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遺産分割で預貯金はどうやって分ける?方法や手続きの流れ、注意点を解説

遺産分割で預貯金はどうやって分ける?方法や手続きの流れ、注意点を解説
セゾンのくらし大研究 編集部

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預貯金は遺産分割の対象になるため、原則全ての相続人が参加して遺産分割協議で話し合い、誰が相続するかを決める必要があります。

このコラムでは、遺産分割で預貯金を分割する方法と手続きの流れ、注意点を解説。遺産分割前にお金を引き出せる方法も紹介するので、預貯金を相続する方法を知りたい方はぜひ参考にしてください。

この記事を読んでわかること
  • 被相続人の残した預貯金は遺産分割の対象になり、遺産分割協議で誰が相続するかを決める
  • 分割方法は、「口座ごとに分割」「全て現金化した後に分割」「代償分割を利用して分割」の3パターン
  • 相続預金の払い戻し制度(仮払い制度)を利用すれば、遺産分割協議成立前に一定額まで各相続人が単独で預貯金の払い戻しを受けられる
  • 遺産分割成立後は、相続人全員が署名し、実印で押印した遺産分割協議書を作成する
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遺産分割で預貯金を分割する方法

遺産分割で預貯金を分割する方法

亡くなった方(被相続人)が残した預貯金は遺産分割の対象になります。

遺産分割とは、法律で定められた相続人(法定相続人)の全員が参加して、相続財産の分け方を決める手続きです。

預貯金はもともと遺産分割の対象ではなく、相続開始と同時に各相続人の相続分に応じて当然に分割される「可分債権」であり、相続人の合意があれば遺産分割の対象に含められるという扱いでした。

しかし、最高裁の2016(平成28)年の判決において、「預貯金は共同相続人の同意の有無にかかわらず、遺産分割の対象となる」との判断が示され、以後、預貯金は例外的に遺産分割の対象として扱われているのです。

参照元:最高裁大法廷平成28年12月19日決定

遺産分割で預貯金を分割するには、次のような方法があります。

口座によって分ける

被相続人が複数の預貯金口座を持っていた場合に、口座ごとに相続する方を決める方法です。各相続人は、相続する口座が決まった後に金融機関で払い戻しができます。

この方法の欠点は、相続人の間で不公平が生じやすい点でしょう。口座に同じくらいお金が入っていれば問題ないですが、そうでなければ誰がどの口座を相続するかでもめる可能性があります。この場合には、預貯金以外の相続財産や代償金の支払いなどで調整が必要です。

全て現金にしてから分ける

より公平に遺産分割をするには、預貯金を全て解約して現金にしてから分ける方法が有効です。現金なら均等に分けられる他、相続人の間で相続する財産額の調整が必要なケースにも対応しやすくなります。

遺産分割前に預貯金を払い戻すには、まず口座名義人(被相続人)が亡くなり、相続が発生したことを各金融機関に連絡。続いて、相続に伴う預貯金の払い戻しに必要な書類を提出し、その後払い戻しという流れです。具体的な手続きの流れや必要な書類については後述します。

代償分割を利用する

代償分割とは、一人の相続人がある財産を相続し、その財産を相続した相続人がその他の相続人に金銭などを支払い、公平になるよう調整する方法です。

一例として、法定相続人が長男と次男の2人、相続財産が3,000万円の自宅と、1,000万円の預貯金だったケースを考えてみましょう。このケースで長男が自宅、次男が預貯金を相続すると、不公平が生じてしまいます。そこで長男は次男へ代償金として1,000万円を支払い、互いに2,000万円ずつ相続できるようにするのが代償分割です。

代償分割の例

 長男次男
代償分割前自宅3,000万円預貯金1,000万円
代償分割後自宅3,000万円
現金▲1,000万円
(計2,000万円)
預貯金1,000万円
現金1,000万円
(計2,000万円)

代償分割は、相続財産の大部分を分割しにくい不動産などが占めるケースに有効な方法です。

しかし、代償金としてまとまったお金が必要になります。不動産を単独で相続したいけれど、すぐにお金を用意できない。そのような場合には、一度共有名義で不動産を相続し、その後共有持分を買い取る方法が選択肢になります。セゾンファンデックスが提供している「遺産分割ローン」を利用すれば、買取資金を一括で準備できなくても、分割払いで共有持分の買い取りが可能です。

