勉強や仕事をする上で「集中力が続かない」ことについて悩む方は多いでしょう。そもそも、人には集中力を維持することが得意ではない性質があり、集中力を維持するためには意識的に集中力を維持するように心掛ける必要があります。
そこでこのコラムでは、集中力が続かない原因と、集中力を維持するための方法を解説します。集中力を維持させたい方は、ぜひこのコラムの内容を役立ててください。
1.そもそも人は長時間の集中を得意としていない
人はそもそも長時間集中して勉強や作業に取り組むことを得意としていません。これは、理性と本能という脳の仕組みがそうさせています。本能とは、人が生きていく上で重要な生存に関する「食べること」や「寝ること」などの欲望を優先的に考える脳のことを指し、理性よりも強い影響力を身体に及ぼします。
「集中をする」という行為は理性に当たるので、集中して勉強や作業をしていても本能が作用してくると、理性が負けてしまいやすいのです。学校で授業を受けている時に「今日の授業は聞いておかないとやばい」と分かっているにもかかわらず、眠気に負けてしまったこともあるのではないでしょうか。
まずは「集中を持続させるのは簡単なことではない」ということを理解した上で、集中力を維持する方法を参考にしてください。
2.集中力が続かない原因【大人編】
大人になると締め切りに追われたり、作業のペースに追われたりして、集中力を維持しなくてはならない場面があることでしょう。そういった時に集中力が維持できないと、信頼や評価が落ちてしまう可能性があります。そんな事態を避けるために、以下の集中力が続かない原因を確認して、当てはまる部分はないかご自身の状況と照らし合わせてみてください。
【集中力が続かない原因(大人)】
- やらなくてはいけないことが多過ぎる
- 集中できる環境に身を置けていない
- 寝不足になっている
- 休まずに作業をしている
- 前向きな思考で作業に着手できていない
- 情報過多になっている
どれも、普段何気なく仕事をしている方に当てはまりやすい内容です。まずは各内容を把握してから解決方法を実施していきましょう。
2-1.やらなくてはいけないことが多過ぎる
ひとつのことに集中すべき時にその他のタスクなどが溜まっていると、焦りやプレッシャーを感じやすくなるため、ひとつのことに集中しづらくなります。他のタスクをプレッシャーに感じたり、負担に感じたりするほどでもなければ気にする必要はありませんが、やるべきことに集中をしている際に、少しでも他のタスクのことが頭をよぎれば対策を考えなくてはならないでしょう。
やらなくてはいけないことが多い時は、まず抱えているタスクを全て書き出して整理することが大切です。
2-2.集中できる環境に身を置けていない
集中をするための環境は非常に重要です。騒がしい場所であったり、気になるものが付近に置いてあったりすると、人はなかなか集中することができません。例えば、周りの人の話し声や、ポケットに入っているスマホなどは頻繁に作業員の集中力を削ぎやすいものになります。他にもデスク(作業場)が散らかっていたり、ご自身の作業に適した机の高さではなかったりしても集中力は維持しづらいでしょう。
人の脳は優秀で、無意識に周囲の情報を集める機能が備わっています。そのため、集中できるだけの環境が整っていないと脳の仕組み的にも集中を維持するのは難しいのです。
2-3.寝不足になっている
集中力を維持するためには脳が適切に働いていないといけません。睡眠不足は脳疲労を引き起こす原因のひとつとして考えられているので、集中力を妨げる要因となります。本当に集中をしなくてはいけない状況があるのであれば、睡眠は意識的に7時間以上取るようにして、脳疲労を最低限に抑えましょう。
もし睡眠を取るのが難しい場合は、昼の休憩などに5分だけ目を瞑ってみてください。それだけでも脳の疲労度の回復が見込めます。試してみてください。
2-4.休まずに作業を続けている
人は長時間の集中をそもそも得意としていないので、休まずに作業を続けようとしてもなかなか思うように集中はできないでしょう。基本的に大人は体力も落ちていくので、適度な休憩を取りながら集中力を維持できるような工夫をおすすめします。
2-5.ながら作業をしている
