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京都の見どころをご紹介します|上皇と家康、庭園を散策して分かる京都の見どころとは
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京都の見どころをご紹介します|上皇と家康、庭園を散策して分かる京都の魅力とは

京都は明治維新まで天皇陛下のお住まいがあったところで、日本の中心地として栄えてきました。来年2023年(令和5年)に文化庁が京都に移転してきます。連綿と日本の文化が連なる古都であり、日本を代表する観光都市です。見て回る名所旧跡、観光地はあまたあり、京都を紹介する書籍や雑誌も書店にあふれ、情報過多といってもいい状態です。

そんな中で、今回は京都観光の定番である金閣寺、清水寺、嵐山、平安神宮といったところではなく、「行ってみたら意外と良かったね」「こんな良いところが京都にあるんだね」という感想をもたらしてくれるような場所を京都に住む私、山田修が紹介していきます。

1.京の真ん中、京都仙洞御所の魅力

京の真ん中、仙洞御所の魅力

京都の町の真ん中に、広大な自然があふれている場所があります。一般的に「御所」と呼ばれている京都御苑です。正確には京都御苑には京都御所、迎賓館、京都仙洞御所、京都大宮御所があります。東京の皇居とよく似た雰囲気ですが、お堀に取り囲まれてはおらず、町に溶け込んでいる様子です。

「御所」は緑あふれ、空高く、鳥がさえずる京都の街の中のオアシスで、京都市民の散策の場として親しまれています。忙しい京都観光の合間に散歩するだけでも心の安らぎを覚えますが、せっかく足を運んだなら京都仙洞御所の参観をぜひ加えてほしいと思います。

1-1.京都仙洞御所とは

仙洞御所の参観を希望しても、仙洞御所自体は参観できません。私がいじわるでいっているのではありません。そもそも仙洞御所は、天皇を退き、上皇などになられた方々のお住まいでした。後水尾天皇が上皇になられた江戸時代初期の1630年に完成し、それ以来、御所の東南の上皇などのお住まいが仙洞御所と定められました。しかし、江戸後期の1854年に焼失し、そのときに上皇様にあたる方がいらっしゃらなかったので、再建されませんでした。

仙洞御所は、建物がなく、小堀遠州がつくった南北に広がる雄大な庭が魅力となっています。どこから見ても正面に見える、回遊式庭園の特徴が施され、北池、南池の2つの池と、周りの樹木、山、藤棚、橋、滝、敷き詰められた石など、日本庭園の美しさがうまく調和しています。京都の寺院などの名園の多くが建物から座って眺める庭園ですが、仙洞御所の庭園は歩いて楽しむ庭園です。

京都の仙洞御所は、2019年(令和元年)5月1日から「京都仙洞御所」と改称されました。

1-2.京都仙洞御所の参観方法

京都仙洞御所の参観方法
仙洞御所観覧風景

参観はいつでも自由にできるわけではなく、予約制です。現在は1日に4回(各回20名ずつ)実施されています。

  • 午前 9時30分、11時00分
  • 午後 1時30分、3時30分

予約は往復はがき、インターネット、当日予約の3つの方法があります。当日予約は午後のみで、当日の参観を希望される方は午前11時から仙洞御所北入り口前に並んで、先着順で10名まで入ることができます。そのため、事前に予約するのが確実だと思います。参観できる方は18歳以上で4名までとなっています。

参観はガイドの解説を聞きながら、一時間ほど散策します。後水尾上皇の仙洞御所と同時期に、後水尾上皇のお妃で東福門院と呼ばれた、徳川二代将軍秀忠の娘、和子(まさこ)さんの女院御所も建てられました。お母さまはお市の方の三女、お江さんです。女院御所は大宮御所と呼ばれ、参観の出発はその大宮御所の車寄せ前からです。