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相続人が預貯金を相続する際の手続きの流れ

相続人が預貯金を相続する際の手続きの流れ

預貯金口座の名義人(被相続人)が亡くなった場合は、遺族や遺言執行人などが預貯金の払い戻しなどの手続きを行う必要があります。ここでは、手続きの流れを確認しておきましょう。

亡くなった方(被相続人)の全ての預貯金口座を把握する

遺産分割を行うには、全ての相続財産を把握しておく必要があります。

亡くなった方(被相続人)が口座を持っている金融機関を把握できていないケースでは、最初に口座の有無を確認しなければなりません。

口座の有無を一括で調べる方法はないため、通帳やキャッシュカードのある金融機関の他、取引していた可能性のある金融機関に個別に照会する必要があります。

最近は通帳やキャッシュカードのないネット銀行やネットバンキングの利用が増えており、スマホアプリやパソコンのブックマークなども確認しておきたい場所です。

確認の手間をかけないためには、口座のある金融機関を生前に聞いておく(本人は家族に伝えておく)、一覧にまとめたものを保管しておくなどの対策が重要でしょう。

金融機関に口座名義人の死亡の連絡をする

被相続人の口座がある金融機関を把握できたら、口座名義人(被相続人)が亡くなったことを連絡します。

連絡方法は、店頭窓口の他、電話やWEBサイトの問い合わせフォームなど。店頭であればその場で、電話やWEBサイトであれば郵送で相続手続きに関する案内と手続書類を受け取ります。

金融機関によって受付や手続きの方法が異なる場合もあるため、公式サイトなどで確認しておきましょう。

死亡(相続開始)の連絡をすると、原則その口座での入出金などの取引が停止されます。家賃や公共料金などの口座振替に利用している場合は、早めに口座変更の手続きも済ませておきましょう。

遺産分割協議を始める

遺言書があれば、原則として遺言書の内容にしたがって遺産分割を行いますが、遺言書がなければ、相続人全員が参加する遺産分割協議により、相続財産の分割方法を決定します。遺言書があっても、相続人全員の同意があれば、遺産分割協議により遺言書と異なる方法での分割も可能です。

遺産分割協議が難航しそうな時は、早めに弁護士に相談した方が良いでしょう。協議に参加できない相続人は、弁護士などを代理人に立てることも可能です。

必要書類を集める

必要書類を集める

相続人による預貯金の払い戻しなど、相続手続きに必要な書類は、遺言書や遺産分割協議書、家庭裁判所による調停調書・審判書の有無によって異なります。必要となる書類をケースごとに確認しておきましょう。

遺言書がある場合

遺言書がある場合には、次のような書類が必要です。

  • 遺言書
  • 検認調書または検認済証明書(公正証書遺言以外の場合)
  • 被相続人の戸籍謄本または全部事項証明(死亡が確認できるもの)
  • その預金を相続する方(遺言執行者がいる場合は遺言執行者)の印鑑証明書
  • 遺言執行者の選任審判書謄本(裁判所で遺言執行者が選任されている場合)

遺言による相続の場合、遺言書の内容によって手続きや必要となる書類が異なります。遺言書とその検認を確認できる書類が準備できた段階で金融機関に相談しましょう。

遺産分割協議書がある場合

遺言書がなく、遺産分割協議書がある場合には、一般的に次のような書類が必要になります。

  • 遺産分割協議書(法定相続人全員の署名・捺印があるもの)
  • 被相続人の除籍謄本、戸籍謄本、全部事項証明書のいずれか(出生から死亡まで連続したもの)
  • 相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書
  • 相続人全員の印鑑証明書

家庭裁判所の調停や審判が行われた場合

遺産分割協議で話し合いがまとまらなかった時には、家庭裁判所に決定を委ねる場合があります。家庭裁判所で調停や審判が行われると調停調書や審判書が出され、預貯金の相続の手続きで必要になるでしょう。

  • 家庭裁判所の調停調書謄本または審判書謄本
  • その預金を相続する方(遺言執行者がいる場合は遺言執行者)の印鑑証明書

審判書に確定表示がない場合は、審判が確定していることを証明する「審判確定証明書」も必要です。

遺言書も遺産分割協議書もない場合

遺言書も遺産分割協議書もない場合には、一般的に次のような書類が必要になります。

  • 被相続人の除籍謄本、戸籍謄本、全部事項証明書のいずれか(出生から死亡まで連続したもの)
  • 相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書
  • 相続人全員の印鑑証明書

