いけばなに興味はあるけれど、「実際に始めるとしたら、どんな準備が必要なの?」という疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
そこで、事前に知っておくと役に立つ情報をまとめました。必要な道具やお稽古の進み方などをイメージして、いけばなを始める第一歩を踏み出していただけたら幸いです!
1.いけばなを始める前に解決しておきたい3つの疑問
いけばなを始めたいと思ったときに浮かぶかもしれない、3つの疑問を取りあげました。参考になればと思います。
1-1.いけばなは自己流でできる?|先生に習うのがおすすめです
いけばなには写真付きのテキストがあり、自習もできるようになっていますが、先生に習うことをおすすめします。というのも、初めていけばなをする場合、テキストを読んだだけでは「どのように生けたら良いのか分からない」「写真のように生けられない」という状況になりやすいからです。
習い始めた頃の私は「テキストの写真と同じように生ければ良いだけ」と思っていました。でも、いざ取り組んでみると、いけばなと呼べるのか分からない不格好な形になってしまったのを覚えています。そんなとき、幅広い知識と経験を持つ先生がいれば、的確な指導をいただくことで、すてきないけばなが完成します。
いけばなは「華道」ともいわれます。茶道や柔道などにも使われている「道」は、人として守るべき行いや正しい教えという意味の言葉です。師の教えから学ぶことも「華道」の深い味わいのひとつだと思います。先生のもとで多くのことを吸収して、上達を目指していきましょう。
それでも「まずは自分で試してみたい」と思ったら、いけばなの枠に囚われず、植物に触れてみるところから始めてみてはいかがでしょうか。花や草木を、自分の思うように生けて部屋に飾ってみます。花一輪を生けてみるのも良いでしょう。いけばなは、植物1本でもできるのが魅力です。それを続けていくうちに、いけばなの「道」に進みたいと思う気持ちが出てくるかもしれません。そのときに動き出せば良いと思います。
※一輪で生ける方法はこちらの記事で紹介しています。
1-2.流派はどのように選べば良い?|いけばなを見て、自分が「好き」と思う流派に
いけばなを習うと決めたら、どの流派にするか迷うこともあると思います。いけばなには多くの流派があり、それぞれ個性があります。最初はいくつか候補があっても良いので、気になる流派を調べてみましょう。流派ごとに個性が異なるので、生けられた花の形や雰囲気などを見て、自分が「好き」と思ったところに決めるのが良いと思います。調べ方はさまざまありますが、主な2つを挙げておきます。
①華展に足を運ぶ
華展に足を運んで、いけばなを実際に見てみるのが最も確実です。複数の流派が合同で開催する華展であれば、それぞれの特徴を比較できます。ただ、そのような華展は多くありません。ネットなどで情報を収集すると良いでしょう。実際に華展を見て入門を決めたというお話も聞くので、選ぶときの良い材料になるでしょう。
②ネットで調べる
通える場所にあるいけばな教室を検索して、見つける方法もあります。その教室の流派の名前を再度検索して、サイト内にある生けられている花の画像を確認しましょう。
できるだけ多くの流派を比較したいという場合には、200以上の流派が加入する「公益財団法人日本いけばな芸術協会」のサイトで、本部所在地から検索する方法もあります。
私はネットで調べて流派を決めました。いけばなを見て好きになったというのはもちろんですが、一番強く惹かれたのは、その流派の持つ歴史です。決めるポイントは人それぞれで良いと思います。ただし、その流派のいけばなが好きになれないと、お稽古に通ってもつまらなく感じてしまうのでご注意ください。
1-3教室はどんなところ?|教室によって異なります。見学ができれば必ずしましょう
教室がどんなところなのか気になるところですが、雰囲気や進め方などはさまざまです。先生のお宅やカルチャーセンター、学校など、規模の違いによっても異なります。習い事全般に当てはまるかもしれませんが、先生や教室の雰囲気が自分に合っているかは、とても大切です。可能なら必ず見学して、自分が楽しくお稽古ができそうな環境なのかを確かめておきましょう。
お稽古の最初は、はさみの持ち方や、茎や枝の切り方などの基本から教わります。それからいけばなの型を生けていくという流れが多いようです。
もし教室が決まっていれば、先生に分からないことを確認します。例えば「花代はいくらなのか、お稽古代に含まれるのか」「もし休んだ場合、お稽古で使う予定だった花はどうなるのか(いつまでに取りに行けば良いのか)」「お稽古に必要な道具をどこで購入したら良いか」などです。事前にしっかり調べておくと、安心してお稽古が始められます。
