住宅ローンは、できれば早めに返済してスッキリしたいもの。しかし、具体的な繰り上げ返済の方法やどんな方法を選べば良いのか、ご存知ない方も多いのではないでしょうか。
今回は、返済額軽減型と期間短縮型との違いや、選び方のポイント、繰り上げ返済をする際の注意点などを詳しく紹介していきます。繰り上げ返済を考えている方は、どの方法がご自身にとって一番良い方法なのか、確認してみましょう。
- 住宅ローンの繰り上げ返済の方法には、返済額軽減型と期間短縮型があります。
- 期間短縮型と返済額軽減型の特徴を理解し、家庭の状況を含めて検討するのが良いでしょう。
- シミュレーションサイトを活用したり、住宅ローンの専門家と相談したりして検討するのが良いでしょう。
住宅ローンを繰り上げ返済する方法について
繰り上げ返済は、住宅ローンの毎月の返済とは別に、借り入れしている金額のうち一部、もしくは全額を返済することです。一部を繰り上げ返済することを一部繰り上げ返済、残り全額を返済することを全額繰り上げ返済といいます。
通常の返済では返済額に利息が含まれますが、繰り上げ返済で返済した金額は、すべて元金の返済に充てられるため、利息分の支払い額を軽減できます。そのため、最終的に総返済額の削減につながるという仕組みです。
繰り上げ返済には「返済額軽減型」と「期間短縮型」があります。それぞれ詳しく紹介していきます。
返済額軽減型を利用する
返済額軽減型とは、返済期間は変更せずに、繰り上げ返済した金額を毎月の元金部分の返済に充てることで、毎月の利息も軽減され月々の返済額を減らす方法です。毎月の住宅ローンの返済額を軽減できるため、教育資金がかかる時期や、共働き家庭でどちらかが仕事を辞めて収入が減る時期などに、家計の負担が大きくならないようにできます。
期間短縮型を利用する
期間短縮型では月々の返済額は変えずに、繰り上げ返済した元金分、返済期間を短縮できます。期間短縮型では、毎月支払う返済額は変わらないものの、返済期間が短くなるため、短縮された期間分の利息を軽減できるメリットがあります。
繰り上げ返済は住宅ローン控除に影響する?
住宅ローン控除とは、年末時の借入残高の0.7%を、所得税や住民税から控除してもらえる税に関する優遇制度です。新築住宅であれば13年間で最大455万円(2023年までの入居、長期優良住宅や低炭素住宅の場合)の税金が戻ってくるため、住宅ローン控除の対象期間は、繰り上げ返済を控えても良いでしょう。
ただし、控除の対象になるローン残高には上限があるので、上限を超える部分について繰り上げ返済する分には、控除額に影響しません。
参照元:住宅ローン減税 – 国土交通省、りそな銀行 住宅ローン控除(減税)制度の概要と計算方法、手続きの流れを徹底解説
2つの繰り上げ返済方法を選ぶ際のポイント
繰り上げ返済する際に、返済額軽減型と期間短縮型のどちらの方法を利用するのが良いのかは、ご自身の生活やライフスタイルで考えてみましょう。
今後の急な支出が心配な方は「返済額軽減型」
子どもの誕生や大学進学により支出が増える、転職をしたことで収入が減るなど、将来的に家計が変化する場合、住宅ローンを返済するのが負担になる時期があるかもしれません。
住宅ローンの返済額が借り入れ当初のままでは家計が苦しくなると想定された場合は、毎月の返済額を減らせる返済額軽減型を選ぶと良いでしょう。
また、変動金利型や固定金利選択型でローンを組んでいる場合は、金利の変動に注意が必要です。金利の見直しの際に金利が上昇していると、毎月の返済額が増えてしまいます。そのようなときに返済額軽減型で繰り上げ返済をすると、返済額を抑えられます。
なるべく早く完済したい方は「期間短縮型」
返済期間を短くできる期間短縮型は、収入があるうちにローンの返済を終わらせたい方におすすめです。返済期間が35年などの長期で借りた場合は、ローンを組んだ年齢によっては、返済が定年後まで続いてしまうことがあります。
定年後に支払いができるか不安だったり、退職金を利用してまとめて返済しようと考えていた場合でも、返済期間の間に転職をして退職金が充分にもらえなかったりする場合もあります。また、退職金を返済に利用してしまうと老後の生活に不安が生じることもあるため、可能であれば収入があるうちに返済を済ませたいと考える方もいるでしょう。
このような方は、期間短縮型で繰り上げ返済するのがおすすめです。
期間短縮型と返済額軽減型はどっちがお得
期間短縮型と返済額軽減型は、どちらが得なのか疑問に持たれる方も多いのではないでしょうか。
期間短縮型と返済額軽減型における利息軽減は?
