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年金の「繰り上げ受給」と「繰り下げ受給」はどっちが良い?検討する際のポイントとは?

年金の「繰り上げ受給」と「繰り下げ受給」はどっちが良い?検討する際のポイントとは?
セゾンのくらし大研究 編集部

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人生100年時代といわれ、老後資金をいかに作るかが非常に注目されています。そのなかでも特に大事になってくるのが年金ですが、年金で繰り上げ受給と繰り下げ受給ができることをご存知でしょうか?知らないという方もいれば、言葉だけは知っているという方も多いと思います。

実際、年金の繰り上げ受給と繰り下げ受給を活用してどういったメリットがあるのか気になっている方も多いのではないでしょうか。そこでこのコラムでは、年金の繰り上げ受給と繰り下げ受給についてメリットデメリットを含めてどのように考えていったら良いのか、解説をしていきます。 

1.年金の繰り上げ受給と繰り下げ受給とは?

まずここでは、年金の繰り上げ需給と繰り下げ受給の制度について解説をしていきます。現在、実施されている年金制度では年金を受給開始できる年齢は65歳からと定められています。

年金の繰り上げ受給・繰り下げ受給とは、65歳からと定められている受給開始年齢を早めたり遅らせたりすることができる制度です。基本的に、繰り上げ受給の場合は通常よりも早く年金を受給開始できますが、その分もらえる年金額が減額されます。反対に、繰り下げ受給の場合は年金の受給開始を遅らせることができ、その分、受給できる年金額が増額されます。

具体的には以下の表のようにもらえる受給額が変化していきます。

申請できる期間申請単位受給額の増減割合(月毎)
繰り上げ受給60〜64歳1ヵ月−0.5%
繰り下げ受給66〜70歳1ヵ月+0.7%

実際に繰り上げ受給と繰り下げ受給をした場合どうなるか、具体例を解説していきます。

繰り上げ受給の場合、 仮に62歳から年金を受給したとします。繰り上げる期間が3年となりますので、受給できる年金額は18%(=0.5%×36ヶ月)減額されます。繰り下げ受給の場合、69歳から年金を受給すると仮定します。繰り下げる期間が4年となりますので、受給できる年金額は33.6%(=0.7%×48ヶ月)増額されます。

1-1.年金の繰り上げ受給と繰り下げ受給の手続きの仕方 

年金の繰り上げ受給・繰り下げ受給両方ともに、お住まいの地域にある年金事務所に届出を行います。 どちらを申請するにも、申請書は年金事務所にて用意があります。用紙に記入する際、基礎年金番号が分かる年金手帳が必要になりますので、年金手帳を持って行きましょう。不明な点があれば事務所の方が相談に応じてくれます。加えて、本人確認書類も必要となります。運転免許証やパスポートなども合わせて持参しましょう。仮に本人ではなくご家族など代理の方が申請する場合は「委任状」も必要です。

2.年金の繰り上げ受給と繰り下げ受給のメリット・デメリット

年金の繰り上げ受給と繰り下げ受給の概要について紹介をしました。ここからは繰り上げ受給繰り下げ受給のメリット・デメリットについて紹介をしていきます。

2-1.繰り上げ受給のメリット・デメリット

まず繰り上げ受給をするメリットですが、 早めに年金を受け取れることで生活費として活用できる点です。通常退職をした後だと、現役で働いていた時よりも収入は減りますので、その分使えるお金も減るのが一般的です。

そうなると、十分な貯蓄が蓄えられていない場合、生活費をまかなうのがギリギリになってしまう可能性があり、生活水準も下がったりと精神的にも不安な部分が多くなるでしょう。その点、年金の繰り上げ受給を行えば年金を早めに受け取れるので、生活費をまかなうのに役に立つでしょう。

反対にデメリットですが、早く受け取ることで、毎月もらえる年金額は減額されてしまう点です。支給される期間が長ければ長いほど、65歳で受給した時と比べて受取総額が少なくなります。加えて、繰り上げ受給を開始した場合は、理由によっては障害年金を受け取れなくなってしまう(障害認定日請求不可)など、他の年金の受給に支障が出る可能性があるため、事前に確認をしておいた方が良いでしょう。

2-2.繰り下げ受給のメリット・デメリット

繰り下げ受給をするメリットですが、受給開始時期をの繰り下げるほど、 年間あたり受取金額が増えていく点です。65歳を過ぎた段階でも、生活資金に余裕がありまだ受け取る必要がないという場合には、繰り下げ受給を申請し利用することで、65歳時点で受け取った場合よりも多い金額を受け取れます。

反対にデメリットですが、早くに亡くなってしまった場合、65歳の時点で受け取っておいた方が結果的には、受取金額は大きくなってしまう場合もある点です。ただし、自分がいつ亡くなるかは、自分で判断できないため、現状の生活資金や年金に対する考え方に応じて判断していくことをおすすめします。

損益分岐点で考えると、繰り下げ受給の場合、例えば67歳で繰り下げ受給を開始すると、65歳からの受給開始と比べ16.8%増えます。受取総額は78歳以上で65歳開始を上回る計算になります。70歳で繰り下げ受給を開始すると42%増えます。受取総額は81歳以上で65歳開始を上回る計算になります。

