秋になるとオレンジ色の果実を豊富に実らせる柿の木。そんな柿の木を見て秋の訪れを感じる方も多いのではないでしょうか。木の健康を保ち、美味しい柿の実を付けるためには、木の剪定をしっかり行う必要があります。このコラムでは、柿の木の剪定についてご紹介していきます。「柿の実を美味しく食べたい」「柿の木の健康を保ちたい」と考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
柿の木の基礎知識
柿の剪定についてご紹介する前に、まずは、柿の木の基礎知識について解説していきましょう。
柿の木の特徴
柿の木は東アジア原産の落葉樹で、日本では食用として栽培され、長い間国民に親しまれています。柿の品種は1000種類以上にも及び、種類は甘柿・渋柿・不完全甘柿の3タイプに分けられます。甘柿の中では富有柿(ふゆがき)、次郎柿(じろうがき)、太秋柿(たいしゅうがき)などが人気のある品種です。
そのまま食べることができない渋柿は、炭酸ガスやアルコールで渋抜きをするか、干し柿などに加工する必要があります。不完全甘柿は、別名ゴマ柿とも呼ばれ種のまわりに黒い斑点ができるのが特徴的な品種です。
柿の木の成長
柿の木も一般的な他の樹木同様に、真っ直ぐ上に成長していきます。その一方で日光に当たりにくい場所の枝は枯死(こし)してしまうといった特徴を持つため、木全体は徐々に高く成長しながらも下の枝がどんどん枯れていくといった現象が起こるのです。
柿の木は1年に約15cmずつ大きくなっていくとされているので、柿の実ができるまで育てていくとそれなりの大きさになると予想できるでしょう。柿の木は5~7年経った頃から実がなり始めるとされています。
柿の木のお手入れ方法
日頃行う柿の木の基本的なお手入れ方法としては、水やり・肥料・置き場所・植え付けの4つが挙げられます。これらのお手入れは、柿の木が庭植えまたは鉢植えにかによって多少方法が異なるため、ご自身の育てる方向性に合わせて行いましょう。
柿の木を剪定する目的
柿の木に限らず、どの樹木も剪定は必要になりますが、柿の木の剪定にはいくつかの目的があります。ここでは、柿の木を剪定する目的について解説していきましょう。
樹形の調整
柿の木は、真っ直ぐ上に伸びていくという特徴があるので、管理をしやすくするためにも剪定を行って樹形を整えておく必要があるでしょう。また、剪定をして樹形の調整をすることで、実の収穫や害虫を予防するための農薬散布が楽になるといったメリットもあります。
枝の調整
伸びきった柿の幹は、重なり合って枝の密度が高くなり過ぎると、木の内側まで日が当たらなくなってしまいます。
そうなることで、柿の実の付き方が悪くなったり、柿の実に傷が付いたりする場合があります。剪定によって枝の密度を下げられれば、効率良く柿が成長することにつながり、きれいな果実を収穫できるのです。
果実の数の調整
柿の木は、果実が実り過ぎてしまうと一つひとつの果実に充分な養分が行き渡らなくなります。そのため、剪定を行って果実の数を調整する必要があるでしょう。剪定によって果実の数を調整することで、果実ひとつずつに行き渡る養分が増え、さらにはサイズも大きくなるといった恩恵も受けられるのです。
柿の木を剪定するおすすめの時期
柿の木の芽は5月頃から付き始め、10~11月頃に果実の収穫となるため、5~10月に柿の木の剪定を行うことはできません。剪定は柿の花が咲いていない収穫後の12~3月に行いましょう。木がこの時期に休眠に入るため、剪定をしても樹木の成長に影響を及ぼすことがないとされています。
また、柿の剪定は基本的に冬の時期に行いますが、6~7月の夏の時期も日当たりが悪くなっている場所の葉や枝を取り除くための剪定を行う場合があります。あくまでも最低限のお手入れのため、風通しや採光を良くする程度に抑えることが大切です。
柿の木の剪定に必要な道具
柿の木の剪定に必要な道具には、高い場所の枝を切るための脚立や手を保護するための手袋以外に欠かせない剪定道具があります。ここではそれぞれの道具の用途についてご紹介していきましょう。
剪定バサミ
