もみじは、秋の季語として俳句で使われるほど、昔から身近に感じられる樹木のひとつです。そんなもみじの剪定について「1人で剪定する自信がない」「枯らしてしまったらどうしよう」といった悩みを抱えている方もいるでしょう。このコラムでは、もみじを剪定する際の正しい剪定時期から、方法や必要な道具、失敗した時の対処まで詳しく解説します。
もみじの基礎知識
もみじの剪定の仕方の前に、まずは、もみじについての特徴や育て方、害虫対策について解説していきます。
もみじの特徴
もみじは、ムクロジ科カエデ属の落葉高木で、1枚の葉が6~7枚に分かれているのが特徴です。似たような植物にカエデがあり、もみじとカエデは同じカテゴリの植物になります。カエデはもみじを含めた同じ仲間の総称ですが、昔からの慣例として「葉の切れ込みの深いのがもみじ」「葉の切れ込みの浅いのはカエデ」とされているようです。
もみじは、大きく分けると「イロハモミジ」「ヤマモミジ」「オオモミジ」の3種類があります。一般的に庭木として、流通しているもみじで最も多いのは、イロハモミジです。
もみじのライフサイクル
以下がもみじのライフサイクルになります。
- 新芽が3月頃から動き出して、暖かくなると旺盛に展開する
- 4月中旬~5月上旬、たくさんの赤く小さい花が開花する
- 11月頃、プロペラのような形のタネを付ける
- 11月下旬頃、紅葉した後、葉をすべて落として休眠する
もみじの休眠期間は短く、1月頃には樹液が動き出すのですが、外から見ただけでは違いが分かりません。もみじは、一度根付けば、長い期間楽しめる植物といえます。
もみじの基本的な育て方
地植えのもみじは、半日陰で栽培するようにしましょう。もみじは基本的に日当たりの良い場所を好みます。しかし、強い日差しが葉に当たると、茶色く変色することがあるのです。
そのため、1日のうち数時間ほど木がお日様に当たる場所を選びましょう。鉢植えなどで栽培する時には、夏の時期は葉焼けを避けるため半日陰の場所に置き、冬の時期は枝を保護するのに軒下、または風や霜が当たりにくい場所で太陽光にたくさん当てて冬を越します。
また、もみじは水分を好むため水やりが必要です。地植えの場合は、根付いてしまえば日照り続きで土が乾燥する以外は、特に水やりは必要ありません。鉢植えの水やりは、夏は朝と夕方の1日2回、冬は土が乾燥していたら行います。
気をつけたい害虫
もみじが密集して風通しや日当たりが悪くなると、多湿な環境を好む害虫が発生しやすくなります。害虫には、カイガラムシやアブラムシ、ハダニ、ケムシなどが挙げられます。
放っておくと、もみじが弱る原因になるため、見つけた時点で薬剤などを使用して駆除しましょう。害虫の中でもカイガラムシやアブラムシは、樹液を吸い取ってもみじの生育を妨げる原因になるので、注意が必要です。
もみじの剪定に適した時期
もみじは、時期によって剪定の度合いを変えることが大切です。基本的に冬場は強めの剪定、夏場は軽めの剪定になります。以下では、もみじの剪定に適した時期について理由とともに解説します。
冬場
もみじを剪定するのに適した時期は11~2月の、落葉して休眠期に入る秋から冬にかけてです。3月に入ると、もみじは休眠から徐々に目覚めるため、遅くても2月中に終えるのが理想といえます。
もみじが休眠期に入り葉がない状態では、枝ぶりが見えやすくなり剪定後の木の形をイメージしながら切る枝を決められます。もみじは3月になると新芽が出始め、10月頃まで養分を蓄えるのが一般定なため、春から秋に樹形を変えたり太い枝を切ったりするような大がかりな剪定は、木へのダメージも大きくおすすめしません。
夏場
もみじの枝が混み合っている場合は、6~7月上旬の夏前に軽めの剪定をします。葉や枝の量が多過ぎると内側まで太陽の陽が届かなくなり、枯れる原因になってしまうので、枝葉を軽く切る「透かし剪定」という方法で行いましょう。
この時期の剪定は、大胆に剪定せず枝を整える程度に留めることが重要です。目的としては、太陽の光を幹の内部まで届かせることのため、太い枝から出る細かい枝を切ってスッキリさせるくらいにしておきましょう。
もみじの剪定に必要な道具