参照元:一般社団法人全国銀行協会|預金相続の手続に必要な書類

金融機関での確認後に払い戻される

必要書類が揃ったら、記入した手続書類と併せて金融機関に提出します。金融機関での確認完了後、預貯金の払い戻しまでは、通常1週間から1ヵ月程度。不備があると、さらに時間がかかる可能性があるため、よく確認してから提出しましょう。

参照元:一般社団法人全国銀行協会|預金相続の手続の流れ

遺産分割協議が終わらなくても預貯金を引き出すことはできる?

遺産分割協議が終わらなくても預貯金を引き出すことはできる?

相続財産となった預貯金は、遺産分割終了前でも引き出すことが可能です。これには2019年7月の法改正によって新たに設けられた「相続預金の払い戻し制度(仮払い制度)」を利用します。

相続預金の払い戻し制度について

相続預金の払い戻し制度を利用すれば、生活費や葬儀費用の支払いなどでお金が必要になった場合、遺産分割協議成立前であっても各相続人は単独で一定額までお金を引き出すことが可能です。

相続預金の払い戻し制度には、次の2つの制度があり、手続きに必要な書類や払い戻せる金額に違いがあります。

【相続預金の払い戻し制度の概要】

家庭裁判所の判断により払い戻しができる制度家庭裁判所の判断を経ずに払い戻しができる制度
各相続人が家庭裁判所に申し立てを行い、その審判を得ることで相続預金の全部または一部の仮取得が認められ、金融機関から単独で払い戻しを受けられる制度。

家庭裁判所に遺産分割の審判や調停が申し立てられている場合かつ、生活費の支払いなどのため仮払いが必要であり、他の共同相続人の利益を害しない場合に限り認められる。
各相続人が相続預金のうち一定額まで、家庭裁判所の判断を経ず金融機関から払い戻しを受けられる制度。

相続預金の払い戻し制度の利用に必要な書類と払い戻せる上限額

相続預金の払い戻し制度の利用に必要な書類と、各相続人が単独で払い戻せる上限額は次のとおりです。

【制度の利用に必要な書類と各相続人が単独で払い戻せる上限額】

 家庭裁判所の判断により払い戻しができる制度家庭裁判所の判断を経ずに払い戻しができる制度
必要書類家庭裁判所の審判書謄本(※1)
預金払戻希望者の印鑑証明書
本人確認書類
被相続人の除籍謄本、戸籍謄本、全部事項証明書のいずれか(※2)
相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書 預金払戻希望者の印鑑証明書
本人確認書類
単独での払戻可能上限額家庭裁判所が仮取得を認めた金額相続開始時の預金額(※3)×3分の1×払い戻しを行う相続人の法定相続分
(同じ金融機関では150万円が上限)
※1:審判書に確定表示がない場合は、審判確定証明書も必要
※2:出生から死亡まで連続したもの
※3:口座・明細基準

払い戻しの手続きは、上記の書類を、各金融機関所定の手続書類や通帳などと併せて金融機関に提出して行います。提出が必要な書類は金融機関によって異なる場合があるため、あらかじめ確認しておきましょう。

「家庭裁判所の判断を経ずに払い戻しができる制度」における、各相続人が単独で払い戻せる金額の上限は、残高証明書などに記載された口座残高を基準に計算されます。この金額の範囲内であれば、他の相続人の同意がなくても、金融機関に対する請求のみで預貯金を払い戻すことが可能です。

例として、相続人が配偶者、長男、次男の3人(法定相続分は、順に2分の1、4分の1、4分の1)、相続開始時の預金残高がA銀行2,100万円、B銀行300万円の場合に、長男が単独で払い戻せる金額を計算してみましょう。計算式は次のとおりです。

