リースバックとリバースモーゲージは、どちらも自宅を活用して資金を調達することができるサービスですが、似たような仕組みだと思っている方も多いのではないでしょうか。しかし、実際は2つのサービスには多くの違いがあり、その違いを理解しておかないと、ご自身に適した資金調達ができず、後々に後悔することになりかねません。
- 「リースバックとリバースモーゲージの違いを知りたい」
- 「リースバックとリバースモーゲージのどちらが自分に向いているかを知りたい」
そう考えている読者の方々の疑問について、本コラムで解説していきます。2つのサービスの違いをよく理解して、どちらの方法がご自身に適しているかを見極めるための参考になれば幸いです。


リースバックとリバースモーゲージの違い
リースバックとリバースモーゲージはどちらも家を活用して資金を調達できる仕組みになります。そのため、利用者のなかには、「似たようなサービス」だと思っている方も少なくありません。しかし、この2つのサービスは多くの違いがあり、ご自身の利用目的にあったサービスを選ばないと、利用後に「失敗した」と後悔することになりかねません。では、具体的に2つのサービスにはどういった違いがあるのでしょうか。それぞれの一般的な違いは以下です。
| 項目 | リースバック | リバースモーゲージ | 
|---|---|---|
| 仕組み | 自宅を売却し、資金を得る。売却と同時に賃貸借契約を締結し、毎月家賃を支払う。 | 不動産(自宅)を担保にし、融資枠内で借り入れをする | 
| 現金受け取り方法 | 一括 | 融資枠内で、毎月一定額・一括・枠内で随時受け取るなどの方法を選択できる | 
| 対象物件 | 一戸建て・マンション・事務所・店舗・工場など | 一戸建て・マンション(マンションは利用できない場合もある) | 
| 所有権(名義) | 買取会社 | ご自身 | 
| 資金使途 | 自由 | 制限あり(事業や投資資金は不可) | 
| 上限年齢 | 制限なし | 制限あり | 
| 収入 | 制限なし | 制限あり | 
| 固定資産税の納税義務 | なし | あり | 
| 家族の同居 | 可能 | 原則配偶者のみ | 
| 住宅ローンの有無 | 抵当権等が設定されていても利用可(売買契約時抹消された場合) | 抵当権等が設定されていると利用できない | 
| 契約終了後 | 買戻し可能の場合もある | 契約終了後(死亡後)に売却または相続人による一括返済 | 
上記の表に記載している違いのなかで、代表的な5つの違いについて詳しく解説していきます。
ご自身に適したサービスを見極める際の参考にしてください。
最大の違いは不動産を「売却」(取引)するか「担保」(融資)にするか
大きな違いの1つが不動産売却の有無です。リースバックは不動産を売って売却金を得る方法であるため、不動産の所有権は買主となる不動産会社などに移ります。一方で、リバースモーゲージは不動産を担保として金融機関から資金を借り入れるため、不動産の所有権はご自身に残ります。ただし、資金調達時には所有権の移転は発生しませんが、ご自身(契約者)が亡くなられたあとに自宅を売却し、その売却金で借入金を返済するようになるため、そのタイミングで所有権は買主に移ります。
利用できる不動産
利用できる不動産の違いも大きな違いの一つです。リースバックは一戸建て住宅やマンションなどの居住用不動産だけでなく、店舗や工場などの事業用不動産など、さまざまな物件で利用できます。一方で、リバースモーゲージは一戸建てでしか利用できない金融機関があるなど、利用できる不動産が制限されていることが多く、店舗や商業ビルなど事業用不動産の利用はできません。ただし、リースバックもリースバック会社によっては、マンションしか利用できないケースや一戸建て住宅しか利用できないケースなどもあるので注意しましょう。利用できる物件の種別でもリースバック会社の選定基準の一つになるでしょう。
毎月の支払いの種類
毎月の支払いの種類が異なることも大きな違いです。リースバックは賃貸借契約を結んで家に住み続ける方法であるため、毎月家賃を支払うことになります。一方で、リバースモーゲージは融資に対する利息を支払います。借入元本は、ご自身(契約者)が亡くなられたあとに自宅を売却するなどして一括返済するため、生前は支払う必要がありません。
資金使途に対する制限の有無
調達した資金の使い道についても違いがあります。リースバックは、不動産売却で得た売却金であるため、資金使途に特に制限はありません。一方で、リバースモーゲージは融資であるため、資金使途を制限されている場合が多いです。例えば、事業で設備投資を行うための資金などには、使用できないなどです。金融機関によって、資金使途は決められていますので、事前に確認をしましょう。
利用できない場合の条件
リースバックとリバースモーゲージでは、利用できない場合の条件に違いがあります。具体的には、以下の表の条件に該当している場合は、一般的に、それぞれのサービスを利用できません。
| 利用できない場合の条件 | |
|---|---|
| リースバック | ・住宅ローンの残債が不動産の売却金で完済できない ・名義人が複数の場合は全員の同意がないと利用できない | 
| リバースモーゲージ | ・設定されている年齢制限に該当しない ・設定されている所得制限に該当しない ・推定相続人が同意していない ・配偶者以外が同居している | 
リースバックのメリット・デメリット