ここでは、もみじの剪定に必要な道具についてご紹介していきます。用意しておくと良い道具には以下のようなものがあります。
- 軍手
- 脚立
- 剪定バサミ
- 癒合剤
- 竹ぼうき
- ゴミ袋
基本的にもみじは、剪定バサミを使用しなくても剪定が可能です。細い枝や新枝の葉をすいたり折ったりするだけの場合、軍手だけあれば素手でも充分でしょう。もみじは繊細な植物のため、剪定バサミを使うとかえって傷付けてしまう原因にもなりえます。
しかし、手で折れないような太い枝がある時は剪定バサミを使い、同時に切り口に癒合剤も塗って保護するようにしましょう。そして、高さのあるもみじを剪定する場合は、脚立があると便利です。最後に、剪定した後は大量のゴミが出るので、竹ぼうきやゴミ袋などを準備しておくことをおすすめします。
もみじの剪定方法
ここでは、もみじの正しい剪定について、目的別に剪定方法をご紹介していきます。
樹形を保つ剪定方法
もみじの樹形を保つための剪定方法としては、重なっている枝をすくように切って、隙間を作ることを意識して行いましょう。少し太い枝を残して、そこから出ている細い枝で、形を整えるように剪定をします。枝同士の隙間をあけて、もみじの枝が生長する夏の時期に備えることが大切です。
大きさを保つ剪定方法
大きさを保つためには、切り戻し剪定という方法で行っていきましょう。枝の分岐点を探して、長い枝を元から切り落としていきます。その際、枝の切り口には、癒合剤を塗るなどして保護するようにします。この剪定を毎年行うことで、もみじの大きさを保つことが可能になるでしょう。
鉢植えや盆栽の剪定方法
鉢植えや盆栽の剪定をする時は、基本的に「葉透かし」「葉刈り」「葉切り」をする場合が多いです。葉透かしは、もみじ内部の通気性を高くすることが目的のため、大きく重なった葉や枝を切ります。
葉刈りは、盆栽などの大きさを小さく整えたり、小さい枝を増やしたりします。葉の根本をハサミで切る程度で良いでしょう。葉切りは、葉刈りが行えないほど老いた盆栽などにする剪定方法で、葉の先端を切るだけで終了です。
葉透かしと葉切りをセットで行うことで、効率良く太陽の光を得られるでしょう。
もみじの剪定における失敗例と対処法
もみじの剪定をするうえで起こりうるトラブルと、その対処法についてご紹介します。
もみじの暴れが起こる
夏の生長する時期に大きく剪定してしまうと、反動により勢い良く生長する「暴れ」が起こってしまうのです。木を低くしようと枝や幹を、豪快に一気に短く切ってしまうのが主な原因といわれています。
剪定する時期と方法には充分気を付ける必要があります。暴れが起こったもみじの木は、冬の時期まで待って強剪定を行いましょう。暴れが起こるのは木に強い刺激が加えられたことが原因のため、刺激を与えないように少しずつ時間を掛けて小さくしていくことを前提に、まずは乱れてしまった木の形を整えてください。
もみじが枯れる
もみじは、剪定する量の不足や剪定を怠ると、木が弱って枯れてしまいます。剪定量が不足すると、日光が隅々まで当たらなかったり、通気性が悪くなったり、さらには栄養が足りなくなったりすることがあります。
剪定は、植物を育てるうえでとても大切な作業です。そのため、適切な時期にしっかりと剪定することを心掛けましょう。その他の原因として、水不足も挙げられます。地植えであれば、特に問題はありませんが、盆栽や鉢植えなどで育てている場合は、水やりの量も意識すると良いでしょう。
もみじの剪定におけるポイント
ここでは、もみじを剪定する際のポイントについて解説していきます。
下から見上げて仕上がりを確認する
もみじを剪定する時は、ときどき下から木全体を見上げて仕上がりを確認することが大切です。葉の空き具合や枝の流れを、客観的に見ることができるので、自然で違和感のない樹形に整えられるでしょう。
互い違いになるように剪定する
もみじの木は、葉や枝が対になって生えてくる対生の性質を持つ樹木です。生育には、対生のままでも問題はありません。
しかし、より自然で整っている樹形にしたいのであれば、互い違いの形に剪定するのがポイントです。互い違いの形にすると葉や枝の数を減らせるので、見た目もスッキリするといったメリットもあります。