【A銀行から払い戻せる金額】

相続開始時の預金残高2,100万円×3分の1×長男の法定相続分4分の1=175万円

相続人一人が1金融機関で払い戻せる上限額である150万円を超えているため、払戻可能額は150万円です。

【B銀行から払い戻せる金額】

相続開始時の預金残高300万円×3分の1×長男の法定相続分4分の1=25万円

このケースで長男が単独で払い戻せる金額は、A銀行から150万円、B銀行から25万円の合計175万円です。

払い戻された預貯金の使いみちに制限はないため、払い戻しを行なった相続人が自由に使えます。

相続預金の払い戻し制度を利用する際の注意点

相続預金の払い戻し制度を利用する際には、次のような点に注意が必要です。

  • 書類を提出してから払い戻しまでには一定の時間がかかる
  • 誰が相続するかすでに確定している預貯金は対象にならない
  • この制度を利用して払い戻された預貯金は、その後の遺産分割で払い戻しを受けた相続人が取得するものとして調整が図られる

相続預金の払い戻し制度の対象になるのは、被相続人の残した預貯金のうち、誰のものになるか確定されていないものです。そのため、有効な遺言で誰が相続するか指定されている場合、被相続人との間で預貯金の死因贈与契約がある場合など、誰が相続するかすでに確定している預貯金には利用できません。

参照元:一般社団法人全国銀行協会|ご存知ですか?遺産分割前の相続預金の払戻し制度

相続財産に預貯金が含まれる場合の注意点

相続財産に預貯金が含まれる場合の注意点

預貯金が相続財産に含まれる場合は、次のような点に注意が必要です。

被相続人死亡後、勝手に預貯金を引き出すことはNG

金融機関へ相続開始を届け出る前に、相続財産となった預貯金を勝手に引き出してしまうと、その時点で「単純承認」をしたと見なされ、相続放棄や限定承認ができなくなってしまいます。

相続財産には、現金や不動産などプラスの財産(資産)もあれば、借金のようにマイナスの財産(債務)も。相続人は本来、プラスもマイナスも含めた全ての財産を相続する「単純承認」の他、全ての財産を相続しない「相続放棄」、プラスの財産を限度にマイナスの財産を相続する「限定承認」を選択できます。しかし、一度でも預貯金を引き出してしまうと、選択の余地がなくなってしまうのです。

マイナスの財産の方が大きい状態で単純承認してしまうと、相続により多額の借金を負うことにもなりかねません。

特に全ての相続財産を把握できていない状態での単純承認はこのようなリスクを伴うため、預貯金を勝手に引き出すのは避けましょう。単純承認する予定であっても、誰が相続するか決まっていない段階で勝手に預貯金を引き出す行為は、他の相続人とのトラブルの原因になります。

相続手続きは早めに

相続税の申告には期限があり、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヵ月以内に納税まで済ませなければなりません。

相続の手続きは、預貯金を含めた全ての相続財産の把握、相続人全員による合意、書類の準備など、時間がかかります。納付すべき相続税がある場合、申告期限に間に合わないと延滞税もかかってしまうのです。

遺産分割協議が成立するまでは相続財産の売却など処分も自由にできないため、手続きはなるべく早めに行いましょう。

遺産分割協議の内容は書面に

遺産分割協議が成立したら遺産分割協議書を作成し、決定した内容を書面で明確に残しておきましょう。遺産分割協議書の作成は義務ではありませんが、後々のトラブル防止や相続手続きに役立ちます。

遺産分割協議書には、相続人全員が署名し、実印で押印しましょう。法律上は実印での押印が義務付けられているわけではなく認印でも遺産分割協議書は有効です。

しかし、預貯金の解約(払い戻し)や不動産の相続登記、相続税の申告など、相続手続きでは、「相続人全員の実印が押印された遺産分割協議書」と「相続人全員の印鑑証明書」の提出が求められます。相続手続きをスムーズ進めるためにも、相続人全員が実印で押印した遺産分割協議書を作成しておきましょう。

なお、相続人が一人しかいない場合や、全ての相続財産を遺言書の内容どおりに分割した場合には遺産分割協議書を作成しなくてもかまいません。

おわりに

被相続人の残した預貯金は遺産分割の対象になり、遺言書で指定がある場合を除いて、原則相続人全員が参加する遺産分割協議で誰が相続するかを決める必要があります。遺産分割協議が成立したら、相続人全員が署名し、実印を押印した遺産分割協議書を作成しましょう。

なお、遺産分割協議が成立する前に預貯金を勝手に引き出すのは、単純承認とみなされてしまいます。すぐにお金が必要な場合は、相続預金の払い戻し制度(仮払い制度)を利用しましょう。

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