リースバックはリバースモーゲージよりも制限が少なく、幅広い方が利用できる資金調達方法になります。しかも、短期間で資金が調達できるなどのメリットがあります。
ただし、リースバック独自の注意点もあるため、ご自身に適した資金調達の方法であるかを判断するためには、メリットと注意点についてよく理解しておくことが重要になります。そのため、ここではリースバックのメリットと注意点について解説していきます。
リースバックのメリット
リースバックは、以下の表のようにメリットがあるため、リバースモーゲージよりも制限が少なく、多くの方が利用できる資金調達の方法になります。
| メリット | 内容 | 
|---|---|
| 住みながら一括現金化できる | 引っ越しすることなく一括で現金を受け取れる | 
| 資金用途が制限されていない | 調達した資金は自由に使える | 
| 利用する不動産の種類に制限がない | マンションや工場などさまざまな不動産で利用できる | 
| 年齢制限や収入の制限がない | 年齢制限や収入の制限がないため、審査に通れば誰でも利用できる | 
| 買い戻すことができる | 売買条件が合意できた場合、売却した家を将来的買い戻すことができる場合がある | 
リースバックのデメリット
リースバックのデメリットは以下です。
- 住宅ローンの残債が売却金より多い場合は利用できない
- 不動産の所有権が移る
- 毎月の家賃が発生する
- 賃貸借契約を更新できないケースがある
注意点についてしっかりと理解しておくことで、リースバックを利用した際のトラブルを防げるだけでなく、ご自身に適した資金調達の方法を見出すことも可能です。 必ず、リースバックを利用する前にリースバック会社に確認をしましょう。
リースバックが向いている方
リースバックは次の方におすすめの資金調達の方法です。
- リバースモーゲージの条件に合わない方
- ローンを完済したい方
- 事業用不動産などで資金調達をしたい方
- すぐに現金化したい方
上記のように、リバースモーゲージでは資金調達ができない方で、なおかつ引っ越しをしたくない方におすすめの方法になります。不動産を活用して資金調達をしながらも、その不動産に住み続けられるなどのメリットがあるためです。このため、そういった方はぜひリースバックを検討してみてください。
具体的事例:リースバックに適したケース
- 自営業を営んでいるAさん(50代)は、事業用の工場を担保に運転資金を調達したいと考えているが、すぐに現金が必要な状況。リバースモーゲージは個人の居住用不動産しか対象にならないため利用できない。
- Bさん(40代)は住宅ローンの返済に苦しんでおり、なるべく早くローンを完済したいと考えている。ローン残債が多いためリバースモーゲージは利用できないが、リースバックなら住宅を売却してローン完済ができる。
リバースモーゲージのメリット・デメリット
リバースモーゲージは、高齢者に向いている自宅を利用した資金調達の方法ではありますが、年齢制限などの注意点も多いです。そこで、ここではリバースモゲージのメリットやデメリットについて解説していきます。
リバースモーゲージのメリット
リバースモーゲージのメリットは以下の表になります。このようなメリットがあるため、自宅を手放さずに資金調達したい方に向いている方法といえるでしょう。
| メリット | 内容 | 
|---|---|
| 家を売却しなくてよい | 家を担保として融資を受けるため、家の所有権を手放す必要がない | 
| 毎月の支払いは利息のみ | 死亡後に不動産を売却して一括返済するため、生前は利息のみ支払う | 
| 住宅ローンからの借り換えができる | 住宅ローンの残債がある場合、リバースモーゲージを使うことで住宅ローンを完済し、余った資金を借り入れることができます | 
リバースモーゲージのデメリット
リバースモーゲージのデメリットは、以下の表になります。
| デメリット | 内容 | 
|---|---|
| 資金使途に制限がある | 資金の使途が老後の生活資金やリフォーム代などに限られていて、事業資金に使うことは難しい場合があります | 
| 金利上昇の可能性がある | 変動金利を採用しているケースが多いことから、金利が上昇して支払う利息が増える可能性があります | 
| 不動産評価額が下落する可能性がある | 不動産評価を定期的に見直すため、融資限度額の引き下げや融資が止まるという事態になる可能性がああります | 
| 利用できない建物種類がある | ・一戸建て住宅を対象にしていることが多く、マンションやアパートは対象外。 ・築年数が一定以内(例えば20年以内)の住宅のみが対象。 ・耐火構造の住宅のみが対象で、木造住宅は対象外 ・住宅の面積や間取りに制限がある | 
| 利用できる地域が限定的 | 大都市圏やその周辺部に限られ、地方都市や過疎地域では利用できないことが多い | 
| 年齢制限がある | 一般的には60歳以上が多く、中には50歳以上としている場合もあります | 
| 所得制限がある | 経済的に困窮している高齢者の支援を目的としているため、一定以上の所得がある人は利用できません | 
| 相続人の同意が必要 | 借主の死亡時に住宅を売却して借入金を返済する仕組みであるため、相続人の権利に影響を与えるため多くの場合、相続人の同意が必要とされています | 
| 資産評価額に対する融資枠が少ない | 実際の融資額が評価額の20%から50%程度になることが多く、融資額が低く設定されることで、借主が受け取れる資金は限定的になります。 | 
リバースモーゲージが向いている方
