二世帯住宅は気を遣ううえ、プライバシーも気になるなど、いくつかのデメリットがあげられます。これらのデメリットを回避しやすい二世帯住宅の間取りがあるのをご存知でしょうか。しかも、税金の軽減措置を利用してお得に家を建てることもできます。
今回はそんな夢のような二世帯住宅の間取り「完全分離型」をご紹介します。将来二世帯住宅を検討している方や、これから家を建てようと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
この記事でわかること
二世帯住宅には大きく分けて3つの間取りタイプがあり、そのなかでもおすすめなのが完全分離型住宅です。生活空間が完全に分離されているので、プライバシーを確保しやすく、生活リズムが異なる場合でも生活音を気にせず過ごすことができます。
また、完全分離型二世帯住宅の建築コストは比較的高額になりがちですが、住宅ローンの控除や税金の軽減措置を利用することができる可能性があるのも魅力です。
間取りは縦割り、横割りなどがあり、それぞれの世帯の暮らしやすさを考慮することができます。完全分離型二世帯住宅は40~50坪あれば、2階建てでそれぞれ3LDKほどの間取りを確保することができるでしょう。
二世帯住宅とは?
親世帯と子世帯が共に生活することが前提となっている住宅を二世帯住宅といいます。トイレや階段など生活に必要な設備を共有する間取りや、世帯ごとに生活空間が分かれている間取りなど、目的や用途、配慮する点によってさまざまな配置ができるのが特徴です。二世帯住宅にはどのようなメリットとデメリットがあるのかご紹介します。
二世帯住宅のメリットとデメリット
二世帯住宅はそれぞれの世帯がお互い助け合えるというメリットが大きいでしょう。世帯それぞれにも次のようなメリットが考えられます。
まず、親世帯にとってのメリットは、老夫婦だけで暮らすよりも防犯面で安心できます。また、病気やケガなどを患ってしまった際にも、子どもが同じ家に住んでいたら心強いでしょう。もちろん、子世帯にとってのメリットもあります。
まず、家事を分担することで負担が軽減できます。また育児をサポートしてもらえることや、子どもがある程度大きくなってからも留守番をさせやすいでしょう。
一方、二世帯住宅の悩みの種となるデメリットも考えられます。家の中で共用する場所では、プライバシーが守りづらくなってしまうでしょう。ライフスタイルや、家事の方法の違いなどストレスに感じてしまう部分もあるようです。
二世帯住宅の間取りはしっかり検討することが大切
親世帯が高齢の場合、いずれ介護が必要になる可能性もあります。その場合、階段を使わなくてもよい間取りにするなど、バリアフリーにも配慮する必要があります。
また、子どもが小さな家庭では、子育てしやすい環境も重視しなければなりません。二世帯住宅の間取りは、後々トラブルに発展したり、後悔したりしないよう慎重に検討しましょう。
二世帯住宅は大きく分けて3タイプの間取りがある
二世帯住宅は大きく分けて3タイプの間取りがあります。それぞれの特徴について詳しく説明するので順番に見てみましょう。
完全同居型
ひとつの家を親世帯と子世帯で共有して暮らす間取りです。玄関やリビング、キッチンなども一緒に利用するため、同居している感覚を持ちやすいです。3タイプの中では最もローコストで建てられるというメリットもあります。
一方で、プライバシーが守りづらかったり、生活リズムが合わないと生活音が気になってしまったりするデメリットも考えられるでしょう。
一部共有型
玄関などの生活に必要な設備を一部共有し、キッチンや浴室などの設備は親世帯と子世帯で分ける間取りです。階段を利用しなくても生活できるよう、1階部分を親世帯の居住スペースにして、2階以上に子世帯が暮らすケースが多くなっています。一緒に生活していますが、お互いプライバシーを確保しやすいのが特徴です。
完全分離型
生活空間を親世帯と子世帯で完全に分け、それぞれの居住スペースで暮らせるようにした間取りです。玄関やリビング、キッチンなどそれぞれ世帯ごとに設けられています。
別々の空間で生活しながらも、必要があれば助け合うことができるでしょう。お互いプライバシーへの配慮や、生活リズムが異なる場合でもストレスを感じずに生活することができます。
完全分離型二世帯住宅がおすすめの理由とは
