相続の専門家といっても、どこの誰にどのような相談をすればいいのか迷う方が多いことでしょう。そもそも、専門家が何をする方なのかがわからなかったりします。すべての相続手続において、専門家に依頼しなければならないということではありません。ただ、深い悲しみの中で、支えになってくれることは確かです。
この記事では、それぞれの専門家が、具体的にどのような相続手続きをサポートできるのか、費用などもふくめて、わかりやすくお伝えします。
この記事のまとめ
相続は人が亡くなると同時に開始され、遺言書の確認や相続人の確認、相続財産の調査・確認、遺産分割協議、相続税の計算・納付、分割した財産の名義変更など非日常的なたくさんの手続きが必要となります。相続人同士でトラブルになるケース、莫大な相続税の発生に支払いができず困ることもあり得ます。相続手続きにおける専門家は、弁護士、司法書士、行政書士、税理士などがあげられますが、それぞれに専門領域・得意分野がありますので、それぞれの特徴を知ったうえで専門家に相談し、相続手続を乗り越えましょう。
相続手続きの代行は誰に依頼すればいい?
大切な家族が亡くなり、相続が発生すると、悲しむ間もなく、さまざまな手続きを進めなければなりません。時には、大事な決断を迫られることもあります。役所に出向いての届出や葬儀の準備など疲弊してしまわないかと心配です。
そんな時、頼りになる方がいれば、心強いものです。相続の専門家として、銀行、弁護士、司法書士、税理士などの士業が考えられます。とはいえ、それぞれがどんな立ち位置で何を頼めばいいのか、頼んでいいのか、やはり悩みます。
そして、代行費用や作業内容はそれぞれ異なります。それぞれの特徴を提示して詳しい解説をする前に、まずは相続手続きの流れや必要書類などの基本を確認する必要があります。何が必要かを知ることで、自分たちに合った代行先を探すことが可能になります。
亡くなったあとの主な手続き・すべき先
大切な家族が亡くなったとき、どこでどんな手続きが必要なのでしょうか。個別の事情により異なる場合も多くありますが、共通事項として考えられる手続をシーン別にご紹介します。
公的機関に関する手続き
- 病院で受け取った「死亡診断書」を受取り、死亡届を役所に提出(7日以内)
- 引き換えに火葬許可証を受け取る(死亡届の提出時)
- 年金事務所へ年金受給停止の連絡(国民年金の場合14日以内、厚生年金の場合10日以内)
ただし、マイナンバーカードがあれば不要(死亡届提出時に情報共有されるため) - 市区町村役場へ介護保険資格喪失届を提出(14日以内)
- 市区町村役場へ住民票の世帯主変更届(14日以内)
- 年金事務所へ故人の未支給年金の請求(5年以内)遺族年金の請求(5年以内)
- 被相続人の出生時から亡くなるまでのすべての戸籍謄本等請求(※相続人調査のため)
税金に関する手続き
- 所得税準確定申告・納税(4ヵ月以内)
- 相続税の申告・納税(10ヵ月以内)
遺産相続に関する手続き
- 相続人調査
- 遺言書を探す(できるだけ早く)
- 遺言書の検認(自筆証書遺言、秘密証書遺言の場合)
- 相続放棄、限定承認の検討と手続き(3ヵ月以内)
- 遺産分割協議
- 相続財産の解約手続き・名義変更、相続登記(不動産の名義変更)
民間サービスに関する手続き
- 葬儀社へ連絡・葬儀の打合せ
- 葬儀(役所から受け取った火葬許可証を渡す)
- 銀行の預貯金払い戻し、名義変更
- 生命保険金の受取(3年以内)
- (保有の場合)株式の名義変更
- (保有の場合)自動車の売却、名義変更、処分(廃車)
- 携帯電話、クレジットカード、定期購読サービスなどのサブスクリプション等の解約
- 運転免許証・パスポートの返納
- 公共料金の解約・名義変更
相続手続きの代行を頼むメリット
相続が発生した場合、やるべきことの多さに疲弊してしまうことが多く見受けられます。期限があるとは知りつつも、不馴れな書類記入や添付書類の準備に、混乱してしまうようです。
提出すべき書類が提出できずにいると「督促」を受けたり、不備で戻って来たり、結局さらに書類の山が増えるという事態に陥ることもありがちです。
相続税の計算や遺産分割などの複雑な手続、また親族間のトラブルなどには相続手続きの代行を依頼することも選択肢です。
処理スピードは格段にアップするでしょう。知識も実績もある専門家に任せることができれば、ストレスから解放され、自分自身の今後のライフスタイルを考える時間ができるようになるかもしれません。
相続手続きの代行を利用したほうがいい方
ひとりで悩むより、相談できる方がいると安心です。請求書類などスラスラ記入できる方は、少ないでしょう。途中で挫折して後回しにするよりも、アドバイスを受けて完了させたいものです。
相続手続きの代行を利用したほうがいいと思われる場合をまとめました。
該当する場合には、ぜひ代行依頼を検討してみてください。
- 忙しい方(ゆっくり書類と向き合う時間がない・出向く時間がない)
- 専門的知識やスキルが必要(遺産の評価方法・税計算・不動産の移転登記など)
- 相続税の計算方法がわからない
- 親族の住所・連絡先がわからない
- 遺産分割協議が難航している
- 相続用語(法律用語)がわからない(遺留分侵害額請求や相続放棄など)
参考までに、相続に関する専門家としては、弁護士や司法書士などの「法律に関する専門家」と、税理士などの「税金に関する専門家」に分けられるでしょう。自分の性格やスキルをふまえて、苦手な部分をサポートしてくれる専門家が見つかるかもしれません。
相続手続きの代行は誰に依頼すればいい?
