このコラムをお読みの皆さまの中には、ご自身やご家族の葬儀の選択肢として、一日葬を加えたい方も少なくないでしょう。あるいは、他の方の葬儀に参列したところそれが一日葬だったことから、もっと知りたいと興味をお持ちになった方も多いのではないでしょうか。
このコラムでは、一日葬のデメリットとメリット、必要な費用とより充実した一日葬のためのデメリットの打開策について解説していますので、皆様のより良いご決断の一助になれば幸いです。
この記事のまとめ
一日葬とは、日本で一般的な葬儀形式からお通夜を省略した形式の葬儀で、一般的に(遺族以外の方たちが参列する式としては)告別式と火葬のみを執り行います。一日葬では、故人との別れを惜しんだり関係者の方たちとの交流をしたりする時間が限られてしまうなどのデメリットがありますが、一方ではコストを抑えることができたり、遺族や参列者の負担を減らしたりできるなどのメリットもあります。一日葬をより充実させるためにも、関係者と事前によく話し合い、時間を上手に使うことが大切です。
一日葬とは?
現代の日本で行われている葬儀というと、1日目にお通夜を、2日目に告別式・火葬(現在の日本国内では火葬がほとんどのため、本記事では火葬を前提とします)を行うものが一般的です(なお、地方によっては1日目にお通夜と火葬を行い、2日目には告別式のみを行う「骨葬(前火葬とも)」が一般的なケースもあります)。
これに対し、お通夜を省き告別式と火葬(なお、故人が遠方で亡くなったり事件や事故などで亡くなったりするなどの理由で、場合によっては火葬は先に済んでいるケースもあります。この場合については、必要に応じて適宜補足します)を1日で執り行うタイプの葬儀が一日葬(ワンデーセレモニーとも)です。
現在の日本では、この一日葬が少しずつではありますが、葬儀の選択肢のひとつとして選ばれるようになってきました。
一日葬の全体的な流れ
「一日葬」という名前ですが、実際には葬儀前日に故人の遺体の葬儀会場への安置・納棺への立ち会いも兼ねた家族・特に親しい親族などのみが集まることも多いため、それを念頭に置き、1日目と2日目に分けて箇条書きで適宜備考も入れて解説します。
なお今回のモデルケースでは、故人は病院で亡くなり、その直後といって良い日時に火葬場併設タイプの葬儀場で仏式または無宗教式の一日葬を行うと想定しています。
1日目
- 病院からの遺体の搬送・葬祭場への安置
- 納棺
故人の遺体がすでに火葬され収骨されている場合には遺骨の葬祭場への搬送・安置になります。
- 家族だけで一夜を過ごす、親族で会食など自由な時間
仏式・キリスト教式など特定の宗教宗派による一日葬の場合には、ここで宗教的な行事が入るケースもあります。
2日目
- 葬儀・告別式
仏式で行われる場合、焼香が行われ一般にそれぞれの宗派での作法(今回は割愛します)で行われますが、一日葬の場合は時間節約のためどの宗派でも1回だけ行うケースが多いです。また、キリスト教式や無宗教式では焼香は献花に置き換えられます。
- 出棺
この直前に、故人と最後の対面をして遺体に生花をお供えすることが多いです。なお、故人がすでに火葬されている場合には省略されます。
- 火葬とお骨拾い
こちらも、故人がすでに火葬されている場合は省略されます。なお、極めて少数ですが遺骨を引き取らずその後の措置を全て火葬場にお任せするケースが、関西地方を中心にみられます。
- 火葬とお骨拾いの後
火葬とお骨拾いの後(故人がすでに火葬されている場合には、葬儀・告別式の後)に時間に余裕があれば、会食が行われる場合があります。また、特にある程度大規模な都市部で仏式葬儀を行う場合、葬儀・告別式の直後あるいは火葬後にいわゆる「繰り上げ初七日」の法要を行うことが多いです。
なお、日本では亡くなってから24時間以内は火葬ができない法律があるため、亡くなった当日に火葬まで行う一日葬は行えません。したがって、一日葬で骨葬を行う場合は故人がより以前に亡くなってすでに火葬されている場合に限られます。
一日葬の所要時間の目安
一般的な一日葬では、葬儀・告別式に約2時間、火葬に約2時間(時間に余裕があればその後会食に約1時間)の合計(故人がすでに火葬され骨葬で一日葬を行う場合には、火葬の時間はカットされます)となります。
このことから、一日葬にかかる所要時間は約4〜5時間程度(故人が先に火葬されている場合、約2〜3時間程度)が一般的であるといえます。
ちなみに現在の日本でより一般的な葬儀(二日葬)では、前日のお通夜と会食(通夜振る舞い)に約2〜3時間、当日の葬儀・告別式に約1〜2時間、火葬とお骨拾い(葬儀・告別式の前に行う場合、基本的に家族やより親しい関係の方のみが参列するので、火葬とお骨拾いの時間を葬儀自体にかかる時間のうちに入れない場合もあります)に約2時間かかるので、合計すると約5〜6時間程度です(葬儀後あるいは火葬後に繰り上げ初七日を行ったり、解散前に会食を行うと、全過程に参列する場合約6〜7時間程度はかかることになります)。