期間短縮型と返済額軽減型における、利息軽減効果を比べてみましょう。
例として、住宅ローン残高3,000万円で、借り入れ開始から5年後に約200万円を繰り上げ返済した場合で比較してみましょう。
【住宅ローンの条件】
- 住宅ローン残高3,000万円
- 借入金利3%(全期間固定)
- 返済期間30年
- 元利均等返済(ボーナス返済なし)
この条件で、繰り上げ返済すると、期間短縮型と返済額軽減型とでは、以下のようになります。
【繰り上げ返済した場合の利息軽減効果】
毎月返済額 | 残りの返済期間 | 総返済額 | |
繰り上げ返済しなかった場合 | 126,481円 | 25年 | 4,553万3,160円 |
期間短縮型 | 126,481円 | 22年4ヵ月 | 4,347万5,455円 |
返済額軽減型 | 116,997円 | 25年 | 4,468万7,960円 |
総返済額を比べると、期間短縮型の方が返済額軽減型より約121万円少ないことから、利息の軽減効果は期間短縮型の方が大きいことがわかります。
利息の軽減効果のみを比較した場合については、期間短縮型の方が総返済額は少ないため、得をしていることになりますが、月々の支払額は、返済額軽減型の方が毎月約10,000円軽減されます。毎月の返済額が減ることは、家計においても精神的にも効果が大きいと考える方もいるでしょう。
そのため、一概に期間短縮型の方が得とはいい切れません。ご家庭の状況や家計の様子で選択するのが良いでしょう。
繰り上げ返済シミュレーションのおすすめサイト
繰り上げ返済シミュレーションのおすすめサイトを紹介します。
- 三井住友銀行「一部繰上返済シミュレーション」
三井住友銀行の「一部繰上返済シミュレーション」では、当初の借入金額や借入期間、金利を入力後、繰り上げ返済時期や繰り上げ返済金額を入力するだけで、簡単にシミュレーション結果を出してくれます。繰り上げ返済した場合としなかった場合における、毎月の返済額や総返済額、将来のローン残高などを簡単に比較できます。
三井住友銀行 一部繰上返済シミュレーション
- 金融広報委員会 知るぽると 「繰り上げ返済シミュレーション」
知るぽるとは、お金や金融経済のことを分かりやすく解説・広報する金融広報中央委員会の愛称です。知るぽるとの「繰り上げ返済シミュレーション」は、借入金額や借入金利、繰り上げ返済金額などを入力すると、繰り上げ返済前後の残高だけでなく、一度に期間短縮型と返済額軽減型との違いを表示してくれます。また、返済の明細も1ヵ月単位で提示してくれるため、返済開始から何年後に残高がどのくらいになっているかも一目で把握できます。
【しっかり】繰り上げ返済シミュレーション ─ 今すぐシミュレーションしてみよう! ─ 資金プランシミュレーション|知るぽると
繰り上げ返済の返済額と手数料について
繰り上げ返済をする際には、金融機関やローンの種類により、最低返済額や手数料に違いがあります。
住宅金融支援機構(フラット35)の場合
住宅金融支援機構が提供するフラット35で住宅ローンを組んだ場合には、繰り上げ返済は、それぞれの金融機関の窓口やWEBサイトで行えます。いずれの場合も、手数料はかかりません。ただし、金融機関の窓口で行う場合と、WEBサイトで行う場合とでは、繰り上げ返済時の条件が異なるため、内容をよく確認してみましょう。
繰り上げ返済できる最低額は、金融機関の窓口で行う場合は100万円、WEBサイトで行う場合は100,000円です。どちらの場合も、返済日は月々の返済日と同じです。返済日までに引き落とし口座に費用を用意しておきましょう。
また、金融機関の窓口では、一部繰り上げ返済、全額繰り上げ返済ともにできますが、WEBサイトでは、一部繰り上げ返済しかできません。
フラット35の借り換えをご検討の方は、クレディセゾンの「フラット35」の借り換えサービスがおすすめです。
無料相談から契約の手続きまで電話やメールで完結できます。WEBサイトで借り換えのシミュレーションができるので、まずはシミュレーションをしてみてメリットがあるようであれば無料相談を申し込むのもおすすめです。
詳しい内容やお申し込みは、以下のリンクからお問い合せください。
民間の金融機関の場合
民間の金融機関の場合は、金融機関により手数料や最低限の返済金額は異なります。メガバンクの窓口では一部繰り上げ返済、全額繰り上げ返済ともに数万円の手数料がかかりますが、WEBサイトから申し込んだ場合には無料になるケースもあります。
