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相続放棄できない事態を避けたい!認められない事例と対策を知って失敗を防ごう

相続放棄できない!?ケース別にご紹介
セゾンのくらし大研究 編集部

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亡くなった方の遺産を受け継がなくて済む相続放棄手続きですが、認められないケースがあったり、期間が限定されていたりと意外と難しいことがあるため注意が必要です。

そこで、相続放棄が認められないケースをご紹介するとともに、相続放棄手続きをするための方法や必要な書類について解説します。相続放棄をした方が良いかもしれないと考えている方、相続放棄したいが方法がわからない方はご覧ください。

単純承認、限定承認、相続放棄という3つの相続手続きについて、相続放棄ができない事例について詳しくご紹介します。さらに、相続放棄をする場合に必要な書類や、どの裁判所に申し立てれば良いか、申し立てた後はどうなるのかという手続きの方法、流れについても詳しく解説しています。意外と落とし穴がある相続放棄手続きの注意点を知ることができます。

相続についておさらいしておこう

相続についておさらいしておこう

相続、というものは誰にでも起こりうるものです。

相続については民法で規定されており、同882条では「相続は、死亡によって開始する」と定めています。人が亡くなった瞬間に相続が発生しますが、相続については、その「効果」の観点から3種類が定められていますので、ひとつずつご紹介しましょう。

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単純承認

もっともオーソドックスな相続の方法が、「単純承認」と定められているものです。

単純承認は、相続人の権利と義務を全て承継します。民法では「無限に」承継する(同法920条)と書かれているため、不動産や預貯金といったプラスの遺産だけではなく、借金などのマイナスの遺産、つまり負の遺産も受け継ぐことになります。

限定承認

相続の種類として「限定承認」というものがあります。これは「相続によって得たプラスの遺産の限度で、マイナスの遺産である債務の弁済をします」という留保をして相続するものです(民法922条)。

負債の返済にあてるのは残っている遺産の限度であるため、プラスの遺産の範囲を超えたマイナスの遺産を受け継がなくて良いという点が単純承認との違いです。

しかし、相続人全員で手続きをしなければいけないことや、官報に公告したり清算や弁済をしたりする必要があることから、手間のかかる手続きとしてあまり利用されていません。

相続放棄

3つめの相続の種類が「相続放棄」です。相続は死亡と同時に発生するとご紹介しましたが、発生した相続をはじめからなかったものとする手続きのこと。民法939条は「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす」と規定しているため、相続放棄した方の子どもや孫についても、初めから相続人としていなかったものになります。

相続放棄はすべての遺産を放棄することになるため、明らかに負債の方が多いという場合には、相続放棄を選択すると借金の弁済をする義務が一切ありません。

実際に相続放棄をする例は多くあります。1点ご注意いただきたいのが、遺産分割協議の中で何も遺産をもらわない場合を「相続放棄した」ということが一般的ですが、これは、法的には単純承認になり、ここでご紹介した相続放棄には該当しません。相続放棄とは、家庭裁判所に放棄する旨を申し出る手続きになります。

相続放棄できない!?ケース別にご紹介

相続放棄できない!?ケース別にご紹介

借金などの負の遺産が多い場合に利用される相続放棄ですが、相続放棄が認められない場合もあるため注意が必要です。これから、相続放棄が認められない事例をご紹介します。

単純承認が成立している

相続放棄が認められない例としては、単純承認が成立している場合が挙げられます。民法920条では、下記のように単純承認が成立する場合を定めており、一度単純承認が成立すると覆らないため、相続放棄ができません。

これは相続遺産を処分した場合は相続する意思が含まれていると考えるのが相当であるという理由や、相続すると信じた相手方の信頼を保護すべきである、相続遺産と相続人固有の遺産が混在することを防ぐためである、ということが理由として挙げられます。

以下、詳しく確認していきましょう。

「921条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。

一 相続人が相続遺産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第602条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。

二 相続人が第915条第1項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。

三 略」

遺産を受け取ってしまった

相続遺産を受け取ってしまった場合には、921条1項1号の相続遺産の一部を処分したときに当たるといわれており、単純承認が成立します。

処分行為とは、相続遺産の現状や性質を変更する行為です。被相続人の口座からお金を引き出して自分のために使ってしまったときや、被相続人が受け取るべき保険を受け取ったとき、亡くなった方の衣服やバックを自分のものとしてもらったときなどが該当します。

ただし、保険金の受取人が相続人となっている場合は、この保険は遺産とはみなされないため、受け取ることは「処分」に該当しません。

また、形見分けで、ボロボロの衣服や時計など、もらった方には形見として価値があるものの、一般的な経済的価値はないと認められるものを譲り受けた場合には、処分に該当しないとされています。

このように、価値のある遺産を受け取った場合には、単純承認が認められるということです。

被相続人宛ての請求書を支払ってしまった

被相続人宛に届いている請求書を見て、そこに記載されている金額を相続人が支払った場合、つまり債務を弁済したという場合には、921条1項1号の処分行為にあたると判断されます。

