お酒のおつまみや子どものおやつというイメージが強いナッツ。実は驚くほど栄養価が高く、日々のめぐりや、生活習慣のアシストなどに効果が期待できる食べ物なのです。このコラムではナッツの種類ごとの栄養や期待できる役割、効果的な食べ方、食べ過ぎたときに起こり得るトラブルなどについてご紹介します。ぜひ参考にしてください。
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ナッツとはいったいどのような食べ物?

おつまみやお菓子としてだけでなく、近年はダイエット食品としても人気を集めるナッツ。私たちの生活に身近な食品ですが、ナッツの定義や、なぜダイエットに効果的なのかを知っている方は意外と少ないのではないでしょうか。
はじめにナッツの定義や歴史、ダイエットへの効果について説明します。
ナッツの定義は?
ナッツとは、いわゆる「食べられる木の実」のこと。私たちが普段食べているナッツは、ほとんどが「種実類」と呼ばれており、名前の通り植物の種や木の実の一部を食用としています。
また、一口に種実といってもその種類はさまざま。カシューナッツやシード類は種子をそのまま、アーモンドやクルミは種の中にある「仁(じん)」と呼ばれる部分を、ヘーゼルナッツなどは堅果という実の部分をそれぞれ食べています。
ナッツの歴史は?
ナッツの歴史は古く、はるか昔から保存食や神事・催事などのお供え物として利用されてきました。ナッツの中でも最も古い歴史があるのはクルミといわれており、紀元前の中国やエジプトでは国王のお墓にクルミをはじめとしたナッツが供えられていたそうです。
日本においては、縄文時代の遺跡などから木の実が貯蔵された状態で発見されています。現代ではほとんど食べられないドングリなども当時は良く食べられており、昔の人々にとってナッツは穀物不足を補うための重要な食物でした。
ダイエットにも効果的って本当?
近年ダイエット食品としても人気を集めるナッツですが、なぜダイエットにも効果的といわれているのでしょうか。ナッツ類には不溶性の食物繊維が多く含まれており、便のカサを増す効果が期待できます。また、食物繊維はお腹の中でゆっくりと消化されるため、少量でも満腹感が得られるうえ、腹持ちが良いというメリットもあります。
さらに、ナッツ類を食べることで、美容に関して働きかけるビタミンB2をはじめとするビタミンB群を摂取可能です。ビタミンB群は良いリズムに役立つとされており、良いリズムは良い生活習慣に貢献します。これらのことから、ナッツ類はダイエットにぴったりな食材のひとつであるといえます。
ただし、ナッツは決してカロリーの低い食材ではなく、アーモンドでいえば25gでおよそ150kcalもあります。ナッツをダイエット中に摂取する場合は、食べ過ぎないように気を付け、夜はなるべく避けて朝食や間食として食べることがおすすめです。
ナッツに期待できる効果は?

ナッツは栄養価が高く、ダイエット以外にもさまざまな効果が期待できます。以下で詳しくご紹介します。
食物繊維が自然なお通じをサポート
ナッツには、食物繊維が豊富に含まれています。食物繊維は、人の消化酵素では消化されにくい成分で、「第6の栄養素」とも呼ばれる重要な栄養素です。食物繊維には水溶性と不溶性の2種類があり、ナッツには特に不溶性食物繊維が多く含まれています。不溶性食物繊維には、腸内で水分を吸収して膨らみ、便を形成する働きがあります。また、腸の運動を活発にする効果も期待できます。近年、日本人の食物繊維摂取量は減少傾向にあるとされていますが、ナッツを取り入れることで、自然な形で食物繊維を補給できます。
「キレイ」に嬉しいビタミンEが豊富
アーモンドやクルミ、ヘーゼルナッツ、ピスタチオなどには、ビタミンEが豊富に含まれています。ビタミンEとは脂溶性ビタミンの一種で、4種のトコフェロールと4種のトコトリエノールの化合物の総称です。ビタミンEは肌の健康を内側からサポートする効果も期待できるといわれています。
健やかな毎日のためのミネラルも
ナッツには、カルシウムやリン、カリウムなど、さまざまなミネラルが含まれています。ミネラルとは、体を構成する「酸素」「炭素」「水素」「窒素」以外の元素の総称で、「無機質」とも呼ばれる五大栄養素の1つです。これらのミネラルは、細胞の機能維持や骨・歯の形成に重要な役割を果たしています。しかし、ミネラルは体内で作ることができないため、食事で摂取する必要があります。アーモンドやピスタチオなどのナッツで、手軽にミネラルを補給することができます。
ナッツに含まれる主な栄養素
一口にナッツといってもその種類は数多く、含まれる栄養素のバランスもナッツによって異なります。ここからはナッツの種類ごとに栄養素と、その効能について見ていきましょう。
タンパク質が多いナッツ「アーモンド」

