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親を扶養に入れるメリットやデメリットは?条件や節税効果を解説!

親を不要に入れるメリットやデメリットは?条件や節税効果を解説
セゾンのくらし大研究 編集部

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親の退職などをきっかけに、親を扶養に入れようかと考える方も多いでしょう。ただし、親を扶養に入れることは、メリットだけでなくデメリットもあるため、よく理解しておくことが大切です。このコラムでは、親を扶養に入れる条件やメリット・デメリット、節税効果についても解説していきます。親を扶養に入れることについて気になる方は、ぜひご一読ください。

この記事でわかること

扶養には「所得税法上の扶養」と「健康保険上の扶養」の2種類があり、親を所得税法上の扶養に入れると「扶養控除」が受けられます。また、親を健康保険上の扶養に入れる場合は、親が子の健康保険に加入でき、保険給付が受けられます。

親を扶養に入れることで、子の側は所得税を節税でき、親は健康保険料を負担しなくても保険給付が受けられるメリットがあります。一方、子は親を支援するために経済的な負担がかかる、高額療養費の自己負担額が多くなることなどがデメリットです。そのため、親を扶養に入れることを検討する方は、メリット・デメリットを親と共有し、お互いによく理解したうえで判断することが大切です。

そもそも「扶養」とは?

家族

扶養とは、自力で生きていくのが難しい方を、親族等が援助すること。一般的に、子どもや収入のない(または収入の少ない)配偶者、兄弟姉妹、親が扶養の対象になります。また、扶養には2つの種類があります。次の項目で詳しく見ていきましょう。

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扶養には2種類ある

扶養には、「所得税法上の扶養」と「健康保険上の扶養」があり、それぞれ内容が違います。

所得税法上の扶養

所得税法上の扶養とは、所得税法で控除の対象となる親族を養うことです。所得税の納税者は、条件に当てはまる親族を扶養している場合に、所得控除(扶養控除)が受けられます。この場合の扶養される親族が「扶養親族」です。

健康保険上の扶養

健康保険上の扶養とは、健康保険の扶養制度を受けられること。健康保険の被保険者に扶養されている親族は、自身で保険料を負担しなくても、ケガや病気、出産のときなどに保険給付を受けられます。また、健康保険上の扶養で扶養される方が「被扶養者」です。

親を扶養に入れるための条件とは?

病院,保険証

親を扶養に入れるときには、一定の条件を満たしている必要があります。扶養に入れるためには、「所得税法上の扶養」と「健康保険上の扶養」のそれぞれに条件があり、条件を満たせば両方の扶養に入ることが可能です。下の項目で詳しく見ていきましょう。

所得税法上の扶養に入れる条件

所得税法上の扶養に入れるためには、主に次の条件があります。

  • 納税者と扶養親族が生計を一にしていること
  • 年間合計所得金額が480,000円以下であること(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
  • 青色申告者の事業専従者として、その年を通じて一回も給与支払いを受けていない、または白色申告者の事業専従者ではないこと

扶養に入れるための大前提として、納税者と「生計を一にしている」ことが条件です。「生計を一にしている」とは、複数人がひとつの家計で生活していることを指し、親と同居している場合や、別居でも生活費を仕送りしている場合などが条件に当てはまります。ただし、老人ホームなどへ入居している場合は、同居とはみなされません。

また、所得税法上の扶養に入れるためには、年間合計所得金額の条件があります。親が年金を受給しているなど、収入がある場合は、年間の所得金額または給与収入の金額を確認しましょう。

さらに、青色申告者の事業専従者、または白色申告者の事業専従者に対しての条件もあります。青色申告者の事業専従者とは、家族で同じ事業を行っているときの家族従業員のこと。また、白色申告者の事業専従者とは、青色申告以外で申告している個人事業主の家族従業員のことです。

健康保険上の扶養に入れる条件

健康保険上の扶養に入れる主な条件は、次のとおりです。

  • 日本国籍があり日本国内に住民票があること
  • 扶養者と被扶養者が生計を一にしていること
  • 収入が制限額を超えていないこと

健康保険上の扶養に入れるためには、日本国籍があり日本国内に住民票があること、扶養者と生計を一にしていることが条件。また、収入の制限額が次のように決められています。

