2021年(令和3年)10月からマイナンバーカードと健康保険証が一体化となった、通称「マイナ保険証」の本格運用が開始されました。個人番号が記載されているマイナンバーカードを、日常的に利用することに抵抗がある方も多いでしょう。初めてのことに不安を持たれるのも当然です。今回は、マイナンバーカードを保険証利用すると、どのようなメリット、デメリットがあるのか徹底解説していきます。
マイナンバーカードと健康保険証が一体化されることによるメリットには、医療機関での受付が簡単になる、過去の診療データの共有化でスムーズな診察が受けられることなどがあります。また、デメリットは、個人情報漏えいのリスクやマイナ保険証対応の病院が少ないことなどです。メリットとデメリットをしっかり把握してから、マイナ保険証を利用する準備をしましょう。
マイナ保険証の利用登録には、マイナポータルを使う方法と、セブン銀行のATMを使う方法があります。利用登録することでもらえるマイナポイントは、マイナポイントアプリなどで手続き可能です。
また、マイナ保険証を利用できる医療機関は、ポスターやステッカーが貼ってあるので事前にチェックしておきましょう。
そもそもマイナンバーカードとは?一体化のねらい
そもそもマイナンバーカードには、どのような役割があるのでしょうか。ここではマイナンバーカードについておさらいするとともに、マイナンバーカードと保険証が一体化されることのねらいについても、併せて見ていきましょう。
マイナンバーカードについてのおさらい
マイナンバーカードは2016年(平成28年)1月から交付が開始されました。国民一人ひとりに12桁の個人番号が振り分けられた、役所などの公的な本人確認書類として使えるICカードです。また、わざわざ役所へ足を運ばなくても、近くにあるコンビニで住民票の写し等を受け取れるなど、さまざまな行政サービスが受けられます。ほかには金融機関等の窓口で必要な本人確認の際にも利用可能です。
マイナンバーを他人に見せることに不安がある場合でも、個人番号をコピーまたは保管できる事業者は行政機関や雇用主など法令に規定された者に限られているため、提示して問題ないといえるでしょう。
マイナンバーカードの保険証が導入される理由とは?
マイナンバーカードと保険証が一体化される目的とはなんでしょうか。
目的のひとつは、適切な医療を受けやすくすることです。日常で受ける特定検診の結果や複数の医療機関で処方された薬のデータなどの情報が管理されていない状態では、医療現場の負担が増えたり、医師の的確な判断を難しくしかねません。
健康保険証の代わりにマイナ保険証が利用されると、マイナポータルとの連携により過去の診療や薬剤処方の記録などが共有されます。共有された情報をもとに、医療現場の負担軽減や適切な医療を受けやすくするねらいがあります。
また、ますます進んでいく高齢化の中で、国の保険医療制度を維持するためには、国民一人ひとりの健康管理が必須となってきています。国民の健康への意識を高め、健康寿命を延ばすためには、マイナポータルに記録されたご自身の健康診断の結果や過去の受診履歴などの積極的な利用を推進するねらいがあるといえるでしょう。
マイナンバーカードを保険証利用するときのメリット
実際にマイナンバーカードを保険証として利用すると、さまざまなメリットが受けられます。具体的にはどのようなメリットがあるのか、詳しく解説していきましょう。
医療機関での受付が自動化
医療機関を利用する際、受付に並んで長い間待たされたという経験はありませんか。混雑する時間帯では、保険証の提示による受付がスムーズにいかず不満を感じることもあるでしょう。マイナ保険証では、窓口での受付が顔認証付きのカードリーダーで自動化され、本人確認と医療保険の資格確認が一度に終わります。マイナ保険証を使うことで、診察までの待ち時間が今までより短くなるでしょう。また、自動受付なので人との接触も抑えられ、感染症のリスクが減ることもメリットです。
過去の特定健診や薬剤処方のデータが一目でわかる
マイナ保険証を使って医療機関を受診すると、医療機関や薬局が本人の意思確認のもと、マイナポータルに記録された過去の特定検診の結果や薬剤処方のデータを閲覧することができます。
よって、過去の健康状態や薬剤の情報の詳細を口頭で説明することが不要になり、スムーズな診察が受けられます。旅行先や災害時にお薬手帳がなくても、情報が共有されるのは安心かつ便利でしょう。また、ご自身の健康管理を意識するきっかけにもなります。
2022年(令和4年)9月からは過去の診療情報も医師が閲覧できるようになり、共有する情報の幅が広がりました。他の医療機関の受診記録を共有することによって、問診や診察をスムーズにするだけでなく、過去の検査結果との比較などにより充実した治療を受けられることなど、患者にとってもさらにメリットが増えました。
高額療養費の限度額以上の一時支払いが不要
高額療養費の制度では、事前に窓口での支払いが高額になると分かっている場合は、「限度額適用認定証」を事前申請し取得しておくことで、限度額以上の支払いが免除されています。
限度額適用認定証がない場合は窓口で一時的に全額を負担し、後日加入している健康保険へ申請手続きをすることで、限度額以上の支払額分が給付されるという仕組みです。限度額適用認定証が取得できていない場合の全額一時払いは、大きな負担となってしまいます。
