生前に葬儀の話をすることは、タブー視されがちです。そのため、いざというときに「葬儀の相場がわからない」と困る方は少なくありません。そこで本記事では、最近の葬儀費用の相場と内訳をわかりやすく解説するとともに、無理のない範囲で費用を抑えるための工夫を紹介します。
自分の葬儀は自分で準備したい
「自分の葬儀は自分で準備したいが、どうすればいい?」「葬儀社選びや葬儀の段取りのことで、遺族に負担をかけたくない…」そんな方におすすめなのがクレディセゾングループの「セゾンの相続 お葬式サポート」です。積み立て方式でいざというときに備える方法をご提案しています。ご興味のある方は、ぜひご相談ください。
「セゾンの相続 お葬式サポート」を見る
費用は葬儀スタイルによって異なる

葬儀にかかる費用は、葬儀のスタイルによって大きく異なります。葬儀スタイルには、以下の4つがあります。
スタイル | 平均費用 | 特徴 |
---|---|---|
一般葬 | 161.3万円 | ・故人の友人や職場関係者、知り合いなどが広く列席 ・通夜と告別式を行い、列席者が多くなるため高額になりがち |
家族葬 | 105.7万円 | ・家族だけで行う小規模な葬式 ・葬儀会場を借りて通夜と告別式を行うことが一般的 ・列席者が少なく会場も小規模で、一般葬より費用が少ない |
一日葬 | 87.5万円 | ・通夜を行わず、告別式と火葬で葬儀を完結させる ・遺族や列席者の負担が少なく、飲食代・会場代が抑えられる |
直葬 | 42.8万円 | ・通夜も告別式も行わない、火葬のみのスタイル ・火葬にかかる費用と葬儀場の使用料、棺などの代金のみで、会場代や飲食費は不要 |
割合が高いのは一般葬と家族葬です。コロナ禍を経て家族葬が広く受け入れられるようになり、2024年には一般葬が約3割、家族葬が約5割を占めるようになっています。
株式会社鎌倉新書の「第6回お葬式に関する全国調査(2024年)」によると、葬儀費用の総額は平均118.5万円です。2020年調査の際には184.3万円でしたが、コロナ禍の2022年に110.7万円に落ち込み、2024年でやや上昇に転じました。
2022年調査における平均葬儀費用の急激な落ち込みはコロナ禍による参列者数制限の影響と考えられます。
出典:「第6回お葬式に関する全国調査(2024年)」株式会社鎌倉新書(対象:2022年3月から2024年3月の間に喪主を経験したことのある日本全国の40歳以上の男女、有効回答数2,000件)
葬儀費用の内訳と相場
葬儀費用の内訳は以下のとおりです。それぞれどの程度の費用がかかるのか、詳しく見ていきましょう。
- 基本料金
- 飲食代
- 返礼品や香典返し
- 宗教者へのお礼
なお、先の調査結果でいう「葬儀費用総額」は上記のうち基本料金、飲食代、返礼品や香典返しの金額を合計したもので、「宗教者へのお礼」は含まれていません。
基本料金
基本料金には、以下の費用が含まれています。
- 斎場利用料
- 火葬場利用料
- 祭壇・棺・遺影
- 搬送費 など
列席者の人数に左右されない費用で、平均75.7万円かかります。
飲食代
葬儀で列席者に食事をふるまうと飲食代がかかります。列席者の人数や食事のグレード、アルコール類を提供するかどうかによっても差はありますが、平均額は20.7万円ほどです。
返礼品や香典返し
葬儀の列席者に渡す返礼品や香典返しにかかる費用は、人数にもよりますが、平均で22.0万円ほどです。一般的には、香典で渡された金額の半分を香典返しとして渡します。
出典:「第6回お葬式に関する全国調査(2024年)」株式会社鎌倉新書
宗教者へのお礼
寺や神社、教会から宗教者を呼んで、葬儀を執り行うときは、宗教者へのお礼も必要になります。どの程度のお礼が必要かは、直接、寺や神社などに相談しておくことをおすすめします。しかし、「お志(こころざし)で構いません」と詳細を教えてもらえないケースもあるため、葬儀社の担当者や同じ寺・神社で葬儀をされたことがある親戚にも相談すると良いでしょう。
