私たちの日常生活と社会経済の動向は、密接な関わりを持っています。
そこで今回のコラムでは、経済動向を見ていく際の基本的な知識・考え方のひとつとして大事になってくる「金利」についてご紹介をしていきます。
金融サービスが高度化・多様化する今、私たちが金融動向や経済動向を把握し、さまざまな金融サービスのより良い利用者となるためにも、まずは基礎知識を理解しておくことが重要です。
1. そもそも「金利」とは?
「金利」とは、お金の貸し借りをしたときに、借りた人から貸した人に支払う手数料(貸借料)のようなものです。また、借りた金額(元金)に対するその手数料(貸借料)の割合を指している言葉です。
「金利を支払う」、「金利をもらう」といった貸借料そのものを指す場合もありますし、「金利は年〇%」といったように、割合を指す場合もあります。「金利」の代わりに、「利子」や「利息」といった言葉が使われることもあり、利子率・利率・利回り・割引率なども金利です。
金利も他の商品サービスと同様に、金融市場における資金の借り手と貸し手の関係(需要と供給)によって決まります。
2. 「金利」の仕組み
金利には以下の種類があります。
金利の種類
- 1.単利・複利(複利であれば、1ヵ月複利か半年複利か1年複利か)
- 2.年利・月利
- 3.固定金利・変動金利
- 4.運用期間
これらをもとに算出された利息を1年当たりに直して、元本で割った数値のことを「利回り」といいます。複利の場合、得られた利息を元本に加えて運用するため、同じ金利の場合には単利よりも利回りは高くなります。
2-1.単利と複利
「単利」「複利」とは、利息の計算方法のことを指し、金融商品の収益性を考えるときに重要なポイントになります。
「単利」とは『投資元本』に対して利子がつくことです。計算式で表すと「元本×利回り」となり、常に同じ元本をもとに利子が決まります。元本の額がそのまま維持されるため、利子も毎回同じ金額で積み重なっていきます。
一方で「複利」とは『投資元本と受け取った利子』に対して利子がつくことです。計算式に表すと「(元本+前年利子)×利回り」となり、元本に利子が組み込まれ、利子に対しても利子が発生するため、毎回受け取る利子の金額は年々増えていくことになります。
■「単利」と「複利」を具体的な事例で比較
例えば、100万円を年利回り2%で5年運用したと仮定します。
税金などを考慮しなければ、単利で運用した場合、毎年2万円ずつ利子を受け取りますので、元本100万円と利子10万円(2万円×5年)で合計は110万円になります。
一方、複利で運用した場合は、毎年の利子を元本に加えて運用します。利子に対しても利子がつくため、5年運用した場合の元本の合計は110.4万円となり、単利よりも4千円多くなります。
短期間の運用ではあまり大きな差になりませんが、運用期間が長くなると「単利」と「複利」の差は大きくなります。
2-2.固定金利と変動金利
ある金融商品(預金、国債、ローンなど)の取り引き時の金利が満期(完済)まで変わらないものを「固定金利」といい、変わるものを「変動金利」といいます。
預けても借りても、期間が長いほど金利が高いのが原則です。預ける場合、金額が大きいほど、金利が高い場合が多いですが、金利の情勢などの影響で差がつかない場合もあります。
2-3.固定金利・変動金利
「実質金利」は物価上昇率を金利から排除するために、インフレ率を差し引いて計算した数値です。
金融商品に示されている金利の価値が、物価上昇または下落によって、実質的に変化することをとらえた表現方法で、利息の実質的な価値を表します。
「利率1%の国債」など、証券取引用語や、経済用語として「金利」というときには「名目金利」を指している場合がほとんどです。激しいインフレが生じて名目金利を上回る物価上昇率になれば、実質金利はマイナスになる場合もあります。
実質金利の計算方法
名目金利(仮に1%)-物価上昇率(仮に0.3%)=実質金利(この場合0.7%)
3. 金利に深く関わる3つの要因
金利は、主に資金の需要と供給のバランスをもとに決まっています。資金の需要(借りたい人)が多いときには金利は上がり、少ないときには下がります。「需給バランス」が変化する要因には主に景気・物価・為替相場が挙げられます。
3-1.『景気』による金利の変化