大宮御所
大宮御所

大宮御所の前の庭、南庭には慶事の象徴、松竹梅の松、竹林、白梅、紅梅が植樹されています。まず、南庭からくぐり戸を抜けると、女院御所の庭、北池が広がっています。北池は女性のお住まいの庭らしく、静寂で落ち着いた雰囲気があります。

北池
北池

一方、北池と掘割でつながれた南池は上皇の仙洞御所の池で雄大な感じが伝わってきます。池には土橋、石橋、木橋とバラエティに富んだ橋が配置され、島や滝、12万個の平たい楕円形の石を敷きつめた州浜など、他では見られない風景が随所に見られます。

当時の上皇陛下や上皇后陛下もきっと、日々の心の安らぎや癒しをこの庭園に求めておられたのではないでしょうか、そんな思いを抱きます。建物は又新亭、醒花亭の二つの茶室があるのみで、日常生活からの解放と、日本文化が作り上げた風雅さや伝統を感じます。

南池
南池
八つ橋
八つ橋

京都で他では経験することのできない、落ち着いた日本文化・京都文化、日本の歴史を味わいたいと思われるなら、一番にこの京都仙洞御所をおすすめします。

優雅で雄大な日本独特の庭園美を、解説付きでゆったりと落ち着いて鑑賞できるのは、とても贅沢です。コロナ禍で、現在は一緒に参観する人数が50名から20名に減らされています。91,000㎡の回遊式大庭園に聞こえるのは鳥のさえずりと木々の間を通る風の音と、ガイドさんの声と参観者の会話のみ。京の都会で味わう贅沢を楽しんでいただきたいです。

1-3. 京都御苑のなかの他の見どころ

仙洞御所のある京都御苑のなかは、ほかにも見どころはいっぱいです。京都御所のほか、外国からの賓客をおもてなしする迎賓館や、閑院宮邸跡収納展示館や御苑の樹木、草花、鳥、虫など動植物を観察するのも充分楽しめます。

広さは東西約700m、南北約1,300mで、総面積は92ヘクタールあります。御苑の中には神社が三社あります。厳島神社と宗像神社と、白雲神社です。

このうち、ぜひ参拝していただきたいのが白雲神社です。

1-3-1.白雲神社は音楽と金運の神様

白雲神社

白雲神社は総理大臣を二度務めた西園寺公望の西園寺邸跡で、私塾の立命館を最初にこの地に開きました。御祭神は妙音弁財天で、音楽や芸能の上達を願う人たちに人気のある音楽の神様です。西園寺家が琵琶の宗家であったことから、琵琶の描いた絵馬や授与品も置かれています。

また、音楽の神様としてだけではなく、金運アップの神様としても知られています。毎年9月の巳の日に巳成金(みなるかね)の早朝参拝式が午前7時から行われます。今年(2022年)は9月13日と25日の巳の日の両日に、参拝式に伴って、この日限定で金色の弁財天小判御守が授与されます。(授与料1,500円)

最高に金運がアップされるといわれ、京都の金運パワースポットのひとつにもなっています。

白雲神社_巳成金
白雲神社 巳成金の掲示

1-3-2.京都御苑近くのお食事どころ

京都御苑は広々と開放的なので、お昼時には、苑内でベンチなどに座ってお弁当を広げている方たちもよく見かけます。青空のもと、都会の喧騒もあまり聞こえず、のんびりと食事を楽しむことができます。

屋外の食事も良いですが、旅先の食事はホテルなど少し贅沢感が味わえ、かつリーズナブルな昼食をお望みの方には、御苑の蛤御門を出た向い側にあるホテル、京都ガーデンパレスをおすすめします。

日替わりランチか本日のパスタランチを選べば、食後のコーヒー付きで1,300円(税・サ込)です。日替わりランチはメイン料理に肉か魚を選べ、スープ、サラダにライスかパンが付きます。パスタランチもパンとサラダが付いています。また、ハンバーグなど他のランチもホテルの食事としてはリーズナブルです。