お礼の相場は、神道で15万円~30万円、キリスト教で5万円~15万円です。
仏教の場合、宗教者へのお礼は「お布施」と呼ばれます。お布施として僧侶に渡す金額は、主に読経料と戒名料からなります。読経料とは、お経を読んでもらう料金で、戒名料は戒名をつけてもらう料金です。
浄土真宗では戒名にあたるものが法名と呼ばれ、法名にはランクがありません。それに対して戒名にはランクがあるため、僧侶に渡す金額は戒名のランクに大きく左右されます。
戒名料には5万円~100万円と幅があり、高い位の戒名は100万円を超えることもあります。一般的には20万円~30万円が多いようです。読経料の相場は僧侶ひとりで10万円~30万円です。
戒名料・法名料を知りたいときは、故人が懇意にしていた寺や代々の菩提寺に問い合わせてみましょう。
なお、先述の葬儀費用総額の平均118.5万円には「宗教者へのお礼」が含まれていません。そこで、仏教を例に、一般的な「お礼」を加えるといくらになるかを計算してみます。
戒名料として30万円、僧侶ひとりの読経料として20万円と仮定すると、118.5万円+50万円で、合計約170万円です。これが2024年における葬儀費用の目安と考えることができます。
葬儀費用が高くなる理由
葬儀費用は、想定の予算を上回る総費用になったり、結果的に高額な請求額になったりすることがあります。その理由として次のようなことが考えられます。
- 葬儀会社の見積もりが正確ではない
- 祭壇や棺のグレードが高い
- 割高な葬儀会社を選んだ
- 列席者が思ったより多かった
- 追加費用がある
葬儀会社の見積もりが正確ではない
事後的に葬儀費用が高くなる場合、葬儀会社が細かいところまで見積りをしていない可能性があります。見積書に「葬儀一式」のようにまとめて記載されている場合は、一式に何が含まれているのか確認してから受け取りましょう。例えば、見積もりにドライアイス代や遺体処置料などが含まれておらず、別途請求されるケースなどがあります。
祭壇や棺のグレードが高い
故人が生前に葬儀内容を詳しく決めていない場合は、遺族が祭壇や棺などを選ぶことになるでしょう。最後のお見送りの場であるため、最上級のものを選びがちですが、そうすると予想以上に総額が大きくなることがあります。
仏式の葬儀で一般的な白木祭壇は、平均30万円ほどですが、規模によっては20万円~120万円と幅があります。一方、生花祭壇は花で埋め尽くす華やかな祭壇で、20万円~80万円程度です。
ある程度、葬儀費用の予算を決めてから、祭壇や棺などを選びましょう。
割高な葬儀会社を選んだ
葬儀会社によっても費用に差があるため、注意が必要です。葬儀の内容がほぼ同じでも価格が高い会社もあります。事前に何社か比較し、費用と内容のバランスを考慮して納得できるプランを選ぶことが大切です。ただし、葬儀のときは何かと慌ただしく、十分な時間がないことも多いでしょう。
万が一のときにスムーズに葬儀会社を手配できるよう、元気なうちから家族と話し合っておくと良いでしょう。
列席者が思ったより多かった
列席者が想定以上に多いと、飲食代や返礼品代がふくらむ場合があります。飲食代や返礼品の数には、ある程度余裕を持たせておくと安心です。
追加費用がある
葬儀の内容によっては、追加費用用が発生することがあります。たとえば、契約時に選んだ花に満足できずワンランク上のものに変更した場合や、列席者の希望でアルコール代がかさんだ場合など、追加の出費が生じることもあるでしょう。予算より少し低めのプランを選んでおくと、追加費用が発生しても対応しやすくなります。
葬儀費用を抑えるポイント
葬儀は故人を送り出すための大切な儀式です。必要なところにお金をかけ、必要ないところは倹約することで、無理なく費用を抑えられます。
次の3つを実践すると、ある程度費用を抑えることが可能です。
- 複数の葬儀社から見積もりを取る
- 家族葬など小規模の葬儀にする
- 飲食代や祭壇のプランを見直す
それぞれ詳しく解説します。
複数の葬儀社から見積もりを取る