しかし、マイナンバーカードを保険証として利用し情報提供に同意すると、事前申請不要で限度額以上の支払いがその場で免除されるので、急な診療でも安心して受診できます。
確定申告の医療費控除手続きが簡単に
本人と生計をともにする配偶者や家族の医療費が年間一定額以上になった場合、確定申告で医療費控除の手続きをすると、超えた分の額に対して所得控除が受けられます。しかし、手続きのためには1年分の領収書を管理する必要があり、大変です。また、確定申告というと手間や時間がかかるイメージがあり、なかなか気が進まない方も多いでしょう。
マイナ保険証で医療機関を受診すると、医療費通知情報をマイナポータルで管理できます。マイナポータルとパソコンやスマホで確定申告可能なe-TAXとの連携により、マイナポータルにある医療費通知情報をe-TAXが自動で取得し、反映から計算まで自動してくれるので、難しかった医療費控除の確定申告がラクになります。
ライフイベントで保険証が変わっても切り替えや変更手続きが不要に
転職や引っ越し、結婚などで保険証が変わる際、従来の健康保険証では勤め先の企業や役所などに出向いて、切り替えや変更の手続きをする必要があります。切り替えてから新しい保険証が届くまでに時間を要する場合もあり、その間に医療機関を受診する場合は、窓口で一旦全額支払い、届いた新しい保険証を提示して返金してもらうなどの手間が発生します。
マイナ保険証は、ライフイベントによる保険証の切り替えや変更手続きがなくなり、期間を待たずそのまま利用し続けることができ、便利です。ただし、保険証の新たな加入や喪失した際の届け出は、従来どおり手続きが必要となるので要注意です。
窓口での支払いが安くなる
2022年(令和4年)10月から、マイナ保険証に対応している医療機関や薬局において、従来の保険証で受診するよりもマイナ保険証を利用した方が、1ヵ月の医療費がわずかに安くなりました。
マイナ保険証に対応している医療機関や薬局では、利用すると初診料に加え「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」が上乗せされます。医療機関でのマイナ保険証利用の負担額は3割負担で6円、従来の保険証利用では12円です。薬局ではマイナ保険証利用で3円、従来の保険証利用では9円を負担します。
「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」とは、マイナ保険証を利用してオンラインで資格確認を行うシステムを有する施設が加算できるものです。よって、対象はマイナ保険証が利用できる医療機関や薬局で、マイナ保険証に対応していない場所では0円となっています。つまり、現状ではマイナ保険証に対応していない医療機関や薬局で、従来の健康保険証を利用する場合が1番安く受診できます。
しかし、政府は2024年(令和6年)秋までに、従来の健康保険証の廃止を目指すことを宣言しました。今後マイナ保険証に対応する医療機関などが増えてくることは必須で、マイナ保険証を利用した方が得するシステムに変わってきています。
マイナンバーカードを保険証利用するときのデメリット
マイナンバーカードを保険証として利用するときのメリットを解説してきましたが、さまざまな情報が記録されているがゆえに、不安な要素も多いでしょう。気になるマイナンバーカードを保険証利用するときのデメリットを説明します。
個人情報漏えいの問題点
マイナンバーカードを作る場合、多くの方が不安視することは、個人情報の漏えいではないでしょうか。
サイバー攻撃や各種大手民間企業の個人情報漏えいなど、IT社会にとって大切な個人データの流出はさまざまな社会問題を生んでいます。マイナンバーカードには個人的な情報が入っているので、情報漏えいを心配されるのは当然です。管理には充分に気をつける必要があるでしょう。政府にも個人情報の扱いには徹底した管理が求められます。
万が一、情報漏えいの恐れがある場合は、24時間365日対応のコールセンターに連絡するとカードの利用を一時ストップできるので、すぐに利用しましょう。第三者が入手して不正に情報を読み取ろうした場合は、カードのICチップが壊れる仕組みとなっています。
利用できる病院や薬局が少ない
厚生労働省によると2022年(令和4年)11月13日現在、マイナ保険証の利用が可能な顔認証付きカードリーダーを導入している医療機関等は、全国で33.9%となっています。まだまだ利用できる病院が少なく、導入の遅れが指摘されています。
マイナ保険証に対応していない病院では従来の保険証を提示する必要があり、日常的にマイナンバーカードと従来の保険証の2枚を持ち歩く可能性もでてきます。持ち歩く枚数が増えると、自然と紛失のリスクも高まるでしょう。外出する際は、より慎重に持ち物を管理する必要があります。
ちなみに、マイナ保険証対応の病院では従来の保険証も使えるようになっているので、従来の保険証があれば問題ありません。
災害時のシステムダウンやエラーの危険
官公庁書類の手配や医療機関の受付など多くのことを、すべてオンラインシステムで処理できることは大きなメリットですが、逆をいうとシステムの不具合によるトラブルが起きた場合のデメリットも大きいということです。