ガーデンパレス_ランチ
京都ガーデンパレス ランチセット

座席から水の流れる庭園が見え、コイも泳いでおり、丁寧なホテルのサービスを受けながらゆったりと食事を楽しむことができます。京都御苑の観光の帰り、合間の昼食にはぴったりではないでしょうか。

2.みやげ物店が軒を連らねていない観光地、一乗寺エリア

全国的にもそうですが、京都の有名どころの観光地はみやげ物店や飲食店が軒を連ねているところが多いです。観光客にとっては、1ヵ所で買い物や食事ができる、道すがら立ち寄ることができる、たくさんのお店の中から選ぶことができるなど、便利な面も多いですが、あまり多くのお店が連なっているところを好まない方もいらっしゃると思います。

旅先では新たな出会いを楽しみたい、定番の観光にはない発見をしたい、あまり人が知らない穴場を見つけたいと願っている方に、ぴったりの京都観光のひとつに私は京都、洛北の地にある一乗寺エリアをおすすめします。

2-1.和洋菓子の一乗寺中谷

出町柳駅
出町柳駅

一乗寺駅は叡山電鉄・出町柳駅から三つ目で、一乗寺駅を出て、東に向かって進むと白川通に行き当たります。その交差点を過ぎて、しばらく進むと東大路通に行き当たります。交差点を過ぎてすぐのところに70年続く和洋菓子店「一乗寺中谷」があります。元々は和菓子店でしたが、三代目のご主人が結婚した若女将がパティシエだったことから、洋菓子も扱うようになったそうです。

店頭に並んでいるお菓子は昔ながらの丁稚羊羹から、現代的な洋菓子などバラエティに富んでいます。「一乗寺中谷」で一番の看板メニューになっているのが、「絹ごし緑茶てぃらみす」です。若旦那自慢の白あんと若女将お得意の豆乳スイーツ…それぞれの良いとこ取りで生まれたのがこの「絹ごし緑茶てぃらみす」です。

ティラミスに白あんと豆乳と抹茶、生クリームなどを配合して、上品な木箱に収められています。見た目も味も上品で繊細な感じがする和洋折衷のお菓子です。賞味期限が当日限りで、量もありますので、気を付けてください。

お店の一角では食事や喫茶を楽しむこともできます。ご飯類は「京雑煮のいろどりごはん」のワンメニューで京都を代表する白みそ雑煮(きねつき丸餅入り)が味わえます。お赤飯・おばんざい・ごま豆富 などが付いています。

「一乗寺中谷」から道なりに東に進んで行くと、宮本武蔵が吉岡一門と決闘した下がり松のある、八代神社や詩仙堂、曼殊院、赤山禅院、狸山不動院などに出会います。その途中に圓光寺もあります。一乗寺中谷には行きでも帰りでもご都合に合わせて立ち寄られると良いと思います。

2-2.家康が開いた圓光寺、二つの庭と東照宮

京都の見どころをご紹介します|上皇と家康、庭園を散策して分かる京都の見どころとは

圓光寺は臨済宗南禅寺派のお寺です。徳川家康が開いた洛陽学校が始まりで、僧俗を問わず入学を許可し、学僧や絵師、墨跡文人たちを育み、日本文化の発展に尽くしたといわれています。山上には家康を祀った東照宮や歯を埋葬したお墓などもあります。この高台は京都市街を眺める絶景スポットとして人気です。

圓光寺のメインの庭は、江戸時代に本堂前に造られた「十牛之庭」です。牛を追う牧童の様子を描いた「十牛図」を題材として、周囲の山々を借景に取り入れた池泉回遊式庭園です。庭の池に水を送る水琴窟の音が静寂さの中に聞こえ、心が洗われる気がします。また、この水琴窟はあまり例のない、縁の幅が広い手水鉢を使っており、「圓光寺型」として親しまれています。

圓光寺にはもう一つ、平成の時代に造られた庭、枯山水「奔龍庭」があります。正門を入ってすぐの場所に展開しており、白砂を雲海に、石組みを天空を自在に奔る竜に見立て、切り立った石柱は稲妻の躍動感を表現しています。