葬儀会社によって費用に差があるため、複数の会社から見積もりを取り、納得できるところに依頼することが重要です。
見積もりを比較する際の具体的なチェックポイントとしては、以下のようなものがあります。
- 明確に内訳が記載されているか
- 葬儀費用が相場とかけ離れていないか
- セットやプランに必要なサービスが含まれているか
- 追加費用が発生する可能性はないか
同じ葬儀会社のプランであれば、費用が高いほど祭壇や棺のグレードが上がるのが一般的です。しかし、異なる葬儀会社を比べると、高額にもかかわらず見栄えが良くないプランや、少人数の列席者しか対応できないプランなども見受けられます。そのため、少なくとも2社から見積もりを取り、費用と品質のバランスを考えたうえで選ぶようにしましょう。
家族葬など小規模の葬儀にする
葬儀の費用は、葬儀スタイルによって大きく異なります。一般葬は多くの関係者を招待するため費用が高額になりがちですが、家族葬や一日葬であれば費用を抑えやすくなります。少人数で執り行うことで、故人を静かに偲び、ゆっくりと話し合う時間を持てるのもメリットです。
ただし、すべてのケースにおいて小規模の葬儀が良いというわけではありません。家族葬や一日葬では、後になって故人の訃報を知った知人が自宅に弔問に訪れる可能性があり、遺族の対応が増えることも考えられます。故人の交友関係や仕事上のつながりを考慮し、適切な葬儀の規模を決めることが大切です。
飲食代や祭壇のプランを見直す
列席者が多い場合は、飲食代が大きく膨らむ可能性があります。プラン内容をよく吟味し、割高と感じる場合は、費用を抑えられるプランに変更するのも一つの方法です。
また、祭壇や棺などを選ぶ際も、本当に必要なグレードかどうかを再確認することが重要です。値段だけで選ぶのではなく、式の規模や故人・遺族の希望を踏まえ、適切なプランを選ぶようにしましょう。
葬儀費用について知っておきたいこと
葬儀費用を準備するにあたって、知っておきたいポイントを解説します。
- 見積書の内容をよく確認する
- 費用の抑え過ぎにも注意する
- 一般的には喪主が葬儀費用を負担する
- 口座凍結後も葬儀費用を引き出せる
- 公的保険から葬儀費用が一部支給される
- 死亡保険金を葬儀費用に充当できる
- 葬儀費用の一部は相続税の対象から控除できる
見積書の内容をよく確認する
トラブル回避のために、葬儀会社の見積書をしっかりと確認しましょう。ドライアイス代や遺体安置代、花代などが詳細に記載されているか、葬儀のグレードが適切かなどをチェックする必要があります。また、想定外の事態が発生した場合に追加料金がかかるかどうかも確認しておくと安心です。
費用の抑え過ぎにも注意する
故人を知る方は喪主だけではありません。無理に費用を抑えることで、列席者や親戚に不快な思いをさせたり、後日トラブルが生じることは避けたいものです。必要最低限の費用であっても、以下のような問題が起きないように適切な配慮を心掛けましょう。
- 思ったよりも見栄えがしない葬儀になった
- 家族葬や直葬を選んだために、後日親族などから不満が出た
- 葬儀会社の対応で不快な思いをした
一般に喪主が葬儀費用を負担する
葬儀費用の負担については法的な規定はありませんが、配偶者や子どもなど、喪主になる方が負担するのが一般的です。互助会への加入し葬儀費用を積み立てるなど、故人が準備していることもあるため、近親者同士で確認しておくことが大切です。
口座凍結後も葬儀費用を引き出せる
以前は、遺産分割が終わるまで故人の口座は凍結され、預金を引き出すことができませんでした。しかし2019年以降は、民法改正により創設された「預金の仮払い制度」で、相続人1名が申請すれば一定額まで預金を引き出せるようになりました。これにより、個人の預金を葬儀費用として活用できるようになりました。
ただし、手続きには以下のような書類が必要となります。相続人の人数が多い場合など書類取得に時間がかかる点に注意が必要です。
- 本人確認書類
