特定の相続人がある遺産を相続する代わりに、ほかの相続人に対し、代わりとなる代償財産を渡す方法を代償分割といいます。代償分割は、相続財産を分割や処分したくない場合に有効な方法です。
ただ代償分割を利用するには、代償金の決め方や遺産分割協議書の書き方、代償金の資金準備の方法などを知っておく必要があります。今回は代償分割での代償金の決め方や遺産分割協議書の書き方について解説するとともに、代償分割を行う際の注意点もあわせて紹介します。
代償分割とは
代償分割とは、遺産の分割にあたって共同相続人などのうちの1人もしくは数人に相続財産を現物で取得させ、その現物の相続財産を取得した方が、ほかの共同相続人に対して債務を負担することをいいます。
代償分割は、現物の相続財産の分割や処分が困難な場合に利用される方法です。
例えば相続人が子ども2人だった場合で、1人が6,000万円の不動産を相続し、もう1人は現金のみを2,000万円相続した場合、本来であれば子ども2人それぞれの相続分は4,000万円ずつですので、不動産を相続した方がもう一方に2,000万円を支払うことで、相続した財産の額が公平になるように調整するといった方法です。
代償分割での代償金の決め方
代償分割の対象となる財産は多くが不動産です。ここでは、不動産の代償分割における代償金の決め方について解説します。
不動産の代償分割は「評価額」による
代償分割の対象となる財産が不動産の場合、その不動産の評価額が代償金の額です。
代償分割における評価方法は当事者の合意によって決める
ただし不動産の評価方法は複数存在するため、どの評価法を用いて計算するかは、当事者で話し合って決める必要があります。
不動産の評価方法は複数ある
不動産の評価方法は4つあります。以下でそれぞれの評価額の概要について説明します。
(1)公示地価
公示価格は、国土交通省が毎年1月1日時点を評価時点として、3月下旬頃に公表している価格で、土地鑑定委員会の調査に基づいて価格を算出しています。公示価格は、基本的に土地の取引を行う際に利用する指標です。
全国に26,000ヵ所ある標準地の価格が公表されていますが、中には公示価格が設定されていない場所もあります。ただし土地の値段は変わりますので、最新の土地の値段は土地総合システムを参照したり、不動産会社に査定を依頼したりして決める方法も有効です。
(2)固定資産税評価額
固定資産税評価額とは、土地家屋課税台帳に記載されたその年の価格のことをいいます。そしてこの固定資産税評価額は、毎年支払う固定資産税や都市計画税のほか、土地を取得した際に支払う不動産取得税を計算するうえでの基準になっています。
なお、土地の固定資産税評価額は、公示価格の70%を目安に設定されていることも覚えておきましょう。
(3)路線価(相続税評価額)
路線価(相続税評価額)は、相続税や贈与税を算出する基準として、毎年1月1日時点の価格をその土地の地目にあわせて「路線価方式」もしくは「倍率方式」によって計算し、毎年夏頃に国税庁のホームページで公表されます。路線価(相続税評価額)は毎年変わるため、地価の変動をより正確に反映しているともいえます。
(4)実勢価格
実勢価格は時価ともいわれ、上記で説明した公示地価を基準として、過去に行われた取引額を反映させたものです。相続した土地の面積や形状が似ているところの実勢価格を知ることで、代償金の計算を行う際の参考にできます。
代償分割の代償金を決める評価方法は、上記の評価方法の中から当事者が話し合って決めます。一般的に路線価(相続税評価額)を採用するケースが多く見られますが、中には固定資産税評価額を用いるケースもあります。
評価方法によって土地の価格は異なりますので、どの評価方法を採用するかを決めるためにも、それぞれの評価額がどのように計算されているのかを知っておくことが大切です。
代償分割の遺産分割協議書の書き方
代償分割を行う際には遺産分割協議書の中で、代償金の支払いについて記載する必要があります。もし記載し忘れた場合、代償金の支払い分が贈与税の課税対象になってしまうことがあるので、忘れずに記載するようにしましょう。
