新卒で入社した会社で定年まで勤める終身雇用は、もう過去のもの。スキルアップや、より良い条件を求め、転職をすることは当たり前の時代となりました。
しかし、無計画に今の会社を退社し、転職活動を始めるのは危険!実は転職活動には意外にコストがかかります。資金が尽きて、追い込まれて不本意な転職をしないためにも、転職活動にかかるお金は再確認しておきましょう!
1.転職活動中は、あらゆる面でコスト高の毎日に!
通常の生活ではかからない転職活動費用には、以下のものがあります。
- 説明会、面接のための交通費
- スーツ、整髪などの服飾費
- 研究のための本、郵送料、写真代
- カフェ、外食代
この中でも変動的であり、意外にかかってしまうのが交通費。例えば、都内在住で、23区内での転職を考えている場合がもっとも費用がかからないパターンですが、それでも片道平均500円かかるとします。
7〜8社検討し、説明会など1度だけ行った企業が3社、2度行った企業が3社、役員面接などまで進み、3度行った企業が2社とします。幸い、3度行った企業の中の1社から内定をもらい、スムーズに転職活動は終了したと考えると、
500円×2(往復)×(1×3+2×3+3×2)=15,000円
これは居住地と転職検討企業が近く、すんなりと転職先が決まった最短期間・最低金額のケースですから、居住地が遠い場合、地方から都内への転職を考えている場合、スムーズに転職活動が進まなかった場合は、この金額が膨らんでいくことになります。500円の片道費用が1,500円になっただけで45,000円、片道1,500円であったとしても、転職活動に手間取り2倍の企業に接触したとすると、90,000円にもなります。
スーツ、整髪代も、面接での好感度アップのためには、お金を惜しむわけにはいきません。面接官はアタマの先から足元までしっかりと見ています。見落としがちな靴は、シンプルで質の良いビジネスシューズをぜひ新調したいもの。理容院・美容院にもこまめに行きましょう。
また、あなどれないのがカフェ、外食代。複数の企業を回る場合に時間の調整でカフェに入ったり、遅い時間に面接を受けて疲れてしまい、外食する日も多くなります。また、情報収集のために他社や異業種の友人知人と会食する機会も増えるでしょう。通常の生活よりも、何かとコストがかかるのが、転職活動中の生活なのです。
2. 生きているだけでお金がかかる?“固定コスト”に要注意!
転職活動でかかる実費は前にも挙げた交通費や被服費、外食代ですが、これらは 「変動費」に分類されます。私たちは毎日暮らしていくために「固定費」がかかっています。
固定費とは、いわゆる生活費で、家賃、光熱費、通信費などです。これらの固定費は、ふだんは給与でまかなっているわけですが、転職先が決まらないまま退職し、収入がなくなっても必ずかかる固定費用です。
ご自身の1ヵ月あたりの生活費をしっかり把握し、充分な資金を確保しておく必要があります。
3.在職中は気付かなかった“見えないコスト”にも要注意!
在職中は給与の額面金額と手取り金額の差が大きくてガックリしていた方も、退職するとその恩恵をひしひしと感じるようになります。給与から天引きされていたのは、主に健康保険料、厚生年金、所得税と住民税。健康保険料は企業が半額負担してくれていたので、退職後は全額を自身で支払わなくてはなりません。これまでの健康保険を任意継続にするか、国民健康保険に切り替えるかを選択できますが、どちらにせよこれまでの2倍程度のコストとなります。
年金と税金は、これまで企業が支払いを代行していましたが、退職すれば自身で支払わなくてはなりません。天引きだと気付きにくいのですが、その分の現金を準備しておくことも念頭においておきましょう。税金は前年度の所得をもとに算出されるので、たとえ転職活動中で無収入であっても、税金の支払いは生じます。
4.頼みの綱だと思ったのに…失業保険の落とし穴
「転職活動がうまく行かず、無職の期間があっても失業保険があるから大丈夫!」なんて思っていませんか?失業保険は、離職前の賃金のおよそ5割から8割程度に相当する金額が支給される制度です。転職活動の強い味方ですが、実は以下のような条件があります。
・退職日前の2年間のうちに被保険者期間が通算12ヵ月以上あること
・自己都合退職の場合、受給資格決定後約2ヵ月を経過しないと支給されない
特に注意したいのが、支給開始日。ハローワークに離職票と求職票を提出して受給資格が決定してから約2ヵ月は給付されないので、この期間は貯金を切り崩して生活する必要があります。
また、雇用保険加入期間によって給付日数は変わります。雇用保険加入期間10年未満の20〜30代前半の方が自己都合で退職すると、わずか90日しか支給されないことも注意が必要です。
5.転職には充分な準備資金が必要だけど…緊急時の対応策
ここまでで、転職活動費用、生活費(固定費)、保険・年金・税金(見えないコスト)には、それなりの金額が必要なことが分かりました。さらに、転職先が決まらないままに退職すると、コストが在職中よりもかかる上に、退職から約2ヵ月は収入がありません。
このため、在職中に次の転職先を決めることが鉄則です。やむを得ず転職先が決まる前に退職する時は、資金が枯渇して焦って不本意な転職先を決めることがないように、充分な生活費は確保しておきたいものです。
しかし、準備したつもりでも、思うようにいかないのも転職活動。行き詰まったら、これまでとは違う転職サイトに登録する、転職エージェントに接触する、友人や知人に相談してみるなど、あらゆる方向から作戦を変えてみましょう。
また、気持ちの持ち方も大切。資金に不安が出てきたら、緊急避難的なローンを活用して気持ちに余裕をもって活動に臨んでみましょう。
転職を考えはじめたら、資金の準備もお忘れなく。