カレーの付け合わせに欠かせないらっきょうは、シャキシャキとした食感、独特の香りと辛味がクセになるという方も多いでしょう。実は、らっきょうは薬として利用されていたほど豊富な栄養素が含まれています。
嬉しい健康効果も期待できるため、ぜひ食卓の中に取り入れてほしい食材ですが、らっきょうは摂取し過ぎると胃が荒れてしまうため、注意しましょう。らっきょうの健康効果や調理方法が知りたい方は、こちらのコラムをご参考ください。
この記事のまとめ
昔は薬として使用されていたこともあるほど、らっきょうは栄養素がとても豊富です。特に食物繊維やカリウム、硫化アリル、ナイアシンが豊富なため、むくみ予防や疲労回復、老化防止といった効能も期待できる食材です。らっきょうの栄養素を効率的に摂取するには、1日3~4粒を食前に摂取すると良いでしょう。また、旬の時期は生らっきょうを食べるのもおすすめです。
らっきょうは足が早いため、全体的に白く丸みがあり傷がないものを選びましょう。らっきょうの下処理や調理は難しい工程がなく手軽にできるため、ご自身でも気軽に挑戦できます。
らっきょうってどんな野菜?含まれる栄養素は?
らっきょうには豊富な栄養素が含まれています。どのような歴史がある野菜なのか、またどういった栄養素が含まれているのか見ていきましょう。
最初は薬として利用されていたらっきょう
らっきょうは、中国内陸部のヒマラヤ地方が原産で、ユリ科ネギ属に分類される野菜です。らっきょうはネギ属のため、成長時は青い葉が伸びます。ただし、私たちがよく食べる白いらっきょうは鱗茎(りんけい)と呼ばれる肥大化した根本の部分です。
今では主に漬物として愛されるようになったらっきょうですが、中国では紀元前から薬として利用されていました。らっきょうは、中医薬膳学において胃の不快感や狭心症、下痢や冷えの改善に効果があるとされており、「薤白(がいはく)」という生薬として使用されています。
日本には奈良時代~平安時代にかけて伝わり、薬として使用されましたが、江戸時代には野菜として普及していました。現在は国内でも多く栽培されており、鳥取砂丘や宮崎県、鹿児島県で主に栽培されています。
らっきょうに含まれる栄養素は?
薬にも使用されていたらっきょうは、身体に良い栄養素が豊富です。ここからは、らっきょうの主な栄養成分をご紹介しましょう。
食物繊維
らっきょうにはフルクタンという水溶性食物繊維が含まれており、便を柔らかくしてビフィズス菌のエサとなり、腸内環境を整えてくれます。ほかにも血糖値の上昇を抑えたり、コレステロール値や中性脂肪の値を低下させたりする働きもあるのです。
らっきょうの食物繊維の含有量は、100gあたり約21g。食物繊維が多い食材として有名なごぼうの食物繊維含有量が100g当たり約5.7gですので、らっきょうはごぼうの3~4倍も食物繊維を多く含んでいるのです。
カリウム
カリウムは、体内に蓄えられた余分な塩分を排出する働きがあります。そのため、ナトリウムの過剰摂取により引き起こされる脳卒中や高血圧予防にも効果が期待されている成分です。
また、骨にカルシウムが沈着する働きを助け骨粗しょう症予防にも効果的なことが確認されています。らっきょう100g当たりに含まれるカリウムは約230mgです。
硫化アリル(アリシン)・ジアリルスルフィド
らっきょう特有のにおいの元は、硫化アリルなどの硫黄化合物です。硫化アリルには殺菌作用の他、発がん性物質を解毒する酵素の働きを活性化したり、活性酸素を除去したりする効果があります。
また、疲労物資を分解してくれるビタミンB1の吸収を促進するため疲労回復効果が期待できたり、血中コレステロール値を下げたりする効果もあるため、動脈硬化や脳卒中といった病気の予防にもおすすめです。
らっきょうのにおいの成分にはジアリルスルフィドという成分が含まれています。ジアリルスルフィドは、抗がん作用・解毒作用が期待できる栄養素です。
ナイアシン
水溶性ビタミンB群のひとつであるナイアシンは、粘膜や皮膚の健康維持に力を発揮します。ナイアシンが不足してしまうと、消化不良や食欲不振、認知症、皮膚が鱗状になる皮膚炎などを引き起こす可能性があるため、摂取不足に注意しましょう。生のらっきょうには100gあたり約2.1mgのナイアシンが含まれています。
らっきょうは身体にどんな効果がある?
