あらかじめ指定した場所で非対面で荷物の配達を行う「置き配」サービスは、ライフスタイルに合わせた荷物の受け取りができる便利なシステムです。一方、盗難などのトラブルも報告されており、サービスを利用するにあたってはメリットだけでなく、デメリットが存在するということも知っておく必要があります。
このコラムでは、置き配における「受取側」の視点に立ったサービス内容の基本知識の他、万が一盗難に遭った場合の対処法などを詳しく解説していますので、いざという時にもご活用ください。
コロナ禍で定着した「置き配」サービス
新型コロナウイルスの感染拡大を背景に、玄関先やガスメーターボックスといった場所で荷物を受け取る置き配サービスが普及しています。しかし「置き配」というワードを耳にするだけで、実際には利用したことがないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここでは、置き配を利用して荷物を受け取るとはどういったシステムなのか、具体的にはどんなサービスが提供されているのか、といった内容を見ていきます。
そもそも置き配とは?
置き配は、配送会社のドライバーと非対面で荷物の受け渡しを行う方法のことをいいます。受取人があらかじめ指定した場所に荷物を置けば配達完了となる仕組みです。受取サインや押印は不要で、病気のときなど対人接触を回避することができます。
日中は不在である、在宅していても対応が難しいなど、多様なライフスタイルが存在する現代にマッチしたサービスであり、再配達の手間が省ける点では、消費者・企業の両者に有益なシステムとして浸透しつつあるサービスです。
大手配送専門会社の置き配への対応は?
以下の大手配送会社は、揃って置き配サービスに対応しています。2022年9月時点で確認できる各社のサービス内容について見てみましょう。
ヤマト運輸
ヤマト運輸では、一部の荷物を除いて置き配サービスを利用することが可能です。事前に置き配を指定する場合と、配達時に置き配を指定する場合の2パターンから選択することができます。いずれも受領印・サインは不要です。
ヤマト運輸と連携するオンラインショップや一部のショップでは、商品注文の時点で事前に置き配指定が可能です。また、ショッピング後に届くヤマト運輸からのメールやWEBサイトで該当荷物を置き配に変更することもできます。
また、事前に置き配指定していなくても配達時に在宅であれば、インターホン越しに置き配を指定することも可能です。配達完了通知を設定していれば、置き配時の荷物状態を写真で確認できるサービスも実施しています。
佐川急便
佐川急便では、個別契約を締結している送り主から出荷される荷物に関して、指定場所配送(置き配)サービスを利用することができます。
対象となるのは、飛脚宅配便・飛脚航空便・飛脚ジャストタイム便で、これらに対して指定日配達と時間帯指定のサービスを併用することも可能です。ヤマト運輸と同様、指定場所に荷物を届け終わったら、荷物の状態を写真撮影するサービスを実施しています。
日本郵便
日本郵便では、一部の郵便物および荷物を除いて置き配サービスを利用することが可能です。ただし、サービスの利用を希望する場合は「指定場所配達に関する依頼書」を配達郵便局に提出する必要があります。
お住まいの地域の配達郵便局を調べたり依頼書を準備したりする時間がかかるため、余裕を持って準備しておきましょう。
また、受取指定場所には、受取人の住所・居所と同一の建物や構内であること、配達荷物が見えにくいなど事故リスクの低い場所、降雨などで配達荷物が汚損しない安全な場所であること、といった条件が設けられています。
受取場所として指定する宅配ボックスなどが一定の条件を満たせば、専用書類の提出で書留といった郵便物などの置き配も可能です。
置き配によくあるトラブル
新型コロナウイルスの影響で利用者が増えている置き配サービスですが、玄関先などに配達された荷物を狙った盗難事件や降雨などによる荷物の汚損、誤配送が相次いで発生しています。
コロナ禍では、外出自粛による在宅時間・在宅生活を充実させる巣ごもり消費が増え、インターネットショッピングの利用と購入商品の受取方法に置き配を指定する方が増えました。
しかし、緊急事態宣言が発出された2020年頃から急速に進んだ「消費のデジタル化」と置き配サービスは、受取側の防犯意識や配送会社のトラブル対策が追いついていないのが現状です。
不在時にも受け取れる点や再配達を申請する必要がない点で便利なシステムですが、事件や事故に関する課題解決は発展途上にあります。
置き配で荷物が盗まれたらどうする?適切な対処法
置き配を利用すれば、配達時間に縛られたり再配達の依頼に手間をかけたりする必要がない、というメリットを享受できます。しかし、配達された荷物が盗難被害に遭う可能性がゼロではない、というデメリットも混在するのが難点でしょう。
ここでは、大切な荷物がもし盗難被害に遭った場合はどうすれば良いのか、補償制度はあるのか、責任の所在はどこにあるのか、といった疑問に対する適切な対処法を紹介します。
