遺留分侵害額請求権とは、相続が不公平な遺言執行や生前贈与が行われたことにより、遺留分を侵害された法定相続人がその侵害された侵害分について金銭で支払うよう求める権利のことです。2019年の民法改正前は遺留分減殺請求権といわれていたので、記憶に残っている方もおられるのではないでしょうか。
ただ実際に遺留分侵害額を請求する際には、時効があることやその計算方法などを知っておく必要があります。今回は遺留分侵害額請求権の時効や、遺留分の計算方法、そして請求の手順について解説します。
遺留分侵害額請求権とは
そもそも遺留分とは、一定の法定相続人に認められた最低限の相続財産の取り分のことを指します。
そのため仮に遺言書で相続人の1人に全財産を相続させると書かれていても、ほかの法定相続人は自身の遺留分を請求する権利があります。
遺留分は各法定相続人の法定相続分の2分の1です。仮に配偶者と子ども(一人)が法定相続人である場合、配偶者そして子どもの法定相続分は2分の1ずつで遺留分は各々4分の1となります。ただし両親だけが相続人の場合、遺留分は法定相続分の3分の1になる点に注意が必要です
ちなみに遺留分が認められている法定相続人は、配偶者、子ども・直系尊属となっており、兄弟姉妹には遺留分はありません。つまり兄弟姉妹には遺留分侵害額請求権は認められていません。民法にもその内容が明記されています。
遺留分の時効における3つのパターン
遺留分侵害額請求はいつでもできるわけではなく、時効があることを知っておきましょう。
遺留分侵害額請求の時効には以下の3つのパターンがあります。
【時効1年】相続開始と遺留分侵害を知ってから
まず相続開始と遺留分の侵害を知ってから1年以内に請求しなければ時効になってしまい、その後は遺留分侵害額請求ができなくなります。
【時効10年(除斥期間)】相続開始から
相続が開始してから10年(被相続人が亡くなってから10年)経過すると、たとえ相続が発生したことを知らなかったとしても、遺留分侵害額請求権は消滅しますので行使することができません。
【時効5年】遺留分侵害額請求を行使してから
遺留分侵害額請求権を行使した後も注意が必要です。金銭債権の時効です。遺留分侵害額請求を行った後、遺留分侵害額を金銭請求する「金銭債権」が発生します。この金銭債権の時効は5年です。(2020年3月31日以前に遺留分侵害額請求を行っている場合は10年です。)
遺留分侵害額の計算方法
ここからは、遺留分侵害額を求める計算方法について解説します。
遺留分割合を確認
まず遺留分の割合を確認することからはじめます。遺留分の割合については、遺留分権利者が誰かによって異なります。上記でも少し述べたとおり、法定相続人である配偶者や子どもの遺留分の割合は法定相続分の2分の1で、直系尊属である親が法定相続人になる場合は法定相続分の3分の1です。
相続のパターン別の遺留分割合については、以下のとおりです。
(1)相続人が配偶者もしくは子どものみ:配偶者もしくは子どもが2分の1
(2)相続人が配偶者と子ども:配偶者と子どもがそれぞれ4分の1
(3)相続人が親のみ:親が3分の1
(4)相続人が配偶者と親:配偶者が3分の1、親が6分の1、兄弟姉妹は権利なし
(5)相続人が配偶者と兄弟姉妹:配偶者は2分の1
(6)相続人が兄弟姉妹のみ:権利なし
基準となる基礎財産額を確認
遺留分の割合を確認したら、次は遺留分を計算する基礎となる財産額を確認します。
基準となる基礎財産額は、
相続財産+一定の範囲の贈与財産-債務の額
によって求められます。
一定の範囲の贈与財産とは、以下の贈与による財産を指します。
- 相続開始前1年以内に行われた贈与
- 贈与者および受贈者が、その贈与が遺留分権利者に損害を与えることを知って行った贈与
- 相続開始前10年以内の贈与で、相続人への特別受益に該当するもの
基礎財産額に遺留分割合を掛け合わせる
2で求めた基礎財産額に遺留分割合を乗じたものが、遺留分侵害額です。
遺留分侵害額請求の4つのやり方
遺留分侵害額請求を行う方法には、以下の4つがあります。
当事者同士で話し合う
当事者同士で話し合いを行います。話し合いのうえ合意が得られたら合意書を作成し、その合意書に基づいて金銭の支払いを受けます。
遺留分侵害額請求書を内容証明郵便で送付してから話し合う
当事者同士で話し合っても合意に至らない場合、内容証明郵便を利用し「遺留分侵害額請求書」を送付します。そして相手と話し合い、遺留分侵害額の精算方法を取り決めたうえで、金銭の支払いを受けます。遺留分侵害額請求書も内容証明郵便で送っておくようにしましょう。
家庭裁判所に遺留分侵害額請求調停を申し立てて話し合う
遺留分侵害額請求書を内容証明郵便で送っても相手が交渉に応じない場合は、家庭裁判所に対して「遺留分侵害額請求調停」を申し立てます。調停を申し立てることで調停委員会による調停が行われ、相手と話をすることが可能になります。
そして話し合いのうえ相手との合意が取れれば調停が成立することになり、その後合意の内容どおりに金銭の支払いを受けられます。
地方裁判所で遺留分侵害額請求訴訟を起こす
調停委員会による調停における話し合いでも合意が得られなかった場合は、地方裁判所に対して「遺留分侵害額請求訴訟」を起こすことになります。そして訴訟において遺留分の主張であることの証明ができれば、地方裁判所から相手方に対して遺留分侵害額の支払い命令を行います。それでも相手方が支払わない場合は差し押さえも可能になります。
おわりに
相続においては遺留分の侵害に限らず、不動産など分割しにくい財産については遺産分割協議においてトラブルの元になりやすいものです。相続財産の中に不動産があり、相続の際のトラブルを気にしておられるならば、セゾンのリースバックの利用をおすすめします。
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セゾンのリースバックであれば、このように住み続けることを維持しながら不動産の現金化が行えるため相続で相続人に平等に分ける際に活用できます。また最近では子どもも、自身の家を持つ傾向にあり、不動産を残しておくことでその活用に困り、結局空き家になってしまうという問題に発展する可能性もあります。そのような事態を防ぐためにも早めの相続対策が望まれます。
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