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マンションの大規模修繕工事!費用が足りない場合にはどう対処すべき?

マンションの大規模な修繕!費用が足りない場合の対処法と不足する理由について解説
セゾンのくらし大研究 編集部

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マンションの居住者が避けて通れないのが、大規模修繕工事です。12~15年という周期で訪れる修繕工事は、建物の資産価値を維持し、快適な住環境を守るために欠かせません。しかし、実際の工事費に修繕積立金が達していないマンションが多くあります。

そこで本記事では、マンションの大規模修繕費用が足りない場合の対処法や不足する原因、事前対策などを詳しく解説します。修繕費不足の原因も併せて解説しますので、修繕積立金の確保と予定どおりの工事を実現するための参考にしてください。

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マンションの修繕時期は定期的にやってくる

マンションの大規模修繕工事!費用が足りない場合にはどう対処すべき?

マンション住まいの方は、マンション管理組合の活動を通して共用部分の清掃や設備メンテナンスなど、快適な居住環境を維持するよう努めていることでしょう。

その中の大きな行事のひとつが、十数年に一度の定期的な大規模修繕です。マンションの資産価値を守るためには、修繕のタイミングや修繕箇所を正しく把握しておくことが重要です。

効率的な大規模修繕でマンションの資産価値をきちんと維持していきましょう。

大規模な修繕時期の目安

マンション大規模改修工事の周期は、一般的に12〜15年が目安とされています。国土交通省の調査によると、1回目の大規模修繕工事は築15年以下、2回目が築26〜30年、3回目が築41年以上とのことです。この調査からもおおよそ12〜15年周期で大規模改修工事が実施されているとわかります。(※1)

また、平成20年4月に建築基準法が改正され、検査基準や検査方法がより厳しくなり、竣工や改修などから10年以上経過したマンションに対し、10年経過日から3年以内の「全面打診調査」が義務付けられました。

打診調査とは、モルタルやタイルなど表面を打診棒で叩き、どの程度浮いているか調査する方法で、外壁落下事故を防止する目的で行います。

外壁の全面打診調査となると、マンションの場合は当然足場を組む必要があります。高層マンションであれば足場を組むだけでも多額の費用がかかるため、これを機に12年目で大規模修繕を考えるというケースが一般的です。

(※1)参照元:国土交通省 令和3年度マンション大規模修繕工事 に関する実態調査

回を増すごとに修繕ポイントも変化

12年目に行う1回目の大規模修繕は、外壁を中心に屋上防水・屋根・バルコニー・鉄部などの外回りの補修をメインで行うのが一般的です。まだそれほど劣化していないからと修繕を見送ると、経年劣化でより大きな破損や傷みを生む可能性があります。

今後の修繕費を抑えるためにも、このタイミングできちんとメンテナンスするのがおすすめといわれています。

2回目の修繕は24年目です。ここでは、外構補修・貯水槽の取り替え・建具の交換・集合郵便受けの交換など、外回りだけでなく建物内部のパーツも取り替えが必要になってきます。

また、インターホンや火災報知設備などの電気系統、立体駐車場など放置しておくと事故につながる設備も、補修や取り替えの目安時期です。

3回目の修繕は36年目で、建物内部の主要設備や部材の更新が必要です。玄関ドアやサッシ、手すりの交換、インターネット設備や電話設備も取り替え時期にあたります。

さらに、屋外鉄骨階段や給排水管、ガス管の取り替えなど、屋外工事の規模も拡大し、1回目や2回目よりも修繕の割合が大きくなることが一般的です。そのため工事回数が増えるごとに、必要な修繕費用が大きくなっていきます。

それぞれの大規模修繕工事は、単に劣化部分を修理するだけではありません。気密性の高いサッシを取り入れたり、バリアフリーデザインにしたり、建物自体をグレードアップさせて質や価値を高める役割もあります。

