不動産投資において、ローンを借りて自己資金以上の不動産を買うことができるレバレッジが効くというのは、他の投資と比較して大きな魅力です。金融機関からのローンを借りられるのか、またいくら借りられるのかによっても購入できる物件の選択肢が変わってきます。年収や物件の特性によっても借りられる金額が変わってくるため、それに応じた投資戦略を組み立てる必要があります。それでは具体的に不動産投資ローンについて解説していきます。
まずは融資について
金融機関の融資の現状
2021年現在、融資利用は昔に比べ厳しいものとなっています。かつては購入代金全額を融資に頼るということが可能な時代もありましたが、現在は利回りがそれなりに高く、借入期間を法定耐用年数内に抑えることができるような物件であっても、せいぜい物件価格の8割程度しか融資を受けられないというのが実情です。
もちろん、そもそもの物件価格が数百万円程度と非常に安かったり、すでに保有している他の不動産を担保にできたり、不動産会社と金融機関の提携ローンだったりする場合などは、100%に近い融資を受けられる可能性がないわけではありませんが、そういった特別な事情がない限りは物件価格の8割程度しか融資を受けられないということを前提に、投資を行う判断をすべきということになります。
ただし、金融機関の融資姿勢は経済状況等により変わります。現時点の目安として参考にしてください。
自己資金はどれくらい必要なのか
残りの20%については自己資金を準備する必要があるということになります。また不動産を購入する際には、物件価格以外に購入にかかる諸費用も必要となります。最低限、物件価格の20%+購入にかかる諸費用分の自己資金を持っている必要があるということです。購入にかかる諸経費とは、不動産仲介会社に支払う仲介手数料や、登録免許税といった税金、登記申請を依頼する司法書士手数料、ローンの審査にかりる際に必要な融資事務手数料などをいいます。大抵の場合、諸費用として物件価格の7%から10%程度で想定をしておけば足りる金額でしょう。
例えば物件価格が3,500万円で、購入諸費用が物件価格の7%程度だと仮定すれば、必要となる自己資金は3,500万円x(20%+7%)=945万円ということになります。
なお、ここまででお話しした自己資金の金額は、あくまで不動産を購入する際に必要となる金額の目安ですので、状況によって変化します。購入不動産の収益性が悪化するような事情があれば必要な自己資金も増えます。
例えば、入居者退去による賃料収入の減少や設備の故障による補修費の発生などに備えることを考えれば、さらに多くの自己資金が必要であることも事前に考慮する必要があります。
レバレッジ効果とは
レバレッジとは「テコ」と訳されます。レバレッジ効果とは、ローンを利用することで自己資金に対する収益率が変化することを指します。少し具体的な例でみてみましょう。(例を簡易にするために、購入費用は無視して計算しています。)
「投資収益率=年間収入(もしくは収支)÷自己資金」で計算されます。
・全額自己資金で3,500万円の物件を購入、年間の賃料からの収入が105万円だった場合
105 ÷ 3,500 = 3%
・全額自己資金1,000万円とローン2,500万円で物件を購入、年間の賃料からの収入が200万円、ローン金利が年間30万円だった場合
(105 ‐ 30) ÷ 1,000 = 7.5%
105万円という収入は一緒ですが、ローンを利用した場合は、自己資金が少なく済むため、投資収益率は高い値となりました。こちらが不動産投資の魅力といわれるレバレッジ効果です。
融資を受けるための年収や属性、資産状況
金融機関が融資の可否を判断する際に考慮する要素としては以下のようなものがあります。
年収
金融機関それぞれで、年収についての最低基準を独自に定めているケースが多く、その基準をクリアしていなければ、そもそも融資の申込資格を満たさないため審査さえしてもらえません。
属性
次に属性です。具体的には、どういった基準でチェックが行なわれるのかを見ていきましょう。
- 職業(会社役員、会社員、公務員、自営業、フリーランスなど)
- お勤め先(会社名、屋号、業種)
- 勤続年数
- 年収(給料、年金等に加え、既に不動産投資を行っている場合にはその年収を含む)