相続手続きの代行先は、さまざまで、それぞれ特徴があります。最近では、専門家がネットワークを作り、ワンストップでのサービス提供を行っている企業(専門家集団)も増えています。
まずは、ニーズに合わせて選ぶことが大切です。また、それぞれの士業で、提供できる業務が決まっています。そのため、業務範囲を確認することが大切です。なお、遺言書の作成は、以下すべての士業が可能です。
弁護士 | トラブル対応 |
税理士 | 税金 |
司法書士 | 不動産登記 |
行政書士 | 届出等書類関係 |
銀行 | 故人の金融資産管理 |
弁護士
「法律のプロ」である弁護士は、トラブル対応含めて、あらゆる法律問題を取り扱うため、心強い味方となるでしょう。
費用の目安
- 遺言執行:300,000円程度
- 遺産分割の調停:着手金300,000円程度
*弁護士、弁護士法人それぞれの基準で設定
メリット
- 職権で戸籍謄本を取り寄せることができるため、迅速に相続人調査を行うことができる
- 代理権があるため、本人に代わり契約などの法律行為を行うことができる
- 相続人の代理として遺産分割協議を進める
- 家庭裁判所へ相続放棄の申し立てができる
- 遺産分割協議において、相続人同士で争いが起きてしまった際の紛争解決にも対応
- 法律に関わるトラブルにも対応
デメリット
- 各弁護士ごとに専門(得意)分野が異なる
- 弁護士として行う権限はあるものの、業務として取り扱っていない事務所も多い
司法書士
「不動産登記のプロ」である司法書士は、法務局や裁判所、検察庁などへ提出するための書類を作成します。遺産分割後の不動産の移転登記は、司法書士の専門分野です。
遺言書作成や遺言執行者の依頼、遺言書の検認を裁判所へ申し立てる際の必要な書類作成の他、遺産分割協議書の作成、裁判所へ申し立てる相続放棄のための書類作成も依頼できます。
費用の目安
- 遺産分割協議書作成:50,000円程度
- 不動産の移転登記:100,000円程度
*司法書士、司法書士法人それぞれの基準で設定
メリット
- 職権で戸籍謄本を取り寄せることができるため、迅速に相続人調査を行うことができる
- 不動産の名義変更(相続による所有権移転登記)ができる
- 不動産に抵当権(担保)が設定されている場合、担保の抹消登記も可能
デメリット
- 相続税に関する相談や申告(税理士の専門分野であるため)
- 事業の許認可、自動車の名義変更など行政手続(行政管轄は行政書士)
- 遺産分割や遺留分侵害額請求、遺言無効確認などのもめ事の解決
行政書士
「届出・書類作成のプロ」である行政書士は、行政機関へ提出するための書類を作成します。
相続人調査、各種事実証明書類の作成、遺産分割協議書作成の依頼など相続手続が比較的スムーズで書類作成の代行やアドバイスだけでいい場合には適しています。
費用の目安
- 遺産分割協議書の作成:30,000円程度
- 預貯金の解約等:30,000円程度
*行政書士、行政書士法人それぞれの基準で設定
メリット
他の士業よりも費用を安く抑えられる可能性がある
デメリット
不動産の名義変更、相続放棄や限定承認、もめ事の解決、相続税の相談や申告はできない
税理士
「税金のプロ」である税理士は、相続税の申告の代行が可能です。相続手続きのうち相続税の申告は、税理士のみしかできません。
費用の目安
相続税の申告手続き:200,000~300,000円程度
*税理士、税理士法人それぞれの基準で設定
メリット
- 相続税申告の代行ができる(専門分野)
- 相続発生前から相続税対策の相談ができる
デメリット
- 不動産の相続登記、自動車の名義変更、もめ事の解決、相続放棄や限定承認はできない
- 相続税が発生しない場合、遺産分割協議書の作成はできない
銀行
金融機関により、また、故人が生前に取引をしていた銀行であれば、相続手続きのサポートを行う銀行も増えています。
費用の目安
相続手続代行・・・財産額×遺産生報酬(0.33%~2.20%)