マンションの価値を長持ちさせるには、工事の回数を重ねるごとにより大規模な工事が必要なのです。

マンションの大規模修繕費が不足した際の4つの対処法

修繕費不足時の対処法

いざやってきた大規模修繕時期。しかし、長期修繕計画で算出された金額に実際の修繕積立金が達していない場合、一体どうしたら良いのでしょうか。

具体的な対処法は、以下の4つです。

  • 居住者から一時金を徴収する
  • 工事内容を見直す
  • 大規模修繕工事を延期する
  • 不足分をローンで調達する

それぞれ詳しく解説します。

居住者から一時金を徴収する

不足分の金額を、居住者から一括で徴収するのが一時金です。借入のように手数料や金利がかからないことと、すぐに不足分が補えることがメリットとして挙げられます。

しかし、各家庭のさまざまな事情の中で、予定外の高額なお金をすぐに用意できる家庭がどれだけあるでしょうか。

後述しますが、国土交通省による調査でも管理費・修繕積立金等を滞納している居住者がいると回答している管理組合は少なくありません。そのため、全戸から遅滞なく集金するのはかなり難しいと考えられます。

もちろん、居住者の合意形成もスムーズにはいかないでしょう。それでも一時金の徴収を考えるなら、分割徴収の方法を検討するのもひとつです。大規模工事の支払いは一般的に契約時・着工時・工事完了時などの節目があるため、これに合わせて徴収すれば1回の負担が多少は軽減されます。

工事内容を見直し、優先度の高い箇所から実施する

修繕工事を分割して行い、優先度の高い箇所から実施する方法があります。たとえば「今回はエントランスのみ」や「外壁塗装と屋上防水のみ」など、建物の劣化状況に応じて緊急性の高い箇所から対応することで、一時的な出費を抑えることが可能です。

ただし、工事を数回に分けるよりも、まとめて実施したほうが足場の設置費や人件費を抑えられ、総額が安くなる傾向にあります。さらに、元々の修繕計画の見直しが必要であり、修繕費を確保するために居住者から徴収する金額も再検討しましょう。

また、長期修繕計画の内容を見直す際には、計画はいつ作られたものか、現実離れした内容ではないかを確認することが重要です。

多くの分譲マンションは、新築時に長期修繕計画が作成されていますが、汎用的なひな型に基づいている場合があり、その物件固有の設備や仕様に合っていない可能性があります。

エレベーターの数や照明の台数などの違いから、不必要な費用が計上されている場合もあります。国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインでも、5年程度ごとの見直しを推奨しています。

大規模修繕工事を延期する

修繕費を確保できない場合は、工事自体を延期するという選択もありますが、現時点では簡単な補修で済むはずの傷みや劣化が悪化するリスクがあります。そのため、延期はあまりおすすめできません。

建物の損傷が進むほど工事費も高くなるため、先延ばしにし過ぎないことが重要です。延期した場合は、早急にローンの借入や工事内容の見直しを検討することが得策です。

不足分をローンで調達する

修繕費の不足分を金融機関からの借入で賄う方法があります。借入を申し込む際には、管理組合の総会での決議が必須です。また金融機関により条件なども異なるので申し込みの前に確認しましょう。

例えば、民間の銀行で「マンション共用部分専用リフォームローン」を組む場合、借入限度額は「工事費の80%以内」または「150万円×戸数」のいずれか少ない方という設定が一般的です。

また、建物の竣工年の制限や徴収予定金額に対する滞納割合が10%以下であることなどが条件となっている場合もありますので確認が必要です。

政府出資の住宅金融支援機構でも「マンション共用部リフォーム融資」を取り扱っています。対象工事費全額の借入れが可能なことや、工事内容によっては返済期間を長く設定できることが民間の金融機関よりも融通が利く点です。

さらに、セゾンファンデックスの「マンション管理組合ローン」では、ほかで断られた場合でも融資できる可能性があります。このローンは大規模修繕工事以外にも、マンション共有部分の工事にも利用でき、融資金額は100万〜5億円と幅広く対応可能です。

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マンションの大規模修繕工事の費用が足りなくなる5つの原因

なぜ不足する事態が発生したのか

大規模修繕工事を定期的に行うことで、マンションの資産価値は守られるといわれています。そのために管理組合を通して修繕費を積み立てているはずです。

しかし、平成30年度の国土交通省「マンション総合調査」によると、修繕積立金だけで工事費を調達できた管理組合は全体の72.3%にとどまりました。なぜ修繕費が不足してしまうのでしょうか。

