定年退職後も考慮しておかなければならないのが税金です。税金について把握せず、これから年金が入るから大丈夫だと思っていると、思わぬ落とし穴にはまる危険もあります。そのような事態に陥らないよう、リタイア後に発生する税金についてどのようなものがあるのかを把握し、事前に準備しておくことが大切です。
また、どうしても納税資金が用意できない際の対処法についてもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
老後にかかる主な税金の種類とは
給与所得者や年金受給者の場合、その所得金額に応じた所得税そして住民税を支払わなければなりません。国税庁が発表している「令和2年の民間給与実態統計」によると、給与所得者の平均給与は433万円となっており、それに応じた所得税額および住民税額を試算してみましょう。
●東京都在住・40歳以上・独身・年収433万円の場合(復興特別所得税は考慮せず)
(所得税)
433万円-約130万円(給与所得控除)=303万円(給与所得金額)
303万円-約64万円(社会保険料)-48万円(基礎控除)=191万円(課税所得金額)
191万円×5%(所得税率)=95,500円
(住民税)
433万円-約130万円(給与所得控除)=303万円(給与所得金額)
303万円-約64万円(社会保険料)-43万円(基礎控除)=196万円(課税所得金額)
196万円×10%(住民税率)=196,000円(所得割額)
196,000円(所得割額)+5,000円(均等割額)=201,000円
対して、令和2年度の平均年金月額(厚生年金受給者、老齢基礎年金含む)は、約15万円、年額にすると180万円となっています。所得税額および住民税額を計算してみましょう。計算において、社会保険料は考慮しないものとします。
●東京都在住・65歳以上・独身・年金額180万円の場合
(所得税)
180万円-110万円(公的年金控除)=70万円(雑所得金額)
70万円-48万円(基礎控除)=22万円(課税所得金額)
22万円×+5%=11,000円
(住民税)
180万円-110万円(公的年金控除)=70万円(雑所得金額)
70万円-43万円(基礎控除)=27万円(課税所得金額)
27万円×10%=27,000円(所得割額)
27,000円(所得割額)+5,000円(均等割額)=32,000円
この金額は税負担の身を計算するもので、これにさらに社会保険料(国民健康保険料および介護保険料)の負担が発生することになります。リタイア後も年金収入額に応じて、所得税や住民税が発生することを覚えておきましょう。
また、住民税は前年年収で金額が決まります。退職の翌年については退職直後で収入が大きく減少したにもかかわらず、前年年収に応じた高い住民税を支払わなければならないため、注意が必要です。
老後の税金、納めなかったらどうなる?
当然ながら、税金は定められた期限までに支払わなければなりません。仮に納税資金が不足し、納税できなかった場合、どのような処分があるのでしょうか。
延滞税が加算される
定められた期限までに税金を支払わなかった場合、税金額に、期限の翌日から実際に納付する日までの日数に応じた延滞税が加算されます。延滞税は、定められた期限までに支払わなかった場合以外でも、期限後に提出した確定申告書や修正申告書による納税額があるときや、更生もしくは決定処分を受けた際に納付しなければならない税金がある際にも適用されます。
延滞税の割合については以下のとおりです。
行政処分を受ける
税金を滞納すると、国税徴収法や地方税法に基づいて行政処分が行われます。
まず、税金を滞納すると督促状が送られてきます。そして、国税徴収法や地方税法では、督促状を送ってから10日以内に滞納している方の財産を差し押さえなければならないと規定されています。したがって、督促状を送ってもまだ税金が支払われないことが分かると、差し押さえが可能な財産を特定するための財産調査に踏み切ります。
調査によって差し押さえられる財産が特定されると、その財産については自由に売買したり贈与したりすることができなくなります。差し押さえの対象となった財産は、その後お金に換価され、税金の支払いに充てられることになります。
このように期限までに税金を支払わなかった場合、行政処分を受けるほか、納税の際には延滞税を加算した税額を納付しなければならなくなります。税金は必ず定められた期限までに支払うことが大切です。そのためにも、ある程度の納税資金は確保しておきましょう。
税金以外にも社会保険料の支払いも必要
上記で少し述べたように、リタイア後であっても税金以外に社会保険料の支払いが必要です。具体的には国民健康保険料や介護保険料等ですが、国民健康保険料は被保険ごとに計算された保険料を世帯単位で合算し、世帯主が納めることになっています。
「医療分給付費」「後期高齢者支援金分」そして「介護納付金分(40歳から60歳まで)」の3つの区分、3つの年齢層に分けられています。それぞれの区分ごとの額は、以下の4つの項目で計算された額の合計額となります。
また、国民健康保険料は各市町村の条例などで定められており、下記の4項目から各市町村の判断で2方式(所得割・均等割)、3方式(所得割・均等割・平均割)、4方式(所得割・均等割・平均割・資産割)のいずれかの方式をとります。
(所得割)
世帯加入者の所得に応じた額(所得額に税率を乗じたもの)
(資産割)
世帯加入者の資産に応じた額(固定資産税額に税率を乗じたもの)
(均等割)
世帯加入者の人数に応じた額(加入者数に均等割額を乗じたもの、子どもを含む)
(平均割)
1つの世帯あたりで計算
仮に年金収入が250万円の場合の令和4年度分年間保険料は146,868円(東京都板橋区在住、世帯主の年齢65~74歳、独身のケースで試算)です。
社会保険料は自治体によって適用される税率が異なりますので、各自治体の公式サイトに用意されている試算シートなどを利用して計算してみましょう。
税金を納める当座のお金がない場合は?
所得税や、住民税、社会保険料、固定資産税など、リタイア後もさまざまな税金を支払う必要があります。また納税時期が重なることもあり、納税資金を一度に用意することが難しいケースもあるでしょう。そのような際にはローンを利用して納税する方法もあります。
納税資金として利用できるローンには、カードローンやフリーローンがあり、高齢の方でも利用できる商品もあります。80歳まで申し込みできるセゾンファンデックスのかんたん安心ローンなら資金使途が限定されないため、生活費を始めとしたさまざまな用途にも利用できます。
まとまった金額を一括で借り入れる場合はフリーローン、必要なときに必要なだけ借り入れたいというお考えなら、カードローンをおすすめします。
このようなローンを利用し、期限までに税金を納めることで、延滞税の加算や行政処分を免れるというメリットがあるため、賢く利用することで未納を防ぐことができます。財産を差し押えらえるといった状況を避けるためにも必要に応じて上手に利用しましょう。
おわりに
リタイアし収入が年金のみになっても、税金や社会保険料の負担は続きます。もちろん老後資金としてまとまった金額を用意していても、切り崩していくうちに税金を支払うだけの余裕がなくなることも考えられます。また、せっかく用意した資金を納税のために使いたくないと思う方もいるでしょう。
税金や社会保険料は生きている以上発生するものです。その費用を事前に把握し、準備しておくことはもちろん、一時的な資金不足の際にはカードローンやフリーローンを上手に活用し、未納を防ぐようにしましょう。
ローン商品には年齢制限が設けられているものが多いですが、上限年齢はローン商品によって異なります。申し込み時の年齢が80歳以下と高齢でも利用できるローンもありますので、自分に適したローンを探し、活用していきましょう。