通常、遺産分割協議書には、
・被相続人の氏名と死亡日、最後の本籍や住所、登記簿上の住所
・遺産分割協議結果の内容(誰がどの財産を相続したか、不動産の場合は地番や地目など)
を記載しますが、代償分割を行った際には併せて、該当する遺産を取得する代償として、「誰に」「いつまでに」「いくら」支払うのかを記載しなければなりません。そして相続人全員が署名捺印を行い、相続人それぞれが1通ずつ所有します。
代償金が多すぎる場合に贈与税がかかる
代償金は原則として贈与税の課税対象外です。そのため遺産分割協議書に代償金を支払う旨記載する必要があるわけです。しかし例外的に、代償金に贈与税が課税されるケースがあります。それは次のようなケースです。
代償金の額が代償金を受け取る相続人の法定相続分を超える場合、その超えた部分
上記でも挙げたように、相続人が子ども2人だった場合で、1人が6,000万円の不動産を相続し、もう1人は現金のみを2,000万円相続した場合、本来であれば子ども2人それぞれの相続分は4,000万円ずつですので、不動産を相続した方がもう一方に2,000万円を支払うことで、相続した財産の額が公平になります。しかしこのケースで、不動産を相続した側がもう1人に対して3,000万円を代償金として支払った場合、そのうちの1,000万円に対しては贈与税の課税対象となる可能性があります。
死亡保険金によって代償金を支払ったケース
また生命保険金によって代償金を支払った場合、贈与税の課税対象となる可能性があります。なぜなら死亡保険金は受取人の固有の財産になるため、遺産分割の対象になりません。つまり相続財産とみなされないため生命保険によって代償金を支払った場合、本来の相続財産を超えて代償金を支払った場合など贈与税の課税対象となる場合もあります。
代償金を支払えない場合の対処・交渉方法
代償金の支払いは原則として現金によりますが、高額な場合はすぐに支払えないことも考えられます。そのときには以下の対処法を考えましょう。
分割払いを許容する
一括で支払うのではなく、何回かに分けて分割で支払う方法です。ただし分割払いにするためには、支払回数や期日、滞納した場合の対応などを相続人同士で話し合い、全員の同意を得なければなりません。分割払いにした場合は、滞納しないよう注意が必要です。
現物分割・換価分割・共有などのほかの遺産分割を検討する
遺産分割の方法は、代償分割だけではありません。現物分割や換価分割、共有といったほかの方法もあります。
- 現物分割:相続財産を各相続人の相続分割合によって分割し相続する方法
- 換価分割:相続財産を売却し、金銭に換えた後、各相続人で金銭を分割して相続する方法
- 共有:相続財産を各相続人がそれぞれ話し合いで決めた持ち分で共有する方法
場合によっては、代償分割よりも効果的な遺産分割方法があるかもしれません。代償分割だけにこだわらず、ほかの方法も検討してみましょう。
代償金として不動産受け取った場合にかかる不動産取得税の支払い方
相続人が相続財産に含まれる不動産を取得し、他の相続人に代償金を支払う場合、代償金は一般的に現金で支払われます。この場合、追加の税金はかかりません。
ただし代償金の支払い方法として、代償金を支払う相続人が所有する不動産を提供する方法もあります。この場合、代償金として不動産を受け取る側に、不動産取得税が追加で課税される可能性があります。
不動産取得税は、不動産の評価額に基づいて計算され、具体的には以下の税率が適用されます。
- 土地の場合は3%
- 建物の場合は住宅が3%、非住宅が4%
不動産を受け取った相続人は、取得した日から30日以内に、不動産の所在地を管轄する都道府県の税務署に申告し、不動産取得税を支払う必要があるので注意が必要です。
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例えば不動産を相続人同士で共有名義で相続し、その後ほかの相続人の持分を買い取る必要が出てきた場合などにご利用できます。
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