資産状況
資産はどれくらいあるのか、どんな不動産を所有しているのか、他に借り入れはあるのかといった資産状況がチェックされます。融資対象となる不動産が何らかの事情で思ったほどの収益をあげることができなかった場合でも、間題なく返済を行うことができるだけの資産があるかどうかがポイントです。
不動産の担保価値および収益性
融資対象となる不動産の担保価値および収益性が、融資額に見合ったものであるかどうかもポイントのひとつです、不動産の担保評価については、金融機関が独自に担保評価を行います。収益性については、不動産の収益シミュレーションの提出を求められる場合があります。投資家としての収益予測力までチェックされる場合もあるため、しっかりとした収益シミュレーションを作成する必要があります。
融資判断の流れについて
年収や属性などが基準をクリアしているかどうか
この時点で基準をクリアしていない場合は、どれほど収益性の高い物件を確保できていたとしても融資を受けることは難しいでしょう。
次に不動産の担保価値や収益性はどうか、また資産はどうか
ここで注意が必要なことは、金融機関が精査しているのは、あなたの不動産投資がうまくいくのかどうかではなく貸したお金がきちんと回収できるのかということですので、融資を断られたからといって落ち込む必要はないでしょう。
金融機関の種類とその特徴
都市銀行
都市銀行は一般的には投資用不動産ローンに積極的ではなく、属性審査が厳しいことが多いようです。
地方銀行
地方銀行は各行ごとに取り組み方に大きな差があります。年収が1,000万円を超えるような方にしか融資を行わないところがある一方で、年収が500万円以下の方にも融資をしてくれるところもあるので、自分の年収や属性に合った地方銀行を探す必要があります。返済期間は原則、法定耐用年数内で、金利は2%前後の水準となることが多いようです。
信用金庫
融資できるのは、信用金庫の本店や支店から半径数10キロ圏内に所在する物件という要件があることが多いです。
ノンバンク
金利水準は1.8%から5%程度と企業ごとに異なります。
ここでのポイントとしては、自分の属性に合った金融機関はもとより、少しでも好条件で借りられるかどうかあらゆる金融機関と交渉することです。たとえ1%の金利差でも不動産投資では大きく収益に影響を与えますので、複数の金融機関のローンを比較して検討すると良いでしょう。
属性により融資がつきにくい方が取るべき戦略
年収が低いことや自営業者であるなどの理由で金融機関から融資を受けることが難しい場合に、とるべき戦略としては次のようなものがありますので参考にしていただければと思います。
物件価格を引き下げる
まず検討すべきことは、購入する物件の価格を現在の自分の身の丈に合ったものに引き下げることです。不動産投資というと、とかく一棟ものマンションやアパートへの投資を志向する人が多いのですが、区分所有マンションや戸建への投資も立派な不動産投資です。まずは、そういった小さなものから不動産投資を始めて、資産規模と経験値を徐々に積み上げていけば、やがて一棟ものマンションやアパートに投資できるだけの融資を受けることも可能になるかもしれません。
自己資金を増やす
やはり自己資金を増やすことは有効な方法であることには間違いありません。自己資金が多ければ、物件価格全体に対する融資金額の割合が下がり、それだけ金融機関の負うリスクが下がるからです。
また、不動産投資に対する計画性があるものと判断してもらいやすくもなります。年収が低い方であっても、しっかりと節約をしたりして自己資金を増やすことができるでしょう。
なお、年収や属性などの問題で融資が出にくい方の中には、融資を受けること自体をゴールのように捉えてしまう方がいます。しかし、言うまでもなく融資を受けることは通過点に過ぎません。その先にある不動産投資でしっかりと収益を上げることこそが本来のゴールなので、そのことを決して忘れないようにしましょう。
おわりに
今回は不動産投資における金融機関からローンを利用する際の情報をご紹介しました。あくまでも、現時点での一般的な基準をご紹介したものであり、状況は変化していきますので、まずは今回の情報を参考程度にご自身で情報を集め勉強することをおすすめします。