申し込み方法で手数料が異なることが多いため、申し込みの際には、よく確認してから行うようにしましょう。また返済額は、1円から受け付けているところもあります。ローンを組む際には、繰り上げ返済を行う可能性まで考慮して選ぶと安心でしょう。
繰り上げ返済を利用する際に気をつけたいこと
繰り上げ返済をする際には気をつけておきたい点がいくつかあるため、利用前にチェックしておきましょう。
手元の資金がなくなる住宅ローン貧乏に
繰り上げ返済をすると、利息分の支払いをしなくても済むため、繰り上げ返済したほうが良いと考え、どんどん繰り上げ返済したくなる方もいるかもしれません。しかし、一度繰り上げ返済に充てたお金は戻っては来ません。
手元にまとまったお金ができたからといって、すべて繰り上げ返済に充ててしまうと、急な出費が発生した場合に困ることもあるでしょう。ケガや病気、勤務先の倒産など、いつどんなときにお金が必要になるか分かりません。収入減や大きな支出に備えて、生活費の6ヵ月~1年分程度の貯金は手元に置いておく必要があります。また、教育資金としてのお金など、目的があるお金は繰り上げ返済に充てず、無理のない範囲で行うようにしましょう。
住宅ローン控除の適用条件から外れないように注意する
住宅ローン控除を受けるためには、返済期間が10年以上あることが条件となっています。そのため、住宅ローン控除を受けている場合に繰り上げ返済を検討するとき、期間短縮型を選ぶ際には短縮された後の期間が10年未満にならないように気を付けましょう。
また、住宅ローン控除では、年末時点の借入残高のうちの0.7%が所得税や住民税から控除されます。繰り上げ返済と住宅ローン控除のどちらを優先するかは、住宅ローンを借り入れた際の金利で判断するのが良いでしょう。
住宅ローン控除は、金利の0.7%を還元することで、住宅購入時の負担を軽減する制度です。住宅ローンの借入時の金利が0.7%を超えている場合は、繰り上げ返済を優先するとメリットが大きいと考えられます。一方、借入時の金利が0.7%未満の場合、控除期間中は繰り上げ返済せずに、控除期間終了後に行うと良いでしょう。
団体信用生命保険も連動している
住宅ローンを利用する際に、多くの金融機関で加入する必要があるのが団体信用生命保険(以下「団信」とする)です。
団信は、住宅ローンの返済期間に契約者が高度障害状態または死亡したとき、契約者に代わって生命保険会社が、残りの返済額を金融機関に支払うシステムになっています。団信に加入すると、契約者に万が一のことが起きて支払いができなくなった際にも、残された家族に負担がかかりません。
団信における保険金額は借入残高になるため、繰り上げ返済をすることで借入残高や返済期間が減れば、団信の保険期間や保険金額も減ります。保障内容が薄くなったことで新たな保険に加入することになった場合には、今よりも高い保険料が発生する可能性も考えられます。
そのため、繰り上げ返済をする際には、ご自身が加入している生命保険の保障内容も確認することが大切です。
繰り上げ返済の前に借り換えを検討してみる
高い金利で借り入れしている場合は、繰り上げ返済するよりも、借り換えをしたほうが総返済額が軽減するケースもあります。
そのため、繰り上げ返済を検討する際には、借り換えについても同時に検討してみましょう。ただし、借り換えは新規でローンを組み直すため、諸費用がかかるデメリットもあります。諸費用を支払っても、住宅ローンの借り換えをした方が良いのか、きちんと見極めることが大切です。
繰り上げ返済をする際には、さまざまな検討事項があります。繰り上げ返済をするべきなのか、どの方法を選ぶのが良いかなど、ご自身で判断が難しい場合は住宅ローンのプロに相談してみましょう。
クレディセゾングループが提携するiYellグループの「住宅ローンの相談窓口」では、利用している住宅ローンの返済負担を減らしたい場合に、相談に乗ってくれます。金利タイプや返済期間の変更、団信の変更など幅広い相談内容に対応しています。
国内100社以上の金融機関と連携しているため、希望に沿ったプランを提案してもらえるでしょう。住宅ローンの内容で困っている場合には、住宅ローン相談窓口に相談してみてください。
おわりに
住宅ローンの繰り上げ返済は、ご家庭の状況や経済状況により、どの方法を選ぶのが良いか異なることがわかりました。家族構成やライフステージによっても違うため、どの方法を選んだら良いのか慎重に検討しなくてはなりません。判断が難しい場合は、シミュレーションサイトを活用してみたり、相談窓口に気軽に相談したりしてみるのが良いでしょう。