- 被相続人の戸籍謄本とすべての相続人の戸籍謄本または抄本
- 預金を引き出す方の印鑑登録証明書など
書類の提出後、金融機関での手続きにも一定の時間がかかるため、すぐには払い戻されない点にも留意しましょう。
公的保険から葬儀費用が一部支給される
故人が国民健康保険に加入していた場合は、自治体から葬祭費として葬儀費用の一部に使えるお金を受け取れます。ただし、自治体によって葬祭費の金額は異なります。以下に例を挙げます。
自治体名 | 支給額 | 申請先 |
---|---|---|
東京都千代田区 | 70,000円 | 区役所国民健康保険係 |
札幌市 | 30,000円 | 区役所保険年金課給付係 |
大阪市 | 50,000円 | 区役所保険年金業務担当 |
また、協会けんぽや健康保険組合などに故人が加入していた場合は、埋葬料5万円を受給することが可能です。
生活保護受給者であれば、自治体が葬儀費用を支給する「葬祭扶助制度」を利用できる場合があります。ただし、この制度は最低限の葬儀にかかる費用を補助するもので、一般葬や家族葬などの通夜・告別式を含んだ葬儀には使えません。直葬を利用する場合のみ、適用になることが一般的です。利用する際は、葬儀の前に市町村の担当窓口または福祉事務所で申請を行う必要があります。
死亡保険金を葬儀費用に充当できる
故人の預金は口座凍結によりすぐに引き出せない可能性があります。そのため、死亡保険金を活用する方法も検討できます。受取人を相続人や喪主に指定しておくことで、比較的スムーズに資金を準備できます。死亡保険金は契約者・被保険者ではなく「受取人」の財産となるため、預金よりも払い出しの手続きが容易で、葬儀費用として迅速に活用できます。
葬儀費用の一部は相続税の対象から控除できる
相続税を計算するとき、課税対象となる相続財産から被相続人の葬儀費用を控除できることが相続税法で定められています。
具体的に控除の対象となる費用項目は以下のとおりです。領収書やレシートがなくてもメモ書きをもとに控除できます。
- 医師の死亡診断書
- 通夜・告別式にかかった費用
- 葬儀場までの交通費
- 葬儀に関する飲食代
- 遺体の搬送費用
- 火葬料、埋葬料
- お布施、読経料、戒名料
- 納骨費用
- その他通常葬式に伴う費用
仏壇、墓石、法事の費用等は相続税の対象外です。
参考:国税庁:No.4129 相続財産から控除できる葬式費用
一時的な資金不足にはクレジットカードでの対応も

葬儀費用の一時的な不足に対しては、クレジットカードの利用も検討しましょう。キャッシングによる資金調達で理想どおりの葬儀を実現できるかもしれません。また、葬儀会社によっては、クレジットカードによる葬儀費用の分割払いが可能な場合もあります。
SAISON CARD Digitalは、お申し込みから最短5分で公式アプリにデジタルカードを発行でき、急な支出にも対応可能なクレジットカードです。また、振込みによる借り入れもご利用いただけます。

おわりに
葬儀は、故人がどのような方であったのかを改めて振り返る機会でもあります。費用を抑えることだけに集中するのではなく、「その人らしさ」が伝わる、心のこもった葬儀にすることが大切です。
また、葬儀会社の見積書に記載されていない費用がないかをしっかり確認することで、トラブルを回避できます。
滞りなく葬儀を執り行うためには、できるだけ生前から家族で話しておくことが重要です。本人の意向を家族が知っておくことには、以下のメリットがあります。
- 故人は、自分の希望する葬儀をしてもらえる
- 遺族は、悲しみのなか急いで葬儀のやり方を決める必要がない
- 葬儀社の提案に流され、割高な葬儀になるのを防げる
葬儀の生前準備は、費用を抑えることにもつながります。家族であっても葬儀の話は避けたい話題ですが、一度、ご家族で葬儀のスタイルや誰に連絡するかなどを話し合ってみてはいかがでしょうか。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。