被相続人宛の請求書がある場合、相続人としては申し訳ないという気持ちから支払いそうになりますが、相続放棄を考えている場合には、うかつに支払うべきではありません。

ただ、相続遺産から治療費を支払っても処分に該当しないとした判例もありますので、費目や金額によっては、例外的に単純承認が成立しない場合もありえます。

被相続人の預貯金や保険を解約してしまった

被相続人の預貯金や保険を解約してしまったという場合も、981条1項1号の処分行為に該当すると判断されてしまい、単純承認が認められます。

そもそも、預貯金や生命保険を解約するには書類などの提出が必要で、うっかり解約するということは想定できませんから、単純承認が認められて当然です。

土地や携帯電話などの名義を変更してしまった

土地や建物の名義変更の場合は法務局に登記申請をしますが、その場合には書類の提出が必要です。また、登記は誰でも見ることができるもののため、第三者が登記を見て相続されていると信じることになります。これらのことから、不動産の名義変更は単純承認したとなるのです。

また、携帯電話などの名義変更の場合でも、携帯電話会社は今後はこの相続人が契約者になると信じるため、信頼を保護する必要があります。

このような場合も処分行為に該当するとして、単純承認が成立するため注意しましょう。

遺品整理の費用を遺産から出してしまった

遺品整理の際の処分費用などを相続遺産から支出してしまった場合、やはり処分行為とされて相続放棄が認められない場合があります。

一方、保存行為といって、相続遺産の現状を維持するための行為は処分に当たりません。遺品整理をすることで遺産の維持になるような場合については、単純承認に該当しない場合があるということです。

なお、保存行為と同じく、管理行為も処分に該当しないといわれています。これは、相続放棄後の相続人も遺産管理をする義務があることから、遺産を管理するための行為は必要な行為として認められているためです。

熟慮期間(3ヵ月)が過ぎている

熟慮期間が過ぎている

相続人には熟慮期間というものが定められており、その間に単純承認するのか、限定承認をするのか、もしくは相続放棄するのかを決めなければなりません。この期間は3ヵ月となっています(民法915条1項)。

期間を過ぎても相続放棄や限定承認をしなかった場合には、単純承認したものとみなされます。

なお、この熟慮期間は延ばすことが可能です。被相続人が最後に住んでいた場所を管轄する家庭裁判所に、相続の放棄または申述の期間延長の申請をします。

ただし、このときに必要な添付書類がほぼ相続放棄と同じであるため、書類が集まるまで時間がかかることから、3ヵ月ぎりぎりで検討することは避けた方が良いでしょう。

書類に不備がある・不足している

相続放棄が認められない場合として、手続き的に問題がある場合が挙げられます。

例えば、相続放棄は家庭裁判所に申し出る(申述といいます)ことが必要ですが、家庭裁判所に提出する書類に不備がある場合です。

多少の不備であれば、ひとまず受理して後から不足書類を収める方法にしてくれる場合もありますが、かなり不備が多い場合には、家庭裁判所が受け取り自体を拒否する可能性があります。

そのため、相続放棄をする場合は早めに家庭裁判所の窓口に相談し、不足書類がないように準備することが大切です。また、不足していると指摘があった場合には、直ちに対応することも大切になります。

遺産分割協議書に捺印している

遺産分割協議書とは「遺産について、誰がどの遺産を受領するか」を相続人全員で話して決めた内容をまとめた文書です。

しかし「相続人の数人で話をして決まった遺産分割協議書に署名と捺印だけしてしまった」ということもあるでしょう。

遺産分割協議書という、通常は遺産の分け方について決めた文書に捺印することで、単純承認する意思を外形的に示したものとみなされます。このような場合には単純承認が成立し、原則として相続放棄ができません。

相続放棄できない事態を回避するには?【4つの対策】

相続放棄ができない事態を回避するには

ここからは、相続放棄ができないという事態を回避するために、遺産や遺品を取り扱うときに気をつけたいポイントをご紹介します。

被相続人の遺産に手をつけない

基本的に被相続人の遺産には手をつけない、ということが基本です。預貯金や保険を解約したり、引き出したりしないよう気をつけましょう。

特に、形見分けについては、高価なものを受け取ると単純承認が成立する可能性があるため、高価なものをもらうことは避けることをおすすめします。

遺品整理する前に遺産の調査を行う

遺品整理の前に、遺産の調査を行うことが大切です。きちんと調査しておけば、思わぬプラスの遺産が見つかって、相続放棄したことを後悔するようなこともなくなります。

早めの行動を意識する

相続放棄するかどうかの熟慮期間は3ヵ月しかありません。また、家庭裁判所に提出する書類(特に戸籍など)を揃えるのにも時間がかかります。

そのため、早めの行動を意識することが大切です。場合によっては、相続が発生する前に、遺産を確認したり、専門家に相談したりしておいた方が良いでしょう。

専門家に相談する

相続放棄をすべきかどうかについて悩んだ場合、弁護士や司法書士、税理士などの専門家に相談することも早期解決策のひとつです。

また、自治体や相続に関するNPOなどが設けている無料の相談窓口で相談するという方法もあります。悩んでいるうちに時間が経過していきますが、時間が経過すると相続放棄ができなくなるため、早めに専門家に相談して疑問を解消しておくことが大切です。

