女性ホルモンの役割とその影響
女性の一生は女性ホルモン(エストロゲン)の影響を受け続けます。
思春期には、エストロゲンの分泌レベルが上昇し、初経を迎えます。性成熟期、女性らしい身体つきになり、エストロゲンの分泌レベルが安定し、妊娠・出産に適した頃になります。そして、エストロゲンは妊娠・出産だけでなく、肌・骨・血管・認知機能等、女性自身の身体を守る働きがあります。
更年期に入ると、そのエストロゲンが激しい増減を繰り返しながら乱高下します。このようなエストロゲンの変化から、月経不順や、のぼせ、ほてりといったホットフラッシュや発汗、また、気分の落ち込みや不安感など精神的な症状が出てくる方もいます。症状は多岐にわたり、個人差もありますし、個人の中でも日によって違ったりします。
更年期の後、目には見えないですが、エストロゲンの少ない状況が続くことで、身体の中では骨密度の減少や、脂質異常の状態が起こりやすくなり、骨粗しょう症や動脈硬化・生活習慣病のリスクが高まります。
平均寿命や健康寿命は年々延びていますが、閉経年齢は約50歳で、昔からほぼ変わらないといわれています。人生100年時代、更年期は「折り返し地点」で、エストロゲンが低い状態が、高かった時期と同じくらい続くといえます。
マラソンの「折り返し地点」を想像してみましょう。折り返し地点(急カーブのあるところ)では、猛スピードで走れません。少しスピードを落として、人生後半戦に備え、自分自身の心身を見直すきっかけ(期間)にしませんか?
よくある日本女性の更年期症状とは?
更年期の女性はエストロゲンの急激な低下の影響を受け、何らかの症状が出てきますが、「更年期症状」は200~300種類もあるといわれており、症状も程度も人によってさまざまです。
では、日本人の更年期女性によくみられる症状はなんでしょうか。
更年期に限らず起こりうる症状でもあり、更年期症状と認識しにくいかもしれませんが、実は、「肩こり」や「疲れやすさ」も更年期症状のひとつで、日本人では多く報告されています。
のぼせ、発汗などのホットフラッシュは更年期特有の症状としてよく知られています。胸から上は熱いのに、「手先・足先は冷える」など、体温コントロールが難しくなります。日本の夏は、外は熱いのに屋内はクーラーが効いていたりして、その差でより体温コントロールが難しくなるかもしれません。
他にも、皮膚のかゆみや、なんとなく気分が落ち込んだりイライラしたり…。
上述の肩こりや疲れやすさなど、「こんなことで通院していいのかな?」と思われるかもしれませんが、相談して初めて「更年期症状」と気付くこともあるでしょうし、他の基礎疾患が隠れている場合もあります。
日常生活に支障が出るほどの症状の場合には「更年期障害」に分類されます。その症状が何なのかがわかれば、対処方法を検討できるので、まずは婦人科医に相談してみましょう。
更年期症状|大豆イソフラボンやエクオールとの関係
西洋人に比べ東洋人の方が、更年期症状が軽く、その理由は大豆イソフラボンの摂取が多いからではないかと考えられていました。
それに伴い、大豆イソフラボンの更年期症状に対する効果の検証はいくつもなされてきましたが、なかなか一貫した結果が得られませんでした。
そこで注目されたのが「エクオール」です。エクオールとは、大豆イソフラボンの1種であるダイゼインが腸内細菌によって代謝されて作られる成分です。
尿中に排出されたエクオール量は、体の中にどれだけエクオールが存在したのかを表しており、以下の調査を行いました。
更年期症状の程度の軽い女性と重い女性で、尿中に排出されたダイゼインとゲニステイン(大豆イソフラボンの一種)の量を比較ところ、症状の重い方と軽い方との間に差はありませんでした。次に、ダイゼインの代謝物質である「エクオール」の量を調べたところ、尿中にエクオールが少ない方は、更年期症状が重いという結果が得られたことから、エクオールこそが更年期症状の軽減に関係していることわかりました。
エクオールとは?更年期症状に対する効果は?
エクオールは、エストロゲンに似た形をしており、エストロゲンと同じような働きをするといわれています。
ホットフラッシュが1日1回以上ある閉経後10年未満の女性で、エクオールを作れない方を対象に、エクオール10mg/日を12週間続けて摂取し、専門医の問診の元、更年期症状の評価を行ったところ、ホットフラッシュの頻度と首や肩こりの程度の改善が認められました。
このことからエクオールは女性のヘルスケアの一助として、更年期症状の緩和を期待できます。
エクオール産生者の割合
実は、大豆イソフラボンをエクオールに変換する腸内細菌は、全ての人が持っているわけではありません。エクオールを作れる人の割合は、日本人の約2人に1人であることが報告されています。残りの方々は大豆食品を摂取してもエクオールが作れず、エストロゲンに似た作用が充分に発揮されません。
また、エクオールは1~2日で体外に出ていってしまうため、大豆食品を毎日食べる必要があります。大豆食品を充分に食べていなければエクオールは作れませんし、大豆食品を食べていても、腸内環境によって作られないこともあります。
体内のエクオール量を維持するためには、エクオールを作れない方はもちろん、作れる方もエクオールのサプリメントで直接摂取するのもひとつの方法です。
更年期のヘルスケア
更年期のヘルスケアとして、「更年期における心身の変化の理解・認知」をすることが、第一歩といえます。
そして、「バランスのとれた食事」、「適度な運動」、「充分な休息や睡眠」など、規則正しい生活を心掛けましょう。更年期より前はエストロゲンが守ってくれていることで、少々無理をしても大丈夫であったことも、更年期以降は「自分の身体は自分で守る」必要があり、生活習慣の「基本の「き」」がこれまで以上に大切になってくるのです。
まずは、かかりつけの婦人科医を持ち、相談しつつ二人三脚で進めていきましょう。
症状の辛い方には、HRT、漢方薬、各症状に即した薬物での治療・療法があります。治療をしながら、あるいはセルフケアのひとつとして、食事で賄いきれない栄養素やエストロゲンに似た作用を示すエクオールを、サプリメントなどで補うという方法もあります。ご自身の健康のためのサプリメント。医療機関や調剤薬局で販売されているものなど、信頼できるものを選びたいですね。
更年期、そしてその後の人生を自分らしく健やかに過ごすために、自分自身に合った方法を正しく選択できるよう自らの心身の状態に耳を傾け、ご自身での対処とともに、専門家のチカラを借りながら、まずは一歩を踏み出してみませんか。