汗の量が増えて食欲も減少する夏の時期は、自然と痩せてダイエットができるというイメージを持つ方が多いかもしれません。しかし実際には、代謝の低下や自律神経の乱れによって「夏太り」を起こす現代人が多いのが現実です。では、夏太りを防いで健康的に体重を落とすためにはどんな対策が有効なのでしょうか。
今回のコラムでは、「夏太り」の原因と対策のほか、今すぐ実践したい夏の健康習慣についてご紹介します。
夏太りとは?汗をかくのに体重が増える理由
そもそも夏太りとは、気温が高い夏の時期に体重が増え、肥満のリスクが高まってしまうことを指します。
夏といえば汗をかく量が増えるため消費カロリーが増えているように感じますが、暑い時期にかく汗は体温調節のためのものであり、カロリーを消費しているわけではありません。毛穴から水分を出して気化熱によって身体を冷やそうとする働きであり、運動して出る汗とは性質が異なるのです。
むしろ夏場は汗を大量にかくことで痩せにくい体質になる傾向があります。というのも、発汗にともなって人の身体からはミネラル・ビタミン類が失われてしまうためです。中でも水溶性で汗で失われやすいのがビタミンB群で、ビタミンB群が不足すると脂肪が燃焼しにくくなるとされています。
汗をかくことでミネラル・ビタミン類が失われると、身体の栄養素が不足して夏バテなどの体調不良につながる可能性もあります。そのため夏太りの原因をしっかりと理解し、適切な栄養素を摂取して生活習慣を整えるなど、適切な対策を行う必要があるのです。
夏太りはなぜ起こる?夏の肥満の原因
夏太りの大きな原因として考えられるのが、夏ならではの食習慣やライフスタイルによる、以下の3つの要素です。
- 基礎代謝が低下するため
- 活動量が低下するため
- 自律神経が乱れるため
それぞれの原因について詳しくみていきましょう。
基礎代謝が低下するため
夏の時期は基礎代謝が低下しやすく、消費カロリーが抑制される傾向にあることが夏太りを引き起こす原因です。
たとえば冷房の効いた室内で1日中過ごす生活では、ご自身の身体で体温調節する必要がないため、基礎代謝が低下しやすくなります。夏場は清涼飲料水や麺類・丼ものなどの糖質が多い食生活に陥りがちのため、たんぱく質やビタミン・ミネラルが不足して代謝能力が落ちる原因にもなります。
また、基礎代謝が低下すると食欲が減少しやすくなり、「より食べやすいものを」と、麺類やパン類、アイスクリームなどの高カロリーな食事を摂取する機会が増える点にも注意が必要です。代謝が落ちて消費カロリーが低下している中で、摂取カロリーが増加すれば、ますます太りやすくなってしまうでしょう。
活動量が低下するため
高温多湿で不快な屋外を避けるため、室内にこもりがちになることで運動不足になってしまう点も、夏太りの原因のひとつです。
1日中イスに座って過ごすなど身体を動かす機会が減ることで、消費カロリーが減少するほか、基礎代謝の低下にもつながります。これまでは徒歩や自転車を使って通勤していた方でも、夏場は自動車や電車を使う通勤スタイルに変更した結果、運動不足を招くケースも少なくありません。
また、夜の寝苦しい暑さが原因で睡眠不足となり、日中に活動するエネルギーが不足してしまうことで、積極的に身体を動かす気力もなくなってしまうかもしれません。睡眠不足は、食欲抑制ホルモンの「レプチン」の分泌を抑制し、食欲増進ホルモン「グレリン」の分泌を促す側面もあります。夜更かしする生活が当たり前になると、成長ホルモンの分泌が減少することが夏太りの一因となってしまいます。
自律神経が乱れるため
体温調節や内臓の働きを司る自律神経のバランスが乱れることで、夏太りを招いてしまうケースもあります。
ビタミンB群の不足や睡眠不足、屋外と室内の大きな気温差などの原因で、自律神経のバランスが崩れ、代謝の低下やホルモンバランスの乱れにつながってしまいます。自律神経が乱れると、全身のだるさや頭痛、不眠などの症状を引き起こし、常に緊張感や不安が高まってしまうこともあります。
内臓に悪影響を及ぼすことで夏バテや食欲不振を招き、偏った食生活になってしまうなどの悪循環にもつながってしまうのです。夏場は特に自律神経のバランスが乱れやすい時期のため、自律神経を整えるライフスタイルを送ることが夏太りを防ぐために重要なポイントとなります。
夏太りを避けるための対策方法
続いて、夏太りを避けるための具体的な対策方法について、以下の4つを解説しましょう。
- 冷たい食べ物を控える
- 涼しい時間帯・場所で運動する
- シャワーだけではなく湯船に浸かる
- 良質な睡眠をとる
一つひとつ詳しくご紹介していきます。
冷たい食べ物を控える
