さまざまな理由で、60歳の定年時に住宅ローンが残ってしまう方はいます。できれば定年時までに完済するのが理想ですが、子どもの教育費に思った以上にお金がかかってしまったり、当初予定したような収入の伸びがなかったりなどで、60歳の定年時までに完済できないケースは充分に考えられます。
では実際に60歳の定年時に住宅ローンが残っている方の平均残高はいくらなのでしょうか。60歳の定年時までに住宅ローンを完済する対処法や、60歳以降に住宅ローン完済のための資金を調達する方法も合わせて紹介するので、参考にしてください。
60歳の住宅ローン平均残高は733万円
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」によると、60歳代の住宅ローンの平均残高は733万円、中央値は120万円でした。参考までに70歳代の平均残高は233万円、中央値は0円です。住宅ローンの残高別の割合は下記の表を参照してください。
60歳代 | 70歳代 | |
---|---|---|
50万円未満 | 1.4% | 1.3% |
50万円〜100万円未満 | 1.4% | 1.3% |
100万円〜200万円未満 | 4.2% | 5.1% |
200万円〜300万円未満 | 4.2% | 5.1% |
300万円〜500万円未満 | 9.0% | 5.1% |
500万円〜700万円未満 | 5.6% | 3.8% |
700万円〜1,000万円未満 | 6.9% | 0.0% |
1,000万円〜1,500万円未満 | 7.6% | 5.1% |
1,500万円〜2,000万円未満 | 3.5% | 2.5% |
2,000万円以上 | 6.9% | 3.8% |
無回答またはゼロ | 49.3% | 67.1% |
【出典】家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)-金融広報中央委員会
60歳代では無回答を除くと、最も割合が多かったのは「300万円〜500万円」の9.0%です。残高が1,000万円以上ある世帯が18.0%もおり、これは退職金を返済に充てる計画の方が多いからだと予想できます。
一方で、70歳代では60歳代よりも全体的に残高が減少しており、中央値は0円となっています。ただし残高が残っている世帯も一定数あり、退職金で完済できなかった方や、定年後も働く想定で住宅ローンを組んでいる方がいると思われます。
60歳(定年時)以降に苦しくなる住宅ローンの組み方
以下のような住宅ローンの組み方をすると、60歳以降に返済が苦しくなる可能性がありますので、注意が必要です。
- 完済予定が75歳以降
- 定年後の返済比率が50%を超える
- ボーナス併用払いをしている
ひとつずつ確認しましょう。
完済予定が75歳以降
一般的に住宅ローンの完済時の年齢の上限は75歳〜80歳です。40歳以降に住宅ローンを組んだり、返済期間が長かったりすると、完済予定が75歳以降になります。
定年時から完済までの期間が長いと、老後資金を崩したり、生活費に余裕が持てず、苦しい老後生活になる恐れがあります。
定年後の返済比率が50%を超える
多くの方は定年後に収入が減少します。そのため、定年前の返済比率が35%前後であっても、定年後には返済比率が50%を超えるケースは珍しくありません。
返済比率が50%を超えると、定年後の収入が20万円だった場合、10万円以上を住宅ローンの返済に充てることになります。
上記のケースでは、月々10万円で生活しなければならず、孫へのお小遣いや旅行などをはじめとした老後の楽しみにお金を使うことが難しくなってしまいます。
ボーナス併用払いをしている
ボーナス併用払いとは、ボーナス月に返済額を上乗せする返済方法です。老後はボーナスがなくなる、または大幅に減額されるため、ボーナス月の返済負担が非常に重くなります。
住宅ローンの組み方によっては、月々の収入の多くを住宅ローンの返済に充てなければならない方もいるでしょう。
60歳(定年)までに住宅ローンを完済する方法
では、60歳の定年時までに住宅ローンを完済する方法として、具体的にどのような方法が考えられるでしょうか。
- 住宅ローンを繰り上げ返済(期間短縮)する
- より金利の低い住宅ローンに借り換える
住宅ローンを繰り上げ返済(期間短縮)する
まず考えられるのは繰り上げ返済(期間短縮)の利用です。まとまった資金ができたときには、繰り上げ返済を行うことを考えましょう。最近ではインターネット経由で返済することで繰り上げ返済手数料が無料となる金融機関も多くなっていますので、手数料を気にせず返済できます。
そして、繰り上げ返済を行う際には、期間短縮型と返済額軽減型の2種類があることを覚えておきましょう。
- 期間短縮型:返済した金額を元本部分の返済に充て、その分の返済期間を短くする返済方法