2.いけばなに必要な道具
お稽古に通う際に自分で準備する道具を、「お稽古に必要な道具」「持っていると良い道具」の2つに分けてご紹介します。
いけばなの道具は、習う流派が運営する店舗やショップ、または華道具専門店などで購入できますが、その前に先生に相談するのが一番です。適切なアドバイスをくださるでしょう。
2-1.お稽古に必要な道具
一般的に自分で購入することの多い4つの道具をご紹介します。
①はさみ
はさみは茎や枝を切るときに使う道具です。流派によって、柄の先が丸いタイプや、持ち手が輪になっているなど、形が異なります。約2,000円~数万円まで価格に幅があるので、習う先生の意見を参考に決めると良いでしょう。
②タオル
花を生けていると、水が落ちることもあります。それを拭くためのタオルがあると便利です。
③花袋・花合羽
お稽古で使った花を家に持ち帰るためのバッグや風呂敷も必要です。水に強い素材でできているものもありますが、おしゃれな布の風呂敷でまとめている方もいらっしゃいます。お気に入りの素材や柄を選んで楽しめるところです。(画像 左:花袋 右:花合羽)
④テキスト
いけばなの教科書で、文章や写真で生け方が説明されています。
2-2.持っていると良い道具
これがあれば、お稽古で学んだことがより身に付いたり、便利に使えたりする道具をご紹介します。教室で使う花器や花を留める剣山などは、その教室で貸してくれることが多いようなので、あると良い道具の方に分類しています。
①花器
お稽古で使った花を、自宅で生け直すための花器があると良いでしょう。形や色などさまざまな種類があるため、何を購入したら良いか迷うかもしれません。そんなときは習っている先生に相談してみると、参考になる意見がいただけるでしょう。
②花留め※剣山など
自宅で使用する花器の種類によっては、花を留める花留や剣山が必要です。花器に合った花留を用意しましょう。
③エプロン
花を生けていると、服に水が跳ねたり汚れが付いたりすることも。そんなときは、エプロンが便利です。水に強いいけばな用も販売されています。
2-3【私の道具紹介】いけばなを始めたときから使っている「はさみ」
いけばなをしている人にとって最も大切な道具といえば、はさみではないでしょうか。私はお稽古を始めて10年以上、このはさみを使っています。切れにくくなったら研ぎに出せば、はさみは長く使うことができる道具です。
はさみによっては名入れをすることができるのですが、私が入れたのは名前ではなく「柳緑花紅」という言葉です。
これは、「柳は緑花は紅」と読み下し、「自然のまま」「あるがまま」「自然のままが美しい」という意味があります。八世紀の中国の詩人「蘇軾」の詩の中の、この言葉に感動して、植物という自然を扱ういけばなを始めるときに、はさみに刻んでいただきました。
花を生けるときには、「こうしたい」という自分の思いが強くなりがちですが、あくまで人間は自然の魅力を引き出す脇役です。自分が出過ぎず、自然の美を優先する謙虚な気持ちを常に忘れずにいたいと思います。
3.「習っていて良かった」いけばなの魅力とは
いけばなを始めたいと思う人にとって、いけばなの魅力はどんなところにあるのか気になると思います。実際にいけばなを続けてきた私が思う魅力や楽しさを3つご紹介します。
3-1.四季折々の花や草木を身近に楽しめる
いけばなでは、お正月には松、3月の桃の節句には桃など、季節に合わせて扱う花材も変わります。その時期にしか手に入らない花や草木を自分の手で生けて飾れば、自然の恵みや美しさ、日本の伝統を身近に感じて豊かな気持ちになります。
3-2.鑑賞力が高まる
いけばなでは、作品を美しく完成させるために花を生けてお稽古をしますが、それだけが勉強ではありません。教室で共に学ぶ仲間をはじめ、他の方の作品を鑑賞することも大切です。その中で、次第に芸術から読み取れるものが多くなるのを感じます。
3-3.身に付いた知識は一生使える
いけばなでは、花の扱い方や生ける技術などを総合的に学びます。これらは日常生活でも活用できるスキルです。また、花の種類や名前も自然に覚えるので、これまで何気なく見ていた景色も、「これは初春に咲く〇〇ね」のように、より身近に感じられ、植物が生き生きとした鮮やかな風景に映ります。
おわりに
いけばなをやってみようかなと考えていらっしゃる方のために、必要な準備やいけばなの魅力をご紹介しました。もし迷われているなら、植物に触れたり、いけばなを見る機会を増やしたりしてみるところから始めてみてはいかがでしょうか。このコラムが、いけばなを通じて心豊かな生活を送るきっかけになれば幸いです。