ナッツ類というと、まず「アーモンド」を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。
アーモンドは食物繊維やたんぱく質の含有量が豊富です。たんぱく質は筋肉や皮膚・毛髪などの身体の組織や、ホルモン・抗体などの成分を構成しており、生命維持には欠かせない栄養素です。また、アーモンドには若々しさのサポートをするビタミンEが豊富に含まれています。
豊富な栄養素が魅力「ピーナッツ」

「ピーナッツ」は日本では落花生(らっかせい)とも呼ばれ、他のナッツ類とは違って植物学的には豆の仲間に分類されます。
ピーナッツはナッツ類の中でも脂質が少なく、たんぱく質が豊富です。食物繊維やビタミンEの他、ナイアシンやカリウムなどの栄養素も多く含まれています。カリウムは体内の塩分を体外に排出する手助けをするミネラルの一種です。
多価不飽和脂肪酸がたっぷり入った「クルミ」

クルミは歴史上最も古くから存在するナッツとされており、現在はパンやクッキーなどに多く使われています。
クルミは他のナッツ類と比較すると多価不飽和脂肪酸をたくさん含んでいるのが特徴です。
ビタミンB6が豊富「ピスタチオ」

「ピスタチオ」は鮮やかな緑色をしたナッツです。スイーツやアイスクリームのフレーバーとしても人気で、日本でも年々消費量が増加してきています。
そのピスタチオにはビタミンB6がたくさん含まれています。ビタミンB6は、ヘモグロビンの合成などに欠かせない栄養素です。また、ピスタチオは他のナッツ類に比べてカリウムも多く含んでいます。カリウムは健康に欠かせない栄養素です。
脂質の含有量が高い「マカダミアナッツ」

「マカダミアナッツ」は1857年に発見された、比較的新しいナッツです。
マカダミアナッツは他のナッツ類と比較すると脂質量が多く、可食部のうちおよそ70%以上を脂質が占めているため、カロリーも高めです。しかし、その脂質の多くはオレイン酸をはじめとした一価不飽和脂肪酸であるため、適量の摂取は健康にも良いとされています。
カリウムが豊富に含まれている「ココナッツ」

ココヤシという植物の実である「ココナッツ」。ナッツ類として扱われるのは、果肉の部分を乾燥させたものです。
ココナッツにはカリウムが多く含まれています。ただし、ココナッツに含まれる脂質の多くは肥満の原因となる他、悪玉コレステロールを増加させて心筋梗塞などの疾患を引き起こす可能性のある飽和脂肪酸であるため、摂り過ぎには注意が必要です。
カロリーが低いナッツ「カシューナッツ」

「カシューナッツ」は、南米が原産のウルシ科の植物です。カシューアップルと呼ばれるりんごのような形をした果実にぶら下がっており、一つの実に対して一粒のカシューナッツしか取れません。
カシューナッツは他のナッツ類と比較すると脂質量が少なく、低カロリーなのが特徴です。栄養の面では、マグネシウムやリン、鉄、亜鉛などのミネラルを多く含んでおり、これらは体内で合成することのできない栄養素なので、カシューナッツは良いミネラル源といえます。
貧血予防におすすめ「ヘーゼルナッツ」

独特の食感と風味が特徴の「ヘーゼルナッツ」。そのまま食べる機会はあまりなく、チョコレートやアイスクリーム、ケーキの材料などに用いられています。
ヘーゼルナッツには鉄や銅などのミネラルや、パントテン酸、葉酸などが多く含まれています。妊娠中や生理のある女性におすすめのナッツです。
美容やダイエットのおすすめのナッツ「ブラジルナッツ」

「ブラジルナッツ」は熱帯雨林だけに生息する木から取れるナッツの一種で、日本ではなかなか見かける機会がありません。
ブラジルナッツには数多くのミネラルが含まれている他、ビタミンB1も豊富に含んでいます。ビタミンB1は糖質を身体のエネルギーに変換するときに必要なビタミンで、糖質やアルコールの摂取量が多い方は特に摂取したい栄養素です。ただし、ブラジルナッツに含まれる「セレン」を過剰に摂取してしまうと、健康に害を及ぼす可能性もあります。食べ過ぎないように注意しましょう。
高カロリーだけど味わい深い「ピーカンナッツ」

