3月8日は「国際女性デー」でした。世界各地で行われたデモや集会の様子が報道されたり、日本における男女格差に関する問題や、女性の働きやすさに関する調査結果などがニュースで取り上げられていたりしました。こうした報道により、「国際女性デー」という言葉を初めて耳にされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
私は、この「国際女性デー」の存在を、中国で初めて知りました。2014年のときです。この頃、日本ではまだ、「国際女性デー」の認知度は低かったように思います。一方、中国では「国際女性デー」は、女性にとって大切な日であるとともに、ちょっぴり嬉しい日でもあります。今回も私が実際に体験したエピソードを交えて、中国での「国際女性デー」についてご紹介します。
1.「国際女性デー」とはどんな日?
国際連合広報センターによると、「国際女性デー」は、今から110年以上も前、北米とヨーロッパ全域で20世紀初頭に現れた労働運動に端を発しています。その後、「国際女性デー」は、1975年3月8日に国連で提唱され、1977年の国連総会で議決されました。
国連は毎年「国際女性デー」のテーマを定めています、2023年のテーマは、「ジェンダー平等のためのイノベーションとテクノロジー」です。国際連合広報センターによると、「国際女性デー」にあたり、アントニオ・グテーレス国連事務総長は、「科学・技術・工学・数学の分野において、労働人口に占める女性の割合は、3分の1未満であること」「新たなテクノロジーの開発において、そこに携わる女性が少なければ、始めから差別が織り込まれるおそれがあること」「デジタル格差を解消し、科学技術における女性と女児の割合を高めなければならない」などのメッセージを寄せています。
日本では、2014年から男女共同参画担当大臣が「国際女性デー」に寄せてメッセージを出しています。しかし、「国際女性デー」がニュースなどで取り上げられるようになったのは、ここ最近ではないでしょうか。私は、「国際女性デー」の存在を全く知りませんでした。中国で仕事をするようになって初めてその存在を知り、「なぜ日本では、知られていないのだろう」と不思議に思ったことを今でも覚えています。
2.中国では女性社員は半日休暇が認められ、会社からプレゼントも!
中国では、「国際女性デー」は「三八節」「婦女節」などと呼ばれています。中国政府は、1949年12月、毎年3月8日を「婦女節」として祝日に制定し、「女性は半日休暇を取得できる」と定めました。今から70年以上も前のことですから、その歴史は意外と長いのです。
私の勤めていた中国国有企業も、「3月8日は、女性社員は半日休暇をとってもいいですよ」と通知を出していました。ただ、強制ではなく、「仕事に支障がなければ休んでもいい」というような感じでした。実際のところ、皆仕事が忙しかったので、半日休暇をとる女性社員はほとんどおらず、私も休んだことはありません。
半日休暇だけではなく、会社から女性社員にプレゼントも配られます。プレゼントの中身は、タオルなどの日用品やお菓子などです。上の写真は実際に私が受け取ったプレゼントです。バラの形をしたものは香りがつけられていて、タンスの引き出しなどに入れておく芳香剤です。箱の外観が、いかにもチョコレートなどの洋菓子が入っていそうな雰囲気だったので、私たちは皆「お菓子だ!」と期待して箱を開けました。しかし、食べられないものとわかって、ちょっとガッカリ。中国人女性も「花より団子」なのでしょうか。皆、「てっきりチョコレートだと思った」と苦笑いしていました。その他、メッセージカードや、映画のチケットもありました。プレゼントは年によって変わっていて、シャンプーなどのヘアケアセットをもらったこともあります。毎年何を贈るかを考えなければならない会社は、なかなか大変ですね。
「国際女性デー」は、お店にとっても大事な日です。最近では「女王節」「女神節」とも呼ばれ、化粧品をはじめ、女性向け商品のセールが行われるなど、活発な商戦が繰り広げられています。美しくパッケージされたギフトボックスが並ぶ様子は、バブル期の日本のホワイトデー商戦の様子を彷彿とさせます。
人民網日本語版では、建設現場で働く女性がメイクをしてオシャレを楽しむ様子などが紹介されています。このように、中国では「国際女性デー」は。女性にとって嬉しい1日なのです。
3.中国では女性にプレゼントをする日が多い?!
中国では、「国際女性デー」だけでなく、「女性がプレゼントをもらえる日」がいくつかあります。その中でも特に商戦が活発になるのが、2月14日、5月20日と旧暦の7月7日です。
2月14日のバレンタインデーは、日本では女性から男性にチョコレートをプレゼントしますが、中国では「情人節(恋人の日)」と呼び、男性から女性にプレゼントをします。
私はバレンタインデーの2月14日に、日本からお土産で持ってきたチョコレートを、職場の中国人たちに配ったことがあります。そのとき、仲の良かった中国人の男性同僚から、「深谷さんは男になったの?」と笑いながら言われました。
バレンタインデーの次にやってくるのが、5月20日「ネットバレンタインデー」です。これは「520」の発音が、中国語の「我愛你(私はあなたを愛しています)」に似ていることに由来しています。この日、チャット上などで、カップルが愛の言葉を伝え合ったりしていたことから、「ネットバレンタインデー」と呼ばれているそうです。最近は、女性向けプレゼント商戦も活発になっています。
私がこの日を知ったのは、2014年5月20日でした。その日、私は中国人の上司に承認をもらうために書類を持って行くと、普段はあれこれと指摘して、なかなかOKを出さない上司が、珍しくすんなりと書類にサインをしてくれたのです。そしてひとこと、「今日は良い日ですから」と言ったのです。何か良いことでもあったのかと思っていたら、上司は、「5月20日は、ネットバレンタインデーであること」を教えてくれました。
旧暦の7月7日は「七夕節」と呼ばれています。もともとは、「針仕事が上達するように祈る」「子どもを授かるように祈る」という風習がありました。しかし、今ではそうした風習はあまり見られなくなりました。七夕は「織姫と彦星が年に1度会うことができる」というロマンチックな1日であることから、現代の中国では、「恋人の日」としてカップルにとっては大切な日となっています。
七夕節でも、男性は女性とデートをして一緒に過ごしたり、男性から女性にプレゼントを贈ったりします。プレゼントは花束が人気のようです。私も地下鉄の駅で、両手で抱えるほどの大きな花束を持った女性をたくさん見かけました。このように、中国では男性から女性にプレゼントをする日が、年に何回もあるのです。
おわりに
中国の「国際女性デー」の様子を見ていると、激しい商戦ばかりが注目されて、「国際女性デー」が持つ本来の意味が薄れているようにも感じました。ただ、そういうイベントがあることで、私は「国際女性デー」の存在を知ることができました。日本でも少しずつ「国際女性デー」が浸透してきているように思います。日頃のねぎらいとして、プレゼントをもらえるのは嬉しいことですが、お祭り騒ぎで終わるのではなく、これまでの歴史とこれからの未来を考える日になればいいですね。