健康診断は、自身の健康状態を知り、さまざまな病気の早期発見・早期治療のため、定期的に行うものです。多くの方が所属企業や自治体を通し、年に一回受診しています。
この健康診断で正しく健康状態をはかるためには、健康診断の前日の過ごし方が非常に重要です。しかし、健康診断の前日・当日のやるべきこと・注意事項は多く、「どこまで注意すべき?」「これはやっていいのか?」と疑問に思うこともあるかもしれません。
そこでこのコラムでは、健康診断の前日の飲食・行動の注意事項について紹介します。健康診断が近い方はチェックして、事前準備に活用してください。
健康診断は前日の過ごし方が大切
健康診断で正しい数値を得るために、前日の過ごし方に注意しましょう。健康診断では、受診する検査項目により、前日に「飲食してはいけないもの」「やってはいけないこと」が細かく定められています。
健康診断で、特に注意すべきなのが「食事」です。それは、健康診断の項目の多くが、血液やレントゲン・エコーなど、体の内部を検査するものであり、食事がその検査に大きく影響するからです。とった食事は約半日の時間をかけて全身に吸収されていくため、検査前日から食事制限をする必要があります。
他にも、運動はしすぎないこと、睡眠をしっかりとることも大切です。健康診断で良い数値が出るように、頑張ってサプリを服用したり、過度な運動をしたりする方もいますが、それはよくありません。逆に異常値が出てしまう恐れがあります。
健康診断は、あくまで病気の早期発見・早期治療のために受診するものであるため、無理に数値を良くしようとする行動はせず、健診センターからの案内文もしっかり読んで、正しく受診するようにしましょう。
健康診断前日の食事
健康診断の前日には「食事をとって良い時間」と「とって良い食事メニュー」の制限があります。それは上述のとおり、計測数値が食事によって影響されてしまうからです。それぞれの注意ポイントを以下から細かく説明します。
何時までに食事は食べる?
食事は、前日21時までに済ませるようにしましょう。当日も健康診断後まで食事はとらないようにしてください。
これは、採血、胃カメラ、バリウム、腹部エコー等の検査項目における数値を食事で乱れさせないようにするためです。食事は摂取してから、胃で消化されるまでに2~3時間、小腸で吸収されるまで5~8時間かかるため、前日からの食事制限が必要になります。
例えば、血液検査は「空腹時」の数値を基準として検査しています。そのため、検査前に食事を摂取してしまうと、血液検査の結果で異常値が出て悪い判定がつく可能性があります。血液検査のなかでも、特に血糖値や中性脂肪は、食事に影響されやすい項目です。
他にも、胃の中に食べ物が残っていると、胃カメラ・バリウム(胃透視)で胃の粘膜がよく見れずに、正しい検査になりません。腹部エコー(部区部超音波)は、肝臓、胆のう、胆管、膵臓、腎臓、脾臓、腹部大動脈を見る検査ですが、胃のなかに食べ物があることで、胃の後ろ(背中側)にある膵臓がよく見えないといった問題も起こります。
健康診断前日の食事メニュー
健康診断の前日には、消化が悪いもの・塩分・糖分過多の食事は避けるようにしましょう。避けた方が良いものには、具体的に以下のようなものが挙げられます。固い食材はよく煮込んだり、よく噛んで食べたりすることで消化を助けてくれます。食材によって、食べ方・調理方法を工夫すると良いでしょう。
避けたほうが良い食事
- 脂質の多いもの(例:肉、揚げ物、ラーメン)
- 固く噛み応えのあるもの(例:ゴボウ、レンコン)
- 食物繊維が多いもの(例:キノコ、海藻類)
- 糖分の多いもの(例:ケーキ、お菓子、穀物類)
健康診断前日のお酒、アルコールの飲酒はNG
健康診断の前日の飲酒はNGです。アルコールを摂取すると、肝機能や中性脂肪、血糖、尿酸の検査に影響してしまいます。