  • 年間収入130万円未満(60歳以上または障害者の場合、年間収入180万円未満)かつ、以下のいずれかに該当すること
  • 同居の場合:収入が扶養者の収入の半分未満
  • 別居の場合:収入が扶養者からの仕送り額未満

年間収入とは、被扶養者に認定された時点の年間の見込み収入額のことです。なお、被扶養者の収入には、公的年金、雇用保険の失業等給付、健康保険の病床手当なども含まれるため、年間収入を計算する場合は注意しましょう。さらに、同居と別居の場合では条件が違います。同居の場合は被扶養者の収入が、扶養者の収入の半分未満であること、別居の場合は、被扶養者の収入が仕送りの額よりも少ないことが条件です。

親を扶養に入れるメリット・デメリットとは?

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一定の条件を満たせば親を扶養に入れることができますが、親を扶養に入れる場合は、メリットだけでなく、デメリットもしっかりと理解したうえで検討することが大切です。では、具体的にどのようなメリット・デメリットがあるのか見ていきましょう。

親を扶養に入れるメリット

親を扶養に入れる場合は、次のメリットが考えられます。

  • 子どもの扶養控除を受けられ、節税できる
  • 親の健康保険の保険料の負担がない
  • 親は子どもの支援を受けられる

子の側は扶養控除により、所得税の控除が受けられるため、節税ができることがメリット。また、親側は、健康保険上の扶養に入ることで、保険料を負担しなくても子の健康保険に加入でき、保険給付が受けられます。

高齢になると、特にケガをしたり病気をしたりするリスクが高くなるため、保険料の自己負担なしで健康保険の給付が受けられることは大きなメリットです。

親を扶養に入れるデメリット

一方で、親を扶養に入れる場合は、次のデメリットが挙げられます。

  • 子どもの経済的な負担が増える
  • 高額療養費の自己負担額が増える
  • 働いている親は自身で健康保険に加入した方がメリットがある場合がある

親を扶養に入れる場合、「生計を一にしている」ことが条件になるため、子ども側の経済的な負担が増加します。

また、親を扶養に入れると、高額療養費制度を利用する場合にデメリットがあります。高額療養費制度は、1ヵ月に支払った医療費が自己負担上限額を超えた場合に、超えた分の金額が支給される制度です。1ヵ月の医療費の自己負担上限額は、世帯ごとの所得区分によって決まります。親が扶養に入っていて高額な医療費がかかった場合は、子の収入が基準に入るため自己負担上限額が高くなり、自己負担の割合が多くなる可能性があるのです。

さらに、親が働いている場合は、親自身の勤め先から健康保険に加入した方がメリットがある場合もあります。2022年10月からは、パート・アルバイトの方の、社会保険の加入が義務になりました。これにより、病床手当などの手当てが充実するなどのメリットがあります。親が扶養に入る場合は、そのような手当などが受けられないため、デメリットといえるでしょう。

親を扶養に入れると節税効果はどのくらい?

節税

では、親を扶養に入れるとどのくらい節税できるのでしょうか?扶養控除の金額を確認し、試算をしてみましょう。

扶養控除の金額

扶養控除の控除額は、扶養親族の年齢や同居・別居などの「区分」によって変わります。以下の表をご確認ください。

区分所得税控除額
一般の控除対象扶養親族380,000円
老人扶養親族(同居老親等以外の者)480,000円
老人扶養親族(同居老親等)580,000円

扶養控除の区分には、「一般の控除対象扶養親族」「老人扶養親族」「同居老親等」などがあります。「一般の控除対象扶養親族」は、扶養親族のうち、扶養が決定した年の12月31日時点で16歳以上の方、「老人扶養親族」は、扶養が決定した年の12月31日時点で70歳以上の方のことです。また、「同居老親等」とは、老人扶養親族の中で同居している父母・祖父母のことをいいます。ただし、老人ホームなどへ入居している場合は「同居」とはならないため注意が必要です。