先述したように完全分離型二世帯住宅は、二世帯住宅の間取り3タイプの中でも、プライバシーを確保しやすく、ストレスを感じづらいのが特徴です。長く暮らす家なので、それぞれの世帯がほど良い距離感を保ちながら、安心して暮らせるのは重要なポイントといえます。
完全分離型二世帯住宅のメリット
さらに詳しく完全分離型住宅で暮らすメリットを見ていきましょう。
世帯それぞれのプライバシーが守りやすい
完全分離型はお隣さんのような感覚に近く、程良い距離感を保ちながら暮らせるのが魅力です。間取りが完全に分離されていてそれぞれの生活スペースが確保されているので、しっかりプライバシーが保てます。
各々の生活リズムで暮らしやすい
親世帯は早めに夕食をとって夜はゆっくり過ごすこともあるでしょう。しかし、子世帯は仕事から帰宅し、子どもとお風呂に入ったり、遅い時間の夕食になってしまったりと過ごし方が異なる場合が多いです。完全分離型住宅なら、親世帯と子世帯が、生活リズムや生活音を気にせずに暮らすことができるでしょう。
家計の管理がしやすい
後ほど詳細を説明しますが、光熱費の管理は二世帯で契約することも、それぞれの世帯で契約することもできます。
二世帯住宅で気になりがちな家計や光熱費などの管理も、完全分離型ならそれぞれの世帯で管理することが可能です。使用した分だけが支出となるので、ストレスを感じずに生活することができるでしょう。
将来の運用性が望める
二世帯住宅は子世帯の転勤や、親世帯の介護施設への入居などが考えられるため、同居を解消する可能性も考えられます。
完全分離型住宅は片方の世帯スペースを賃貸として活用することを前提に購入するケースも見込めるでしょう。二世帯住宅を使いたい方にとって、一部共有型や完全同居型よりも好まれる傾向があります。
完全分離型二世帯住宅のデメリットと対策
二世帯住宅の完全分離型にはさまざまなメリットがありますが、一方でデメリットにはどのような点があげられるか解説します。また、デメリットへの対処法もご紹介するので参考にしてみてください。
二世帯住宅の間取りタイプの中ではコストがかかりやすい
完全分離型住宅は、それぞれの世帯に生活に必要な玄関、キッチン、トイレなどの設備を配置する必要があるため、二世帯住宅の間取りタイプの中では高額になります。単純に2棟分の建築費がかかると考えておきましょう。
しかし、暮らしやすさや将来の資産価値のことを考えると、建築コストより魅力的という方が多く人気の間取りになっています。
コミュニケーションが少なくなりやすい
他の二世帯住宅の間取りに比べてプライバシーが確保できますが、コミュニケーションが少なくなりがちです。
対策として、間取りを工夫して庭や屋上などに共有スペースを設けたり、双方のスペースを行き来できるようなドアを取り付けたりすると良いでしょう。子世帯に小さな子どもがいる場合は、見通しの良い通路や中庭を設ければ子どもが行き来するときでも安心です。
また双方の予定を合わせて、週に1度一緒に食事をするなどの交流の機会を設けるのも良いでしょう。
知っておくべき完全分離型二世帯住宅のお金の話
完全分離型二世帯住宅にするにあたって心配なのが費用です。それぞれの世帯に居住スペースや生活に必要な設備を設ける完全分離型二世帯住宅は、他の二世帯住宅に比べどうしても建築コストがかかってしまいます。
しかし、完全分離型二世帯住宅に住んだり、新たに建てたりすると、税金の軽減措置を受けられるケースがあるのです。詳しく紹介していきましょう。
税金の軽減措置
各世帯に専用の玄関・キッチン・トイレが配置されていて、各世帯で繋がっている廊下などのドアが施錠でき、独立して生活していることが税金に関する優遇を受ける条件になります。ただし、具体的な内容や、定義などは自治体によって異なる場合があるため、家を建てる予定の自治体で詳細を確認しておきましょう。
住宅ローン控除
住宅ローンを利用して家を新築または改築した場合、その年末時点のローン残額によって、所得税と住民税が控除されます。完全分離型二世帯住宅を親世帯と子世帯で区分登記すると、住宅ローンの控除をそれぞれの世帯で受けることが可能です。つまり所得税と住民税の控除を、親世帯と子世帯それぞれ受けることができます。
不動産取得税
50~240㎡の家屋を建てた場合、一世帯につき1,200万円が控除、長期優良住宅の場合は1,300万円が控除されます。つまり、二世帯合わせた控除額は合計2,400万~2,600万円になるため、不動産取得税が大幅に軽減できるのです。
