不動産を取得した場合には不動産取得税を納める必要がありますが、条件次第で不動産取得税にかかる負担を減らす軽減措置があることをご存知でしょうか。
今回は、不動産を取得する予定がある方に向けて、知っておくべき軽減措置について解説します。すでに不動産を取得したという方も還付される可能性があるため、この機会に軽減措置の条件を満たすかどうか確認しましょう。
この記事のまとめ
不動産取得税は、住宅や土地に課せられる地方税です。取得する不動産の金額が大きければ大きいほど、不動産取得税も大きくなってしまいますが、条件次第では不動産取得税の負担を軽くする軽減措置が受けられます。軽減措置を受ける条件は、新築・中古・土地・マンションでそれぞれ異なります。
また、期日内での申請が必要です。もし申請し忘れて不動産取得税を払い過ぎている場合でも、不動産取得から5年以内であれば申請・還付を受けられます。そもそも不動産取得税が非課税となるケースもあるため、取得した不動産がどのような控除を受けられるのか、確認しておきましょう。
不動産取得税は不動産取得時に課せられる地方税
不動産取得税とはどのような税金なのか、確認しておきましょう。
不動産取得税とは
不動産所得税とは、住宅や土地を購入・取得した方に課せられる地方税のことです。課税は土地のみ・戸建て・マンション・新築・中古にかかわらず、すべての不動産が対象となり、有償・無償・登記の有無も関係なくかかります。
不動産を取得した場合、都道府県に不動産取得申請を行う必要があります。申請後に都道府県より送られてくるのが、納税通知書です。納税通知書に記載してある金額を、期日に従って支払いましょう。
不動産取得税は、土地や建物といった不動産を取得した時点で一度だけ支払うもので、毎年定期的に支払うわけではありません。また取得した不動産が経営目的などの個人利用しない場合でも、課税対象となります。個人・法人関係なくすべての方が対象なので、注意しておく必要があるでしょう。
マイホーム購入時は、不動産取得税以外にも印紙税や登録免許税がかかります。そのほか、不動産を所有すると、「固定資産税」「都市計画税」が課税されます。これらは毎年支払いの義務が生じるため、混同しないように気をつけて下さい。
不動産取得税の計算法
不動産取得税は「固定資産税評価額×税率」で算出できます。注意したいのは、不動産の価格ではなく、固定資産税評価額に税率をかけるということです。
2021年4月以降の不動産取得税の税率は4%です。しかし2024年3月31日を迎えるまでに取得した住宅や土地については、3%に引き下げられる軽減措置がとられています。一方で企業や学校の寮、ホテル、病院、有料老人ホームなどは軽減措置の対象外となるので注意しましょう。
固定資産税評価額とは?
固定資産税評価額は、自治体から送付される固定資産税評価明細書で確認できます。もしくは、取得した不動産のある都道府県の税務署や役所に保管された、固定資産課税台帳でも確認可能です。
固定資産税評価額は、不動産価格の70%程度が目安とされます。物件購入前におおよその課税額を知りたい場合は、物件価格×0.7でおおよその固定資産税評価額を調べられるでしょう。
参照元:土地・不動産・建設業:主な公的土地評価一覧 – 国土交通省
【新築住宅を購入】不動産取得税は軽減できる?
上記の方法で不動産取得税を算出すると高額となってしまいますが、不動産取得税は、軽減措置を受けられるケースがあります。中には、軽減措置の適用で不動産取得税が0円になるケースもあるのです。
建物・土地それぞれに控除はありますが、条件は異なります。中古か新築かによっても条件が違うため、まずは新築住宅の場合から説明しましょう。
建物に対する控除
新築の建物を購入した場合、軽減措置の適用には2つの条件があります。
1.課税床面積が50平方メートル以上240平方メートル以下
(賃貸住宅の場合は40平方メートル以上240平方メートル以下)
2.個人の居住を目的とした住宅
新築の場合、上記2つの条件を満たせば、建物部分の固定資産税評価額から1,200万円の控除を受けられます。建物にかかる固定資産税評価額が1,200万円より下なら、不動産取得税はかかりません。
固定資産税評価額が1,200万円を超えた場合は、軽減措置の有無で支払いに大きな差が生まれます。
例えば、固定資産税評価額が1,400万円の場合で考えてみましょう。
【軽減措置を受けなかった場合】
1,400万円×3%=420,000円
【軽減措置を受けた場合】
(1,400万円-1,200万円)×3%=60,000円
軽減措置を受けると受けないでは、金額に大きな差が生じます。
認定長期優良住宅の場合は1,300万円控除される
認定長期優良住宅の場合、控除額が1,300万円に増額されます。認定長期優良住宅は、耐震性や住宅環境などの様々な条件を満たし、機能が優れた住宅のことをいいます。
申請が必要ですが、控除額が1,300万円に増額される以外にも、登録免許税や固定資産税などにも控除が適用されるため、負担軽減に大きなメリットがあります。
土地に対する控除
