「ストレス耐性」という言葉を聞いたことはありますか?ストレス耐性とは、文字通り「ストレスに耐える力」のことではあるのですが、我慢や根性などのような「ストレスに耐えしのぶ」というようなことがストレス耐性ではありません。ストレス耐性とは、ストレスに対して適応し処理できるか、またどの程度耐えられるかといったレベルのことを意味します。
生きていると、ストレスというものは残念ながら避けることができません。どうしても、誰にでも平等に降りかかってしまいます。ですから、ストレスを無くそうという発想ではなく、ストレスに適応し処理していく準備をすることがストレス耐性をアップさせる方法です。
ストレスをためないメンタルセルフケア
ストレスに負けないメンタルというと、頑丈で折れない木のようなメンタルを想像する方が多いのですが、‟ストレスに強い”メンタルとはそのような「何が来ても倒れません」というものではありません。むしろストレスを柔軟に受け入れ、いなすというイメージの方が近いと思います。
「とにかく耐えるんだ!」という意識でいては、ギリギリまで踏ん張って我慢してしまい、限界がきた時には心がポッキリと折れてしまいます。大切なのは何事も柔軟に受け流せる、柳の木のようなしなやかなメンタルを持つことです。ストレスをうまく受け流し、解消するコツを身に付けることで、ストレス耐性の高いメンタルを作ることができるのです。
ご自身なりのストレス解消方法を用意しておく
ストレスに弱いという方の特徴としては、ストレスの原因に対して真面目にまともに受け止めてしまい、どんどんストレスが蓄積していく、それでいてストレスの解消方法を持っていないという方が多いということです。
ご自身のことかもしれないと思われた方は、ご自身なりのストレス解消法を100個ストックしましょう。100個だとかなり多いので、まずは10個でも良いです。
もしもあなたがケーキが好きなら「◯◯のケーキを食べる」
サウナに入ることが好きなら「サウナに入る」
これで2つのストレス解消法がリストアップできます。
そのことを考えるだけで、テンションが上がるほどの嬉しさではなくても、ちょっとウキウキするというようなレベルでも構いませんので、幾つか用意しておくと良いでしょう。
- お気に入りのバーやカフェに行く
- 自宅で瞑想をする
- 好きな作家の本を買う
など、「そんなことで良いの?」という些細なことで大丈夫です。
むしろ、ストレス解消法というのは、ストレスを受けて元気がなくなっている時にやることですから、エネルギーがなくてもできることが良いです。気が向いたときに「ふらっと」気軽に行動できるようなことを、できるだけ細かく具体的に書き出しておくとさらに良いでしょう。
「海外旅行をする」というのも良いのですが、なかなか簡単には実行できません。ストレスは時と場所を選ばず降りかかってきますから、このリストにはできるだけ気軽にできることを入れていきましょう。
このようにリストを作っておくのには、実は大きな理由があります。好きなこと、楽しいこと、やりたいことというのは、ストレスにまみれて疲れきっている時には思いつかないものです。ですから、そうなる前に、ご自身の好きなことや気分転換になることを書き出しておき、実際にストレスを感じたら実行するだけでいいようにしておく必要があるのです。
ストレス用の器を大きくする方法
次にお伝えする方法は「ストレス用の器を大きくする」ことです。
人間の心の状態は、不機嫌・普通・ご機嫌・上機嫌に分けられます。ご機嫌や上機嫌であれば、心にゆとりができて、自動的にストレス耐性が高くなります。反対に、不機嫌であれば、ストレス耐性は低くなります。
例えば、宝くじで1億円当たったとしましょう。その時にパートナーから思いっきりビンタされたとしても痛くもかゆくもないはずです。逆に、踏んだり蹴ったりだった一日の最後に、パートナーから思いっきりビンタされたら誰だって激怒してしまうでしょう。つまり、ご自身のご機嫌の度合いとストレス耐性は、正比例するわけです。
