既往歴とは、過去にかかった病気(ケガ)で現在は完治しているものを指します。主に生命保険の加入時に告知するもので、該当する病気の範囲がどこまでかは保険会社によって異なるのが基本です。このコラムでは、保険加入時に既往歴がどこまで問われるのかなどを解説します。
既往歴(既往症)とは
「既往歴(既往症)」は、生命保険に加入する際や、病院を受診する際などに用いられる言葉です。特に持病がある方や病気に罹患した経験がある方にとって、既往歴は保険の加入時に大きく影響するため、意味をきちんと理解しておく必要があるでしょう。
あわせて、混同されやすい「現病歴」や「基礎疾患」との違いを知っておくことも大切です。既往歴の意味や似ている言葉の違いについて見ていきましょう。
既往歴(既往症)の意味
既往歴とは、過去に罹患した病気やケガで現在は完治しているものを指します。既往歴ではなく既往症といわれるケースもありますが、厳密にいうと、既往歴は既往症をまとめた履歴のようなものです。
既往症があると、現在や将来の健康状態に影響が生じる可能性があります。そのため、病院で初診を受ける際などは、「今までにどのような病気に罹患したか」「どのような手術を受けたことがあるか」を知るために既往症を聞かれるケースが多いです。
既往歴と現病歴の違い
既往歴と似ている現病歴とは、文字どおり現在かかっている病気の履歴です。それぞれの違いをわかりやすくいうと、病気が治癒しているかどうかです。
既往歴は過去に罹患した経験のある病気をまとめた履歴のことで、すでに治癒しているものに限定されます。一方、現病歴に含まれるのは、現在も治癒せずに定期的な治療を受けている病気です。
既往歴と持病(基礎疾患)の違い
現病歴と同じく、既往歴と持病の違いも現在治癒しているかどうかです。持病は基礎疾患とも呼ばれ、罹患している状態が長期間続く病気や、慢性的でなかなか治癒しない病気を指します。
例えば、糖尿病や肥満症、慢性閉塞性肺疾患などが持病に該当し、これらは治癒までに時間がかかる可能性が高いとされます。既往歴と持病(基礎疾患)の使い分けに迷った際は、病気がすでに治癒しているものかどうかを基準に考えると良いでしょう。
生命保険の加入時は既往歴の告知が求められる
生命保険に加入する際は、既往歴の告知を求められることが基本です。なぜ既往歴の有無が問われるのかというと、保険には「契約者の公平性」という概念が根付いているためです。
保険は加入者が保険料を少しずつ負担し、加入者全体で万が一の際のリスクに備える仕組みのため、公平であるかが重視されます。例えば、病気に罹患する可能性が高い方と低い方が同じ保険に加入し、同じ保障内容に対して同額の保険料を支払う場合、公平であるとはいえないでしょう。
同じように、既往歴がある方とない方を比較すると、既往歴がある方のほうが保険金を受け取る確率が高い傾向があります。つまり、保険会社にとって既往歴があることはリスクになりかねないため、保険の契約を結ぶ前に既往歴の告知を求めるのです。具体的にどこまでの既往歴を告知しなければならないのか、既往歴の例などを次項から確認していきましょう。
どこまで含まれる?既往歴の具体例
既往歴として告知が求められる病気の範囲は、加入する保険会社や保険商品によって違いがあります。告知が必要とされる主な病気の例を以下にまとめました。
- 脳卒中
- がん
- 不整脈
- 心筋梗塞
- 気管支喘息
- 狭心症
- 高血糖
- 糖尿病 など
風邪などの一時的で後遺症がない病気の場合は、告知が不要とされることが多いです。花粉症やアレルギー性鼻炎なども基本的には告知義務から除外されますが、入院歴や入院の予定がある場合は告知を求められることがあります。
その他、交通事故や出産の経験、薬の副作用なども問われることがあります。なお、人間ドックや健康診断で要検査と判断された事項など、告知をしないと、告知義務違反とみなされる場合があるため注意しましょう。
健康診断では家族の既往歴が見られることも
既往歴は、健康診断の問診などで聞かれるのが一般的です。このとき、本人の既往歴だけではなく家族の既往歴も重視されます。既往歴を家族の分まで把握することで、本人の将来的な病気のリスクを判断しやすくなるためです。
