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【医師監修】不眠症を改善する方法!症状や原因、改善するための対策について紹介!

【医師監修】不眠症を改善する方法!症状や原因、改善するための対策について紹介!
別府 拓紀 医師

監修者

医師

別府 拓紀

産業医科大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、産業医科大学精神医学講座に入局。大学病院、市中病院、企業の専属産業医などを経て、2020年2月より、福岡県北九州市にある医療法人清陵会南ヶ丘病院で地域の精神科医療に従事。精神保健指定医、精神科専門医、老年精神医学会専門医、認知症サポート医、臨床精神神経薬理学専門医、公認心理師、メンタルヘルス運動指導士、健康スポーツ医、産業医。

寝ても眠りが浅くて寝た気がしない、夜布団に入ってもなかなか寝つけないなど不眠症に悩んでいる方は多いでしょう。不眠症の原因はいくつかあり、その原因を見直したり習慣を変えたりすることで症状を改善できます。

不眠症の原因には、どのようなものがあるのでしょうか。このコラムでは不眠症の原因や不眠症を改善する習慣、食べ物・飲み物などを紹介します。不眠症に悩んでいる方はぜひ参考にしてみてください。

不眠症とは?

不眠症とは、眠りが浅く充分な睡眠がとれない、寝つきが悪いなどの睡眠問題が1ヵ月以上続き、日中に不調を感じて生活の質が落ちている状態を指します。不眠症では睡眠不足から日中にさまざまな症状が現れます。

  • 眠気
  • 集中力の低下
  • 片頭痛
  • 注意力散漫
  • イライラする
  • 倦怠感
  • 食欲不振
  • めまい など

日本では不眠症は約5人に1人の割合で発症しており、歳を重ねるにつれて不眠症で悩んでいる方の数は増える傾向にあります。また、男性よりも女性の方が発症しやすいとされています。不眠症が続くと無理に眠ろうと緊張してさらに不眠が悪化することもあるので、不眠症が改善されないときには病院への受診をおすすめします。

参照元:e-ヘルスネット

年齢による不眠症の割合

適切な睡眠時間には個人差があり、年齢によっても差があります。不眠症は、小児期・青年期にはあまり見られないとされてきましたが、近年は子どもの3~4人に1人が睡眠障害または睡眠習慣に関する問題を抱えているという研究データもあります。

一般的に不眠症は20~30歳代に始まり、加齢とともに増加、そしてシニア世代になるにつれて急激に増加していく傾向です。また、男性よりも女性、特に仕事を持つ女性に多いといわれています。

年齢による睡眠時間の減少と不眠症の増加傾向

睡眠のサイクルは年齢によって変わっていきます。

例えば、乳児であれば1日のうち70~80%の時間眠っていますが、成長と共に睡眠時間は短くなっていきます。そして就学し、中学生・高校生、大学進学と年齢を重ねていくと夜更かしすることが増え、特に発達期における睡眠不足は深刻な問題です。就寝時間が0時以降である生徒の割合が過去15年間で小学生で4.5倍、中学生で2.7倍と増加。その影響により、昼間に眠気を感じるようになるケースが少なくありません。

社会人になると、就寝時間・起床時間共に学生時代より早くなるのが一般的ですが、3人に1人が睡眠に問題を抱えているといわれています。さらに年齢を重ね、高齢になってくると約半分が何らかの睡眠上の問題を抱えているのです。

高齢者に見られる不眠症の割合

適切な睡眠時間は年齢によって変わってきますが、個人差があります。例えば、65歳以上の高齢者になると、理想的な睡眠時間が7~8時間とされているのに対し、適切な(推奨される)睡眠時間は5~9時間とかなりのばらつきが見られるのが現状です。

また、日本老年医学会雑誌によると、不眠が見られる60歳以上の高齢者層の割合は29.5%と高く、特に中途覚醒・早朝覚醒の頻度は若年者の約2倍となっています。

睡眠中に脳内で起こること

睡眠は、身体と脳の休養のために非常に重要ですが、睡眠中に私たちの身体や脳の中ではどのようなことが起こっているのでしょうか。

脳から有害物質を排泄する

ヒトが眠る理由については完全に解明されているわけではありません。ただし、眠ることの意味として「睡眠は脳の排泄行為だ」という見解があります。脳には身体と同じようにリンパ液があり、脳が神経活動を行って残される老廃物を動脈からリンパの流れによって静脈に流し、排泄しているという見解です。