*三井住友銀行の場合
*税計算、登記費用など士業への報酬は別途必要
その他具体的なサポートとしては、預かり資産の引出しや名義変更程度ですが、営業活動の一環として、無料で有益な情報を得ることができるでしょう。故人の取引銀行であるため、日常生活の中で接することも多く、意外にも相続人の知らない情報が聞ける機会となる場合も多くあります。
親族
専門家に依頼せず、親族・親戚に、税理士や弁護士等がいるケースもあるかもしれません。親族のネットワークも、活用できるのであれば、活用することも選択肢です。ただし、知られたくない個人情報や中途半端な依頼で関係性を壊してしまわぬよう配慮は必要です。
費用の目安
無料といわないまでも、低料金で引受可能なケースもあり
相続手続き代行先選びのポイント
相続手続き代行先選びのポイントとしては、専門的知識やスキルとともに、相性も大切です。コミュニケーション不足が原因で、伝えきれていなかった、誤解があった、勘違いが後になって痛手になることもあり得ます。人として、信頼できると思えるプロに依頼することがポイントです。
各専門家の対応範囲を確認する
相続に関わる専門家には、法律に関わることは弁護士、相続税に関する相談であれば税理士、登記に関する相談であれば司法書士、届出や行政機関に関する相談は行政書士などが挙げられます。
また、それぞれ専門とする対応範囲があるため、事前に確認のうえ、相談内容にふさわしい専門家に相談することをおすすめします。
費用の詳細を確認する
一概にはいえませんが、初回相談無料とする専門家も多く存在します。現状や悩みを伝えたうえで、どのようなことを依頼できるのか、解決策としてはどのような手段が考えられるのか、大まかなスケジュールについて確認したいものです。
後日サービスの提示書(見積書)を受領後でも、質問や各サービスの費用に根拠などに不明点があれば問合せするようにしましょう。納得したうえで依頼することを決めることです。
専門家の実績・評判を確認する
実績が豊富で信頼できる専門家を選びたいものです。確認したいのは、業務年数でなく、どのような相続手続きにどのくらい関わってきたのかです。
それぞれの専門家の中にも、得意分野があります。弁護士であっても、相続に強い弁護士もいれば、労務関係、交通事故関係、夫婦関係など得意分野は異なります。資格があれば依頼することは可能ですが、できれば相続を得意とする専門家に依頼しましょう。
得意分野が共通する士業は、得意分野でのコネクションにも期待できます。当初は行政書士に依頼したけれど、親族間のトラブルが発生した場合に、弁護士を紹介してもらえる可能性は期待できます。
まずはひとり、相続を得意としていて信用できる専門家を見つけたいものです。
サービス内容を確認する
同じサービス内容でも専門家ごとに内容や費用が異なる場合も多くあります。
不動産の移転登記のみを依頼するつもりが、売却をすすめられ、不動産業者を紹介されたという事例もごく稀に存在します。専門家だからと言いなりにはならぬよう、依頼時のみでなく、定期的に進捗経過の報告とともに連絡を取り合い、相互理解のうえゴールに向かいたいものです。
安心して相続手続き代行を依頼するなら「セゾンの相続 相続手続きサポート」
士業の特徴や依頼できる内容は理解したものの、WEB上では多くの専門家が表示され、どこの誰に依頼したらよいのか迷うかもしれません。
おすすめの相続手続き代行の相談をするなら、「セゾンの相続 相続手続きサポート」がおすすめです。
おわりに
相続の手続きにあたっては、弁護士、司法書士、行政書士、税理士等さまざまな専門家のサポートがあれば、正確に迅速に解決へと進めることができるでしょう。なによりも心強く、不安やストレスから解放されることはメリットといえるでしょう。
それぞれ資格の特徴や目安となる費用、依頼にあたってのメリット・デメリットは大いに役に立つのではないでしょうか。ぜひ参考にして頂き、信頼できるパートナーを見つけてください。