例えば、親が三大疾病(心筋梗塞・がん・脳卒中)に罹患したことがある場合、子どもも同じような生活習慣で暮らしていることから、他の方よりも三大疾病にかかるリスクが高くなると考えられます。なお、三大疾病以外に腎臓病や糖尿病でも同じことがいえます。
保険の加入時に告知する際は本人の既往歴を申告するのが基本ですが、予備知識として健康診断で見られるポイントも覚えておきましょう。
既往歴がある方が保険に加入する方法4つ
上述のとおり、保険は公平性を重視する性質があることから、既往歴がある方は保険に加入することが難しくなります。とはいえ、病気にかかった経験があるからといって生命保険に加入できないわけではありません。既往歴がある方が生命保険に加入する方法として、以下の4つが挙げられます。
- 特別条件付き契約で加入する
- 引受基準緩和型・限定告知型で加入する
- 無告知型・無選択型で加入する
- 少額短期保険に加入する
将来的な病気・ケガのリスクに備えるためには、生命保険に加入して保障を準備するのが有効です。既往歴があるからといって諦めず、自身に合った方法がないか検討してみてください。
特別条件付き契約で加入する
既往歴がある方は、通常の生命保険に特別条件付き契約で加入するのがおすすめです。病気やケガの経験があると、一般的な生命保険には加入できないと思い込んでしまい、初めから引受基準緩和型などの保険に申し込むケースが多いでしょう。しかし、所定の条件を付けることで、既往歴があっても生命保険に加入できる可能性があります。
特別条件付き契約の「特別条件」には以下が挙げられます。特別条件は保険商品によって異なり、複数の条件が設けられることもある点には注意が必要です。
保険料の割増 | 払込期間中に支払う保険料が割増される |
保険金や給付金の削減 | 契約後の一定期間内に受給できる保険金や給付金が削減される |
特定疾病・特定部位不担保 | 一定期間または全期間において、特定の疾病や部位が保障の対象外となる(=給付金が受け取れない) |
特定障害不担保 | 所定の障害状態になった際に保険金を受給できず、保険料の払込免除も適用されない |
引受基準緩和型・限定告知型で加入する
既往歴がある方が考えるべき選択肢として、引受基準緩和型・限定告知型の生命保険が挙げられます。これらは加入時の告知内容が少なく、通常の生命保険よりも緩やかな条件となっています。一般的には、告知にあたって診断書や健康診断の結果の提出は求められません。
引受基準緩和型・限定告知型の生命保険は、持病や既往症の再発などに対する治療も保障されるのが基本です。ただし、加入してから一定の間は給付金が減額されることがあるため、契約前に保障内容をよく確認しましょう。
無告知型・無選択型で加入する
特別条件付き契約や引受基準緩和型・限定告知型で加入できない方は、無告知型・無選択型の生命保険を検討することがおすすめです。無告知型・無選択型の特徴は、加入する際の告知が必要なく、どのような健康状態でも加入が認められることです。
既往歴の有無を問われないため、過去に病気を患った経験がある方でも加入できるでしょう。ただし、通常の生命保険と比べて保険金や給付金の上限が低くなりやすい点や、割高な保険料が発生する点には注意しなければいけません。
また、加入してから一定の間は病気に対する死亡保障が手薄になりがちです。保障が開始されてから目安として1〜2年の間に死亡した場合、受け取れる保険金は支払った保険料の分のみとなる可能性が高いです。また免責事項が多くなりやすいため、加入の際は保障内容を細かくチェックする必要があるでしょう。
なお、健康状態が問われないとはいえ、入院中であったり余命宣告を受けていたりする場合は加入できません。
少額短期保険に加入する
上記3つの方法以外では、少額短期保険の加入もおすすめです。主な特徴を以下にまとめました。
- 保険期間が短い
- 保険金額が少額
- 保障内容がシンプルに設計されている
- 保険料が割安
- 保障内容のバリエーションが豊富
なかには持病がある方向けの商品も登場しており、条件が緩やかに設定されているため既往歴がある方でも加入しやすくなっています。引受基準緩和型や無選択型の生命保険よりも保険料を抑えられる傾向があるため、割高な保険料を支払いたくない方にとっても有効な選択肢となるでしょう。