枯山水「奔龍庭」

東照宮に続く道には、円山応挙がよく訪れた応挙竹林があり、歴史と現代が一体化した風情を醸し出しています。春は桜、初夏は青モミジと風景に彩りを添えますが、絶景の季節は紅葉に染まる秋で、拝観が予約制になりますのでご注意ください。

2022年の紅葉特別拝観は混雑を避けるため、下記期間は事前予約制となる予定です。圓光寺のホームページで詳細をご確認ください。 

2022年の紅葉特別拝観(https://www.enkouji.jp/
【予約受付開始】10月20日(木)
【拝観期間】11月12日(土)~12月4日(日)
【時間】8:00 ~ 17:00
【拝観料】大人 1,000円 / 高・中・小学生 500円

2-3.ラーメン街道と美しい書店のある街、一乗寺

一乗寺は不思議な街です。商店と住宅と著名な寺社が点在し、賑やかさと静けさが混在する下町です。京都は人口に対して学生が多く、一乗寺界隈も京都大学など近辺の大学に通う学生が多く住んでいます。リーズナブルで満腹になる外食の代表格であるラーメン店も多く、一乗寺一帯がラーメン街道と呼ばれています。

一帯には30軒あまりのラーメン店があります。主要道路に軒を連らねているのではなく、点在しています。全国的にも濃厚でこってりのスープで有名な天下一品の本店は一乗寺の白川通沿いに店を構えており、行列がよくできています。

一乗寺駅のある叡山電鉄ではラーメン地図を発行しているほか、一日フリー乗車券とラーメン一杯がセットになった「京都一乗寺らーめん切符」も販売されています。(販売価格1,700円)

濃厚とんこつラーメン、つけ麺、まぜそば、横浜家系ラーメン、二郎系ラーメンなど、さまざまなラーメンがあり、ラーメン好きには見逃せない一帯です。餃子の王将の基幹店、北白川店もラーメン街道の地域にあり、ラーメン競争が激化しています。開閉店もよくあるので、ネットで事前の情報を収集してから出掛けるのが良いと思います。

2-4.恵文社

恵文社
恵文社

学生の街とあって、京都は古本店や個性的な書店が多く、本好きにとって魅力的な街ですが、今回は恵文社をご紹介します。恵文社は、スタッフの方が1冊ずつ注文して本を並べる書店で、一般の書店では必ず置いてあるような本がなく、一般の書店ではめったに見かけない本がたくさん並べられている本屋さんです。

雑貨フロアやギャラリー、イベントスペースもあります。恵文社を舞台にした短編小説集「京都一乗寺 美しい書店のある街で」も生まれています。京都本屋大賞を受賞し、京都関連の著作がある小説家、大石直紀さんのミステリー作品4編がおさめられています。遠来の観光客の方が恵文社の緑のドアの前で、スナップ写真や記念写真を撮っている光景もよく見られます。

恵文社が舞台の本

恵文社が開店した1975年ごろは大学生や若者に人気のある映画を上映していた映画館「京一会館」があり、おおげさに「一乗寺は京都のカルチェ・ラタンだ」といっていた人もいたそうです。また、2016年に発売された「もし京都が東京だったらマップ」(イースト新書Q)によると、一乗寺は荻窪といわれています。

叡山電車の一乗寺駅を下車して、圓光寺などの寺社をめぐり、恵文社で本を選び、ラーメン街道の好みのラーメン店で食事をして、一乗寺中谷で一休みをする、そんな京都の一日を過ごすのも一興ではないでしょうか。

<秋の一口メモ>
京都の三大古本市の、秋の古本まつりが2022年は10月29日(土)~11月3日(木・祝)百万遍知恩寺の境内で開催されます。
https://souda-kyoto.jp/event/detail/furuhonmatsuri-autumn.html