ご機嫌なときはやる気がアップするし、何事も楽しくなり、人に優しくなれるし、受けるストレスも小さく感じます。一方で、不機嫌なときはやる気がなくなり、ワガママになり、攻撃的にもなって、受けるストレスを大きく感じるようになります。
このように、同じひとりの人間が「機嫌の善し悪し」によって、まったくの別人格になってしまうようなことが起こりえます。つまり、ストレス耐性を高めるためには、いつもご機嫌で生きていくことが必須条件となるわけです。しかし、ご機嫌になれるような出来事は待っていても、なかなかやって来るものではありませんから、ご自身でご自身をご機嫌な状態にするしかありません。
ご自身をご機嫌にするといっても、「何に喜びを感じるかは人それぞれ」なので、やり方も人それぞれではありますが、その中ですべての方におすすめの方法が、「ご自身がご満悦になれるものを探しておく」ということです。
ご満悦とは「心が満ち足りて喜ぶこと」です。「よろこぶ」という漢字は2つあり、1つは「喜ぶ」、そしてもう1つがご満悦の方の「悦ぶ」です。「喜ぶ」とは、外から何らかの条件がやってきて、それがご自身の希望と一致した時に湧く感情です。つまり、「喜ぶ」は、ご自身でコントロールすることができず、良い条件の時にしか湧いてきません。
一方で「悦ぶ」は、外側の条件も誰からの評価も関係なく、ご自身がやっている時にワクワクするという気持ちが湧く感情のことです。こちらであれば、ご自身でコントロールすることができ、よろこびたい時に悦ぶことができます。
つまり「喜ぶ」は外発的動機に左右される感情で、「悦ぶ」は内発的動機に左右される感情といえますね。ご自身でコントロールでき、ご自身ひとりだけで悦に入れる条件を事前にリストアップしてみましょう。
- 鏡に写る時のあなたのこの角度が好き
- 少し早起きできているあなたが好き
- ジョギングが継続できているあなたが好き
というような条件です。
ご自身でコントロールでき、かつご自身ひとりだけでできることがポイントになります。貯金を使えば減っていくのと同じで、「ご機嫌」も、ストレスを受けるたびに減っていきます。もし、週末にしか楽しみがないだとか、何か条件を満たしていないとご機嫌になれないとなると、人生のほとんどが不機嫌モードになってしまいストレス耐性が下がってしまいます。
ですから、気軽にそして簡単に、こまめに、ご自身ひとりでもご機嫌を貯金することが必要になるわけです。
楽しみは人それぞれですから、何でも良いのですが、
例えば、
- 家に帰ったら、映画を見る。
- 自宅でワインを楽しむ。
- アロマを楽しむ。
- 趣味の雑誌を読む。
- 旅行代理店でパンフレットをもらってきて、旅行の計画を練る
というようなことでも、相当大きな喜びになるはずです。
趣味をたくさん持つことがストレス耐性をアップさせる
ここで1つ、おもしろい調査結果があるのでご紹介します。平均的な科学者は一般人とほぼ同じ数の趣味をもっている。一流の科学者は一般人の2倍の趣味をもっている。ノーベル賞受賞者は、一般人の3倍の趣味をもっていた、というのです。
参照文献:「残酷すぎる成功法則―9割まちがえる「その常識」を科学する」
エリック・バーカー(著)、橘玲(監訳)、竹中てる実(訳)、飛鳥新潮社 2017.10.25初版)
この調査結果が示すものは、楽しみが多い方ほど、仕事でも頑張れるということです。
ノーベル賞を受賞するような方は、ストレス耐性が高いのでしょう。辛いことがあっても決してあきらめず長い間コツコツと耐え抜くことができるわけです。そうすると反対に、楽しみの少ない方というのは、成果が上がらず、お金もたまらず、ストレスばかりが溜まってしまうということになりますね。
ですから、ぜひ皆さんも気軽に、そして簡単にこまめに、ご自身ひとりでも毎日できる楽しみをつくって、ご自身をご機嫌にしてみてください。そうすれば自動的にストレス耐性が上がり、人一倍頑張ることができます。ほんの少しずつでも良いので、意識して改善してみてくださいね。