具体的な原因として、以下の5つが挙げられます。

  • 設定している積立金額が安い
  • 滞納者が増えた
  • 設備にコストがかかりすぎている
  • 修繕積立金の値上げへの反対意見が多い
  • 大規模修繕計画の見直しが行われていない

それぞれ詳しく解説します。

設定している積立金額が安い

まず理由として考えられるのは、修繕積立金の金額設定がもともと低いということです。本来は、国土交通省が出しているガイドラインを基準に算出されるべき積立金ですが、マンションによっては「管理費の1割」を修繕費として徴収するなど、漠然とした設定がなされているケースもあります。

日本経済新聞社の調査によると、全国の物件の75%が修繕積立金の水準で国の目安を下回っています。新築時には販売会社が物件を売りやすくするため、修繕費を低めに設定し、毎月の負担が少なく見えるようにしている場合が多いことも一因です。

途中から段階的に積立金を値上げしようとしても、居住者の同意を得られずトラブルになることもあります。管理組合は、なかなかスムーズに徴収額を増額できないのが現実です。

参照元:マンション修繕金、75%が足りず 高齢化で増額難しくマンションの修繕積立金に関するガイドライン(令和6年6月改訂)

滞納者が増えた

滞納者が増加傾向であることも、毎月の徴収が予定通りにいかない理由の一つに挙げられます。令和5年度の国土交通省の調査では、およそ30%の管理組合が「管理費等の滞納者がいる」と回答しています。

これは居住者の高齢化とも関係があります。令和5年の全国調査では、マンション世帯主の60・70代の割合は53.7%となり50%を超過しました。とくに70代の増加割合は高くなっています。

さらに、物件の完成年次別でみると昭和54年以前に建てられた物件では、住人の半数近くが70歳以上であり、修繕積立金の値上げすら難しい状況にあります。

参照元:令和5年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状

設備にコストがかかりすぎている

機械式駐車場やエレベーターなど、メンテナンス費用が高額な設備を多く導入していると管理費では賄いきれず、修繕費から取り崩さざるを得ないことがあります。例えば、エレベーターの保守点検には年間500,000円程度かかることもあり、築20年を過ぎるとエレベーターの入れ替えを検討する目安時期になるので、築24年目での大規模修繕工事の際には、数千万単位の費用が発生する可能性があります。

修繕積立金の値上げへの反対意見が多い

修繕積立金は、将来的な大規模修繕工事に向けて蓄えておく費用ですが、資材や人件費の高騰、築年数に伴う工事規模の拡大により、当初設定した金額では不足するケースが増えています。

その場合、修繕積立金の増額が必要になります。しかし管理組合の総会で提案しても、家計への負担増を懸念する反対意見が多く、必要と分かっていても修繕積立金の値上げができないケースが多いのが実情です。

長期修繕計画の見直しが行われていない

快適な居住環境を維持し、マンションの寿命を延ばすためには、長期的な修繕計画が欠かせません。しかし、一度作成した計画はそのままではなく、築年数による劣化や費用の高騰、区分所有者の状況変化に基づいて定期的な見直しが必要です。

積立金額が実情に合わせて段階的に増額されていれば、修繕の資金不足を回避しやすいですが、長年にわたって金額が据え置かれている場合は、将来的に深刻な資金不足に陥る可能性が高くなります。

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マンションの大規模修繕費用が不足する事態を避ける3つの方法

修繕工事までに費用をきちんと確保しておくためにはどうしたら良いのでしょうか。時期が迫ってから焦ることのないように、早めに対策を検討しておくことが大切です。

修繕費用が不足する事態を避けるためにやっておきたいポイントは、以下の3つです。

  • 修繕費の目安を把握する
  • 積立金の金額は適正な額に設定する
  • ほかに抑えられる費用を考える

それぞれ詳しく解説します。

修繕費の目安を把握する

大規模修繕工事の費用は、1回目より2回目、2回目より3回目が高くなる傾向があります。一般的には、第1回の大規模工事におおよその目安として「1戸あたり100~150万円の工事費」が必要と考えておくと良いでしょう。