剪定バサミは、不要な枝を剪定する時に使用する道具です。少ない力で切ることができ、切れ味も良く細かい作業に向いています。2cmほどある少し太めの枝でも、問題なく切ることができるでしょう。サイズ違いの剪定バサミもあるため、ご自身の手の大きさに合わせて選ぶのがおすすめです。
剪定用ノコギリ
成長して太さも硬さもある柿の木の枝を切る作業は、大変であり重労働といえるでしょう。3~7cmほどまで成長した枝を切る場合は、剪定用ノコギリを使用することをおすすめします。剪定用ノコギリには、折りたたみ式や長さを伸ばせるタイプなどさまざまあるため、ご自身に合ったものを選ぶようにしましょう。
癒合材
剪定後は木の切断面を保護するためのアイテムが必要です。なぜなら、柿の木を剪定した後に切断した部分をそのままにしておくと、病気になってしまう可能性があるからです。
また、枝抜き跡に残った傷を早く癒すためにも、癒合材という薬を塗る作業が大切です。癒合材は、切断面にフタをするような感覚で、多めに塗りましょう。癒合材を使用するとダメージを癒す植物細胞のカルスの形成が促進されます。カルスは、木のダメージを軽減してくれるので、さまざまなトラブル回避を可能にするのです。
柿の木を剪定する時の枝の切り方
枝分かれしてどの部分を切れば良いのか分からない場合には、枝の表面のうち新しく枝が伸び始めている場所のすぐ上の部分を切りましょう。
切り方は、枝の向きに対してほぼ垂直になるようにします。斜めに切ってしまうと柿の木に悪影響を及ぼす場合もあるため、切り方は間違えないよう注意が必要です。また伸ばしたい枝によって、枝の根元部分を切るのか、先端部分を切るのかが変わってきます。
柿の木の剪定には、透かし剪定と切り戻し剪定の2種類あることを覚えておくと良いでしょう。
透かし剪定
枝の根元を切る方法が透かし剪定です。太い枝が2つに分かれている場合、片方の根本部分を切ることで、残った枝の方に養分が行き渡ります。
切り戻し剪定
枝の先を切る方法が切り戻し剪定です。切り落とした部分には、花芽や果実が付くことはありませんが、根元から切断部分までの範囲で枝分かれしている枝は成長しやすくなります。
柿の木の剪定方法
ここからは、柿の木の剪定方法について解説していきます。注意する点としては、苗を植えてからある程度木が成長するまでの若木(わかぎ)、そして成熟している成木(せいぼく)とでは、剪定の手順が変わるということです。
若木の場合
幼木の段階では、木の成長を優先するため剪定は控えめにし、若木の段階から少しずつ剪定を始めていきます。
幹から伸びている主枝と呼ばれる太い枝は、2~3本だけ残すようにして切りましょう。主枝は斜めもしくは横向きに生えているものを残すようにして、上に向かって伸びている主枝は切り落とします。
成長した時に葉や枝が混み合う原因になるのを防ぐため、主枝は30~50cmほどの間隔になるように切るのが良いでしょう。主枝同士の間隔が狭過ぎる場合は、切り落とすようにします。
また、他の枝の成長を妨げる可能性がある場合や、枯れている枝や内側または下に向かって生えている枝がある場合も切る必要があります。そして、柿の木が成長して5mほどの高さになってきたら幹を切りましょう。この時点で木の主幹を切ると、横方向に木が伸びていくようになります。
成木の場合
若木の段階では控えていた剪定作業を、成木になってからは積極的に行っていくようにします。成木に成長してからは、毎年の剪定が必要となります。
枝分かれが徐々に進むため、定期的な剪定を行わないと1度にする作業量が毎年増えてしまい、大変になるからです。基本的に成木は枝の先端を切ること、不要な枝を取り除いて木全体の風通しを良くすることが主な作業となります。
また、枝の先端には実がなるため、どの枝を残してどの枝を切るのか、決めてから剪定すると良いでしょう。翌年に新芽が生えてきやすくするため、枝には垂直にハサミを入れるようにします。
葉や枝が混み合っている場所は、木全体のバランスを見ながら、要らない枝を根元から切り落としていきましょう。この時、切り口が斜めにならないよう注意が必要です。害虫や枯れた枝がある場合も、忘れずに根元から切り落とします。
柿の木を剪定する際のポイント