ながら作業も集中力が続かない大きな原因のひとつです。比較的女性の方が男性に比べてながら作業が得意というのはよくいわれます。これは、女性の方が複数のタスクの処理を高速に切り替えるのが得意だとされているためです。
ただ、仮に高速に切り替えられたとしても、ながら作業はひとつのことに集中している時よりも40%ほど生産性が落ちるといわれているので、集中力を維持したい場合はながら作業は避けた方が良いです。
2-6.前向きな思考で作業に着手できていない
作業に対して「めんどくさい」「やりたくない」といったマイナス思考で臨むと、脳は集中力を持続させることが難しくなります。誰でもそうですが、好きな遊びはいくらでも集中できますが、嫌いな勉強や作業はなかなか集中できないですよね。
脳はご自身の感情を敏感に読み取り、集中力に大きな影響を与えますので、「気の持ちよう」は非常に重要です。
2-7.情報過多
現代において、人々が手にする情報は非常に多いです。テレビ、SNSなどにより無意識に情報が手に入るようになっている現代では、情報過多による脳疲労が問題視されています。もちろん、情報が多く手に入ることで「生き方」や「利便性」が向上するメリットはありますが、情報過多により長時間の集中力を維持しにくくなるというデメリットもあります。
意識的に情報をシャットダウンすることは難しいですが、寝る30分前からはスマホをいじるのをやめたり、朝起きていきなり携帯をいじるのをやめたりするだけでも脳の疲労を抑えられるでしょう。
3.集中力を維持する方法【大人編】
集中力を維持できない原因を把握したら、実際に改善をしていくにはどうするべきかを知って実践していきましょう。以下は集中力を維持する方法の例です。
【集中力を維持する方法(大人)】
- 集中できる環境に身を置く
- 睡眠の質を上げる
- 定期的に息抜きできる時間を取る
- 集中しやすい姿勢で作業する
- ゴール(目標)を設定する
集中力を上げる基本的な考えとして、「環境」と「集中時間」と「疲労度」を意識します。特に集中時間に関しては、そもそも人は長時間集中できないことを前提に、「集中できる時間」で区切って作業をすることをおすすめします。いかに長時間連続で集中するかよりも、トータルで集中できていた時間を増やすことが重要であることを意識しましょう。
3-1.集中できる環境に身を置く
集中できない環境では長時間集中することが難しいことを解説しましたが、逆に集中できる環境を構築できれば集中力を持続させることができます。集中できる環境を構築するには、まず作業をするスペースから余分なものを排除しましょう。スマホはもちろんのこと、デスクに余分なお菓子や雑誌などを置いている場合はすぐに排除してください。
そして、余分なものを排除したらさらに集中できるように環境を整えていきます。具体的には作業をする机や椅子、工具などを使いやすいものに変更します。机の高さは作業がしやすい高さに、椅子はなるべく座り心地が良いものに、工具は使い勝手が良いものに変更することで集中しやすい環境を構築できます。
3-2.睡眠の質を上げる
脳疲労による集中力の低下を防ぐには「睡眠の質」を上げることが最も重要です。仕事の生産性を上げるために睡眠時間を削ってしまう方がいますが、集中力を維持するという観点では一番やってはいけない行動です。これ以上は生産性が上がらない作業を実施しており、時間でしか解決できない場合は例外ですが、集中力を維持することで生産性が向上する場合は必ず睡眠を取るようにしましょう。
睡眠の質を上げるためには、「光」を意識すると良いです。スマホやテレビなどの光は脳に刺激を与えて寝つきを悪くする効果があるので、寝る30分前はスマホをいじらないようにするだけで質の高い睡眠を取ることができます。
3-3.定期的に息抜きできる時間を取る
人は長時間集中するのが得意ではないので、集中できる時間内で作業を区切って定期的に休憩時間を取ることをおすすめします。人が集中できる時間は最大で90分とされており、それ以上の時間を集中し続けるのは困難といわれています。
そのため、90分の作業時間を設けたら5〜10分休むなどして、脳を休ませましょう。この際にスマホをいじったりテレビを見たりしてしまうと脳が休めないので、極力ぼーっとする意識で休憩してください。
3-4.集中しやすい姿勢で作業する