身体に良いといわれているらっきょうですが、どのような効果があるのでしょうか。
むくみ防止
らっきょうに豊富に含まれるカリウムの効能により、むくみ対策が期待できます。カリウムには、摂取し過ぎたナトリウムを尿で排泄する作用があるため、むくみ予防に加えて、高血圧予防にも効果的です。そのため、塩分を摂りすぎている方や外食が多い方、むくみや高血圧が気になる方におすすめです。
老化防止
らっきょうには、美肌効果が期待できるビタミンCが含まれています。ビタミンCは、コラーゲンの生成に欠かせない成分です。また、ビタミンCの持つ抗酸化作用は、血管や皮膚の老化を防ぐ役割を担っているため、外見だけでなく体内の老化防止にも期待できます。
糖や脂肪の吸収を穏やかにする
水溶性食物繊維の含有量が野菜の中でもトップクラスに位置するのがらっきょうです。らっきょうにはフルクタンという水溶性食物繊維が含有されています。
フルクタンには脂肪や糖の吸収を穏やかにする効果があり、食後の血糖値を緩やかにしたり、血中コレステロールを低下させたりするため、圧や血糖値が気になる方やダイエット中の方にも意識して摂取したい栄養素です。
疲労回復
らっきょうは独特の香りがしますが、これはアリシンといわれる栄養素によります。アリシンは殺菌作用の他に、食欲不振を解消し内臓の働きを活性化する効果が期待できるだけでなく、アリシンにはビタミンB1の吸収を促進し、疲労回復や血行を促進して身体を温める効果もあるため、冷え性の女性にも嬉しい食材といえるでしょう。
免疫力の向上
らっきょうには、免疫力の向上が期待できる「サポニン」という成分が含まれています。サポニンは高麗人参やニンニク、大豆などにも多く含まれる配糖体の総称です。免疫力向上の他にも、コレステロールの吸収や血糖値上昇の抑制、リラックス効果などもあるといわれています。
らっきょうの選び方
らっきょうを選ぶポイントは以下のとおりです。
- 全体的に白いもの
- 肉厚でふっくらと丸みがある
- 適度な硬さがある
- 傷がない
- 芽が伸びていない
- 粒が緑色がかっていない
らっきょうを選ぶ際は、これらのポイントをチェックしておくとスムーズに買うことができるでしょう。丸みのある適度な硬さの粒は、漬物にするとシャキっとした食感を楽しめます。一方で、緑色になった粒は、日に当たりすぎて硬くなっている可能性が高いです。また、芽が出ていたり表面に傷があったりする場合も味が落ちているため避けるようにしましょう。
購入時に土が付いていると、汚く感じるかもしれませんが、土により劣化を遅らせる効果もあるので土付きを買うのがおすすめです。また、らっきょうは保存に向かないため、購入後はなるべく早く食べたり、漬物にしたりしましょう。
らっきょうの効果的な食べ方は?
豊富な栄養素を含むらっきょうですが、食べ過ぎても効果を発揮しません。そこで、らっきょうの栄養を効果的に摂り入れるおすすめの食べ方をご紹介します。
旬の季節は生がおすすめ
らっきょうは生でも食べられることをご存じでしょうか。特に効率的に栄養素を摂りたい場合は、生のらっきょうを料理したり浅漬けにしたりするのがおすすめです。
その理由としては、らっきょうに含まれているミネラルやビタミンは熱に弱く、さらに水にも溶けやすいことが挙げられます。そのため、調味料に長く浸けていると栄養成分が溶け出してしまうことがあるのです。
らっきょうは4~7月に旬を迎えます。旬の時期は、生のらっきょうを浅漬けにしたり、生のまま味噌やマヨネーズにディップしたりして食べると良いでしょう。新鮮なうちに食べると、栄養素をしっかりと摂取できます。
目安は1日3~4粒
らっきょうは、毎日食べても問題ありません。ただし、らっきょうに豊富に含まれる硫化アリルは、消化を促す作用がありますが、食べ過ぎるとかえって刺激となってしまい、胃に負担がかかることもあります。「1日何粒」という定義はありませんが、1日3~4粒までにしておくと良いでしょう。
食前に食べる
血糖値の上昇を緩やかにする水溶性食物繊維が豊富ならっきょうは、食前に食べるのがおすすめです。糖の吸収を緩やかにする効果もあるため、血糖値が気になる方もお試しください。
らっきょうの下処理・調理方法は?