注意点として、少額短期保険を提供する保険会社が倒産しても、加入者は補償を受けられません。これは、少額短期保険が保険契約者保護機構の補償対象に含まれていないためです。また、支払った保険料は掛け捨てとなり、解約返戻金や満期保険金は受給できない点も覚えておきましょう。
既往歴がある方が保険を検討する際の注意点5つ
既往歴がある場合、生命保険の加入を検討する際に注意すべきポイントが5つあります。
- まずは通常の生命保険の加入を検討する
- 複数の商品を比較する
- 保険を切り替えるタイミングに注意する
- 虚偽の告知をすると契約を解除される可能性がある
- 保険以外の備えも選択肢に入れておく
後悔なく保険を選ぶために、上記のポイントを押さえておきましょう。
まずは通常の生命保険の加入を検討する
既往歴があっても、まずは通常の生命保険を探すことから始めることがおすすめです。上述のとおり、過去に病気やケガを負った経験がある方は通常の生命保険の加入を諦めがちで、初めから引受基準緩和型などを検討するケースが多いでしょう。
しかし、比較的加入しやすい生命保険は保険料が割高であったり、保障内容が制限されていたりします。そのため、特別条件付きで通常の生命保険に申し込むことをスタートとし、加入できない場合や特別条件に納得できない場合などに引受基準緩和型を、次に無告知型の順番で検討する方法が良いでしょう。
少しでも保険料を抑えて保障を確保するためには、加入のハードルを徐々に下げていきましょう。
複数の商品を比較する
生命保険の加入を考えるときは、初めからひとつの商品に絞って検討するのではなく複数の商品を比較しましょう。加入の条件は保険会社によって異なり、A社では特別条件付きで申し込めても、B社では引受基準緩和型での契約になってしまうことがあります。
また、保障内容が同じような商品であっても、保険会社によって保険料に差があることも少なくありません。より良い条件で生命保険に加入するためには、それぞれの商品をよく比較してから選ぶことが大切です。
保険を切り替えるタイミングに注意する
すでに契約している商品から別の商品に切り替える場合は、加入と解約のタイミングに注意しましょう。賢明な方法は、切り替えたい生命保険に加入し、保障が開始されてから既契約の商品を解約することです。
加入よりも先に解約を進めてしまうと、もし加入できなかった場合には保障をすべて失うことになるでしょう。また、引受基準緩和型などは受けられる保障が限定的になる期間が設けられていることもあるため、保障が得られるまでは既契約の商品を残しておくほうが良いでしょう。
虚偽の告知をすると契約を解除される可能性がある
申し込みをする際の告知は自己申告制です。このとき、どうしても加入したいからといって虚偽の告知をすると、契約を解除される可能性があるため注意しましょう。既往歴を隠して加入できたとしても、保険金を請求するタイミングで病歴に関する調査が行なわれ、虚偽の告知が発覚することとなります。
虚偽の告知をすることは告知義務違反と呼ばれ、発覚して契約を解除された場合は保険金などを受け取れません。また、重大な告知義務違反と判断されると、払い込んだ保険料が返ってこないケースもあります。
保険以外の備えも選択肢に入れておく
生命保険にこだわらず、その他の備えを選択肢に入れておくことも大切です。通常の生命保険に加入できない場合は引受基準緩和型などが候補となりますが、加入しやすい分、保険料が割高になりがちです。
高い保険料によって家計が苦しくなったり、保障が不足したりするのであれば、生命保険の加入自体を見直す必要があるでしょう。例えば、いざというときのために貯蓄で備えておき、健康状態が落ち着いてから加入を検討するのもひとつの手段です。
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おわりに
既往歴とは、これまでに患った病気やケガで現在は完治している病歴等の記録を指します。主に生命保険の加入時に申告が求められますが、どこまでの範囲を既往歴に含めるかは保険会社によって異なります。
また、既往歴があると生命保険に加入できないと思われがちですが、告知内容や条件によっては生命保険で保障を準備することも可能です。まずは通常の生命保険に加入できないかを検討し、健康状態や保険料などを考慮して他の商品を比較してください。
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