配送専門会社・出荷元に連絡する
配達完了とされた置き配指定の荷物が見当たらない場合、盗難の被害に遭った恐れもありますが、まずは以下に挙げる4点を確認してみましょう。
1点目は、あらかじめ指定しておいた受取場所を再度確認することです。置き配では、玄関先やガスメーターボックス、郵便受け・宅配ボックス、車庫や物置など、さまざまな場所を受取場所として指定できます。当該荷物の受取場所をどこに指定していたのか確認し、もう一度その場所を見てみましょう。
2点目に、在宅する家族や同居人が荷物を受け取っていないか確認します。置き配を指定したものの、何かの事情や誤りがあって受け取りを済ませている可能性も考えられます。
3点目に、荷物の届け先住所が正しく設定されているか確認してください。インターネットショッピングなどの場合、住所入力を間違えたり、複数の届け先住所の中から誤って別の住所を選択してしまったりというミスをしていることもあります。注文履歴から、正しい届け先住所が設定されているか確認してみましょう。
最後の4点目として、置き配完了時の写真撮影サービスを提供する配送会社かどうか確認して、写真が残っていないか確認します。ここまで確認しても荷物が見つからない場合は、配送会社あるいは出荷元に連絡してみてください。また、盗難被害だと確実になった際には、補償制度がある場合の申請方法なども問い合わせておくと良いでしょう。
警察に被害届を出す
置き配指定した荷物がどうしても見つからない場合は、盗難の被害に遭った可能性があります。配送会社や出荷元に問い合わせても荷物の行方が分からないとなると、警察に110番通報して臨場を求めましょう。
その際は、自ら交番や警察署に出向くのではなく、自宅から通報して現場を確認してもらうのがスムーズです。鑑識作業が入るケースもあるため、受取指定場所の付近は現状を保つよう気を付けてください。
盗まれた責任は自分?配送会社?
置き配指定した・置き配することに合意した荷物が盗まれた場合、責任の所在はどこにあるのでしょうか。また、受取指定場所への放置時間が長かった場合は、受取側に非があるのか気になるところです。ここからは、置き配の荷物が異なるパターンで盗難の被害に遭った際の責任の所在について解説します。
受取人が置き配を指定していた場合
受取人が置き配を指定するということは、責任に関する利用規約が明示されていなくとも、原則「荷物の配達完了以降における盗難などのリスクを引き受ける意思がある」というふうに解釈されてしまいます。
そのため、届いた荷物を家に持ち込むまでにかかる時間にかかわらず、紛失の責任は受取側にあることとなり、配送会社や出荷元へ損害賠償を求めることはできません。
ただし、置き配商品の盗難被害を補償対象とする損害保険に加入していれば、盗まれた荷物(商品)の購入金額を保険会社に請求することができます。
受取人の許可なく置き配され、盗難された場合
受取人の合意なく勝手に置き配された荷物が盗まれたパターンでは、その荷物を配達した配送会社が責任を負う可能性があります。商法第575条には、荷物が引き渡しまでの間に滅失した場合、運送人がその責任を負うことが明示されているからです。
置き配ではない方法で受け取るはずだった荷物が、受取人の合意なく配送会社の勝手な判断によって置き配される行為は、債務不履行になります。その影響で盗難事件が起きてしまった場合、配送会社は荷物を引き渡すまでに必要な注意を怠ったとして盗難(損害)の責任を負わなければならないでしょう。
犯人が見つかった場合
置き配荷物を盗んだ加害者が特定されれば、刑事事件として警察に逮捕されます。しかし、犯人が逮捕されたからといって荷物の中身や代金が弁済されるわけではありません。警察は民事不介入であるため、加害者から補償を受けるためには、金銭の支払い交渉をするか損害賠償請求の民事訴訟を起こすか行う必要があります。個人で交渉や訴訟を進めるのは容易でないため、弁護士のサポートが必要になるでしょう。
ただし、加害者より「金銭の支払いに応じるから被害届を取り下げてほしい」などという示談を持ちかけられるケースもあります。この申し出を受け入れれば、訴訟を起こすことなく補償を受けられます。
置き配で盗難に遭わないために事前にできること
置き配を利用するには、便利さの裏に潜む盗難リスクと向き合うことが必要不可欠です。実際に被害に遭ってしまった場合は、配送会社や出荷元、警察と連絡を取って補償の手続きを進めると良いでしょう。しかし、まずは盗難の被害に遭わないよう対策を講じるのが先決です。ここからは、ご自身で事前にできる、置き配荷物の盗難予防方法を見てみましょう。
対面で受け取る
受け取る荷物の中身が高額商品である場合など、盗難の危険要素を取り除くには、置き配ではなく手渡しで直接受け取る方法が安心です。そうすれば、荷物が盗まれてしまうリスクがなくなります。