らっきょうを漬けたことがないと「まず漬け方がわからない」「面倒な工程が多そう」「下処理が大変なのでは?」などさまざまな疑問や不安が思い浮かぶでしょう。しかし、らっきょうの下処理は意外と簡単にできます。下処理さえ完了してしまえば終わったも同然です。やってみると簡単なので、ぜひチャレンジしてみてください。
らっきょうの下処理
旬の時期は、土付きのらっきょうが販売されています。土付きの方が身が締まって美味しいため、時間がある場合は土付きを買うのがおすすめです。
- 流水でもみ洗いする
ボウルにらっきょうを入れて流水で洗います。手でもみ洗いすると土と一緒に大まかな皮も取り除けます。
- 残っている皮を手で剥く
残った皮も手で簡単に剥けるため、丁寧に取り除きましょう。
- 根と先端を切り落とす
根はほんの少し切り落とすだけで大丈夫です。
- 再度流水で洗って薄皮を取りきる
再度大きめのボウルに入れ流水で洗うことで、らっきょうの薄皮が完全に取り除かれます。
- 水気をしっかり切る
水気を切る際は、ザルにあげてキッチンペーパーで拭き取りましょう。水分が残っていると保存時にカビが発生したり漬け汁が薄まったりと失敗の原因になるため、このひと手間は惜しまず行ってください。
らっきょうの甘酢漬けの作り方
ここからは、らっきょうの甘酢漬けの作り方をご紹介します。甘酢漬けは保存食ですが、数日漬けただけの浅漬けでも充分美味しくいただけます。漬ける期間によって違う味わいを楽しめるのも魅力です。今回は、長期保存ができるよう水を加えないレシピをご紹介しますが、漬け汁を火にかける必要のない手軽な作り方となっています。らっきょうと漬け汁が入る1リットルの容器を用意しておいてください。
材料
- 皮付きのらっきょう500g
- 赤唐辛子2本
(漬け汁の材料)
- 米酢(他の酢でも可)175ml
- 粗塩(他の塩でも可)30g
- みりん30ml
- 砂糖100~125g(好みで調整)
漬け汁が少なく感じた場合は、同じ比率で量を増やしてみてください。
作り方
続いて作り方です。
- 漬け汁を作る
漬け汁の材料をすべて混ぜ合わせます。菜箸などでかき混ぜながら溶かしましょう。
- 容器にらっきょうと漬け汁を入れる
容器は熱湯をかけて消毒しておきましょう。下処理したらっきょうと赤唐辛子を加え、漬け汁を注ぎます。ムラにならないよう、ときどき混ぜましょう。容器は密封性の高いものを選ぶことで長期保存が可能です。
らっきょうの塩漬けの作り方
甘くないらっきょう漬けがお好みの方は、今からご紹介する塩漬けがおすすめです。調味料は塩のみのため、あっさりとした仕上がりで、らっきょうの爽やかな風味が際立ちます。
材料
- 皮付きのらっきょう500g
(漬け汁の材料)
- 水600ml
- 粗塩(他の塩も可)60g
こちらも1リットルの保存容器を用意しておきましょう。
作り方
- 塩水を作る
水と塩を小さめの鍋に入れ、軽く煮立たせます。塩が溶けきったのを確認できれば大丈夫です。そのまま冷ましておきましょう。
- 下処理したらっきょうと塩水を保存容器に入れる
らっきょうと冷ました塩水を保存容器に注ぎ完了です。甘酢漬け同様、1年間保存できます。
生らっきょうの保存方法
生らっきょうを保存する方法についてご説明します。生らっきょうはとにかく足が早いのが特徴です。そのため、旬の時期以外は店頭で生らっきょうを手に入れることはほとんどできません。
店頭で売られているものには土付きと洗ったものの2種類があります。土付きのらっきょうの方が鮮度が良いため、買ってすぐ食べられない場合は土付きを選ぶのがおすすめです。洗ったものの場合はそのまま、土付きのものは新聞紙に包んで冷蔵保存しましょう。
ただ、生のままでは日持ちがしません。どうしても食べきれない場合は、甘酢漬けにするなどして保存すると無駄なく楽しめるでしょう。
おわりに
らっきょうには豊富な栄養素が含まれており、むくみ予防や疲労回復、免疫力向上といったさまざまな効能があることがわかりました。手軽に取り入れやすい食材のため、量に気をつけながら日常の食事に取り入れてみてはいかがでしょうか。
旬の時期は効率的に栄養素を摂取できる生らっきょうを食べるのがおすすめですが、旬の時期以外にも食べられるよう甘酢漬けなどに調理しておくと良いでしょう。らっきょうの下処理や甘酢漬けもそれほど手間がかからないため、ぜひ挑戦してみてください。