一日葬のデメリット
物事には多かれ少なかれデメリットとメリットがあり、一日葬についてもこれは当てはまるものです。ここではまず、一日葬のデメリットについて説明します。
別れを惜しむ時間が限られる
一日葬は、多くの場合お昼頃から始めるため、故人の家族でなくかつ日中に仕事や学校がある方は、最後のお別れができない可能性があります。
職業によっては土日祝日の日中に仕事がある方もいるため、土日祝日に行えばこの問題は解決するというものでもありません。
このように、故人とゆっくりお別れができない傾向にあるのが一日葬の大きなデメリットといえるでしょう。
弔問対応の負担が増える
故人が亡くなった直後といって良い時期に一日葬を行った場合にありがちですが、亡くなったことを葬儀の後から知った方が、自宅に弔問に伺いたいと希望する場合があります。そのため、遺族の弔問対応の負担が増えてしまうことも考えられます。
寺院などによっては断られる場合がある
故人が特定の宗教宗派の信者であり寺院や教会などに所属している場合、そうした宗教施設で葬儀を行う(あるいはそこの聖職者に斎場に来てもらう)ことを希望するケースは多いでしょう。
しかし、いわゆる従来の葬儀のあり方を特に重んじる寺院や教会の場合、お断りされてしまう可能性があります。
故人関係者との交流の機会が減る
友人や知人、仕事仲間やご近所の方など“いわゆる家族以外の方”にしかわからない故人の一面は必ずあり、お通夜や告別式はご遺族が知らなかった故人の意外な人となりを知ることのできる機会でもあります。
残念ながら、一日葬ではそうした貴重な時間が相対的に少なくなってしまいます。
一日葬のメリット
一方、一日葬にはメリットというべき点も少なくありません。ここでは、一日葬のメリットについて見ていきましょう。
コストを抑えられる
一日葬は1日で葬儀と火葬のみ(故人が先に火葬されている場合は、葬儀のみ)を行うため、以下に挙げるような費用の負担が軽減されます。
- 飲食費(通夜振る舞いや、火葬後または葬儀後の会食が省略されるケースが多いことと、参列者の人数が相対的に少なくなるため)
- 式場利用費
- 返礼品費(参列者が相対的に少なくなるため)
葬儀を特定の宗教宗派に則って行うかどうかは個々人の宗教的信条と密接に結びついているので、必ずしもおすすめはできませんが、無宗教式で一日葬を行うと、後述する寺院などの宗教機関への謝礼費用をカットできます。
遺族・参列者の負担が減る
一般的な葬儀は長時間を要するため、遺族や参列者の身体に負担がかかる可能性があります。特にご年配の方や妊婦の方、お子さまやハンディキャップをお持ちの方などにとっては大きな負担になってしまう恐れがあるので、そうした方たちへの配慮になるということも、一日葬にする大きなメリットといえるでしょう。
宿泊先の手配が不要
2日に渡って葬儀が行われる場合、しばしば遠方から参列してくれる家族や親族の宿泊施設の手配や確保が必要となります。
一方、一日葬なら日帰りできるという参列者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。日帰りできる方の宿泊先手配が不要な点も見逃せません。
一日葬の費用
ここでは、一日葬の費用について見ていきましょう。
費用の相場
一日葬で葬儀会社に支払う費用は、約300,000〜500,000円が相場です。なお、故人がすでに火葬されている場合には、必要な費用項目が減るので一般的な相場より若干価格が安くなります。
葬儀にかかる費用の内訳
費用の相場のうち、純然たる葬儀の施行費用は内訳の中で占めている割合が最も大きく、全体の5〜6割程度となるのが一般的です。
以下は、葬儀の施行にかかる費用の一般的な内訳になります(故人が病院で亡くなり、葬祭場で一日葬を行う場合)。
- 故人の遺体を運搬する寝台車の手配料(故人がすでに火葬され遺骨がご自宅にあり、それをご遺族がご自分の乗用車などで斎場に運搬する場合は不要)
- 遺体を安置する際のドライアイスなどの費用(故人がすでに火葬されている場合は不要)
- お棺や死装束などの費用(死装束は必要な場合、故人がすでに火葬されている場合は不要)
- 遺影の費用(故人やご家族・ご遺族などが以前から準備していてすぐに祭壇に置ける場合には、これは不要)
- 祭壇の費用
- 式の司会者や車の運転手を雇う人件費(必要な場合)
式場利用料の内訳
葬儀を行う施設の使用料は、斎場と火葬場の2つに大別されます。火葬場に併設された斎場で葬儀を行い、そこの火葬場で遺体を火葬する場合も、両方の施設の使用料がかかります。
なお、斎場には民営と公営があり、公営は民営に比べ割安です。また、公営斎場では故人や喪主が当該斎場のある自治体に住民票がある場合、自治体から補助が出たり費用が割安になったりすることもあるので、忘れずチェックしましょう。
参列者への接待費用の内訳