剪定後に癒合剤を塗る
太い枝を切った場合は、切り口に癒合剤を塗るようにしましょう。癒合剤は、切り口から養分や水分が逃げ出すのを防ぐ以外に、雨や雑菌などが侵入するのも防ぎます。
また、切り口を保護して治癒を早めてくれる効果もあるのです。癒合剤は、剪定後の切り口を雑菌などから守り、治りを早くするために重要なアイテムといえます。
できるだけ手で剪定する
もみじの剪定は、できるだけ手で行うようにすると良いでしょう。もみじは、とても繊細な植物のため、刃物が苦手です。なるべく刃物は使用せずに剪定を行うことをおすすめしますが、太めの枝などどうしても手で剪定できない場合には、剪定バサミを利用しましょう。
適した剪定時期を守る
もみじの剪定のポイントとして、剪定するのに適した時期を意識することが大切です。特にもみじが活動し始める2月以降に剪定を行ってしまうと、切り口から水分が出て枯れる原因になります。また、7月の暑い時期の剪定も、もみじが弱ってしまうため、避けるようにしましょう。
剪定以外に必要なもみじの手入れ
剪定以外に必要なもみじのお手入れについてもご紹介していきましょう。
水やりや施肥
もみじはデリケートな植物ですが、剪定以外に水やりと施肥をしっかりと行っていけば神経質になる必要はないでしょう。
水やりは地植えと鉢植えともに土が乾燥した場合に必要です。鉢植えに関しては、夏場の水やりも忘れてはいけません。施肥は長くゆるく効果が続く緩効性肥料、もしくは、浸透性や保湿性が良くなる有機質肥料を使用します。地植えは株のまわりに溝を作り肥料を埋め、鉢植えの場合は、土の表面に肥料を施しましょう。
株立ち
株立ちは、根本でつながっている数本の細い幹から育成する栽培方法です。大きなひとつの幹から育てるわけではないため、もみじが大きくなり過ぎないよう抑えることができ、一般家庭の庭でも比較的管理をしやすくなるでしょう。
剪定は、根本のほうから余分な枝を切り落とすことや、絡まりを直すといった方法で行います。
芽摘み
もみじのお手入れの中で、芽摘みも忘れずに行いましょう。もみじの新芽は、4月頃から柔らかくなります。そのタイミングで、芽摘みをします。ピンセットなどを使い、ひとつの芽のみ残してあとは全て摘み取っていきましょう。
葉刈り
葉のサイズを揃えるために行うのが葉刈りです。一対のもみじの葉の片方を切り取るか、もしくは半分の大きさになるよう切って風通しを良くします。
葉刈りをした後、二番芽は葉の大きさが同じになり、紅葉するとさらに美しくなるのです。葉刈りの際は、1ヵ月ほど前から必ず肥料を与えて樹勢を付けておくようにします。肥料を与えないと、樹木が弱り二番芽が生えてこなくなるため、注意しましょう。
7病害虫の予防
もみじの木には、アブラムシやカイガラムシなどの害虫が発生したり、うどんこ病や黒紋病といった病気にかかったりすることがあります。早期発見できれば、薬剤などを散布して菌の繁殖を抑えることができます。害虫の場合は、剪定を適切な時期に行い、風通しや水はけの良い環境を整えることが大切です。
もみじの剪定をプロに依頼するという手も
もみじの剪定には気にするポイントがいくつかあり、ご自身で剪定できる自信がない場合は、プロに依頼するという手もあるでしょう。
プロに任せるメリットとしては、豊富な知識や経験を持った職人であれば、短時間で剪定を終えられるため、ご自身で作業するよりも早いことが挙げられます。また、仕上がりの美しさや万が一の怪我の防止もできるので、プロに依頼するのもおすすめです。
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おわりに
もみじの剪定についてご紹介しました。もみじはとにかくデリケートな植物のため、弱らないためには適した剪定時期を守ることや、なるべく刃物は使用せず手で剪定を行うといったポイントなどを意識することが大切です。難しい場合は、プロに依頼してきれいなもみじを維持するのも良いでしょう。お伝えした点をふまえてご自身の手で、正しい剪定を施し心ゆくまま、もみじを楽しんでみてはいかがでしょうか。