老後の生活費を確保する方法としてリバースモーゲージが注目されています。リバースモーゲージにはさまざまなメリットがある一方、「リバースモーゲージはやばい!」と不安を煽るような口コミもあります。このコラムを読めば「リバースモーゲージのメリット・デメリットを正しく理解する」ことができます。また、リバースモーゲージ以外の、老後の生活資金を用意する方法もご紹介します。老後、年金や貯金だけで生活できるか不安を抱かれている方や、老後の生活資金を確保する方法をご検討中の方は参考にしてください。
リバースモーゲージはやばい罠というのは本当?そもそも一体どんなもの?
まずは、リバースモーゲージとはどのような仕組みか概要から知っていきましょう。
リバースモーゲージとは
リバースモーゲージとは「自宅を担保にお金を借りる、シニア向けの融資制度」です。契約者が亡くなった場合は、対象不動産を売却して一括返済することが一般的です。相続人が自己資金でローンを完済すると、自宅に住み続けることも可能です。
リバースモーゲージは、愛着のある自宅に住み続けながら老後資金を借り入れることができるため、老後資金の確保に不安を抱くシニア世代から注目されています。
リバースモーゲージの借入方式は、金融機関によって異なりますが、大きく分けて以下の3つです。
- 年金方式:一定期間、毎月定額を年金のように受け取る方式。借入金を生活資金として使いたい場合に向いています。
- 一括方式:契約時に融資限度額を全額受け取る方式。借入金をリフォーム資金や高齢者施設の入居費用などのまとまった支出に使いたい場合に便利です。
- 極度額方式:融資限度額内であれば、必要に応じて自由な額を受け取れる方式。事故や病気、災害など万が一の事態に備えたい場合に有効です。
リバースモーゲージを利用すると、老後の資金を確保できるだけでなく、ご自身が健康なうちに自宅の行く末を決められます。自宅の売却について遺族の手をわずらわせず済む点も、リバースモーゲージが注目される理由でしょう。
続いて、リバースモーゲージを使うための条件について解説します。
どういった方が使える?
リバースモーゲージには、金融機関によってさまざまな申し込み条件があります。特に注意したいのは、ご自身の「年齢」と「用途」です。それぞれ融資の対象外であるか、事前に確認しましょう。
まずは「年齢」についてです。50歳から申し込み可能な金融機関もありますが、多くの金融機関では、リバースモーゲージを申し込めるのは60歳以上としています。申し込み年齢の上限は、80歳とする金融機関が多いようです。
次に「用途」についてです。リバースモーゲージの借入金は、基本的に生活資金や娯楽費、リフォーム費用などさまざまな用途に使えます。ただし、投資や事業資金は対象外の金融機関が多いです。また、金融機関によっては、資金の使い道が老後の生活資金に限られる場合もありますので注意しましょう。
同居人がいてもOK?
多くの場合、単身者に限らず、配偶者と2人暮らしをされている方もリバースモーゲージに申し込みが可能です。ただし、同居人が子どもの場合、リバースモーゲージの利用対象外となることがありますので、気をつけましょう。これは「子どもが同居していると、売却時にトラブルが起きやすい」とされているためです。
リバースモーゲージの対象となる物件とは?