土地に対する控除額は、固定資産税の評価額が1/2になるもの、軽減額が控除になるものの2つがあり、これらは併用可能です。
ただし、固定資産税の評価額が1/2になるのは、2024年3月31日までに取得した固定資産のみです。
土地の不動産取得税額は、(土地の固定資産税評価額×1/2)×3%-軽減額で算出します。軽減措置が適用となる新築住宅の土地の条件は以下のとおりです。
- 建てられた住宅が、建物の軽減条件を満たしている
- 住宅よりも土地を先に購入した場合、取得3年以内に建物を建てること
- 建物の建築が先行している場合は、その土地を1年以内に取得すること
軽減額は、以下の1と2のどちらか高い方が適用されます。
- 45,000円
- (土地1平方メートル当たりの固定資産税評価額×1/2)×(200平方メートルまでの課税床面積×2)×3%
例えば土地面積が200平方メートルで住宅床面積が150平方メートル、土地の固定資産税評価額が1,500万円だったとしましょう。
まずは土地1平方メートル当たりの評価額を求めます。
固定資産税評価額(1,500万円×1/2)÷土地面積200平方メートル=37,000円(1,000円未満切り捨て)
土地の評価額がわかれば、軽減額を算出できます。
37,000円(土地1平方メートル当たりの評価額)×200(住宅の床面積150平方メートル×2=300平方メートルになるので200平方メートルとする)×3%=222,000円(100円未満)
この場合45,000円よりも高い額となるため、今回の軽減額の計算では222,000円が採用されます。
【軽減措置を受けなかった場合】
1,500万円×1/2×3%=225,000円
【軽減措置を受けた場合】
1,500万円×1/2×3%-222,000円=3,000円
このように、軽減措置を受けることがいかにお得かがわかります。
【中古戸建を購入】不動産取得税は軽減できる?
中古住宅の場合でも、不動産取得税の軽減措置は受けられます。
建物に対する控除
中古住宅の場合は、1982年以降に建築されたことなど、新築よりも条件が多くなるのが特徴です。
中古住宅の控除額は建物を建てた日に応じて変わり、それぞれの控除額を計算式に当てはめることで不動産取得税を算出できます。
建物を建てた日 | 控除額 |
1954年7月1日~1963年12月31日 | 100万円 |
1964年1月1日~1972年12月31日 | 150万円 |
1973年1月1日~1975年12月31日 | 230万円 |
1976年1月1日~1981年6月30日 | 350万円 |
1981年7月1日~1985年6月30日 | 420万円 |
1985年7月1日~1989年3月31日 | 450万円 |
1989年4月1日~1997年3月31日 | 1,000万円 |
1997年4月1日~ | 1,200万円 |
中古住宅の建物の不動産取得税は、(固定資産税評価額-建物の控除額)×税率3%で算出できます。固定資産税評価額が1,000万円、新築された日が1990年の場合で計算してみましょう。
【軽減措置を受けなかった場合】
1,000万円×3%=300,000円
【軽減措置を受けた場合】
(1,000万円-控除額1,000万円)×3%=0円
つまり、この場合の不動産取得税はかかりません。新築の建物より条件は多いですが、条件を満たしている場合はかなり負担が軽減されます。
土地に対する控除
中古の土地の控除の条件や軽減額の決め方は、新築の土地と同様です。
まず、2021年3月31日までの取得であれば固定資産税の評価額が1/2になります。さらに以下2種類の内、金額が高い方を控除額として適用可能です。
- 45,000円
- (土地1平方メートル当たりの固定資産税評価額×1/2)×(200平方メートルまでの課税床面積×2)×3%
マンション購入時にも不動産取得税がかからない場合がある
マンションの購入時にも、不動産取得税がかからないケースがあります。ここでは、マンション取得における軽減措置の条件について解説しましょう。
建物に対する軽減措置
マンションの建物は、新築か中古かで控除内容が異なります。さらに中古物件の場合、耐震基準の適合の有無で内容に差が生じるため、注意が必要です。
【新築マンションの場合】
- 住宅全般に適用(マイホームやセカンドハウス、賃貸マンションなど)
- 床面積50平方メートル(戸建て以外の賃貸住宅は40平方メートル)以上、240平方メートル以下であること
上記の条件を満たせば、1,200万円が固定資産税評価額から控除されます。
【耐震基準に適合した中古マンションの場合】
- 個人が自身の住居用として取得した住宅であること(賃貸マンションは適用外)
- 床面積が50平方メートル以上、240平方メートル以下であること
- 1982年1月1日以降、建築された物件であること。もしくは、新耐震基準への適合が証明された物件であること(調査が物件の取得日前2年以内に終了していることが条件)
上記の条件を満たせば、物件が建てられた時期によって100万円から1,200万円が控除となります。
【耐震基準に適合しない中古マンションの場合】
