持ちやワクワクする感じがなかったら、過去に輝いたことの中に才能があるのかもしれません。「何で辞めるの?辞めない方が良いよ」 と過去に何かを辞めようとしている自分に声をかけたいことがあったとしたら、そこに自分の才能があります。過去の自分にかけてあげたいと思う言葉の中に才能に気付くヒントがあるはずです。
1-3. 失敗から学んだことを考える
一度も失敗をしたことがない方は本当に存在します。失敗をしない理由は、他の人から見たら明らかな失敗でも、本人が失敗を失敗と認めないからです。エジソンは電球を作るために必要なフィラメントという部品の素材を探しては、実験を繰り返しました。しかし、フィラメントに合う素材がなかなか見つかりません。「今回の素材も失敗だった」と普通の方なら考えると思いますが、失敗を失敗としない発明家トーマス・エジソンは違いました。「今回の素材がフィラメントに適さないことを発見できた。成功だ」 と喜びました。
このように、どんな失敗にも必ず得ることがあるはずです。あなたが過去にした失敗からどのようなことを学ぶことができたのかを考えてみれば、多くの学びがあったことに気付くと思います。失敗は成功することよりも多くを学べるので「続けるのか、辞めるのか」を悩むぐらいなら挑戦するべきです。本当にできないことは悩みにもなりません。失敗したからもう二度とやらないと考えるのは簡単です。しかし、それを達成することが本当に重要だと思えたら、人生をかけて挑戦するべきです。失敗し続けているのにやろうと思うことには、才能が隠れている場合が多いからです。人生の最後の瞬間に、「私の人生はこれに挑戦した人生だった」と思える人は幸せです。人生の最後に悔やむのは失敗したことよりも挑戦しなかったことだと思います。あったはずの才能に気が付かないで人生が終わることこそ、もったいないことでしょう。
2.現在の自分を見つめる
過去の自分を見つめることによって、「今の自分は作られた自分だ」という気持ちを、ある程度持つことができるようになってきている方も多いでしょう。そのような気持ちのまま、今の自分を客観的に見つめることができれば「本当の自分の才能」が分かります。今の自分自身について掘り下げて考えることで、隠れている才能を探しましょう。自分が長所だと思っていたことが本当は短所で、短所の中に自分の才能が隠れていることもあります。思い込みがあって才能に気が付かないこともあります。ぜひ、リラックスできる環境で考えてみてください。
2-1. 自分のどんなところが好きかを考える
あなたは自分のどんなところが好きですか。自分の好きなところを10個考えてください。10個もないとすぐに思わないで、外見や性格、趣味などいろいろと考えて、自分の好きなところベスト10を選んでください。自分の好きなところを考えたときに、すぐに10個の好きなところが浮かんだ方は、自信を持って毎日を積極的に生きている人です。反対にどうしても10個も浮かばなかった人もいると思いますが、けっしてそのような方に良いところがないわけではありません。自分の魅力に気付いていないだけです。
友人に、「どうして、私と会ってくれるの?」と聞いてみれば、「一緒にいて楽しい」 「いつも前向きだから元気をもらえる」 というような答えがいくつも返ってくると思います。誰でも必ず、素晴らしい才能を持っています。
2-2.欠点の裏にある長所を確認する
欠点だけしかない人や、長所だけしかない人はいません。置かれている状況や相手の受け止め方によって、必ず欠点は長所にもなり、長所は欠点にもなるからです。たとえば、私の長所は何事にも積極的に行動することですという方の欠点は、何も考えないですぐに行動してしまう点です。また、私の欠点は小さなことにもこだわってしまうことですという方の長所は、細かいところまで気にすることができるという点です。自分が欠点だと思っていることについて、そのことに対応する長所を考えると、気付くことができなかった自分の魅力を発見できます。「私の欠点はおしゃべりだけど、そのおかげで友達を楽しませることができる」 といった感じで、「私の欠点は○○だけど、そのおかげで○○ができる」 と考えると気付きやすいでしょう。自分の欠点が本当は長所であることが理解できれば、自分に自信を持つことができるようになります。自分の欠点や相手の欠点に気付いたとき、その裏側にある長所に気付くことができれば、才能が見つかるはずです。