自然災害や一時的な集中利用が原因でシステムダウンが起きれば、医療機関などでの受付や過去の医療データなども閲覧できなくなります。
マイナンバーカードと保険証を紐づける方法
まだマイナンバーカードを作っていない方のために、作り方を簡単に説明します。マイナンバーカードを保険証利用するための申請方法もチェックしてみてください。
マイナンバーカードの作り方
作り方のステップとしては①マイナンバーカードの申請、②交付通知書が届く、③交付場所で受け取る、の3つです。
マイナンバーカードの申請は、個人番号通知書などと同封されている交付申請書を使った郵送、オンライン、マイナンバーカード申請対応の証明写真機を使う方法の3つがあります。
申請後、約1ヵ月でカードが発行され、住んでいる市区町村に送付されます。市区町村から交付通知書が手元に届いたら、交付場所でカードを受け取り終了です。
マイナンバーカードを保険証登録する方法
マイナンバーカードを保険証登録する方法は、マイナポータルを使った登録方法とセブン銀行のATMを使って登録する方法の2つがあります。
マイナポータルを使う場合は、あらかじめマイナンバーカードと事前登録した数字4桁の暗証番号を手元に用意しておきます。マイナンバーカードが読み取り可能なスマホにマイナポータルアプリをインストールすると準備完了です。アプリの保険証利用登録に同意して、「申し込む」をタップすると手続きが始まります。
セブン銀行ATMを利用した申込みにも、マイナンバーカードと4桁の暗証番号を準備しましょう。マイナンバーカードをATMに差し込み、「マイナンバーカードでの手続き」から始められます。案内に従って進めるだけなので簡単です。
マイナンバーカードを保険証利用できる場所と使い方
利用登録したマイナンバーカードの保険証が使える場所や使い方を覚えて、正しく活用できるようにしておきましょう。
マイナンバーカードの保険証が使える場所を知りたい
マイナンバーカードの保険証が使える場所には、マイナ受付のステッカーとポスターが貼ってあります。かかりつけの病院や薬局を受診した際にチェックして、目印のステッカーやポスターが貼ってあった場合は、次回からマイナ保険証を用意しておくと良いでしょう。
ほかには、厚生労働省のWEBサイトにマイナ保険証の利用可能施設を検索できるリンクが掲載されているので、自宅の近くにある病院や薬局が対象かどうかを確認するのもおすすめです。
デメリットの部分でも前述した通り、まだまだマイナ保険証を利用できる医療機関や薬局が少ないことは事実です。その中でも普段ご自身が利用している場所が対象かどうか知っておくと、カードを事前に用意しておけるので安心です。また、転院して新たに受診しようとする場合も、過去の診療情報などが共有できるという利点から、今後はマイナ保険証を利用できるかどうかが病院選びの基準のひとつとなるかもしれません。
マイナンバーカードの保険証の使い方
マイナンバーカードを保険証として医療機関や薬局で受付をする場合、顔認証付きのカードリーダーを使います。
使い方は、窓口に置いてあるカードリーダーにマイナ保険証を置いて読み取らせ、本人の顔写真撮影を自動で行います。カードリーダーは、ICチップに入っている顔写真データと窓口に来ている本人の顔写真を照合し、本人確認を行っています。
マスクやメガネ、車いすに乗ったままでも顔認証が可能です。また、マイナンバーカードを発行する際に決めた数字4桁の暗証番号を入力することで、本人確認を行う方法も選べます。次に、特定検診情報や薬剤情報、診療情報などの同意事項を確認し、選択を行うと受付が終了します。
マイナ保険証を忘れてしまった場合は、以前に使用していた従来の保険証を提示することで医療機関や薬局を利用できるので心配いりません。
マイナポイント第2弾!の手続きは早めに
政府は現在、新規でマイナンバーカードを発行した方や健康保険証として利用申し込みした方、公的受取口座を登録した方に、合計最大20,000円分のマイナポイントをプレゼントする企画を行っています。
新規でカードを発行された方は、指定したキャッシュレス決済サービスでの買い物またはチャージの利用金額に対して25%のマイナポイント(上限5,000ポイント)、健康保険証と公的受取口座の登録をした方はそれぞれ7,500ポイントがもらえます。申請期限は2023年(令和5年)2月末までです。期限が迫っていますので、申し込みを考えている方は、早めに手続きをスタートさせましょう。
マイナポイント第2弾の申し込みは、マイナポイントアプリや全国の郵便局、コンビニなど約70,000ヵ所に設置された支援端末から行うことができます。ポイントの受取先は各種キャッシュレス決済サービスが対象となっています。
どのキャッシュレス決済サービスにするかお悩みの方は、スマホから最短5分で作ることができる「SAISON CARD Digital」はいかがでしょうか。国内初の完全ナンバーレスカードで、安全性が高いことが特徴です。
おわりに
マイナンバーカードを保険証利用するようになると、情報漏えいのリスクなどのデメリットがあることは確かです。しかしその反面、マイナポータルを活用してご自身の健康管理に役立てることができたり、病院の受付時間を短縮できたりとメリットも多くあります。考えられるデメリットを把握し、マイナンバーカードをしっかり管理して有効に利用しましょう。