参照元:令和4年度国土交通省税制改正概要 (11枚目)
固定資産税
新築の場合は3年分、長期優良住宅の場合は5年分の固定資産税が、一世帯あたり120㎡まで1/2に減額されます。つまり、二世帯住宅の場合は各々120㎡で合計240㎡まで適用されるので、土地と建物の固定資産税を軽減することが可能です。
参照元:総務省|地方税制度|固定資産税
相続税
二世帯住宅が「特定居住用宅地等」に該当する場合、小規模宅地の特例が適用され、相続税を大幅に節税できる可能性があります。特定居住用宅地等に該当した場合、平成27年の1月1日以後に相続の開始をした自宅の土地のうち、330平方メートル未満の評価額を、80%減額することができます。
ただし、区分登記していると「小規模宅地の特例」が使えなくなることがあるので注意が必要です。先述した住宅ローン控除のことも考えて登記するのであれば、共有登記であれば小規模宅地等の特例が適用され、減税を図ることができます。
参照元:相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁
資金で気になることは住宅ローンの相談窓口が便利
二世帯住宅を建てる際に資金で気になることや、わからないことがあれば住宅ローンの相談窓口に相談してみましょう。
新築はもちろん、二世帯住宅への自宅改築などは思ったより資金がかかってしまうこともあります。住宅ローンの相談窓口では、これから二世帯住宅で暮らしたい方や、今住んでいる家を二世帯住宅に改装したいなど、その方の目的に合わせたプランを提案してくれます。
資金面や費用、登記など不安なことや調べてもわからない事があれば、気軽に相談してみましょう。
光熱費の支払いについて決めておく
間取りを分離しても光熱費は共有になる場合があるので、後々トラブルにならないように話し合っておく必要があります。光熱費を完全に分離することも可能ですが、その場合契約料や基本使用料なども二世帯分かかることを覚えておきましょう。
完全分離型二世帯住宅の間取りについて
完全分離住宅も横割り(階層)で分けるか、縦割り(間取り)で分けるかによって、暮らしやすさが変わってきます。また、敷地が広くなくても充分な居住スペースが設けられる3階建ても人気です。
階層で分かれる横割りタイプ
親世帯が1階だけで暮らせるため、階段を使う必要がなくなります。そのため、高齢になっても安心して生活できるのは大きなメリットといえるでしょう。
また、家の中の階段は子世帯が玄関から居住区へ上がる分1つで済むので、効率良く間取りを配置することができます。しかし、子どもが小さいうちは生活音や足音が気になる場合もあるため、親世帯の寝室の上にリビングや子ども部屋を配置しないなどの配慮が必要です。
左右に分かれる縦割りタイプ
横割りよりも独立性を保ちやすいため、一軒家のイメージに近いのが特徴です。また、横割りほど生活音を気にする必要はありませんが、階段や玄関など使用音が響きやすい場所については、寝室からなるべく離れた場所につくるのが望ましいでしょう。
3階建ての二世帯住宅の間取り
狭い敷地に適しているのは3階建ての二世帯住宅です。ただし、3階建てを縦割りにすると狭い敷地に階段を2ヵ所に作らなくてはならなくなり、余計に狭くなってしまいます。横割りにして1階を親世帯にすれば階段がひとつで済み、親世帯も階段移動がなくなるので安心です。
完全分離型二世帯住宅は何坪の土地があれば建築できる?
40~50坪あれば完全分離型住宅が建てられるとされています。2階建てで横割りタイプを想定した場合でも、それぞれの世帯に玄関やキッチンなどの必要設備を設けても3部屋ほどの居室が確保できるでしょう。暮らしやすさを重視して広々とリビングを12畳、寝室や子ども部屋など8畳間を2つ、その他トイレやお風呂などを配置した場合は50~60坪を目安にすると良いでしょう。
おわりに
二世帯住宅で暮らすには親世帯、子世帯それぞれがメリットもデメリットもしっかり把握し、デメリットにはあらかじめ対策をとることが必要です。デメリットが少なく、コミュニケーション不足などの対策がしやすい完全分離型二世帯住宅は非常に魅力的といえるでしょう。
住宅ローンの控除や税金の軽減措置、完全分離型二世帯住宅の間取りの種類など、これから二世帯住宅にしたいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。