一方、対面受取では配達時に必ず在宅していなければならない点がネックです。どうしても対面受取ができない時は、以下で紹介する信頼度の高い受取先を利用するなどして盗難のリスクを軽減させると良いでしょう。
信頼できる荷物の受取先を指定する
近頃は、配達荷物の受取場所を自宅以外に変更することが可能です。例えば、コンビニエンスストアや駅に設置された専用のロッカーなどがそれにあたります。24時間営業のコンビニエンスストアならいつでも荷物の受取ができる上、誰もいない戸外に荷物を放置するわけでもないため、盗難のリスクを回避することが可能です。
また、ヤマト運輸が展開する宅配便ロッカー「PUDO(プドー)」や、Amazon(アマゾン)商品を受け取れるロッカー・カウンターの「Amazon Hub(アマゾンハブ)」といったサービスも有効活用すると良いでしょう。
鍵付きのロッカーや有人カウンターに荷物が保管されるため盗難のリスクが低く、都合の良いタイミングで荷物を受け取ることができます。
宅配ボックスを利用する
ここでいう「宅配ボックス」とは、マンションや戸建て住宅などに設置される電気式や機械式の自家用宅配ボックスのことです。
まず電気式とは、マンションなどに使用されるテンキーやタッチパネルで開閉操作する宅配ボックスのことで、駅などの施設でも見かけるタイプのもの。荷物が届くとメールで通知する機能があるなど便利な一方、製品自体の価格が高額で配線工事が必要な点、24時間電気代がかかる点で導入や運営にコストがかかります。
次に機械式とは、南京錠やダイヤル錠といったアナログな鍵で施錠・解錠操作する宅配ボックスのことで、電気を使わないタイプのものです。電気式に比べると製品自体の価格は低く、配線工事や電気代も必要ありません。また、サイズが豊富に用意されているため、設置場所やスペースに融通が利くのも特徴です。
どちらの宅配ボックスも施錠されている点で盗難のリスクは軽減できますが、盗みを働く者の執念は侮れません。住人の少ない時間帯を狙って暗証番号を突き止めたり、宅配ボックスごと持ち去ったりする窃盗犯がいることも事実です。
宅配ボックスの設置・利用にはこういったデメリットが少なからずあります。また、自宅前での盗難は、ご近所間トラブルに発展するケースまであります。
盗難の被害やトラブルが心配な方はホームセキュリティを取り入れると安心でしょう。
防犯カメラやホームセキュリティを導入する
置き配で荷物を受け取ることには盗難被害のリスクがあるため、受取場所の変更や宅配ボックスの利用といった対策を紹介しました。それでも不安な方、念には念を入れて対策を講じたい方には、防犯カメラなどのホームセキュリティを導入するという方法があります。
防犯カメラがあれば、犯行の一部始終を撮影して犯人捜索の手がかりや証拠として提出することも可能です。また「防犯カメラ作動中・監視中」などの警告があればそれだけで犯罪抑止力になるでしょう。
防犯カメラやセキュリティシステムと聞くとコスト面が気になりますが、くらしのセゾンの防犯カメラシステムならレンタル・購入を選べ、レンタルの場合月額4,840円(税込)から利用できます。設置工事やその後の不具合・故障といったトラブル、消耗品の交換対応も月々の費用に含まれているため、実に手軽なプランです。
また、ホームセキュリティ初心者でも簡単に始められるセットを提供するのは、くらしのセゾンが提携する株式会社Secual(セキュアル)。初期費用と月額1,078円(税込)でスタートできるプランは、機器を設置するだけでセットアップ完了のシンプルなシステムです。
スマートフォンにアプリをダウンロードすれば、外出先でもセキュリティチェックしたり異常の知らせを受信したりできます。
【番外編】運送保険に加入する
配送会社によっては、置き配か否かにかかわらず、輸送中に盗難や破損が生じた荷物の損害を補償する「運送保険」を取り扱っています。高額商品や壊れやすい荷物などを輸送する際にかけられることが多く、出荷する側・受け取る側どちらかが申し込むことで補償制度が適用される保険です。
Amazonで注文した商品が盗難された場合の対処法
Amazonでは、置き配指定した商品が配達完了扱いになっているにもかかわらず手元に届いていない場合、購入者からの報告で商品の再送や返金に対応しています。「Amazon公式チャット」から盗難の被害に遭った旨を連絡すれば、商品の再送か返金のどちらかで補償対応してくれます。
参考 Amazon.co.jp利用規約 – Amazonカスタマーサービス
おわりに
対面での対応が必要ない置き配は、不在時でも荷物の受け取りが完了するため、再配達の時間や労力を削減できる配送方法として定着してきました。しかし、無人で放置される荷物を狙った盗難事件も発生しており、便利なシステムだと手放しでは喜べない点もあります。
そのため、置き配を利用する際には今回紹介したような防犯対策を講じるのが得策です。万が一盗難の被害に遭ってしまった場合は、関係各所への連絡を迅速に行い、補償の有無を確認しましょう。