- 個人がご自身の住居用として取得した住宅であること(賃貸マンションは適用外)
- 床面積が50平方メートル以上、240平方メートル以下であること
- 物件取得から半年以内に「耐震改修工事をする」「工事後に耐震基準に適合している物件であることを証明してもらう」「不動産取得者が工事後その物件に住む」という3つの条件を満たすこと
上記の条件を満たせば、物件が建てられた時期によって30,000円から126,000円の控除があります。
中古物件は建築年が1989年3月31日以前の場合、大幅に控除額が減ります。自治体にもよりますが、耐震基準に適合させるための工事予定がある場合、不動産取得税の納税期間を猶予してもらえることもあります。該当する方は、お住まいの自治体に問合せてみて下さい。
土地に対する軽減措置
軽減額の決め方は戸建住宅と同じです。
- 45,000円
- (土地1平方メートル当たりの固定資産税評価額×1/2)×(200平方メートルまでの課税床面積×住宅の持ち分×2)×3%
マンションの土地については、自身が所有する部屋と共有部分を合わせて、固定資産税評価額が決まります。とはいえ、中古マンションの多くは、土地部分に不動産取得税がかかるケースは少ないでしょう。
軽減措置を受けるときには申請が必要
不動産取得税の負担を軽くしてくれる軽減措置ですが、控除を受けるには申請が必要です。いつまでに申告の必要があるのか、払い過ぎてしまった場合の還付の流れなどについて、解説しましょう。
申請に必要なもの
- 不動産取得申告書
正式名称を不動産取得税課税基準の特例適用申告書といいます。建物と土地、それぞれ用意しましょう。
- 印鑑
申請には印鑑が必要です。実印を用意しておきましょう。
- 不動産取得税の納税通知書
不動産取得税の納税通知書は、不動産の取得から半年~1年が経った頃、都道府県より送られてきます。
- 土地と住宅の売買契約書(住宅引渡証書)
工事完了後に、不動産取得者へ住宅を譲渡する内容が記載された契約書です。登記申告の際にも必要な書類なので、紛失しないよう大切に保管しておきましょう。
- 住宅の登記事項証明書(もしくは登記謄本)
登記簿に記録された登記記録をデータ化した証明書です。登記簿でも代用できます。
いつまでに申請すれば良い?
不動産を取得してから、原則60日以内に申請しましょう。
都道府県から納付書が届いたら、まずは記載の納税額を納めます。その後軽減措置を申請したら、払い過ぎた分の納税額が還付される、という流れです。
仮に軽減措置を申請し忘れたとしても、不動産取得から5年以内であれば申請は受け付けてもらえます。軽減措置について知らなかった、という方は、取得した不動産が軽減措置の適用を満たしている場合、払い過ぎている納税額が還付されるチャンスです。改めて不動産取得税の控除を受けましょう。
そもそも不動産取得税がかからないケース
そもそも、不動産取得税がかからないケースもあります。どんな場合が、非課税の対象になるのでしょうか。
相続によって不動産を取得したとき
不動産を相続で取得した場合、不動産取得税はかかりません。売買・贈与とは違い、形式的な所有権の移動としてみなされるためです。ただし、生前贈与・死因贈与・売却・遺贈によって取得した不動産については、通常の不動産取得税がかかるため、注意しましょう。
学校法人や社会福祉法人が事業用に不動産を取得したとき
学校法人・社会福祉法人などが公益目的で不動産を取得した場合は、不動産取得税が非課税となります。非課税にするためには、不動産取得税非課税申告書を都道府県の税務署へ提出する必要があるため、忘れないように申告しましょう。
法人の合併もしくは分割で不動産を取得したとき
法人が合併した場合や分割によって不動産を取得した場合も、不動産取得税はかかりません。包括的な事業の移転とみなされるためです。
公共の用に供する道路や土地、土地区画整理の換地の場合
土地の改良や土地区画整理など、公共事業に供する道路・土地の場合は、非課税となります。都道府県や市区町村の政策事情が考慮されるためです。
不動産価格が免税対象の場合
不動産価格が免税対象の場合は、不動産取得税もかかりません。その標準とされる免税点は以下のとおりです。
土地を取得 | 100,000円 |
家屋を建築した(新築・改築・増築) | 230,000円 |
家屋を取得した(売買など建築以外) | 120,000円 |
取得した不動産の価格が上記に満たない場合は、不動産取得税が免除されることが決まっています。
おわりに
軽減措置の申請を行えば、不動産取得税にかかる費用を減額したり、ゼロにしたりすることができます。軽減措置が適用される場合は期限内に申請し、控除を受けましょう。
とはいえ、不動産取得そのものに多額の資金が必要となるのは間違いありません。クレディセゾンが提供しているフラット35(保証型)は、用意できる自己資金があれば低金利での利用が可能です。
金利は自己資金の額により変動するため、自己資金が多ければ多いほど、メリットを感じていただけるでしょう。不動産購入の予定があるのなら、ぜひセゾンの「フラット35(保証型)」をご検討下さい。