相続放棄の方法を知っておこう

相続放棄の方法を知っておこう

ここでは相続放棄の方法をご紹介します。

相続放棄は、家庭裁判所に書類を提出して申述する手続きですので、必要な書類と提出先・提出方法等を確認しましょう。

相続放棄に必要な書類

相続放棄に必要な書類は以下のとおりです。

  • 相続放棄申述書
  • 被相続人(亡くなった方)の住民票除票(戸籍の附票)
  • 申述する本人の戸籍謄本

相続放棄申述書は、ひな形が各家庭裁判所の窓口に準備されているだけでなく、裁判所のホームページからもダウンロードが可能です。

 

被相続人の住民票除票は、最後に住民登録していた自治体の窓口に問い合わせると発行してもらえます。戸籍の附票を提出してもかまいません。

申述する本人の戸籍謄本については、被相続人との関係によって多少異なります。

例えば、相続人が被相続人の配偶者や子の場合には、被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本が必要ですが、被相続人の孫やひ孫の場合は、被代襲者(本来の相続人、例えば子)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本も必要になります。

さらに、被相続人の父母や祖父母等(直系尊属)が申し立てるときは以下が必要です。

  • 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方々の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の直系尊属に死亡している方がいる場合はその死亡が記載されている戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

不明点があるときは家庭裁判所に問い合わせることをおすすめします。

相続放棄の手続きの流れ

次に、相続放棄の手続きの流れを解説します。

1.遺産の内訳を調査する

プラスの遺産もマイナスの遺産も、すべてわかるように調査すべきです。ただ、遺産がすべてわからないから相続放棄が認められない、ということではありません。

2.相続放棄申述書を作成し、必要な書類を取得する

上記で述べた相続放棄申述書を作成します。

また、必要な戸籍関係書類を取得も必要です。戸籍は窓口で申請することもできますし、郵便で取り寄せることもできます。

3.被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出する

提出先は、申述する方が住んでいる家庭裁判所ではなく、被相続人が最後に住んでいた場所を管轄する家庭裁判所です。

上記2で揃えた書類と、収入印紙800円、そして、各家庭裁判所が定める枚数と金額の切手を添えて提出します。

4.家庭裁判所から送付される照会書に回答する

提出すると家庭裁判所から連絡がくるのを待ちましょう。提出した書類に不備や漏れがある場合は、追完するように指示がある場合があります。

不備がない場合は、家庭裁判所から相続放棄に関する照会書が届きますので、記載されている質問への回答を記載、提出しましょう。

5.相続放棄申述通知書を確認する

家庭裁判所が相続放棄を正式に受理すると、相続放棄申述通知書が届きますので、大切に保管しましょう。また「相続放棄申述受理証明書」との発行を求めることもできます。

これは、債権者に提示したい場合、申請書に印紙を貼付して家庭裁判所に提出すると、家庭裁判所が発行してくれるものです。

相続放棄の気になる疑問を解決

相続放棄の気になる疑問を解決

ここからは気になる疑問などをご紹介していきます。

  • 相続放棄できないものはある?
  • 相続放棄した土地は放置して良い?
  • 熟慮期間が過ぎても相続放棄が認められるケースはある?

相続放棄できないものはある?

相続放棄をすると、最初から相続しなかったことになるので、相続の対象ではないものについては、放棄することはできません。

先祖代々受け継いでいる仏壇などの祭具やお墓などを祭祀遺産といいますが、これは相続遺産とは別です。そのため、祭祀遺産については、相続放棄することができません。引き継いだ場合には、管理を続けるか、適切に解消するなどの手続きをとることになります。

相続放棄した土地は放置して良い?

相続放棄した土地などの相続遺産については、次の相続人が引き継ぐまで、管理する義務があります。この管理の程度は自己の遺産の管理と同程度です。

しかし、例えば敷地内の木が倒れて通行人に怪我をさせたような場合には、管理者として責任が生じることがあります。

そのため、相続放棄した場合でも次に相続人がいない場合には適切な管理を続ける必要があるのです。相続人がいない場合は、いつまでも管理しなければならないという問題が生じます。その場合は、家庭裁判所に相続遺産管理人選任の申し立てをして、相続遺産管理人に引き継ぐ方法がありますので検討しても良いでしょう。

熟慮期間が過ぎても相続放棄が認められるケースはある?

熟慮期間の3ヵ月が過ぎても相続放棄が認められるケースがあります。

相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヵ月というのが基本ですが、判例は、この熟慮期間の開始について「相続人が相続遺産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべき時から起算すべきもの」と一部修正をして解釈しています。

そのため、ある日突然借金の督促状が届いて、初めて被相続人に借金があることを知ったという場合には、その督促が届いた時点から3ヵ月間は、相続放棄が認められます。

おわりに

ここまで相続放棄についてご紹介してきました。

相続放棄をしないほうが良いかもしれないという場合や、単純承認しており相続放棄ができないという場合、相続手続きを進める際は「セゾンの相続 相続手続きサポート」にご相談ください。

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