- 返済額軽減型:返済した金額分それ以降の毎月の返済額を少なくする方法
どちらも利息削減効果は見込めますが、総返済額の削減効果が高いのは期間短縮型です。60歳までに完済するためにも、期間短縮型を選んで繰り上げ返済を行うようにしましょう。
より金利の低い住宅ローンに借り換える
今よりも低金利の住宅ローンに借り換えることも有効です。しかし、2024年9月現在はかなりの低金利下であるため、借り換えによって総返済額を減らすことは難しいかもしれません。ただ、金融機関への打診を行い、より金利の低い住宅ローンに借り換えられるのか調査するのは自由です。さらに現在変動金利で借り入れしているなら、今後の金利上昇リスクを考慮し、固定金利への切り替えを考えても良いでしょう。一般的に、借り換えによって総返済額削減効果が得られる目安は以下のようにいわれています。
- 借り換え前と借り換え後の金利差が1.0%以上あること
- 残りの返済額が1,000万円以上あること
- 残りの返済期間が10年以上あること
もし、上記の条件に当てはまるなら、借り換えを考えても良いでしょう。ただし、借り換えの際には、新規借入のときと同様に審査を通過しなければなりません。転職したばかりなど、新規で借り入れたときと状況が変わっている場合は、審査に通らない可能性があります。
また、団体信用生命保険への加入についても、年齢が上がっていることや持病の悪化などの理由で加入ができない可能性もあります。50歳を超えると、無料で団信に加入できる金融機関が減るためです。そのため借り換えを検討している方は、早めに行動しましょう。
また、借り換えを行うにあたっては、諸費用が発生します。諸費用も金融機関によって異なりますが、目安は借入金額の3%〜4%程度です。例えば1,500万円の借り換えを行う場合、45万円〜60万円の諸経費を支払わなければいけません。
そのため、諸費用を支払っても借り換えの効果が得られるかを、確認してから実行に移すようにしてください。ご自身で借り換えるべきか判断がつかない場合は、専門家にアドバイスを求めることも有効です。
60歳(定年)以降の老後資金を調達する方法
60歳の定年までに完済ができなかった場合、退職金で返済を考える方もいます。もちろんそれも1つの方法ですが、退職金は老後資金の大きな柱として年金と並んで重要な役割を担います。退職金で住宅ローンを完済するならば、退職金以外で老後資金を調達する方法を考えましょう。
実際に住宅ローンを返済したことによって生活資金が不足してしまった際に、この方法を知っておくと非常に役に立ちます。
リバース・モーゲージ
60歳以降の老後資金を調達する方法として、リバース・モーゲージがあります。リバース・モーゲージとは、自宅を担保にまとまったお金を借り、生きている間は利息のみを返済して亡くなったときに元本を返済するか、担保となっている自宅を売却して返済する方法です。
このリバース・モーゲージはフラット35を提供している住宅金融支援機構が「リ・バース60」という商品名で提供しているほか、民間の金融機関で提供しているところもあります。
リバース・モーゲージでは、担保となっている住宅を売却しても残債が残った場合に相続人が債務を返済するリコース型と相続人には債務の返済義務がないノンリコース型が用意されており、ほとんどの方がノンリコース型を選んでいます。
リースバック
もう1つの方法がリースバックです。リースバックは、自宅を売却してまとまった資金を得ると同時に、買い手側と賃貸借契約を結び、賃料を支払いながら自宅に住み続けられる仕組みです。リースバックを提供している業者は多くあり、セゾンファンデックスもリースバックを提供しています。
セゾンのリースバックは、クレディセゾングループであるという安心感をはじめ、さまざまな事務手数料などが無料となっている点で人気を集めています。対象エリアは日本全国なので、お住いの地域に関わらずお申込みいただけます。また、契約者様限定サービスとして、契約後にホームセキュリティやハウスクリーニングなどのサービスを、無料で利用できることも魅力ですリースバックを利用するメリットは、売却することにより固定資産税などの支払いから解放されることや、引っ越しが不要であることです。もちろん、賃料の負担はあるものの、生活環境を変えずに暮らせる点もメリットでしょう。
住宅ローンはできるだけ定年までに返済することが望ましいですが、なかなか計画どおりに返済できないケースも考えられます。その場合は、ここで紹介した対処方法や、資金調達としてリバース・モーゲージやリースバックなどの方法があることを知っておきましょう。
また、今回の記事でセゾンのリースバックに興味を持たれた方は、セゾンファンデックスにお問い合わせください。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。