リバースモーゲージは、「老後の資金を確保したいが、家の所有権を手放したくない方」におすすめの資金調達の方法になります。自宅を担保に融資を受けるため、生きている間は所有権を手放すことはありません。そのため、自宅に愛着があり、どうしても家の所有権を手放したくないという方はリバースモーゲージを検討してみると良いでしょう。
具体的事例:リバースモーゲージに適したケース
- Cさん(70代)は老後の生活資金を確保したいと考えているが、先祖代々受け継いできた家は手放したくない。リバースモーゲージなら家の所有権を保持したまま資金を得られる。
よくある質問 (FAQ)
Q1: リースバックとリバースモーゲージの主な違いは何ですか?
A1: 主な違いは以下の通りです。
- リースバック:不動産を売却し、そのまま賃借して住み続ける。一括で資金を受け取り、毎月家賃を支払う。
- リバースモーゲージ:不動産を担保に融資を受ける。所有権は維持したまま、融資枠内で資金を受け取り、利息のみを支払う。
Q2: リースバックとリバースモーゲージ、どちらが資金調達に有利ですか?
A2: 個人の状況によって異なります。
- すぐに多額の資金が必要な場合はリースバックが有利。
- 徐々に資金が必要で、家の所有権を維持したい場合はリバースモーゲージが有利。
Q3: リースバックを利用する際の年齢制限はありますか?
A3: リースバックには一般的に年齢制限がありません。一方、リバースモーゲージは通常60歳以上(金融機関によっては50歳以上)が対象です。
Q4: リースバックとリバースモーゲージ、どちらが審査は厳しいですか?
A4: 一般的にリバースモーゲージの方が審査が厳しいです。年齢や収入の制限、物件の条件などがあります。リースバックは比較的柔軟で、物件の価値が主な審査対象となります。
Q5: リースバックやリバースモーゲージを利用すると、相続に影響がありますか?
A5: 両方とも相続に影響があります。
- リースバック:不動産自体は相続対象外となりますが、売却金が相続財産になります。
- リバースモーゲージ:不動産は相続対象ですが、借入金の返済義務も相続されます。多くの場合、相続人の同意が必要です。
Q6: リースバックとリバースモーゲージ、どちらが資金の使途に制限がありますか?
A6:リースバックは資金の使途に制限がありません。一方、リバースモーゲージは多くの場合、老後の生活資金やリフォーム費用などに限定されます。リバースモーゲージでは事業資金には使用できないことが多いです。
Q7: リースバックとリバースモーゲージ、将来的に元の状態に戻すことはできますか?
A7:リースバックの場合、買戻し特約がある場合に限り、条件が合えば不動産を買い戻すことが可能です。リバースモーゲージでは、融資を返済すれば担保設定を解除できます。ただし、リバースモーゲージの場合、時間の経過とともに融資総額が増加している可能性があるため、返済額が当初より大きくなっていることに注意が必要です。
おわりに
リースバックとリバースモーゲージは、自宅を活用した資金調達方法として注目を集めていますが、その仕組みと特徴は大きく異なります。この記事を通じて、両者の違いや特徴、それぞれのメリット・デメリットについて詳しく見てきました。
ここで重要なのは、どちらが「より良い」というわけではなく、個々の状況や目的によって適切な選択肢が変わるということです。例えば、すぐに大きな資金が必要で、年齢や収入の制限にとらわれたくない方にはリースバックが向いているかもしれません。一方で、徐々に資金を引き出したい、あるいは家の所有権を維持したいという方には、リバースモーゲージが適している可能性があります。
なお、数あるリースバック業者の中でもおすすめなのが、セゾンのリースバックです。会社の信頼性が高いだけでなく、家賃を抑えられる可能性があることや、高齢者見守りサービスなどのサポートがあるなど、多くのメリットがあります。リースバックをお考えの方はぜひ一度検討してみてください。
また、これらの選択肢を検討する際には、単に目先の資金調達だけでなく、長期的な生活設計や相続の問題なども考慮に入れる必要があります。家族との話し合いや、財務アドバイザー、法律の専門家などに相談することも、賢明な選択につながるでしょう。
最後に、金融商品や不動産市場は常に変化しています。リースバックやリバースモーゲージの条件や仕組みも、今後変更される可能性があります。そのため、最新の情報を常に確認し、自身の状況に最も適した方法を選択することが重要です。
この記事が、皆様の資金調達の選択肢を広げ、より安定した将来への一助となれば幸いです。どのような選択をするにせよ、十分な情報と理解に基づいた決定が、より豊かで安心な生活につながることを願っています。


 
            
 
 
             
             
             
             
                 
                 
                 
     
     
                 
                 
                 
                 
                 
                 
                         
                         
                         
         
         
         
         
         
         
         
         
         
     
         
        