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2年後に迫る「65歳以上の5人に1人が認知症」という悲惨な未来…認知症を防ぐために「今日から」できること

山本 康博(MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長)

執筆者

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長

山本 康博

医学博士・日本呼吸器学会認定呼吸器専門医 東京大学医学部医学科 卒業 東京大学大学院医学系研究科内科学専攻博士課程 修了 MYメディカルクリニック横浜みなとみらい院長

2025年には「65歳以上の5人に1人」が認知症になるといわれています。認知症になると、本人にとって日常生活に大きなストレスがかかるだけでなく、家族など周囲に負担をかける場合も少なくありません。今回は、MYメディカルクリニック横浜みなとみらい院長の山本康博先生が、そんな認知症を予防するために「今日からできること」について解説します。 

できれば認知症になりたくない…予防は「何歳」から? 

認知症は、加齢や脳の病気などによって発生する病気です。記憶力や言語能力、判断力、理解力などを低下させ、老後の日常生活に大きな影響を与えることがあります。 

歳を重ねると誰もが認知症になる可能性はあります。ただ、できることなら認知症にならずにいたいでしょう。「認知症の予防はいつから、どんなことをすればいいの?」と気になる方も多いのではないでしょうか? 

残念ながら、現在の医学では認知症を完全に予防することはできませんしかし、認知症になりにくい生活習慣や食生活などは次々と明らかになってきています。 

脳の老化は「40代後半」から…早めの対策が重要 

「脳の老化は40代後半から始まる」といわれます。実際に、「最近忘れっぽいなあ」と感じたり、うっかりミスが増えたりしていることに心当たりのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。 

認知症の発症リスクを抑えるのであれば、早いうちから対策をとっておくのがいいでしょう。「アルツハイマー型認知症」の発症原因となる物質は、発症のおよそ20年前から蓄積し始めるとされています。つまり、70歳で発症した場合は、50歳から発症原因の物質がたまり始めている計算になります。 

認知症は持病や生活習慣によっても発症リスクが高まることから、40代後半で認知症予防を始めても決して早すぎることはありません。 

あなたは大丈夫?認知症の前兆「フレイル」チェックリスト 

厚生労働省は2018年、認知症予防の「新指標」として「フレイル予防」を追加しました。「フレイル」という言葉に耳なじみがない方も多いかもしれません。最近の聞き取り調査でも、6割の方はフレイルという単語を聞いたことがないようです。 

「フレイル」という言葉は”frailty”という英語が語源で、「弱さ、脆さ」といった意味があります。フレイルとは、身体がストレスに対して脆弱になっている状態で、一般的には「健康な状態と要介護状態の中間」として捉えられています。身体が弱ってきて、「壊れやすくなっている」というイメージです。 

フレイル状態になると、肺炎を発症しやすくなったり、転倒しやすくなったり、死亡率の上昇などが起き、要介護状態に至るリスクを一気に高めるといわれています。 

一般的に、健康な状態からいきなり要介護状態になることは少なく、多くの方は、徐々に身体機能・精神機能が低下し、最後に要介護状態になります。この健康状態と要介護状態の中間の状態が「フレイル」です。 

フレイルには基準があり、以下の項目のうち、3項目以上が該当するとフレイルだと判断されます。 

  1. 体重減少(年間4.5kg以上または5%以上の体重が減少) 
  2. 疲労感(週に3~4日以上、何もかも面倒だと感じる) 
  3. 活動量の低下(生活の不活発化) 
  4. 力が弱くなった(握力低下) 
  5. 活動力の低下 
  6. 歩く速さの低下 

最近の研究では、フレイルの状態が続くと「軽度認知障害」になりやすい傾向があることが明らかになっています。 

一方で、軽度認知障害の段階で認知機能の低下を発見し、本格的な認知症の発症を防ぐケアをすれば、認知症の進行を遅らせることができる場合もあることもわかっているのです。 

高齢者がフレイルになる原因として、「サルコペニア」が挙げられます。サルコペニアとは、全身の筋肉量の減少や、筋力低下が起きることです。サルコペニアによって運動量が低下すると、脳細胞が萎縮するという研究も報告されています。 