集中を維持するためには「姿勢」も重要です。姿勢が悪いと血流が悪くなり、脳への酸素供給が低下して集中しにくくなります。ただ、常に姿勢を意識するあまり本来の作業に集中できなくなっては本末転倒です。椅子をなるべく姿勢が正せるものにしたり、コルセットを巻いてみたりして無意識に姿勢が改善できる方法を実施しましょう。
3-5.ゴール(目標)を設定する
人はゴールがあると頑張れます。頑張れるということは「前向きな思考」になれるということなので、集中力が維持しやすくなります。「何個作業したら終了」「何分頑張ったら休憩」のようにゴールを設定してみましょう。また、ゴールにお菓子などのご褒美を準備しておくのも効果的です。
4.集中力が続かない原因【子ども編】
親としては、子どもが勉強に集中してくれることほどありがたいものはないでしょう。しかし、親の期待を横目に子どもは勉強をしようとしても長く続かず、すぐに遊んでしまうものです。親はこういった際、まずは「なぜ集中できないのか?」を知るところから始めましょう。原因を知れば解決策を見出せるかもしれません。
【集中力が続かない原因(子ども)】
- 部屋に誘惑が多過ぎる
- 精神状態が落ち着いていない
- 好きなこと・やりたいことではない
- 親が口を出し過ぎている
- 生活習慣が乱れている
- ADHDの疑い
4-1.部屋に誘惑が多過ぎる
小学生の場合、子どもの部屋には勉強を始める前から持っていたおもちゃなどがたくさんあります。集中力を維持するためには環境が非常に重要なので、集中を妨げる誘惑があるようであれば、それらが目に入らないような工夫をしなくてはいけません。
家の間取りによっては解決できない場合もありますが、それでもテレビを消したり、おもちゃが目につかない壁側に勉強スペースを作ってあげたり、最大限できることはサポートしてあげることが大切です。
4-2.精神状態が落ち着いていない
大人も子どもも同じで、後ろ向きの思考・精神状態ではなかなか集中力を維持できません。子どもの場合は思春期になる程さまざまな思考が芽生えるので、集中できないきっかけが生まれやすいです。そういった時、親は無理に集中をさせるようなことをしてはいけません。
様子がおかしいと思ったら、まずは本人の話を聞くようにし、解決しなくても良いので見守る姿勢で接することが大切です。
4-3.好きなこと・やりたいことではない
好きでもないことに集中できないのは誰でも同じです。特に勉強を好きになれない子は多く、実際、ご自身も昔は好きじゃなかったと思い当たる方も多いのではないでしょうか? 親としてできるのは、まずはその気持ちを理解することです。
勉強に集中できていないとしても、他のことに集中力を発揮できる可能性があります。勉強に集中できないだけで「集中できない子」と決めつけないようにしましょう。勉強に集中してもらいたいと親が思っていても子どもがその気持ちに応えてくれる可能性は低いので、むしろ集中しているものをさらに伸ばせるような環境を整えてあげるのも親の役割かも知れません。
4-4.親が口を出し過ぎている
子どもの集中を促す際に、親が口を出し過ぎると逆に集中力を途切れさせてしまいます。「早く進めなさい」「ここまでは必ずやりなさい」といった声掛けは、集中力を途切れさせるだけでなく、子どものやる気を削いでしまうことにもなりかねません。
ご自身が例えば上司などから同じことをされたら、おそらく集中できないでしょう。それと同じで、子どもには子どものペースで集中するタイミングがあるので、親は一歩引いて見守るようにしましょう。
4-5.生活習慣が乱れている
生活習慣が乱れていると、睡眠不足になったり、栄養が不足したりして脳が正常に働かなくなります。集中するためには脳の機能を正常にしておく必要があるので、規則正しい生活を送ることができるようにサポートしましょう。
例えば、夜遅くまでゲームをしたり、朝ごはんを食べずに学校に行ったりする子は特に注意が必要です。「睡眠時間の確保」と「三食しっかり食べること」は子どもが集中力を維持するためには欠かせない生活習慣のひとつです。
4-6.ADHDの疑い
ADHDとは注意欠陥・多動性障害という発達障害の一種のことを指します。この病気の特徴として、年齢に見合わない「不注意さ」や、好きなこと以外に集中力ができない「多動性」があります。この病気を持っている方は、その場に応じてご自身をコントロールすることが苦手なので、さまざまなミスを起こしてしまいやすいです。