接待費とは、ここでは参列者への主に会葬礼状や返礼品、飲食接待にかかる費用のことです。そのため、参列者の人数によって必要な額が変動します。以下、必要な費用になります。
- 会葬礼状(全参列者に葬儀会場でお渡し。参列者が忌引休暇を取る際の証明になることがあるので、一日葬でも必要)
- 当日返礼品(全参列者に当日お渡し)
- 香典返し(香典をくださった参列者に後日贈る)
- 飲食接待(会食やお茶および菓子の費用)
寺院などへの謝礼費用の内訳
無宗教式をご希望の方も今では珍しくありませんが、やはり特定の宗教宗派での葬儀を希望される方も多いでしょう。
ここでは、そうした方たちのために仏式・神式・キリスト教式での宗教関係者への謝礼費用(これは宗教宗派や地方などにより、相場が異なるので確認しておきましょう)や、その他必要な費用を箇条書きで説明します。
仏式の場合
寺院への主な謝礼には読経料や戒名料など「当該の宗教宗派の儀式への謝礼」がありますが、状況によってお車代や御膳料を渡すこともあります。以下は、必要な費用になります。
- 読経料(僧侶の読経へのお礼)
- 戒名料(浄土真宗では「法名料」、日蓮宗では「法号料」。戒名(法名、法号)へのお礼。なお、故人が生前に戒名を授かっている場合にはその時点で謝礼(亡くなってから授かるより安価になる傾向があります)をお渡しするので、ここでは含まれない)
- お車代(僧侶のための交通費。金額は寺院から斎場までのタクシー代を基準とするのが一般的です)
- 御膳料(僧侶が会食に参加しなかった場合にお渡し)
なお、封筒の表書きは「御布施」として、読経料や戒名料とはしません。お車代と御膳料については神式やキリスト教式も共通なので、以下は省略します。
神式の場合
- 斎主(儀式を執り行う神職)への謝礼
- 斎員(斎主のアシスタントを務める神職)への謝礼
- 楽人(儀式用雅楽奏者)への謝礼
封筒の表書きは「御祭祀料」か「御神饌料」とします。
キリスト教式の場合
- 教会への記念献金(表書きは「献金」とする。キリスト教式は教会で葬儀を行う場合が多いので、この箇条書きも教会を葬儀会場とするのを想定しているが、教会の使用料もこれに含まれる)
以下の2項目は、あくまで「個人的な意味での謝礼」という名目です。表書きは「御礼」か「謝礼」とします。
- 司祭(カトリックや正教会。カトリックでは特に「神父」とも呼ぶ)、牧師(プロテスタント諸派)への謝礼
- オルガン奏者への謝礼
なお、仏式でいう戒名(法名、法号)に当たるクリスチャンネームはカトリック・正教会・一部プロテスタントでは信者になる際に授かる(それまで信者でなかった故人が危篤の際、信者になる儀式(洗礼)を行いクリスチャンネームを授かるケースもあります)ので、故人が没後に授かることは基本的にありません。
また、プロテスタントの多くの宗派はそもそもクリスチャンネームの概念がありません。
一日葬をより充実させるためのポイント
一日葬は一般的なタイプの葬儀よりも短い時間で行うので、やはりより充実した後悔のないものにしたいものです。ここでは、一日葬をより充実させるためのポイントについて解説します。
参列者を事前に決めておく
呼ぶ方を事前に話し合っておくことで参列者の目安をつけることができ、会場選びや必要なものなどについてより判断しやすくなります。
寺院などや親族に一日葬の確認を取る
一日葬はまだまだ新しい形式であるため、話し合わずに一日葬を行ってしまうと、もめごとに発展してしまう可能性があるので注意しましょう。
普段から葬儀や埋葬についてタブー視せずオープンに話し合える空気を作っておくこと、葬儀や埋葬についての好奇心を封じてしまわないことが求められます。
時間を上手に使う
特に無宗教式をお選びの場合に当てはまりますが、時間の使い方は自由だということを知っているだけで、最後の過ごし方はより納得のいくものに変わるでしょう。
先述のように一日葬とはいえ前日の夜から斎場を使用することは可能なわけです。こういう時こそ、時間を上手に使いましょう。
葬儀社に予算や要望をはっきりと伝える
一日葬でなくとも当てはまりますが、高額な費用がかかった割には納得のいく葬儀ができなかったということにならないためにも、事前に要望や予算を明確にしておき、安心して任せられる葬儀社を選んでおきましょう。
葬儀場選びは、「セゾンの相続 お葬式サポート」がおすすめ
一日葬をいざ行うとなると、特定の宗教宗派に則って行うか無宗教式にするかを問わず、心配なことやこだわりたいことが山ほど出てくるものです。
そんな時は、ぜひ「セゾンの相続 お葬式サポート」にご相談ください。経験豊富な提携専門家のご紹介も可能ですので、お気軽にご連絡ください。
<参考文献>
加藤長『令和の葬送 戒名はいらない!』同時代社、2019
金セッピョル、地主麻衣子編著『葬いとカメラ』左右社、2021
葬儀霊園文化研究会編『葬儀後の手続きと届け出百科』日本文芸社、2008