リバースモーゲージの対象になりやすい物件の条件は、以下のとおりです。
- 戸建て住宅
- 交通の便が良い
- 駅から近い
- 周辺に商業施設がある
リバースモーゲージは不動産を担保にするため、物件の所在地の条件が重視されます。マンションなどの集合住宅に比べ、戸建て住宅の方がリバースモーゲージの対象になりやすいようです。「マンション=リバースモーゲージの対象外」とは限りませんが、マンションにお住まいの方は、リバースモーゲージの申し込み条件をよく確認しましょう。
リバースモーゲージが悲惨とされる理由はデメリットにある
リバースモーゲージにはメリットがある一方、リスクやデメリットもあります。ここからは、リバースモーゲージの6つのリスク・デメリットをご説明しましょう。
長生きすることがリスクになる
リバースモーゲージを使っている方が契約期間より長生きすると、自宅を失う可能性があります。契約期間は終身とする金融機関も多いですが、金融機関によっては、リスク回避のため契約期間に制限を設けており、契約期間が終了した場合は、契約者が存命でも元金と利息を一括返済しなければいけないためです。もし一括返済ができなければ、自宅を売却して返済に充てることになるため、住む家を失ってしまいます。長生きするほどリスクに繋がってしまう点は、リバースモーゲージのデメリットといえるでしょう。
金利の上昇すると家計が圧迫される
リバースモーゲージの多くは、変動金利が採用されています。世の中の金利が上昇すると、その分毎月の利息の支払いが増え、最悪の場合は返済が滞る可能性もあります。リバースモーゲージを使う場合は、金利上昇のリスクがあることを忘れてはいけません。
不動産の価値が下がると不足分の一括返済など融資限度額が少なくなることも
リバースモーゲージの契約期間中、なんらかの理由で急に不動産価値が下がると、不足分の一括返済など融資限度額が少なくなる可能性があります。
前述のとおり、リバースモーゲージの担保は不動産です。不動産の担保価値は、毎年見直しが行われます。借入金がすでに融資限度額を超えていた場合、借り過ぎた分は返済しなければいけません。自己資金がない状況でそのような事態が起きれば、予定より早く自宅を売却しなくてはならない可能性もありえます。
推定相続人全員の同意が必要な場合がある
リバースモーゲージを契約するには、推定相続人全員の同意が必要な場合があります。
推定相続人とは、配偶者や子どもなど「ある人が亡くなった場合、相続人になるはずの人」のこと。契約時点では予測に過ぎないため「推定」がつきます。リバースモーゲージを使えば、契約者本人は老後の資金を得られますが、推定相続人にとっては、本来相続できるはずだった不動産を失うことになります。推定相続人の反対があれば、リバースモーゲージに申し込めない可能性があることを覚えておきましょう。
契約者が亡くなると配偶者が家にいられなくなる可能性がある
リバースモーゲージを使うと、契約者の死後に遺された配偶者が住む家を失ってしまう可能性があります。
契約者が死亡した場合、配偶者が契約を引き継げるようにしている金融機関も多いのですが、リバースモーゲージの完済のため不動産を売却した場合、他のアパートを借りようとしても、年齢や収入を理由に契約を断られてしまうケースがあるのです。子どもや兄弟を頼っても、必ずしも同居できるとは限りません。ご自身が存命の間だけでなく、亡くなられた後のご家族のことも視野に入れ、融資を受けましょう。
相続人となる子供に借金を残してしまう事態がありえる
リバースモーゲージを使うと、契約者の死後、子どもに借金が残る可能性があります。金融機関への完済のための不動産を売却時、想定より不動産価格が落ちていれば、返済のために借入額に満たない分を相続人が負担しなければいけないためです。子どもに面倒をかけまいとリバースモーゲージを利用したはずが、借金を残してしまうと本末転倒になってしまいます。
リバースモーゲージのメリットとは
ここでは、リバースモーゲージのおもなメリットを3つご紹介します。
高齢者でもOK
1つ目のメリットは、高齢者も融資が受けやすいことです。高齢になると貸し倒れのリスクがあるため、返済期間が長期に渡る融資は審査が通りにくくなりますが、リバースモーゲージの場合は融資対象年齢を60歳以上とする金融機関が多く、高齢者も高額の融資を受けられる点は、大きなメリットといえるでしょう。
月々の支払いは利息だけ
2つ目のメリットは、月々の返済負担が少ないことです。一般的な住宅ローンの場合、月々の返済額は元本+利息分です。一方、リバースモーゲージであれば、契約者が存命の間、毎月の支払いは利息分のみ、または不要の場合もあります。月々の返済金が少なければ、老後の生活に余裕が生まれやすくなるでしょう。
自宅に住みながら資金調達できる
最後のメリットは、住み慣れた自宅を手放すことなく、老後の資金調達をできる点です。リバースモーゲージは住宅や土地を担保にしますが、退去の必要がありません。引っ越し費用が発生することがなく、そのまま住み続けることが可能です。
リバースモーゲージのデメリットを回避してメリットに転換する方法