工事回数ごとの費用目安は、以下のとおりです。

工事回数費用
1回目4,000〜6,000万円
2回目6,000〜8,000万円
3回目以上6,000〜8,000万円、1億〜1億5,000万円

参照:国土交通省 令和3年度マンション大規模修繕工事 に関する実態調査

マンションの規模や修繕内容によって変動するため、あくまでも目安として捉えてください。

なお、施工会社から見積もりを取ることで、ある程度の工事費の相場を確認することはできますが、この見積もりは工事計画の話がある程度進まないと先方からもらえない場合もあるそうです。

そこで、管理会社に協力を依頼し、築年数や工事内容など条件が近い物件の資料を確認するという方法が現実的でおすすめです。

積立金の金額は適正な額に設定する

マンションの購入を検討している方全員が、修繕積立金について十分に理解しているとは限らないため、売り手は販売テクニックとして修繕積立金の設定を低く抑える場合があります。

その結果、大規模修繕費の不足が起きたり、積立金の値上げに居住者が反対しまとまらないというトラブルが生まれます。

国土交通省が公表している「マンション修繕積立金に関するガイドライン」を下回らないレベルで金額を設定することが必要です。

特に中古マンションの場合、築年数が進むほど工事費がかさむため、ガイドライン以上の金額を設定する必要があります。

参考:マンションの修繕積立金に関するガイドライン

徴収金額を見直す際は、大きく分けて以下の2つの方式を取り入れる方法があります。

段階増額積立方式

新築のマンションを購入する際、新築当初は積立金額を低く設定し、5年~10年ごとに少しずつ増額していく積立方法です。

新築のときには設備が新しいため修繕費用はそれほど要りません。永住を考えている方にとってはご自身が高齢になるほど積立金も増額することになるため、大きな負担を感じるでしょう。

そのため、値上げについての居住者の合意を得るのが難しく、予定通りの増額が実施できない可能性があります。

新築時には設備が新しいため修繕費用はそれほど要らないですが、永住を考える方にとっては将来的な負担が大きくなる可能性があります。そのため、値上げについての居住者の合意を得るのが難しく、予定通りの増額が実施できないリスクもあります。

均等積立方式

国土交通省の修繕積立金ガイドラインで推奨されているのが、均等積立方式です。必要工事を想定した金額を基に計算し、月々フラットに徴収する方式で、基本的に定期的な増額はありません。そのため、途中で大きく値上げする必要がなく、一1度合意が取れれば管理組合の負担も軽減されます。

また、老後になって大幅な値上げの心配がないため、永住予定者にとって大きなメリットとなります。ただし、修繕費はあくまで概算なので、修繕費用をできるだけ正確に予測するには、こまめな修繕計画の見直しが必要になります。

築年数が新しいうちは段階増額積立方式よりも負担額が大きいため、売却予定の方には歓迎されない面もあります。しかし、修繕積立金に余裕があることや、将来の徴収金額が変動しないことは、マンション自体の資産価値の向上にもつながります。

ほかに抑えられる費用を考える

普段の管理費用の中にも、見直せる項目があるかもしれません。たとえば、共用スペースの電気代や、清掃・管理を委託している会社との契約条件を見直すことで、削減できる費用があるか検討しましょう。

また、修繕工事の施工会社を選定する際に、管理会社に一任するのではなく、管理組合で探すという方法もあります。管理会社を通して施工会社を決めるのは、管理組合で複数社から見積もりを取って比較・検討する方法もあります。管理会社経由で業者を決めると仲介手数料が発生する場合があるため、直接交渉を行うことで工事費用の削減が期待できます。

おわりに

マンションの資産価値と居住者の快適な生活環境を守るためには、大規模修繕工事が欠かせません。長期修繕計画をしっかり立てても、肝心の修繕費が不足していては工事そのものが実施できなくなります。修繕を見送ると物件の劣化が進み、想定外のトラブルや修繕費の高騰を招くリスクがあるため、適正な周期で工事を実施できるよう対策を講じることが重要です。

修繕費が不足しないように計画的に管理することが一番ですが、万が一不足する場合には、一時金の徴収や借入などを検討し、早めに対策を講じることをおすすめします。

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

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