脳の老廃物として挙げられるのが、「アミロイド・タウ蛋白」です。異常たんぱく質であるアミロイド・タウ蛋白は脳内の神経細胞を破壊してしまうため、蓄積すると記憶や集中力、うつ病などの精神状態に影響します。そのため、アルツハイマー型認知症の原因となる他、転倒リスクを増大させる有害物質とされているのです。

このような脳の老廃物・有害物質を洗い流してくれるのが脳のリンパ液であり、洗い流す作業は睡眠中に行われます。そのため、脳の毒素を排泄する意味で睡眠は重要なのです。

その他、睡眠中に起こること

有害物質を排泄することは睡眠中に起こる非常に大切なことですが、他にも睡眠中に起こることは他にもあります。例えば、以下のとおりです。

  • 身体の成長
  • 記憶の整理
  • 代謝の調整
  • 肺や心臓の休息

年齢差や個人差はありますが、これらの働きをスムーズにすることも、睡眠中に起こっている大切な働きです。

不眠症に関する治療法にはどんなものがある?

不眠症かどうか診断するにあたっては、もちろん主観的な「眠れない」「途中で目が覚める」などの症状も重要な判断材料ですが、他の病気の可能性がないかどうか医師の診断を受け、睡眠日誌をつけて分析する、睡眠生理検査や血液検査などが行われます。

では、不眠症と診断された場合、どのような治療法があるのでしょうか。大きく分けて「薬による治療」と「セラピー」が挙げられます。

薬による治療

生活習慣が改善した場合であっても不眠症が改善しない、症状が悪化してきた場合には、薬を使って治療を行うことが少なくありません。薬には医師による処方薬と市販薬があるため、それぞれのメリット・デメリットを把握しておきましょう。

薬の種類メリットデメリット
処方薬即効性が期待できる副作用の可能性がある
市販薬依存しにくい効果が弱め

処方薬よりも即効性が期待できるため、特に急に起こった睡眠障害に非常に有効だとされています。ただし、長期間服用することにより効果が弱まる可能性があり、認知機能の低下や転倒リスクが増える可能性もあるので注意が必要です。

一方、薬局などで購入できる市販薬は依存しにくいのがメリットですが、処方薬に比べて効果が弱く、長期間服用していると効きづらくなる傾向があります。

なお、睡眠改善に効くといううたい文句で販売されているものに「サプリメント」がありますが、臨床データが充分ではなく、効果についても統一見解があるわけではありませんので、ご注意ください。

セラピーによる治療

不眠症に対して薬による治療が有効なことは分かりましたが、薬物治療に抵抗がある方もいらっしゃるかもしれません。そこでもうひとつ有力な治療方法として挙げられるのが、セラピー療法です。具体的には、認知行動療法(CBT-1)と呼ばれます。

認知行動療法(CBT-1)のメリット・デメリットは、以下のとおりです。

認知行動療法(CBT-1)のメリット・デメリット

薬物による治療の場合即効性が期待できますが、認知行動療法(CBT-1)の場合は即効性よりも効果が持続するのがメリットです。ただし、一定の効果が得られるまで時間がかかることが多く、実施している医療機関がそれほど多くないのがデメリットです。

不眠症の改善を助ける食べ物・飲み物

不眠症は食べ物や飲み物で改善できます。不眠症への効果が期待できる栄養素や、その理由について解説します。

タンパク質(鶏肉、卵、魚、豆)

タンパク質はアミノ酸でできており、アミノ酸の一種であるグリシンは睡眠に良い効果をもたらします。グリシンが体内時計を調整し、睡眠のリズムを整えるといわれています。不眠症に悩んでいる方は鶏肉や卵、魚、豆などタンパク質が豊富に含まれている食材を使った料理を食べるよう意識してみましょう。

消化に良い炭水化物やヨーグルト

夜に消化の悪いものを食べると胃の消化活動が活発になるので、身体が寝ていても脳は起きている状態になり睡眠が浅くなります。特に、揚げ物やお肉などは胃の中に4時間以上残ります。不眠症を改善させたいのであればおかゆや雑炊、うどんなどの消化に良い炭水化物やヨーグルトがおすすめです。