デメリットやリスクを知ると、「やはりリバースモーゲージはやばいんだ…」と不安になる方もいるかもしれません。しかし、リバースモーゲージのデメリットは、工夫と知識次第でメリットに転換できます。
事前にしっかりとした資金計画を立てる
融資を受ける際は、利用可能額を確認し、使用用途や毎月の使用限度額をあらかじめ決めておきましょう。「老後資金の不安が解消された!」と、無計画な浪費を続けると、契約者の存命中にリバースモーゲージの融資限度額を使い切ってしまうことも。もう融資は受けられないのに、毎月の支払いだけが残ってしまいます。しっかりと資金計画を立てることで、長生きリスクを回避できるでしょう。
金利上昇のリスクを考慮する
現時点では低金利でも、今後の金利の見直し次第で金利が上がることもあります。いざというときに返済資金が尽きないよう、余裕を持った資金繰りを心がけましょう。リバースモーゲージの多くは、変動金利です。金利が上がれば、毎月の利息の支払い金額が増える可能性があることを忘れてはいけません。
推定相続人の同意が不要なリバースモーゲージを選ぶ
前述のとおり、多くのリバースモーゲージは、契約をするのに推定相続人の同意が必要です。しかしなかには、必ずしも推定相続人全員の同意が必要ないリバースモーゲージもあります。リバースモーゲージに申し込みたいけれど家族の同意が得られない場合は、推定相続人の同意がなくても融資されるタイプの商品を探してみましょう。
ノンリコース型を選択して遺族に迷惑をかけない
契約者の死後、遺された家族への負担を減らす方法も知っておきましょう。
相続人の返済リスクを避けるには「ノンリコース型のリバースモーゲージ」を選びましょう。リバースモーゲージには大きく分けて「リコース型」と「ノンリコース型」の2種類があります。
リコース型とは、契約者が亡くなった際、不動産の売却代金で完済できない残債務があれば、相続人がその分を返済する義務を負うタイプです。つまり、リコース(遡及)して相続人に債務の返済が求められます。
一方、ノンリコース型は、不動産の売却代金で完済できなくても、残債務について相続人に返済義務が発生しないタイプとなっています。ノンリコース(遡及しない)ので、相続人に債務が残ることはありません。
ノンリコース型はリコース型に比べて金利が高い傾向にありますが、相続人への金銭的負担を減らせるのは大きな魅力でしょう。
リバースモーゲージ以外でお金を作る方法とは?
老後資金を確保する方法は、リバースモーゲージだけではありません。リバースモーゲージ以外でお金を用意するには、どのような方法があるのでしょうか。
リースバック
リバースモーゲージと似たサービスに「リースバック」があります。
両者の違いは、住宅の所有権が個人にあるか、不動産会社にあるかです。リバースモーゲージの場合、住宅の所有権は「個人」にありますが、リースバックの場合、住宅を売却するため所有するのは「不動産会社」です。
リースバックの特徴は、買取代金が一括で支払われることです。自宅の家賃を払い続ける必要はありますが、老後の生活資金や子どもの教育資金、事業資金など、まとまった金額を準備するならリバースモーゲージよりリースバックが適しているでしょう。
セゾンのリースバックは、セゾンファンデックスが不動産の所有者となり、売却後も愛着ある住まいに安心して住み続けられます。固定資産税などの維持費を節約でき、将来的に不動産の再購入ができる点も魅力です。
リバースモーゲージ型住宅ローン
リバースモーゲージとリバースモーゲージ型住宅ローンは、自宅を担保に融資を受ける点や月々の支払いが利息のみという点は似ていますが、資金の使い道が異なります。リバースモーゲージ型住宅ローンは、その名のとおり資金用途が住み替えやリフォームなど住宅関連に限られており、借入金を生活資金として利用することはできません。しかし、使い道が限られている分、浪費を防ぎやすいともいえます。退職金やまとまった貯蓄を残したまま、老後の居住環境を整えたい方にとっては、便利な金融サービスです。
老後に向けて投資で資金を作っておく
老後資金を確保する方法としては、「投資」も有効です。ただし、投資は必ずリスクを伴います。種類によってはハイリスクハイリターンなものもあり、投資額を回収できない場合も。リスクを軽減するなら、複数の投資商品に分散できる分散投資や積立投資がおすすめです。NISAやつみたてNISA、iDecoなどの税制が優遇される投資を選ぶことで、効率的に老後資金を蓄えられるでしょう。投資はリバースモーゲージ と異なり、何歳からでも始められます。リスクがあることを理解したうえで、コツコツ長期的に投資していきましょう。
おわりに
リバースモーゲージは「やばい」と揶揄されるデメリットもありますが、反面メリットも多く、年金や貯金だけでは老後の資金繰りが不安な方にとって、魅力的な仕組みです。利用する際は、金利の上昇や不動産価値の下落に伴うリスクもあることを理解しておきましょう。老後資金を確保するには、リバースモーゲージの他、リースバックなどさまざまな選択肢があります。ご自身とご家族に合った方法を探し、安心できる老後を過ごしましょう。