受給開始年齢増減率損益分岐点
60歳-24.00%80歳未満
61歳-19.20%81歳未満
62歳-14.40%82歳未満
63歳-9.60%83歳未満
64歳-4.80%84歳未満
65歳
66歳8.40%77歳以上
67歳16.80%78歳以上
68歳25.20%79歳以上
69歳33.60%80歳以上
70歳42.00%81歳以上

3.年金の繰り上げ受給と繰り下げ受給の注意点

年金の繰り上げ受給や繰り下げ受給を行うことでそれぞれメリットがありますが、 利用する際の注意点について解説します。他の年金受給に影響を及ぼす場合があるため、事前に確認しておきましょう。

3-1.他の年金の受け取りに影響がある

基本的に繰り上げ受給や繰り下げ受給はいわゆる老齢年金に対する制度です。年金には複数種類があり、繰り上げ受給や繰り下げ受給を行うことによって他の年金の受け取りに影響が出ます。対象となる年金について以下で解説をしていきます。

・加給年金

加給年金とは、厚生年金に20年以上加入していた場合、65歳に到達した時点で老齢年金をもらう際に、生計が維持または生計が同一の配偶者やお子さまの分として追加でもらえる年金のことです。

加給年金は、繰り上げ受給を利用した場合、加給年金を一緒に繰り上げて受給することはできない仕組みになっています。加給年金は65歳から支給されます。繰り下げ受給を利用した場合、繰り下げている期間は加給年金を受け取れません。

・障害年金

障害年金とは、病気やケガなどで仕事や生活に支障が出た場合に受け取ることができる年金です。繰り上げ受給を利用した場合、 繰り上げ受給が開始となったあとに初診日が訪れた場合は、障害年金を受け取りません。

加えて、繰り上げ受給を申請する前の段階で病気やケガなどがある場合も、障害年金を申請できなくなる可能性があります。繰り下げ受給を利用した場合、繰り下げ受給の期間中に障害年金の対象となる病気やケガが発生した時に、その時点で繰り下げ受給が出来なくなってしまいます。

・遺族年金

遺族年金とは、亡くなった方によって生計が維持されていた場合、その遺族に対して生活保障のために支給される年金のことです。

繰り上げ受給を申請していて、65歳よりも前に遺族年金を受け取れる権利が発生した場合、老齢年金か遺族年金のどちらを受給するか選ぶ必要があります。遺族年金を選択した場合、 減額した老齢年金が支給停止になるのに加えて、停止が解除された後も減額された支給額のままで支給されることとなります。

4.年金の繰り上げ受給と繰り下げ受給を判断すべきポイント

ここまで、年金の繰り上げ受給と繰り下げ受給を申請する際の注意点について解説してきました。ここからは、どういった視点で繰り上げ受給と繰り下げ受給を考えて行った方が良いのか、解説をしていきます。 

4-1.労働収入があるかどうか

2013年4月1日に改正された高年齢者雇用安定法によって、希望者は65歳まで継続して雇用されることが可能となりました。とはいえ、全ての方が65歳まで働けるとは限りません。雇用する企業側の事情もありますので、65歳以前で退職をされるケースも多いでしょう。そうなった場合、65歳までの間は収入がなくなってしまいますので、繰り上げ受給を検討するのも良い可能性があります。

4-2.退職後の生活費はどのくらいになるか

60歳からの年間の生活費がどのくらいかかるか考えてみることをおすすめします。生活費は家族構成や状況によって大きく変わってきますので、 他の社会保険料や税金といった支出と一緒に月ごとにどれぐらいの支出があるのか大まかにでも計算をしてきましょう。例えば、通常もらえる年金額よりも余裕のある生活をしたいという場合には、繰り下げ受給も選択肢の一つとなります。

4-3.退職後のどのようなライフイベントを迎えるか

60歳を過ぎた段階で、例えばお子さまが大学生だった場合学費などの出費もかかってきます。 退職した後に支出の伴うイベントがどれだけあるかによって、その時々に必要な資金も変わってくるでしょう。

先ほど紹介した生活費と合わせて、 どういったライフイベントがあるのかも想定しておくことで、必要な資金も割り出しやすくなります。 かかる支出と現状の資金から推測して、繰り上げ受給を受けておいた方が良いのかどうかを判断していきましょう。

おわりに

これまで、年金の繰り上げ受給と繰り下げ受給をどう考えて行ったら良いのかという点について解説をしてきましたが、いかがだったでしょうか。繰り上げ受給も繰り下げ受給も、どちらもメリットデメリットがあるため、一概に「繰り上げ受給した方が良い」や「繰り下げ受給の方がおすすめ」とは言えない部分がどうしてもあります。

大切な視点としては、自身の生活費がどれだけかかっていて、どれだけの収入があれば理想のライフスタイルを送れるかという点を把握しておくことが大事です。そうすることで、どの時点で年金をもらっておいた方が良いのか判断しやすくなります。繰り上げ受給と繰り下げ受給のメリットデメリットをしっかり理解して、自分のライフスタイルにどの方法が適切なのかを判断していきましょう。

とはいえ、年金をどの時点でもらうかを調整するだけでは、 資産として調整できる額はあまり大きくはないため、余裕を持った老後生活を送るというのは難しいのではないでしょうか?

退職後に余裕ある生活を送って行くためにも、その資金確保の手段として資産運用は有効な手段です。クレディセゾンのマネースクールでは、現在の資産を効率的にどう増やしていくか分かりやすく解説しています。 WEBでも簡単に受講できますので、気になる方は、「マネースクール」を受講してみてはいかがでしょうか?

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