参照元:No.1180 扶養控除|国税庁

節税金額の試算

扶養控除の控除額がわかったところで、どのくらい節税できるのか計算しましょう。

<所得税率一覧表>

課税される所得金額税率
1,000円~1,949,000円5%
1,950,000円~3,299,000円10%
3,300,000円~6,949,000円20%
6,950,000円~8,999,000円23%
9,000,000万円~17,999,000円33%
1,800万円~39,999,000円40%
40,000,000円以上45%

例として、課税所得金額が600万円の方が、70歳の親を扶養に入れて同居した場合に、所得税がどのくらい節税できるか試算してみます。節税の目安金額は、扶養控除の金額に所得税率をかけて求めることができます。この例では、扶養控除の区分は「同居老親等」なので控除額は580,000円です。また、課税所得金額が600万円の場合、所得税率は20%になります。

<例>
課税所得金額:600万円
扶養控除額:580,000円
所得税率:20%

<試算>
580,000円×20%=116,000円

この例では、所得税は116,000円節税になります。ただし、実際の計算には社会保険料の控除や扶養家族の人数などが含まれるため、あくまでもひとつの目安としてください。

参照元:No.2260 所得税の税率|国税庁

健康保険上の扶養に入れる場合

親を健康保険上の扶養に入れても子の節税効果は特にありません。しかし、親の健康保険料を支払わなくて良いため、ひとつの世帯で見るとひとりの健康保険料で済み、保険料の支払額の負担が最小限で済むことになるでしょう。

親を扶養に入れる手続き

手続き

親を扶養に入れるときには、どのような手続きを行うのでしょうか?「所得税法上の扶養」と「健康保険上の扶養」では手続きの方法も違うため、それぞれについてご紹介します。

所得税法上の扶養に入れる手続き

親を所得税法上の扶養に入れる場合は、子の勤め先で年末調整の際に手続きが必要です。「扶養控除等申告書」の扶養親族欄に、名前や住所などを記入して担当の方に提出してください。また、年末調整で申告をしていなかった場合は、確定申告をすると扶養控除を受けることができます。

健康保険上の扶養に入れる手続き

親を健康保険上の扶養に入れる場合は、子の勤め先に「被扶養者届」を提出してください。提出時期に期限はないため、健康保険上の扶養となるときに勤め先の担当者に書類を提出しましょう。なお、被扶養者届と共に、住民票など続柄が確認できる書類、収入要件が確認できる書類が必要です。

また、該当する方は、通帳の写しなど、仕送りの事実と仕送りの金額が確認できる書類などが必要になります。

親を扶養に入れるときの注意点

チェックポイント

親を扶養に入れるメリット・デメリット、手続きなどを見てきましたが、親を扶養に入れる際、注意したい点もあります。下の項目で確認しておきましょう。

親が75歳以上になると健康保険上の扶養には入れない

75歳以上の親は健康保険上の扶養に入れることができないため注意が必要です。これは、75歳以上になると、「後期高齢者医療保険制度」に加入することになるためです。今まで子の扶養になっていた親が75歳になった場合も、扶養を外れることになります。

「所得金額調整控除」の適用になる場合も

公的年金と給与の両方の収入がある親を所得税法上の扶養に入れるとき、「所得金額調整控除」に注意が必要です。年間収入を計算し、扶養親族の条件を満たしているかを確認しますが、公的年金と給与収入の両方があるときは合計金額を調整します。具体的には次の計算式でご確認ください。

給与所得控除後の給与の金額+公的年金等控除後の雑所得の金額-100,000円=控除額

なお、給与所得控除後の給与などの金額と公的年金などにかかる雑所得の金額が100,000円を超える場合はどちらも100,000円で計算します。扶養の条件に当てはまるか計算するときは、所得金額調整控除が適用になるケースがあることも覚えておきましょう。

おわりに 

親を扶養に入れると、扶養控除が受けられる、健康保険の給付が受けられるなどのメリットがあります。しかし、子の経済的負担や、高額療養費の自己負担額が高くなってしまうなどのデメリットもあります。親を扶養に入れるか考えている方は、こうしたメリット・デメリットを親と共有し、お互いによく理解したうえで判断することが大切です。お互いの負担にならないよう、よく話し合い、検討するようにしましょう。

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