夏太りを避けるためには、冷たい食事をできるだけ控えて身体を温めるものを摂取したり、バランスの良い食生活を心掛けることが大切です。
冷たいものや喉越しの良いものを食べたくなるのは、もしかすると夏バテが原因かもしれません。夏バテ解消のために糖質が多いものやカロリーが高いものを食べ過ぎると、栄養バランスが崩れて基礎代謝を下げる結果となってしまいます。
アイスクリームや清涼飲料水もできるだけ避けながら、たんぱく質を中心としたバランスの良い食事を摂るようにしましょう。
涼しい時間帯・場所で運動する
適度な運動を取り入れることも、夏太り予防に効果的です。ただし気温が高い日中や屋外での運動は大きな負担となることもあるため、朝・夕方の時間帯や室内でできる運動を取り入れるのがポイントです。
朝・夕方の出勤ではできるだけ徒歩や自転車を使ったり、エレベーター・エスカレーターではなく階段を使ったりすることで、無理なく運動量を増やすことが可能です。運動の前後ではこまめな水分補給を心掛けたいですが、スポーツドリンクなどの飲み過ぎはカロリー過多の原因となるため注意しましょう。
シャワーだけではなく湯船に浸かる
夏の暑い時期こそシャワーだけではなく湯船に浸かることで、夏太りや夏バテを防ぐことができます。お湯の温度は約38〜40度、約10〜20分を目安に入浴することで、リラックスしながら体調を整えられるでしょう。
冷房で冷えた身体を入浴で温めることにより、自律神経のバランスを整える効果も得られます。全身浴で体力を消耗してしまう場合には、半身浴や足湯なども活用しながら、身体を温める習慣をつけることが大切です。日々の入浴で基礎代謝が上がって血行が改善されると、夏でも太りにくい体質を作ることができます。
良質な睡眠をとる
夏太りを防ぐためには、気温・湿度や寝具などを調節して、良質な睡眠をとることも重要です。
寝室の気温が高く寝付けない夜が続いてしまうと、寝不足の原因となり、夏太りを引き起こす原因となります。朝まで弱めの冷房をつけっぱなしにしたり、扇風機・サーキュレーターをうまく活用したりすることで、良質な睡眠がとれるように工夫してみましょう。
夏太りを防ぐ栄養素とは?夏に食べたい健康食材
夏太りを防ぐためにはバランスの良い食生活が重要であることは前述したとおりです。ここでは具体的に夏太り防止に役立つ栄養素として、以下の3つを解説しましょう。
- ビタミンB群
- カリウム
- タンパク質
それぞれ詳しくご紹介します。
ビタミンB群
ビタミンB1、B2、B6などのビタミンB群は、身体の代謝を促進して脂肪燃焼に役立つ栄養素です。疲労回復効果もあるため、夏場の体力消耗に役立ちます。豚肉・納豆・マグロなど動物性・植物性たんぱく質に多く含まれるので、肉・魚・卵・大豆製品を積極的に食事メニューに加えるようにしてください。
ただし、麺類や丼ものは糖質が過剰になりやすく、夏太りにつながる可能性が高まります。そのため野菜をうまく取り入れた定食系など、バランスの良い食事を心掛けましょう。
カリウム
カリウムは血行を改善してむくみを解消する効果があり、汗で身体の外に出ていくため夏場は不足しがちな栄養素のひとつです。
夏は水分・塩分を多く摂取することで身体がむくみやすくなる傾向にあるため、カリウムを十分摂取することが夏太りの予防につながります。カリウムは納豆やバナナ、アボガド、にんにく、ニラなどに多く含まれているため、たんぱく質と併せて効率的に摂取すると良いでしょう。
たんぱく質
たんぱく質は身体を構成する三大栄養素のひとつで、不足すると筋力が低下し、基礎代謝が落ちる原因となります。たんぱく質は肉や魚に多く含まれるため、体脂肪になりやすいのではないかと考える方も多く、ダイエットのために控える方も少なくありません。
しかし、体脂肪になりやすいのは白米や麺類などの糖質であり、たんぱく質は筋肉の原料となって太りにくい身体を作るために役立つ栄養素です。中でも豚肉や大豆製品には、ビタミンB群やカリウムも多く含まれるため、夏太りや夏バテを防止したい時に積極的に取り入れてみましょう。
おわりに
夏太りは基礎代謝の低下や運動不足・睡眠不足などによって引き起こされます。体温調節のための汗は脂肪燃焼につながらないうえ、夏場に汗をかくことでビタミン・ミネラル類が出ていってしまうことから、太りやすい体質になる傾向が高まります。
夏太りを防止するためには、冷たい食べ物や糖質に偏った食事を避け、適度な運動を取り入れるなどの対策が効果的です。夏太り・夏バテしにくい身体を作るためには、ビタミンB群・カリウム・たんぱく質が多く含まれる豚肉・大豆製品などを多く取り入れてみましょう。