ADHDの疑いがある子どもに「集中しなさい」と促してもほとんど意味をなしません。まずは病院に行って受け入れるところから始めましょう。ADHDの場合、正しい接し方をしないと本人を苦しめることにもなりかねないので、早く気付いてあげることが大切です。
5.集中力を維持できるようにする方法【子ども編】
子どもが集中できない原因を確認したら、次は集中力を維持するための方法を把握しましょう。基本的に「子どもを見守る意識」という姿勢も大切ですが、以下に紹介するテクニックを駆使することで集中しやすい環境を構築することもできます。
【集中力を維持できるようにする方法(子ども)】
- 集中できる環境に身を置く
- 短い時間で区切って集中するように促す
子どもは本人の意思よりも環境に左右されやすい傾向があるので、親が勉強に集中しやすくなるような環境を作ってあげることが大事になってきます。そのためにも、勉強時間を短く設定したり、終了後のご褒美を用意したりしてみてください。
5-1.集中できる環境に身を置く
子どもは周囲の環境に影響を受けやすいです。集中できない環境だと集中できませんし、集中できる環境なら集中します。その環境を作るのは親の役割なので、集中しやすい環境作りをすることでサポートしてあげてください。
具体的には、勉強スペースからおもちゃなどの誘惑を排除したり、勉強中はテレビを消すようにしたりすることが挙げられます。集中するものだけに意識を向けられるように環境を作り上げる意識が大切です。
5-2.短い時間で区切って集中するように促す
子どもが集中して勉強できる時間は、年齢が大きくなるごとに増えますが小学校高学年ぐらいでは15分程度が限界といわれています。中学に入ると45分、高校で90分が目安とされているので、親はその時間を意識して集中する時間を作ってあげるのが好ましいでしょう。
特に小学生の場合はご褒美があると頑張れる傾向があるので、15分頑張ったらおやつやゲームといったご褒美を設定することで集中してくれやすくなります。
6.集中力を高める成分とおすすめの食べ物・飲み物
集中力の質は脳の働きによって左右されます。脳疲労があれば集中しづらくなりますし、脳が正常に働く状態なら集中がしやすくなります。そこで、以下では脳の機能をサポートする「集中力を高める栄養素と食べ物」をご紹介します。
【集中力を高めるおすすめの食べ物・飲み物】
- ブドウ糖
ブドウ糖は脳のエネルギーとなる重要な物質です。もし集中力が切れてしまった場合はブドウ糖を補給することで集中力が復活するでしょう。ブドウ糖を摂取するには「ラムネ」や「バナナ」がおすすめです。 - ビタミンB群
ビタミンB群はブドウ糖をエネルギーに変換する手助けをしてくれる栄養素です。そのため、ブドウ糖と一緒に摂取しましょう。ビタミンB群を摂取するには「豚肉」や「にんにく」がおすすめです。 - カフェイン
カフェインは集中力の天敵ともいえる「眠気」を抑える役割を持っています。眠気で集中力が途切れた際はカフェインを摂取するのがおすすめです。カフェインを摂取するには「コーヒー」や「紅茶」がおすすめです。 - メンソール
メンソールもカフェインと同様に眠気を覚ます効果があります。メンソールを摂取するには「メンソールガム」や「ペパーミントティー」がおすすめです。 - フラバノール
フラバノールにはストレス軽減と認知機能の改善効果があります。集中をする前に摂取すると作業や勉強の効率が上がるでしょう。フラバノールを摂取するには「チョコレート」がおすすめです。 - チロシン
チロシンには精神安定とやる気を起こす作用があり、やる気を高める神経伝達物質「ノルアドレナリン」を生成するのに必要な栄養素です。チロシンを摂取するには「ナッツ類」や「納豆」がおすすめです。 - DHA
DHAは認知機能の低下を予防します。日頃から摂取するのが好ましいです。DHAを摂取するには「サバ」がおすすめです。
おわりに
人は集中力を長時間維持することを得意としません。そのため、集中力を維持するためには集中できないことを前提に「集中を維持するための方法」を実践していくことが大切です。
特に「環境」は集中力を維持する上で重要なポイントです。作業や勉強をする環境が悪ければ集中できませんし、環境が整っていれば集中がしやすくなります。大人はご自身で環境を整え、子どもに対しては親が環境を整えてあげるようにしましょう。