景気が良くなるときは、消費者の購買意欲が高まり、需要の高まりに応じて物価の上昇が起こります。景気とともに個人消費が増えれば、企業も生産能力を引き上げるために資金需要が増し、金利の上昇を招きます。
反対に、不景気とともに個人消費が減ってしまうと、企業はものの生産を控え、資金需要が低下し、金利は下降に向かうと考えられます。
3-2.『物価』による金利の変化
物価の上昇が起こるときは、お金の価値が下がり、一般的には金利の上昇が見込まれると考えられます。
お金の価値が下がることで、消費者はお金を持つよりも物を持つ方が価値を見出せるため購買意欲が高まる可能性があり、金融商品離れから金利上昇が起こります。反対に、消費者が購買行動を控え、物価が下がるデフレ状態になると、金利は下降に向かうと考えられます。
3-3.『為替相場』による金利の変化
為替相場の変動により金利にも影響がでます。円高・円安になると、国内の景気・物価へ影響し、金利の上昇・下降を招く原因のひとつとなります。
例えば、円安ドル高が予想される場合、日本円の価値が下がるため、ドルで預金したり資産運用をしたりする人が増加します。一方で、円建ての預金の解約などが増加すれば、円の資金供給は減少するので、円金利は上昇すると考えられます。
4. 貯蓄と投資の違い
一般的には、「貯蓄」とはお金を蓄えることで、銀行の預金などを指します。一方、「投資」とは利益を見込んでお金を出すことで、株式や投資信託、為替取引などが「投資」に当たります。
4-1.定期預金と預金金利
定期預金とは、各金融機関が提供している預金の1つです。1年、2年、3年などあらかじめ預け入れる期間を決め、お金を貯める仕組みになっています。「預金金利」とは、その名の通り定期預金をはじめとした預金につく金利のことです。
お金を貸し借りしているわけではないのに、定期預金に預けると金利や利子(利息)がつくのには、銀行の運用収益が関係しています。利用者からすると「お金をただ銀行へ預けているだけ」という感覚であっても、銀行はそのお金を運用して収益をあげているので、お金を預けてくれたお礼として金利をもとに利息を支払っているのです。
しかし現在、定期預金の金利はメガバンクで0.002%ほどです。バブル経済の真っただ中であった1985年の定期預金の金利は5.5%だったことを考えると、今は「低金利」になっていることが分かります。
1985年の金利では、100万円を1年間預けると44,000円(税引き後)の利息を受け取れる計算になりますが、現在の定期預金の金利では、100万円を1年間預けても利息は16円(税引き後)にしかなりません。
また、日本円の価値が下がると、お金は減っていってしまう可能性もあるため「日本円を銀行に預けていれば安心」というわけではないのです。
4-2.資産形成のためにできること
銀行などに預けている普通預金などは、基本的に「自由に引き出せるお金」と考えられます。日常生活資金を始めとした、すぐに必要となる可能性のあるお金は、こうした自由に引き出すことのできる「貯蓄」の形で持っておくこともとても大切です。
ですが、低金利時代の今、預貯金だけではお金はなかなか貯まりません。今後の生活を考えると、日本円の預貯金だけで増やすのは難しいといえるでしょう。より効率良く資産を増やすためには、株式や投資信託・為替取引などの金融商品を通して、資産形成をすることが重要となります。
投資には、中長期的に行っていくことで、得られた利益がさらに運用されて増えていく「複利」の効果もあります。「投資期間」と「複利」の効果には関係があり、投資期間が長いほど、複利効果も大きくなる傾向があるのです。
資産運用にはさまざまな種類がありますが、ひとつだけに依存をせず、できる限りリスクを抑えた「分散投資」を行うことが大切になってきます。
おわりに
資産形成をする際は、「守るお金(貯めるお金)」と「増やすお金」を分けて扱うことが大切になってきます。そのためにも「金利」について知っておくことはとても重要です。
今回のコラムをきっかけに、金利について理解を深め、ご自身の資産形成を考えるきっかけになれば幸いです。
投資総合スクールThe Gavelの公式YouTubeチャンネルでは、自分自身の資産を守るための正しい投資の知識を発信していますので、ぜひ気になる方はこちらも合わせてご覧になってみてください。