ホットミルク

寝る前にホットミルクを飲むと不眠の改善をサポートする効果が期待できます。牛乳にはトリプトファンが含まれ、トリプトファンには睡眠物質であるセロトニンを作る上で重要な働きがあります。また、牛乳に含まれるカルシウムには自律神経を整える効果があるので、身体がリラックスして質の良い睡眠を得ることが可能です。

ハーブティー

リラックス効果があるハーブティーは、古代エジプト時代から不眠の治療に使用されています。さらにハーブティーに生姜やはちみつなどを加えるだけで、睡眠の質を良くする以上の効果が期待できます。

ハーブティーの中でも特に安眠効果があるハーブティーはこちらです。

  • カモミール
  • ラベンダー
  • リンデン
  • パッションフラワー
  • レモンバーム

スーパーなどで手軽に購入ができるので、1日に1杯の紅茶を飲むような習慣にしても良いですね。

不眠症の治療薬

不眠症を治療する薬はいくつかあります。それぞれの効能やメリット・デメリットを紹介します。

GABA受容体作動薬

GABA受容体作動薬とは、GABA(ガンマアミノ酪酸)の働きを促し、脳を休ませて眠りを誘う薬です。GABAとは脳や脊髄で精神を安定させる神経伝達物質のひとつで、脳の興奮を抑える効果があります。

GABA受容体作動薬は高い効果が期待でき、さらに早めに効果を実感しやすいというメリットがあります。一方で、依存性が出やすくさらに薬が効きにくくなることもあるので、服用するときには慎重にコントロールしなくてはいけません。

また、ルネスタやハルシオン、サイレースなどGABA受容体作動薬は多くの種類の薬があるので、状態に合わせて処方されます。

メラトニン受容体作動薬

メラトニン受容体作動薬はメラトニンの受容体に結合し睡眠と覚醒のリズムを整えて睡眠を促す不眠症の治療薬です。メラトニンとは脳内に存在するホルモンで、睡眠と覚醒のリズムを調整する働きがあります。

メラトニン受容体作動薬には、体内時計を調整して自然な眠りを促せる、依存性や耐性が少ないというメリットがありますが、即効性がなく効果を実感するまで2~4週間程度必要です。また、頭痛や眠気残存の副作用が出るデメリットもあります。

オレキシン受容体拮抗薬

オレキシン受容体拮抗薬は新しいタイプの薬で、オレキシンと呼ばれる脳の覚醒システムを活性化させる神経伝達物質の働きを抑え、脳が睡眠状態になるのを促します。

オレキシン受容体拮抗薬は他の薬と比べて依存性や耐性が少なく自然な眠りを促すメリットがあります。対してデメリットは、頭痛や眠気残存の副作用や、1~5%の方が悪夢を見るといわれていることです。

不眠外来での治療法

不眠外来での治療は、一般的に投薬による治療と生活習慣の改善です。不眠症が疑われる場合、まずは就寝前の習慣や服用している薬などの問診と不眠症以外に何か病気が隠れていないかこれらの検査を行います。

  • 睡眠時無呼吸症候群の検査
  • 血液検査(肝機能や腎機能、糖尿病などのチェック)
  • 脳MRI(ホルモン異常があった場合に実施) など

不眠症の原因がわかる場合には、原因に合った治療を行います。例えば、服用している薬が原因の場合は、薬の処方を再度検討します。

不眠症を投薬で治療するとき主に使用される薬は抗不安薬と鎮静薬です。症状を診ながら慎重に処方し、不眠症が改善されたら徐々に服用する薬を減らしていき、薬がなくても眠れるようにしていきます。

おわりに

日本では5人に1人は不眠に悩んでいるとされています。不眠症は片頭痛やイライラなどさまざまな身体の不調を引き起こすので、悪化する前に早めに医師へ相談するようにしましょう。

また、不眠症は生活リズムの乱れや飲酒・喫煙などが原因でも発症するため、生活習慣を見直すことで改善されることがあります。このコラムでは生活習慣の改善以外にも、不眠症を改善する習慣や食べ物・飲み物を紹介したので、不眠症に悩んでいる方は参考にしてみてください。

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