お酒を飲むと、アルコール成分は小腸で消化され、肝臓で分解されます。アルコールの分解まで肝臓はフルで動き続けることになり、検査当日に肝機能の数値が上昇してしまう可能性があります。アルコールの分解までにかかる時間は大体以下のとおりです。
缶ビール350ml 1本(Alc 5%) | 2~3時間 |
ワイン 1杯 (Alc 12%) | 2~3時間 |
焼酎 1合 (Alc 25%) | 7~8時間 |
日本酒 1合 (Alc 15%) | 4~5時間 |
上記はあくまで参考値であり、アルコールの分解は年齢・性別で個人差があるため、これより長い方もいます。そのため、健康診断前日の飲酒は基本NGとされています。
仕事で飲み会が多かったり、寝酒が習慣づいている方もなかにはいるかもしれません。しかし、健康診断の前日だけは「休肝日」とし、健康診断に備えましょう。
その他、健康診断前日・当日に気をつけること
健康診断前日・当日には、食事・飲酒以外に、以下5つにも注意しましょう。これらを摂取・行うことで、当日の検査数値に異常が出る恐れがあるためです。具体的にどの検査項目にどう影響するのか、以下から詳しく説明します。
- 脂質・糖分の多い飲み物
- タバコ
- 激しい運動
- 睡眠不足
- 服薬
脂質・糖分の多い飲み物
飲み物でも、糖分・脂質が多いものは取るのを避けた方が良いです。具体例を挙げると、以下の飲み物は前日21時以降から健康診断が終わるまで、取るのは避けると良いでしょう。
【避けたほうが良い飲み物】
- 脂質の多いもの(例:牛乳)
- 糖分の多いもの(例:スポーツドリンク、果実ジュース、野菜ジュース)
- カフェインが多いもの(例:コーヒー、エナジードリンク)
これらは、検査数値(血糖・中性脂肪など)に影響を与える可能性が高い飲み物です。当日は、水・お茶など、糖分・脂質がないものはとっても問題ありません。ただし、「ノンカロリー」「カロリーオフ」と書かれているものでも、微量の糖が含まれていることがあります。特に炭酸飲料、コーヒーに多いため、注意しましょう。
タバコ
タバコは、前日・当日ともに、禁煙するのが望ましいでしょう。なぜならば、タバコを吸うことで、血圧が上がり、血液検査、心電図検査に影響が出る可能性があるからです。ヘビースモーカーの方は、健康診断の一週間前程から徐々に本数を減らすなど工夫をし、特に当日は健康診断後まで我慢するようにしましょう。
運動
前日・当日に、激しい運動をするのは、避けましょう。激しい運動をすることで、肝機能の数値が高まり、誤って異常が検出されることがあるためです。特に、日頃から運動不足になっている方は、軽い運動をしただけでも肝機能の異常として数値が出る可能性があります。健康診断の数値をよくするため、良かれと思って運動をすると逆効果なので、注意しましょう。
睡眠
健康診断の前日は、充分な睡眠をとるようにしましょう。睡眠不足だと、血液検査や尿検査に影響する可能性があります。食事も前日21時までにとる必要がありますので、健康診断前日は、仕事は定時で切り上げ、家事も簡単に済ませるのが良いでしょう。
なかには、いつもと違う時間に寝ようとすると、逆に眠れなくなってしまう方もいるかもしれません。その場合、自分にとってベストな睡眠時間であれば問題ないため、自分の体内時計に沿った時間に睡眠をとって問題ありません。
服薬
高血圧、心臓疾患、精神安定剤、喘息のお薬を服用中の方は、服用して構いません。一方、糖尿病薬や花粉症薬、サプリメントは、前日・当日の服用は控えた方が良いです。いずれも、自己判断ではなく処方を受けているかかりつけ医に事前に相談することをおすすめします。また前日・当日に服用した薬がある場合、健診センターに漏れなく申告するようにしましょう。
バリウム検査がある場合