2-3.「ありがとう」を探す
最近、あなたが誰かに「ありがとう」 と言ったのはいつでしょうか。意外と「ありがとう」 という言葉を話していないことに気付く方も多いと思います。特に会社のスタッフや家族など身近な人に何かをしてもらったとき、本当は感謝をしているのに「ありがとう」 と言葉にしていないことが多いのではないでしょうか。
自分が今、感謝していることは何なのかに気付くと、毎日の過ごしかたが変わってきます。あなたが今、感謝していることを考えてください。海外旅行に行くと、日本がとても恵まれていることに気が付きます。水道の水を普通に飲むことができますし、夜中に一人で歩いていても犯罪に巻き込まれることがほとんどありません。誰でも中学校までは勉強することができます。当たり前だと思っていることが、本当はとても恵まれていることなのです。こう考えると、恵まれている幸せに気が付きます。当たり前のことに感謝して素直に「ありがとう」と言えると、毎日が変わるはずです。自分のまわりの人に「ありがとう」 と言われることも増えていきます。そして、才能をまわりの人が引き出してくれるようになります。
3.未来の自分を見つめる
将来、本当にやりたいと思うことは才能に合っていることが多いと考えます。だから自分の未来を考えることによって、眠っている才能に気付くことができます。今、自分の才能だと思っていることが、本当に才能なのかを考えることもできるでしょう。未来を変えるには今を変えるしかありません。自分自身を、「未来の自分」から見つめ直します。
3-1. 仕事をやめる日を想像する
「毎日、仕事が忙しくて嫌になるよ」 「早く、定年になって好きなことをしたいよ」 と思っている方がいると思いますが、本当にそうでしょうか。毎日、同じように仕事をしていると、その仕事があるのが当たり前になってしまって、「その仕事をなぜ、自分がやらなければいけないのか?」 ということが分からなくなってしまいます。人間は目的の分からない作業をしているときには楽しくありません。何のために仕事をしているのかを、立ち止まって考える必要があります。あなたが会社を退職する日を想像してください。
あるご主人が、定年退職の日に家に帰ると、奥さんから、「もっと家族のことを考えてほしいと何度も言おうと思ったけど、会社のことばかり考えながら必死に働いているあなたを見ていると、何も言えなかった。本当に会社や仕事が好きなんだと思ったから、私もあなたの力になりたいと思って、一緒にがんばれたと思う。お疲れ様でした」 と言われました。このご主人は、自分の才能を活かすことができた人だと思います。才能のあることをやっている人は、そのことに夢中になれるからです。仕事が自分の才能に合っているのかを考えることが大切です。仕事は人生のすべてではありませんが、多くの時間を仕事に使うことに間違いありません。才能に合った仕事をしなければ、才能を人生で活かすことは難しくなります。
3-2. 未来の自分に会いに行く
「未来の自分が今の自分にかける言葉」を考えてください。もしも、今の自分を未来の自分が見たら、どのような言葉をかけてくれると思いますか。未来の自分が今の自分に話してくれた言葉には、自分が本当にやりたいことが含まれています。才能について、未来の自分が、「あなたはまだ、気付いていないけど、○○の才能があったんだよ」 と今の自分に話したとしたら、「○○」 にはどんな言葉が入ると思いますか。「○○」 に入る言葉は今の自分が欲しい才能です。過去の自分を思い出したときに、小中学生の頃など、それぞれの時代にやるべきことがあったと気付いたでしょう。同じように、今の時代にやらなければいけないことが、未来から見たら必ずあるはずです。今の時代にやっておかなければいけないこと、気付かなければいけない才能は何かを考えて行動することが大切です。自分の人生は今の連続で作られているのです。
おわりに
才能は自分一人のものではなく、両親や友人などの大切な人たちに支えられているものです。人間は一人では生きられません。お互いに才能を出しあって生きることで幸せになれます。大切な人たちのために役に立ちたいと思ったとき、はじめて自分の才能に合った生き方ができるようになると考えます。あなたにも、きっと素晴らしい才能があります。そして、その才能を必要としてくれる人が必ずいるはずです。