フレイルの「2つの予防策」 

フレイルの予防には、以下の2つが効果的です。 

  1. スクワット 
  2. 良質なタンパク質の適量摂取 

耳にタコができるほど聞いたことがあるかもしれませんが、認知症予防のためには、運動して脳細胞を活性化させることが本当に大事です。特に下半身の筋肉を鍛えることが重要で、「人は考える“足”である」と言う方もいるほど、スクワットをしたり歩いたりすることで足を鍛えることは脳にもいい影響を与えます。 

また、80歳を過ぎると食も細くなるため、食事制限に重きを置くより、筋肉が落ちないようにタンパク質を摂取しながら、楽しくしっかりと食べたほうがいいようです。腎臓病や高血圧、糖尿病などで厳しい食事制限が必要な方も、医師に相談しながら最低限の栄養を摂取していきましょう。 

「糖尿病」も認知症の原因に 

最近の研究によれば、糖尿病患者は同年代の糖尿病ではない方と比べ、アルツハイマー病や脳血管性認知症の発症率が約24倍になることが明らかになっています。 

糖尿病によって血糖値が高い状態が続くと、脳の血管の動脈硬化がどんどん進行します。すると、脳の血流が悪くなって脳梗塞を起こしたり、脳血管が破れて脳出血を起こしたりします。 

その結果、脳のさまざまな部位の神経細胞が死んでしまい障害が残ったり、そのような大きなイベントが起きなくても無自覚のうちに脳梗塞を起こしていて、「脳血管性認知症」の発症につながったりします。 

また、それ以外の原因も考えられています。アルツハイマー病は脳の神経細胞が死んでいく病気ですが、アルツハイマー病患者の脳には「アミロイドβ」という物質が溜まった老人斑(加齢に伴い脳に見られるタンパク質の沈着)がたくさんあります。このアミロイドβの増殖が脳細胞を死なせる原因といわれているのです。 

通常、アミロイドβはインスリン分解酵素が分解してくれますが、糖尿病患者はインスリン分解酵素が少ないため、その分アルツハイマー病を発症しやすいと考えられています。 

脳血管性認知症…糖尿病でない方も「他人事ではない」 

まず、「脳血管性認知症」の場合、一度死んでしまった脳の細胞は戻ることはないので、脳血管障害の再発予防と認知症症状への対症療法が、基本の治療方針となります。つまり、脳血管障害が起こらないよう、血糖コントロールを徹底することが重要です。 

海外の研究では、HbA1c値が1%上がると、認知機能や前頭葉機能が顕著に下がることがわかっています。今のところは、HbA1c6.5%未満を目標に血糖コントロールすることが、認知機能を良好に維持するために必要とされています。 

血糖コントロールには、栄養バランスの取れた食事と定期的な運動、それに加えて必要であれば糖尿病治療薬の服薬が欠かせません。 

また、糖尿病でない方でも他人事ではありません。 

糖尿病の基準に当てはまらなくても、血糖値の上下動が大きいと認知症のリスクが血管の動脈硬化を進行させるため、認知症リスクが高まる可能性があります。日々血糖値が正常範囲内に収まるよう心がけましょう。 

血糖コントロールのコツは「食後のウォーキング」 

「急に血糖値が上がらないよう、野菜などの食物繊維を多く摂り、炭水化物を控えましょう」……そんなことはわかっていますよね。お忙しい方は食事がどうしてもファストフードになってしまったり、会食が入ったりして調整が難しいと思います。 

そんな場合でも、血糖値を安定させるコツがあります。それは、食後に510分歩くことです。食後にウォーキングをすることで、血糖値が上がりそうな食事を摂った後の血糖値スパイクを大幅に軽減できることがわかっています (研究によると、食後のウォーキングは糖尿病の薬のメトホルミンと同等の効果があるともいわれているほどです)。 

もちろんスクワットなどでも良いのですが、どこでもできるとは限りません。食後に通常より少し早めのペースでしばらく歩くということであれば、オフィスでも外に食べに行った後でもどこでもすぐに可能ですから、ぜひいつもの生活に取り入れていただければと思います。 

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