バリウム検査がある場合は、健診センターから指示が無くとも検査の10時間前までに、食事を済ませてください。また、水分摂取も検査の2時間前までに済ませ、喫煙も避けましょう。
バリウム(胃透視)検査とは、食道・胃・十二指腸の粘膜の状態を見る検査です。検査フローは、まずバリウム、次に炭酸水を飲み、発砲させたバリウムが食道~胃を流れる様子をレントゲン撮影します。このような検査方法のため、胃に内容物があると、レントゲンで食べ物が邪魔してしまい、後日再検査となる可能性があります。
タバコは、喫煙によって胃が活発に動くようになってしまうため、避けた方が良いとされています。胃が活発に動くことで、バリウムが流れる速度が早くなり、レントゲンで正しく照射出来なくなってしまいます。
健康診断の前日の過ごし方でよくある質問
ここまで、健康診断前日・当日に注意すべき飲食物・行動について説明してきました。しかし、前述で伝えきれていない、要注意ポイントはまだあります。例えば、コーヒー・お菓子・ヨーグルトも、前日21時以降はとるのを避けた方が良いものです。
以下から「よくある質問」として、見落としがちな注意ポイントを説明します。
健康診断前日にコーヒーは飲んで良い?
コーヒーはなるべく避けましょう。胃カメラが検査項目にある場合、コーヒーのように色のついた飲み物は、検査の妨げになる場合があるためです。また、カフェインにより交感神経が優位になり、血圧・心泊数が上がる可能性もあります。
健康診断前日にヨーグルトは食べて良い?
ヨーグルトも、胃カメラ検査の妨げになる恐れがあります。ヨーグルトなどの乳製品は、胃の粘膜を保護すると言われており、これが胃の粘膜を検査する胃カメラに影響する可能性があります。検査当日に避けるだけでよく、前日21時までは食べて問題ありません。
健康診断前日にお菓子は食べて良い?
検査前日からなるべく、お菓子を食べない方が良いです。これはお菓子には、多くの糖分・脂質が含まれているためで、血液検査(血糖・中性脂肪など)に影響する可能性が高いです。
油の多いポテトチップスはもちろんのこと、当日健診に向かう際、ガム・タブレットも口にするのはやめましょう。
健康診断前日に筋トレをしても良い?
筋トレも、健康診断前日はお休みしましょう。前述でご紹介の通り、激しい運動は肝機能の数値に影響する可能性があります。前日だけジョギングやトレーニング全般はお休みし、健康診断後に再開してください。
生理中でも健康診断は受けられる?
生理中だと、子宮がん検診・尿検査が受けられません。尿検査は、血液が混入すると潜血反応が出てしまい、膀胱炎や、結石、腎臓の病気などの病気を見過ごす可能性があります。上記以外の検査項目は受けられますが、後日検査の二度手間を省くため、健康診断日が生理予定日とかぶっている場合、日程変更をする方が良いでしょう。
健康診断健康診断の服装の注意点とポイントとは?
健康診断の服装で男女共通で注意すべきポイントをまとめると、以下のとおりです。
- ボタンや金具、プラスチック、プリントのついた服はNG
- 着脱が多いので、脱ぎ着がしやすい服装がおすすめ
- タートルネック・スキニーパンツ・ブラトップなどタイトな服は避ける
- 時計・アクセサリー類は事前に外し、ロッカーにしまう
詳しくはこちらの記事で解説しています。
関連記事:健康診断の服装の注意点とポイントとは?男性・女性別に解説
健康診断は前日から備えよう
健康診断の前日は、検査で正しい数値を測定するため、食事制限・禁煙・禁酒が必要です。食事制限には、前日の夕食を糖質・脂質が少ないものにすること、食事は21時までで、当日の飲食は健康診断後までとらないといったことが挙げられます。(当日は、お茶・水のみ可)
バリウム・胃カメラを受診する方は、胃に内容物があると邪魔してしまい診断が出来ません。特に食事面に注意して当日に備え、より有益な健康診断になるようにしましょう。