アメリカ原産のクルミ科の木になる「ピーカンナッツ」。クルミに似た食感ですが、苦みが少なく、まろやかな味わいが特徴です。
ピーカンナッツは、マカダミアナッツの次に高カロリーです。およそ7割が脂質でできていますが、そのうちの飽和脂肪酸はわずか1割程で、残りは多価不飽和脂肪酸と一価不飽和脂肪酸で占められています。高いカロリーに躊躇してしまいがちですが、深い味わいが楽しめるため、気になる方はぜひ食べてみてください。
何気なく食べていることも多いナッツですが、商品の選び方や食べ方に気をつけると、より効果的に身体に栄養を取り入れることができます。ここではナッツの効果的な食べ方をご紹介します。
無添加・素焼きのものを食べる
ナッツ類をより効果的に食べるには、塩や油などが使われていない、シンプルな素焼きのものを選びましょう。塩分を摂り過ぎると、食べ過ぎやむくみ、高血圧などを引き起こす可能性があるため注意が必要です。
酸化しないように気をつける
ナッツ類に多く含まれる不飽和脂肪酸は酸化しやすく、酸化した食材は身体に悪影響を及ぼすとされています。開封したナッツは早めに食べ切り、保存するときは密閉容器に入れて高温多湿を避けましょう。
適切な量を食べる
食べやすくて、ついつい食べ過ぎてしまうナッツ。ナッツ類は栄養が豊富ですが、その分高脂質でカロリーも高めの食材です。ナッツを食べるときは、1日あたり約25gを目安にすることがおすすめ。アーモンドやピーナッツなら20~25粒、カシューナッツなら12~18粒、マカダミアナッツは7~10粒が目安です。
食べるタイミングに気をつける
ナッツ類は食物繊維が豊富なため、食事の30分から1時間前に食べることでその後の食事の食べ過ぎを防げます。また、ビタミンやミネラルも多く含まれているため、スポーツの前後に食べることで汗によって失われた栄養素を補うこともできます。
ナッツの食べ過ぎには気をつけて!

栄養価が高いことから、健康のためとついつい食べ過ぎてしまうナッツ。適量であれば体に必要な栄養を補給できますが、食べ過ぎてしまうことで身体に悪影響を及ぼすこともあります。ここからは、ナッツを食べ過ぎてしまうことで起こり得るトラブルについてご紹介します。
カロリーオーバーで太ってしまう
ナッツ類は栄養価の高い食材ですが、その分脂質やカロリーも高く、食べ過ぎるとカロリーオーバーでかえって太ってしまう可能性が。さまざまな種類のナッツがありますが、どれも100gあたり約600kcalと高カロリーなため、どの種類のナッツでも食べるときは量に気をつけましょう。
ニキビなどの肌荒れの原因に
ナッツ類は食べ過ぎてしまうとニキビなどの肌荒れを引き起こしてしまう可能性もあります。これはナッツ自体が原因ではなく、ナッツを加工するのに使用される油やバター、塩分が原因です。ニキビや肌荒れを防ぐためには食べ過ぎないよう気をつけ、食べるときには素焼きのナッツを選ぶと良いでしょう。
消化不良になり下痢や便秘を引き起こす
ナッツ類には食物繊維のうち「不溶性食物繊維」が多く含まれています。不溶性食物繊維は便のかさを増やし、腸の運動を活発にさせる働きがあり、マイナートラブルである便秘を解消するのに効果的です。一方、不溶性食物繊維は摂取し過ぎると便が水分を吸収し過ぎて硬くなってしまい、かえって便秘になってしまうこともあります。
また、ナッツ類は脂質を多く含んでいるため、食べ過ぎてしまうと胃腸に負担がかかり、下痢や胃痛・腹痛を起こす原因となってしまうこともあります。ナッツを食べるときはよく噛み、食べ過ぎには気をつけましょう。
吐き気や頭痛などが起きやすくなる
人によっては、ナッツ類を食べると頭痛や吐き気を起こすこともあります。これはナッツに含まれる血管を拡張させる働きを持つ「チラミン」という物質が原因で、ナッツ類だけでなくチーズや赤ワインなどにも含まれる物質です。ナッツを食べて頭痛や吐き気が起こる方は食べることを控えた方が良いでしょう。
おわりに
栄養価が高く、健康食品としても注目を集めるナッツ。種類によって風味や食感が異なり、食材として料理やお菓子などのレシピに使うこともできるので、日々の食事に取り入れやすいのが魅力です。ナッツを食べることでさまざまな効能が得られますが、食べ過ぎは逆に身体へ悪影響を及ぼすことも。ナッツを食べるときは、食べ方や食べる量を工夫するなどして、適切に摂取するよう心がけましょう。