柿の木は、伸び過ぎた枝ならどれでも剪定して良いわけではありません。切る枝と残す枝の見極めなどが重要になります。ここでは、柿の木を上手に剪定するためのポイントについて解説していきましょう。
上向きの枝や春に育った結果枝を残す
結果枝とは、その年に実のなる枝のことです。柿の木は、上向きの枝や春に育った結果枝を残すようにして剪定します。剪定する時は、下向きに垂れている枝や古くなった枝を選んで積極的に切るようにしましょう。
目安として柿の木は、実が付くと重みで枝が垂れ下がるので、上向きの枝を残して切るのがポイントです。また、春と違い秋に実を付けた結果枝は、次の年に実がならないため切り落とすことを覚えておきましょう。
毎年行う
柿の木の剪定は、「毎年行う」ということがポイントのひとつです。柿の成木は、木が充分に熟しているため、剪定を控える必要がありません。
それどころか、伸びきって太くなってしまった柿の枝を剪定するには、ノコギリを使用しなくてはならなくなるでしょう。多くの労力を必要とするので、剪定を少しでも楽にするため、毎年欠かさず剪定を行うことをおすすめします。
切りすぎない
柿の木は、その年の春に伸びた枝に、翌年実を付けるので切らずに残しましょう。前年に伸びた枝から新しい枝が伸びて、蕾を付け花を咲かせ、実になります。そのため、前年に伸びた枝をすぐに切ってしまうと、実がならないといった可能性もあり、注意が必要です。
切り口は真っ直ぐに
柿の木に悪影響を及ぼす場合があるため、切り口は真っ直ぐになるよう意識しましょう。なぜなら、枝を斜めに切ることで、断面が大きくなった切り口部分から害虫や雑菌が侵入しやすくなってしまうからです。
また、斜めに大きく切ると木の負担になるだけでなく、見た目も悪くなるので切り口が真っ直ぐになるように切りましょう。
実を残しすぎない
柿の木の実を残しすぎないこともポイントのひとつでしょう。実の数が多いと柿1個1個に充分な養分が行き渡らなくなってしまいます。そのため、柿の実が多くなりすぎてしまっている場合には、もったいないと思わず、減らすことも必要な作業です。
不安な時は専門会社に依頼する
柿の木の剪定は、いくつかポイントを押さえて行う必要があります。そのため、初心者が剪定する場合、不安なことも多いでしょう。また、長年放置していた柿の木の剪定は、慣れている方でも難しい場合があります。そういった時には、専門会社に依頼するのもおすすめです。
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美味しい柿を収穫するために行う剪定以外の作業とは?
ここでは、美味しい柿を収穫するために行う剪定以外の作業についてご紹介していきます。
摘蕾(てきらい)
摘蕾とは、余分な蕾を取り除く作業のことです。蕾も実と同様に、数が多いと蕾一つひとつに充分な養分が行き渡らなくなるため、蕾を取り除く作業が必要になります。枝の先端部分に蕾を4つほど残し、残りは手で摘み取っていきましょう。4~5月の蕾が大きくなる頃に作業を行うのが適しています。
摘果(てきか)
摘果とは、柿の実を取り除く作業のことです。行う理由は摘蕾と同じですが、実がなった直後に行うのは避けましょう。柿の木は、木自体が実の数を調整することができるため、多くなると自然と実を落とします。様子を見ながら実がなった後の、6~8月にかけて作業を行いましょう。
施肥
定期的に肥料を与えるのも、柿の木にとって大切な作業のひとつでしょう。肥料を与える時期は、7月上旬頃と9月上旬頃がおすすめです。昨年は柿が実ったのに、今年はならないといった場合には、肥料を与えることで改善される可能性が高くなります。
おわりに
柿の木の剪定についてご紹介しました。秋に美味しく実った柿の木を楽しみたいのであれば、剪定は欠かせないお手入れといえます。切る枝の見極めや切り方などのポイントを参考に、ご自身で剪定してみるのもおすすめです。
しかし、長い間放置してしまった柿の木の剪定を考えている場合や初心者で剪定に不安があるといった場合には、専門会社に依頼する方法もあります。柿の木を健康な状態に保ち、美味しい柿を楽しむためにもご自身に合った方法で剪定に挑戦してみてください。